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中学生の自殺が照らし出した制度疲労 [AERA]
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投稿者 white 日時 2006 年 11 月 06 日 22:19:03: QYBiAyr6jr5Ac
 

□中学生の自殺が照らし出した制度疲労 [AERA]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061106-04-0101.html

2006年11月6日
中学生の自殺が照らし出した制度疲労
北海道では遺書の内容を市教委が隠し続け、福岡では過去のいじめを学校が町教委に
報告しなかった。文科省の調査では、いじめ自殺は7年間「0」だった。
教育委員会制度がほころんでいる。
 次々に押しよせる国の教育担当者に、県教委、町教委の関係者たちは小刻みに震えてみえた。
 中学2年生の男子生徒が自殺(注1)した福岡県筑前町の町役場。イチゴが名産のこの町に、文部科学省の小渕優子政務官と、首相の諮問機関「教育再生会議」(注2)の山谷えり子事務局長(首相補佐官)、義家弘介担当室長らが相次いでやってきたのは、10月25日午後だった。
 地元報道陣らを仕切る文科官僚の迫力に圧倒されたのか、町教委職員らは、自分たちの職場なのに、借りてきた猫のよう。普段は市町村教委に「強い」立場の県教委職員らも、小渕氏らの動向に右往左往し、メモ取りに走り回った。

「縦のパイプが…」
 県と町の教育委員会関係者にとって、この日の記者ブリーフィングは耳が痛い内容だったのではないだろうか。
「学校側が調査中ということで、なかなか町や県に情報があがらないという。そんなことを言わないで、現在進行形の問題を現時点で共有していくのが何よりも大事。遺族、学校、町、県が今話し合うべきだと言った」(山谷氏)
「私の感覚では、縦の系列(学校―町教委―県教委)のパイプが機能せず、連携ができていない」(義家氏)
 文科省からの派遣で、慎重に言葉を選んだ小渕政務官とはちがい、省庁の縛りがない再生会議の2人からは容赦ない言葉がとんだ。
「国の責任の在り方、教育委員会の在り方、また、学校現場がなぜ、密室で隠蔽体質になってしまうのか。具体策を考えたい」
 山谷氏がこう話すと、「市町村教委は機能していない」が持論の元私立高校教師・義家氏も、教育委員会制度への不満を発言の端々ににじませた。
 教育委員会制度の改革――。
 北海道や福岡のいじめ自殺事件でこの制度に注目が集まったのは、自然な成り行きかもしれない。情報の隠匿や組織防衛意識、責任意識の欠如……。どれも、システムの欠陥を抜きには説明できないレベルに達していたからだ。
 さっそく議論の柱の一つになりそうだが、再生会議や政府与党関係者の発言をひろう限り、方向性はまるで定まっていないようだ。
 安倍首相自身は、福岡のいじめ自殺が起きる前、衆院予算委員会で、「教育委員会制度の活性化に資するように改革を進めたい」と答弁していた。ところが、首相側近の下村博文官房副長官は10月16日の講演で、教育委員会の廃止も視野に入れた見直し論を展開。
 一方で、佐田玄一郎規制改革担当相は数日後、規制改革・民間開放推進会議議長に対し、教育委員会の権限強化にむけた検討に着手するよう、求めた。これまで、教委の権限を首長に移す主張をしてきたのが推進会議だったのだから、議論の錯綜ぶりが分かるだろう。
 教育委員会制度は、どこが制度疲労をおこしているのだろう。
 制度発足は1948年。教育行政における中立性、安定性を確保する目的から、首長から独立した合議制の機関としてスタートし、以後、地方分権の流れを受けて、自治体側の権限が拡大してきたが、《文部科学省―都道府県教委―市町村教委―学校》という義家氏の指摘した「縦の系列」は今も、基本的には変わっていない。
 各委員会=下表参照=には、首長が任命(議会同意が必要)する教育委員(注3)が原則5人。1人が教育委員長になり、別の1人が事務方を統括する教育長に選ばれる。狭くは、委員の会合を指して教育委員会というが、世間一般では、学校教育課などの事務方を含めた全体を教育委員会と呼ぶことが多いようだ。

