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共謀罪創設の是非〜国際協調のためという政府の説明は本当の理由か? 【Because It's There】
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 28 日 13:03:05: ogcGl0q1DMbpk
 

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共謀罪創設の是非〜国際協調のためという政府の説明は本当の理由か?(東京新聞:平成18年5月25日付)

政府は、国際的な信義や国際協調を理由として共謀罪創設法案の成立が不可欠と説明しています。では、この政府の説明は本当の理由なのでしょうか? 東京新聞(平成18年5月25日付朝刊)の「こちら特報部」を引用してコメントしてみたいと思います。


1.東京新聞(平成18年5月25日付朝刊24面)の「こちら特報部」によると、

「攻防続く共謀罪法案 『国際協調 政府の建前』

 攻防が続く共謀罪法案。政府は国際的な信義を推進の柱にすえている。自民党の武部勤幹事長も『国際社会への約束』から法案成立は不可欠と訴えた。だが、政府は従来、国際条約についてケース・バイ・ケースで対応してきた。やはり、本音は国内向けの治安立法の新設ではないのか。

 共謀罪の根拠になっているのは、国連越境組織犯罪防止条約批准のための国内法整備だ。同条約は国境を超えたテロや麻薬犯罪などの取り締まりが狙い。日本は2000年12月に署名、03年10月に国会で批准を承認したが国内法整備のために未批准なままだ。

 『批准するか否かは政府の政治判断。批准するにしても、条約法条約で各国の事情から、条約の趣旨に反しない範囲で留保は付けられる。今回のケースもそうだ』と一橋大学の川崎恭治教授(国際法)は話す。

 その趣旨に絡み、国際人権擁護団体、アムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠事務局長は『政府の法案は本意を取り違えている。この条約は1条で示すとおり越境犯罪集団が対象。各国の立法段階で『越境性とは独立して』とあるが、これは集団が国内犯であっても対応できる意味で、あくまで対象は越境犯罪集団に絞られるべきだ』と法案を批判する。

 一方、杉浦正健法相は4月下旬の記者会見で『119ヶ国がすでに締結し、法が成立しないと国際協調ができない』と言明した。だが、本当にそうだろうか。

 日本が国際的趨勢(すうせい)に背を向け、批准していない例は数多くある。戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所は現在、139ヶ国が署名、100ヶ国が締結している(05年10月現在)が、日本は当初、設立に積極的だったものの、これに反対する米国に配慮してか、現在まで署名すらしていない。

 冤罪(えんざい)の温床と批判のある代用監獄(警察留置場)の廃止も世界的な流れだが、政府は今国会で提出した受刑者処遇法改正案では、その恒久化と受け取れる内容を盛り込んだ。死刑制度も世界で118ヶ国が廃止したが日本は維持している。

 さらに条約に批准したが、国内法には触れなかったケースも多い。東京造形大の前田朗教授(刑事法学)は『1953年に加入したジュネーブ4条約が典型だ。戦争下での文民や戦傷病者の保護が定められているが、国内法整備が浮上したのは、92年のカンボジアPKOへの派遣で、それまで放置された』という。

 94年批准の『子どもの権利条約』でも、日本は国内法整備を必要なしとしていたが、批准後、婚外子差別の是正などで国連から勧告を受けている。99年加入の拷問等禁止条約でも、2年以内の報告書の提出義務を果たさず、提出したのは昨年の暮れだった。

 『結局、国際条約への対応は国際信義というより与党の政治判断で、その傾向は人権に関するものには冷たく、治安絡みは重んじるという二重基準だ』と山下幸夫弁護士は指摘する。

 山下弁護士は典型例として、共謀罪新設法案に含まれているサイバー犯罪防止の条項を挙げる。これも欧州評議会が音頭をとったサイバー犯罪条約への批准のために設けられている。

 『日本政府は、この条約の起草委員会に米国などとオブザーバー資格で参加したが、一方で欧州評議会は死刑制度に反対だ。このため、死刑制度を堅持する日本の資格剥奪(はくだつ)を検討している。治安立法は可で、死刑は不可という政治判断が働いた例だ』(同弁護士)

 今回の共謀罪法案をみる限り、政府は対象を越境犯罪集団に絞らず、国内法との整合性も十分に検討されたとは言い難い内容だ。山下弁護士はこう続けた。

 『政府は公には国際協調を建前としているが、本音は別だろう。国際協調の名の下に、国民を対象にした治安立法を作りたかったという意図が透けて見える』」

としています。


2.杉浦正健法相が「119ヶ国がすでに締結し、法が成立しないと国際協調ができない」と言明したり、自民党の武部勤幹事長も「国際社会への約束」から法案成立は不可欠と訴えています。この記事では、共謀罪創設の理由が、本当にこのような「国際協調」なのかどうかを検討しています。


