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週のはじめに考える-教育現場からの議論を(東京新聞)
http://www.asyura2.com/0601/social3/msg/680.html
投稿者 あっくん 日時 2006 年 11 月 12 日 22:09:10: hhGgKkD30Q.3.
 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20061112/col_____sha_____001.shtml

週のはじめに考える
教育現場からの議論を
 いじめ自殺、高校必修教科履修漏れなど教育界が大揺れです。教育基本法の改正を中心に諸制度の改革が叫ばれていますが、忘れてならないのは現場の声です。

 音量を少し上げて見たテレビ番組があります。「プレミアム10−この世界に 僕たちが生きてること」というドキュメンタリーで先月、NHKで放映されました。

 二年間にわたって愛知県豊田市の河合正嗣さん(28)に密着取材し、筋肉が徐々に衰える筋ジストロフィー症と闘いながら指先のわずかな力を使って鉛筆画「ほほ笑みの絵」を描き続ける姿を追った作品です。

■ほほ笑みの絵の輝き

 正嗣さんの双子の弟、範章さんは二十三歳の若さで呼吸器不全のため他界しました。同じように病気が進行していた正嗣さんは、一日でも長く絵を描き続けたいからと気管切開手術を受け人工呼吸器を付けます。

 引き換えに声を失いました。でも呼吸器から漏れる空気をくちびるで震わせて、かすかな声を絞り出すことはできます。テレビの音を大きくしたのはそのせいです。

 「ほほ笑みの絵」は一一〇人(ひと・と・ひと)を目標に、病院の医師や看護師、患者仲間とその家族を描いています。どの絵も命の輝きをとらえています。

 「笑顔を持っている人たちは幸せな人生を歩んでいる人ばかりじゃない。逆に、苦しい時を乗り越えた人にこそ本当の笑顔がある」「一人だけじゃほほ笑みは生まれない。今ここで僕たちが生きていられるのも人と人のつながりがあるから」

 常に死に直面している自分の弱さを見つめ、逃げずに受容した人の、声は小さくても重い言葉です。

 番組から多くを学びました。命の尊さ、家族や地域の支え合いの大切さ、人の可能性の大きさ、体験から生まれた言葉の力強さ。放送後、NHKには「生きる勇気をもらった」などと反響が続いたそうです。

 その意味ですぐれた教育番組といえるでしょう。助け合いや思いやりある生き方を、子どもたちに伝えていく。知識、学力だけではなく、こうした「生きる知恵、社会に参加する力」を育成する場が学校や家庭、地域であるはずです。事実、笑顔に満ちた実践例はたくさんあります。

 ところが、現場は今、批判の矢面に立たされています。不登校や学力低下、公共の精神の衰退といった従来の指摘に加え、一連のいじめ自殺に対する対応のお粗末さや高校履修漏れが不信に拍車を掛けました。安倍首相肝いりの「教育再生会議」の発足を待っていたかのように諸問題が噴き出したのです。

■矢継ぎ早の制度改革案

 ゆとり教育の弊害だ、家庭がしつけを忘れている、教師が使命を果たしていない、といった指摘にうなずく人が多いかもしれません。国際社会で生き抜くためには教育水準の向上が欠かせない。そんな観点からの危機意識もうかがえます。

 でも、矢継ぎ早の制度改革が再生への特効薬となるでしょうか。「学校の外部評価」「教員免許の更新制度」など、いずれも政治の側面からの改革案で教室や家庭からの発想ではありません。教育に企業社会のような競争原理を導入する点も気になります。履修漏れは受験競争を最優先した反則です。首相提唱の「教育バウチャー制」(クーポン券による学校選択)も地域と小中学校の切り離しや学校間格差拡大が心配です。

 ジャーナリストの長谷川如是閑が大正時代に発表した「上から下へ」という文章があります。「日本人は上から下へ抑へつける。西洋人は下から上へ刎(は)ねあげる」と書き出し、「日本人は人を呼ぶのに、掌を下に向けて、指先を下げる運動を繰り返へし、西洋人は、同じ場合に、掌を上に向けて、指先を刎ね上る運動を繰り返へす」「悲しい時に、日本人は俯向(うつむ)く。西洋人は仰(あ)ほ向く」など多くの事例を挙げてこう結びます。

 「日本の文明は上から下への賜物(たまもの)であり、西洋の文明は、下から上への反抗である。『上から下へ』それが日本人の宿命なのか」

 一世紀近く前の嘆息が今も聞こえるようです。現に、教育行政では国−都道府県−市町村−学校という上から下への上意下達で進められてきました。学校も校長−教員−生徒という構造が一般的です。現場の切実な声を吸い上げ、改革につなげていく仕組みは整っていません。

■「上から下へ」の構造

 実際に、これまでも総合学習、生徒の絶対評価、学力テストなどと相次ぐ国からの指導指示に教師は追いまくられ、子どもたちと向き合う時間も心の余裕もないとの悲鳴や苦悩の声をよく耳にしました。

 “愛国心”の盛り込みを含め教育基本法改正案には、こうした国からの指示、関与を強化する意図が読み取れます。東京大の調査で全国の公立小中学校長の三分の二が改正案に反対したのも、国の管理、監視の色彩が濃い改正案に対する懸念からでしょう。今は改正を急ぐことなく、多様な現場の声をすくい上げ、再生への道を探る時ではありませんか。

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