教師は県教委から派遣
 組織はトータルとして、公立学校の教育、社会教育、文化財保護、文化・体育施設の管理などをおこない、教育委員による委員会が意思決定する仕組みになっている。
 このうち、改革の必要性が特に叫ばれているのは、市町村レベルの教育委員会と言っていいだろう。
 多くの市町村教委では、月1回の委員会開催で、議事内容は、教育長からの報告とその承認がほとんど。会議は原則公開にもかかわらず、傍聴者はまれだといい、会議の形骸化が指摘されて久しい。
 さらに、県費負担教職員制度(注4)とよばれる権限配分が、責任関係をややこしくしている。例えば、冒頭の筑前町の中学の場合、教職員の身分は町職員なのに、採用・転勤・懲罰といった任命権は福岡県教委がもつ。人件費は県(一部は国)の負担だ。
 市単独で25人学級(注5)を実現した穂坂邦夫前埼玉県志木市長は、市教委改革に取り組んだ体験をもとにこう話す。
「市教委は学校を管理・指導することにはなっている。けれど、校長、教職員はすべて県教委からの派遣職員みたいなもの。市町村に任命権はないから、市の教育委員が自分のこととして、責任をもつ意識になりづらい構造なんです」
 筑前町の場合、元担任のからかいが級友たちのいじめを誘発したのではないかと言われている。
 穂坂氏は、町長ら町幹部の心中を察して、こう話す。
「もし事実なら、『県教委がよこした教師が、たまたま我が町で悪いことをした。運が悪かった』という気持ちじゃないでしょうか」

教育を避ける首長心理
 こんな穂坂氏が描くのは、今の教育委員にかえて、公募などによる10人から20人でつくる「新委員会」だ。幅広い層の声を集めて議論する。そうして、首長が直接の指揮はしないが、総括責任者を務め、教育行政にきちんと関与させる仕組みにしたいという。
 ところが、穂坂氏のように、意欲的な首長ばかりとは限らない。『日本を滅ぼす教育論議』(講談社現代新書)などの著作がある岡本薫政策研究大学院大学教授は、文科省時代の経験からこう話す。
「これまで会った数十人の首長で、『教育行政を担当したい』と言った人は極めて少数。実際には、『常に批判にさらされる学校教育行政など担いたくない。文科省と教委のせいにしておくのが楽』と言う人がほとんどだった」
 岡本氏の解説によると、親は常に子どもの将来が心配で、安心することはない。この心配は容易に学校(教育行政)への不満に転化する。選挙を考えると不利に働くから、学校教育にはかかわりたくないという政治家心理が働くのだという。
「教育委員会が独立機関であるがゆえ、首長は教育行政を担わずにすますことができた。これは、ある意味、首長を甘やかしてきたともいえるんですよ」
 と岡本氏はいう。
 結局、地方の教育行政の責任はだれがとるのか。責任をもつとはどういうことか。公教育の公平性と透明性を保ちながら、どこを変えるのか。議論はこれからだ。
(注1)福岡の中2自殺
福岡県筑前町の三輪中学に通う2年男子が10月11日、いじめを苦に自殺した。その後の調べで、1年時の担任がいじめを誘発するような言動を繰り返していたことが判明、教育行政を揺るがす大問題に発展した。同校ではここ数年、7、8件のいじめが起きていたのに、校長は町教委に「0件」と報告していた。
(注2)教育再生会議
教育改革を掲げる安倍首相の諮問機関。10月18日にスタートした。有識者17人がメンバーで、座長はノーベル化学賞受賞者の野依良治氏。来年1月に中間報告を出す。「学校再生分科会」「規範意識・家族・地域教育再生分科会」「教育再生分科会」の3分科会がつくられ、教育委員会などの教育行政は、「学校再生分科会」のテーマになっている。
(注3)教育委員・教育長
委員は年齢・性別・職業に著しい偏りが生じないよう配慮することが、地方教育行政法で定められている。実態として、教育長には、市町村教委は教職関係者、都道府県教委は行政職員出身者が就くことが多い。平均的な教育委員(教育長を除く)の月報酬は、町村教委で3万円。市教委で約7万円。都道府県教委で約22万円。
(注4)県費負担教職員制度
市町村立小中学校の教職員は、市町村の職員だが、給与は財政力が安定している都道府県(国)が負担することで、一定水準の教職員確保と教育水準の維持向上が図られている。また、任命は都道府県が行うものとし、市町村をこえた交流で、教職員の適正配置を図るとしている。政令指定都市は、任命権が都道府県から移管されている。
(注5)志木市の25人学級
「40人学級」の規制が緩められたことをうけて、02年春、埼玉県志木市が取り組んだ少人数学級。小学1、2年の学級を25人制とし、教員増員の負担は市単独で手当てした。保護者を対象にした「実感調査」では約8割が「良かった」と回答した。当時の穂坂市長は県議会議長を務めた県政の実力者で、渋る県教委などと渡りあった。
編集部 藤生 明

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