この記事では、旧ユーゴスラビアでの住民への集団殺害やルワンダでの虐殺での経験から、個人の国際犯罪(集団殺害などの重大犯罪)に対応するため2002年に発効した国際刑事裁判所(ICC)でさえ、署名していないことなどを挙げて、

「『結局、国際条約への対応は国際信義というより与党の政治判断で、その傾向は人権に関するものには冷たく、治安絡みは重んじるという二重基準』」

を行っているといえるわけです。
そのため、

「『政府は公には国際協調を建前としているが、本音は別だろう。国際協調の名の下に、国民を対象にした治安立法を作りたかったという意図が透けて見える』」

と判断できると結論づけているのです。
「日本が国際的趨勢に背を向け、批准していない例が数多くある」わけですから、それだけでも「国際協調」を理由とすることには無理があります。「国際強調」は単なる建前であって、本当の理由は治安立法創設である、というこの記事の結論は、妥当なものといえると思います。


ちなみに、米国は国際刑事裁判所(ICC)に強く反対しているのですが、その理由は「自国の軍人等が同裁判所に訴追されることへの懸念」(中谷=植木=河野=森田=山本「国際法」(有斐閣アルマ)(2006年)12頁)からです。ある意味、米国は、国際的な集団殺害を犯した自国民でさえ保護しようというのです。

これに対して、日本の政府は、国際協調を理由として、国民を対象にした治安立法となりかねない共謀罪を設けようというのです。以前からの繰り返しですが、共謀罪法案は、実際に捜査を行う刑事さんが重大事件の捜査が手薄になるから反対し、警察のノルマ達成のため乱用の恐れがあるのですから、捜査機関にとっても、一般市民にとっても有害無益な法案です。

このように、共謀罪創設法案は一般市民にとって有害無益なのですから、日本の政府も、ある意味、米国を見習って、もう少し自国民保護を考えて、共謀罪創設を止めてもいいのではないでしょうか。

<追記>

「日本がアブナイ!」さんも、「政府&与党が共謀罪の成立を急ぐわけ + サウンドデモで逮捕」というエントリーで、政府与党が主張する「国際協調」について触れています。ぜひ御覧下さい。

2006/05/27(土) 23:30:27| 刑法| トラックバック:0 コメント:0

「共謀罪創設法案の採決に踏み切るべき」との杉浦法相の考えの是非

朝日新聞の報道によると、杉浦法相は「共謀罪創設法案の採決に踏み切るべき」との考えを示したそうです。そこで、この考えは妥当なのかについて検討してみたいと思います。


1.asahi.com(2006年05月23日11時36分)によると、

「再修正案なければ共謀罪「採決を」 杉浦法相

 共謀罪を創設する組織的犯罪処罰法改正案をめぐり、衆院法務委員会での強行採決が河野衆院議長の要請を受けて見送られた問題で、杉浦法相は23日、閣議後の記者会見で「すでに40時間以上審議しており、一つの法案としては破格に長い。採決する機は熟している」と述べた。民主党から再修正案が示されなければ、法務委での法案審議はこれ以上せず、採決に踏み切るべきだとの考えを示した。

 杉浦法相は19日の河野議長の裁定について「できるだけ円滑にという趣旨であり、さらに審議してほしいということではないようだ」と述べた。

 また、「先週末に、民主側から再修正の提案がされるはずだったのに出なかった」と述べ、民主党の対応を促した。」

としています。


(1) 杉浦法相は議員でもありますが、閣議後の記者会見で法務大臣として発言しているのですから、行政機関の一員としての発言です。
そして、「『採決する機は熟している』と述べた」のですから、「民主党から再修正案が示されなければ、法務委での法案審議はこれ以上せず、採決に踏み切るべき」との考えを示したという評価が妥当です。そうすると、行政機関が、衆議院の委員会の採決のあり方に対して、干渉(=口を出している)しているわけです。

(2) では、このように行政機関が議院の採決に干渉することは、妥当なのでしょうか?

