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[AML 5406] 反戦の視点 その15【泥沼に足をとられてもがき苦しみ、混乱と迷走を続ける米ブッシュ政権】
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投稿者 gataro 日時 2006 年 1 月 12 日 14:00:08: KbIx4LOvH6Ccw
 

加賀谷いそみ
2006年 1月 10日 (火) 02:31:39 JST
http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-January/005136.html

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(転載歓迎)

反戦の視点 その15

  【泥沼に足をとられてもがき苦しみ、混乱と迷走を続ける米ブッシュ政権】

                 井上澄夫(市民の意見30の会・東京)

米英軍を主力とするイラク侵略戦争の泥沼化はもうだいぶ前から誰の目にも明らかだったが、最近の米ブッシュ政権の混乱・迷走ぶりは余りにすさまじい。

ブッシュ大統領の支持率はときにわずかに持ち直したりするものの、低落の傾向は続いている。米国内の世論は、「イラク戦争」がいつまで続くのか、まるで先が見えないまま、米兵の戦死者が2千人を超えてどんどん膨らむことにいらだちを強め、撤兵を求める声は議会内で共和・民主両党から上がり始め、いよいよ大きくなっている。その意味では、ブッシュ大統領はいわゆる「出口戦略」を明らかにしなければならないのだが、いつ撤兵するかは明言しない。いや、明言できないと言う方が正しいだろう。
 
米軍トップやイラク駐留米軍とブッシュ政権中枢との関係を、シーモア・M・ハーシュ氏のレポート「空に浮かんだ撤退作戦」(『世界』2006年2月号)が活写している。

「米軍のトップにいる将軍たちはいらだっている。しかし、だれも表立って発言しない。経歴に傷がつくことを恐れるからだ。ブッシュ政権が『決して訴え出ないように将軍たちを脅してきた』と国防省の元高官は言う。イラク問題に精通するCIAの元高官は、昔の同僚が下院の調査団に随行して最近イラクへ行った話をしてくれた。議員たちが面接を重ねると、下士官や下級将校ばかりでなく将軍からも、『何もかもめちゃくちゃだ』と何度も繰り返し聞かされた。それなのに、前後に行われたラムズフェルドとの電話会談では、批判を口にする将軍は一人もいなかった。」
 
なるほどこれでは「出口戦略」どころではない。しかも、これは筆者が繰り返し指摘してきたことだが、ブッシュ大統領やチェイニー副大統領が、このまま撤兵してイラクが内戦状況に陥れば、真の戦争目的であるイラクの石油資源の確保が吹っ飛んでしまうと考えていることは想像にかたくない。石油資源を独占的に奪取するための先行投資であった莫大な戦費の回収さえおぼつかないのなら、何のために、ほとんど全世界を敵に回して「イラク攻撃」(典型的な侵略だ)を敢行したのかということになる。完璧な親米政権を樹立し、それを手始めに中東全域を親米化し、中東からの安定した石油供給を確保するという壮大な計画は絵に描いた餅に帰する。だから抜けられない、のである。


 ◆CIAの秘密収容所問題とFBIの令状なし

放射能測定米国が「イスラム過激組織メンバー」を尋問する収容所をポーランドやルーマニア、アフガニスタンなどに持っていて、北アフリカなどで拘束した容疑者を欧州各国の空港を経由して収容所に送っているとされる疑惑が、昨年持ち上がった。それについて欧州46カ国で構成する人権擁護機関の欧州会議(本部・仏ストラスブール)は2005年12月13日、「疑惑は深まった」とパリで発表し、加盟国に、CIA機の空港使用や領空通過の有無など、真実の徹底糾明に乗り出すよう求めた(2005・12・14付『朝日』)。

この疑惑について欧州連合(EU)欧州議会は、06年初めに臨時の調査委員会を設置する。これは人権擁護機関・欧州会議の要請に応える措置で、欧州議会の昨年12月15日の決議によると、本年早々に委員会の構成や権限を決めるという(2005・12・28付『朝日』)。
 
ブッシュ政権の辞書には「人権」という言葉がない。野獣性の発露と言うべき反人道的な振る舞いは、イラクのアブグレイブ収容所での目を覆いたくなる拷問や、キューバ・グアンタナモ米軍基地の収容所での虐待などでつとに明らかだが、またも同種のボーダーレス犯罪が暴露されつつある。だが、今のところブッシュ政権には秘密収容所を閉鎖する気はない。
 