「憲法は、議院の自律権という語を用いてこれを明示しているわけではないが、各議院が他の国家機関や他の議院から干渉などを受けることなく、自主的に内部の組織や運営について決定できることを保障している(例えば、議員の資格争訟:憲法55条、議院規則制定権:憲法58条、議員懲罰権:憲法58条2項など)(辻村「憲法」444頁から要約)」

このように、各議院には、憲法上、議院の自律権が保障されていますので、行政機関が各議院に干渉することは許されませんから、杉浦法相が衆議院に対して干渉することは許されません。

各議院で構成される国会の権能のうち、最も基本的な権能は法律案の議決(憲法59条)であり、各議院での可決によって法律案が成立するのです。そうすると、各議院では、議院での採決の前に委員会で採決し、それによって議院の採決の結論が決まってしまうのですから、委員会での採決とそのあり方は、議院の権能として、最も基本的な権能といえます。

そうすると、杉浦法相という行政機関が、採決とそのあり方という議院の最も基本的な権能に対して干渉したのです。これは明らかに議院の自律権侵害であって、最も許されない干渉であるといえると考えます。


杉浦法相も与党議員であるのですから、その与党議員の立場としては、強行採決であっても採決してしまいたいという気持ちをもつことも、分からなくはありません。
しかし、杉浦法相は、法相である以上は、単なる与党議員ではなく行政機関の一員であるのです。議員としての立場と行政機関とのしての立場の違いについては、特に法律に関わる法相であれば、特に自覚すべきであったように思います。

(3) 「情報流通促進計画byヤメ記者弁護士」さんは、 「杉浦法務大臣に抗議を!〜共謀罪に関して,行政府の長がしてはいけない越権発言」というエントリーで、

「これは,とんでもない越権発言だ。杉浦法務大臣は,行政府としての法務省の長であり,立法府が法律で定めたことを粛々と,中立的な立場から,実行に移していくことがその役割だ。立法府に対して,こういう法律をつくれ,ああいう法律をなくせ,などと口出しをする役割は有していない。

 議院内閣制という制度から,内閣にも法案の提出権はあるが,あくまでも,議院内閣制,すなわち,内閣が国会の多数派によって形成されているということを背景に,行政を担当し高度の専門知識を有する内閣に,便宜的に,法案提出権を認めているだけであって,提出された法案の審議については,国会の専権事項である。

 しかるに,杉浦法務大臣は,「共謀罪を成立さすべし」と発言し,国会の専権事項に口を出してしまったのである。」

としています。
こういった面でも問題のある発言であったといえると思います。「情報流通促進計画byヤメ記者弁護士」さんは、他の点でも問題点を指摘しています。ぜひご覧下さい。


2.もっとも、共同通信によると、

「共謀罪、採決は来週以降に 与党に打開策なく
 2006年 5月23日 (火) 20:25

 与党は23日、「共謀罪」新設を柱とした組織犯罪処罰法などの改正案をめぐる衆院法務委員会採決を来週以降に先送りする方針を固めた。民主党が態度を硬化させる一方、「強行突破」には小泉純一郎首相が依然消極的なためで、与党は事態打開の糸口をつかみあぐねている。

自民党の細田博之国対委員長は同日午後、記者団に対し行政改革推進法案が26日にも成立の運びとなったことを踏まえ「行革法案が成立次第、(法務委採決を)強行するとの流言飛語が流れているがそういうことはしない」と明言。同党の矢野哲朗参院国対委員長にもこの考えを伝えた。」

としています。

「強行突破」には小泉純一郎首相が依然消極的ですし、与党は、委員会採決を来週以降に先送りする方針を固めたわけです。要するに、杉浦法相が何を言おうと何ら影響力がなく、与党の方針決定について何も知る立場にさえないというわけです。

思い起こせば、5月19日に採決されなかった際に、「午後3時過ぎ、そのまま委員会が終了すると、法案を提出した杉浦法相は『何が起こったのか分からない』と首をかしげた。」(朝日新聞(平成18年5月20日付朝刊1面: 「共謀罪創設の是非〜今国会中の共謀罪法案成立は困難に(朝日新聞:平成18年5月20日付より)」参照)のですから、委員会終了後も、与党方針について知らなかったのです。これでは、法務大臣としてはもちろん、与党議員扱いもされておらず、単なる一般人と同じです。

そう考えると、杉浦法相が、議院の自律権を侵害する発言をしたとしても、一般人が発言したのと同じであり、実質的には行政機関の一員でなく、その発言は無視していいとさえ、いえるかもしれません。


<追記>

「保坂展人のどこどこ日記」さんも、「杉浦法務大臣、質疑打ち切り・採決の「指揮権発動」」で、杉浦法務大臣の発言の問題点を指摘しています。

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