もう一つ、重要な情報がある。米連邦捜査局(FBI)とエネルギー省が、米主要都市のイスラム教施設近辺などで放射能をひそかに測定していたという。それを報じたのは、米誌『USニューズ・アンド・ワールドリポート』(電子版)で、同誌によると、イスラム教の礼拝所(モスク)やイスラム教徒の住居、倉庫などが測定の対象になった。ワシントンを中心に、ニューヨークやシカゴなど少なくとも6都市で、FBIとエネルギー省の核緊急支援チームが02年初めごろから着手。ワシントンではピーク時は3台の車を使って1日に120カ所で放射能を測ったという(05・12・24付『朝日』)。この放射能測定は令状なしに行なわれた。
 
ブッシュ政権のおえら方は、かくも緊張して日々を過ごしている。彼らは「テロリスト」退治のためには手段を選ばず、むろん法律のことなどまるで念頭にない。始末が悪いのは、こういうことをやるからこそ、対決して粉砕すべき「敵」が無数に生み出されることを少しも理解しようとしないことだ。これでは「対テロ戦争」を無限に続けざるを得ず、彼らに安らかに眠れる夜はついに訪れない。


 ◆ブッシュ大統領による「令状なし盗聴、今後も継続」宣言と国防総省の反戦運動敵視

昨年12月16日、米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ブッシュ大統領が令状なしで米国内と国外の間での通信を盗聴する権限を国家安全保障局(NSA)に秘密裏に与えていたと報じた。大統領が盗聴を認める大統領令に署名したのは2002年で、常時500人、3年間で計数千人に上るという。この報道について当初ホワイトハウスは否定も肯定もしなかった。しかし翌日の17日、ブッシュ大統領は生のラジオ放送を通じて、NSAに令状なしで盗聴することを許可していたことを認め、それを「テロとの戦争にとって重要な道具」と主張し、「憲法と法律の下、大統領として国民の安全と自由を守るためにあらゆることをするよう期待されている」とのべて、盗聴の許可を今後も行なうと明言した(05・12・18付『東京』)。完全に開き直ったのである。
 
だがこれでことが収まるわけはない。上院司法委員会のスペクター委員長(共和党)はラジオ放送に先立つ16日、「問題性は明白」として、公聴会を開く方針を明らかにした(05・12・18付『東京』)。民主党の反発は激しく、共和党からも批判が噴出した。それに対するゴンザレス司法長官の「反論」は「2001年の9・11テロ後に議会が大統領に与えた権限は通信傍受に関するものを含むというのが、われわれの立場だ」というものだった。そういうことなら、確かにブッシュ大統領は「あらゆること」ができる。すさまじい拡大解釈である。ブッシュ政権は無法政権であると言わざるを得ない。
 
この話の結末はこうだ。「米上院は12月24日深夜、テロ対策のために捜査機関の権限を強化した愛国法の中で今月末に期限が切れる時限措置を半年間延長することで合意し、延長案を可決した」(05・12・23付『朝日』)。大統領による盗聴の許可権限は半年間に限って延長された。米議会でのすったもんだについては、引用した記事に詳しいのでそれを読んでほしい。記事には令状なしの盗聴許可に対し「世論の批判が強まっていたため、ブッシュ大統領も一時的に姿勢を軟化させたとみられる」とあるが、「軟化」は緊急避難的な議会対策にすぎない。「米司法省は12月30日、国家安全保障局(NSA)による令状なしの盗聴に関するニューヨーク・タイムズ紙の情報源を探るために、『機密漏洩罪』で捜査を開始したことを複数のメディアに明らかにした」(05・12・31付『東京』)。ブッシュ大統領は開き直っただけでは足りず、反撃に転じた。だが同じ記事にはこうある。「大統領が盗聴を許可していたことは、ホワイトハウスでも極めて少数の側近にしか知らされず、パウエル前国務長官さえ知らなかった。このため、情報は、大統領側近、司法省幹部、議会関係者、実際に任に当たっていたNSA職員から漏洩したとみられる」。情報源が大統領側近や司法省幹部であれば、暴露は政権の内部崩壊の予兆であるかもしれない。ここで次の事態を付け加えるのは当然だろう。
 
「米国家安全保障局(NSA)の国内盗聴問題で、米国民の56%が、テロリストとの関連性が疑われる通信の傍受であっても、事前に裁判所の令状が必要と考えていることが1月7日、AP通信と世論調査会社IPSOSによる世論調査で分かった。ブッシュ政権が『対テロ戦争』の一環として令状なしに国内で電話盗聴や通信傍受を行っている問題では、野党民主党を中心に批判の声が強い。国民の間にも政権の手法に懸念が広がっていることが、調査によって裏付けられた。」(06・1・9付『共同』)
 
上の問題に関連して次の記事も見逃せない。「米国防総省がテロ対策として、イラク派兵への反戦活動や平和運動をする市民団体などの情報を集めてデータベース化していたことが判明。監視対象とされた市民は『行き過ぎだ』と批判、同省が見直しを表明する騒ぎになっている。この問題は米NBCテレビが12月13日に報道したのがきっかけ。同テレビが入手した約400ページの内部文書によると、フロリダ州での小規模な会合を『脅威』と記載するなど、過去10カ月間に全米で約1500件の『疑わしい活動』がリストアップされていたことが分かった。国防総省側は情報活動について、米軍基地へのテロ攻撃などを予防するためと説明。一方で、テロとは明らかに無関係な市民の情報が、データベースから消去されないなど不手際があったことを事実上認めた」(05・12・18付『共 同』)。
 
戦争を続ける国が腐れ果てていくことについて、私たちはベトナム侵略戦争がどれほど米国社会を荒廃させたかを知っている。いま、ブッシュ政権は同じ道をたどっている。


 ◆「依拠した情報は間違っていたが、戦争目的は正しかった」という開き直り

ウクライナ、ブルガリア両国防省は05年12月27日、イラク駐留部隊の撤退が完了したと発表した。またロイター通信によると「イラク駐留英軍をクリスマス慰問したブレア英首相は12月22日、イラク治安部隊の訓練が順調に進んでおり、『一年前と状況はまったく異なる』と述べ、今後6カ月以内に英軍が撤退を開始する可能性を示唆した。首相が来年前半の撤退に言及したのは初めて」(05・12・24付『東京』)。
 
多国籍軍からの離脱が相次ぎ、同軍は崩壊寸前である。オーストラリア軍ばかりかブッシュ大統領にとって頼みの盟友・英軍までも〈撤退モード〉に入った。軍事援助が欲しくて親米姿勢をみせているポーランド軍が本年末までイラク駐留を延長する考えを明らかにしたものの、同じくポチぶりを発揮している日本の自衛隊も英・豪軍の撤退に合わせてやはり〈撤退モード〉に転じている。退くに退けないブッシュ大統領は昨年12月22日、国内世論に押されて、これまで維持してきた駐留米軍を13万8千人規模から約5千人削減する決定を下した(と言っても今は国民議会選挙に備えるという名目で駐留米軍は約16万人に増やされている)。しかしこれも腰の据わった決定とはとうてい言えない。
 
ブッシュ大統領は05年12月14日、イラクによる大量破壊兵器保有に関する「多くの情報が間違っていたということが判明したのは事実である」とのべた。全世界で一番最後に侵略の根拠がウソであったことを認めたのである。そのうえで「その判断に対して大統領としての責任がある」とのべたが、続いて「(だが)サダム・フセインを排除するという判断は正しかった」とのべた。つまり誤った情報に基づいて侵略を始めたが、戦争の目的は正しかったのだから、「イラク攻撃」は誤りではなかったと言いたいのである。おかしな話だ。間違った情報に基づいて侵略を始めたのなら、ただちに侵略を中止して撤兵すべきであって、大量の軍隊を送り込んで占領するなどということはあってはならない。ウソを正直に認めた方が得策と判断したとみられるという新聞の解説があるが、自分の誤った判断によって、いったいどれだけのイラクの人びとを殺傷し、自国軍兵士を死なせたのか。ブッシュ大統領にはまず自分のやることは正しいというアプリオリ(先験的)な確信があって、事実とか論理はどうでもいいらしい。先に紹介したシーモア・M・ハーシュのレポートによると、ブッシュ大統領は9・11の後でテロとの戦いを指揮させるために「神が私を大統領にしたような気がする」と言い、04年に再選を果たしたとき、公には戦争政策が国民の信任を得たと訴えたが、私的な場では再び神意が現れたと語っていたという。
 
こうみてくると、昨年12月18日、全米向けの演説で15日にイラクで実施された国民議会選挙を「中東の中心における立憲民主主義の始まり」と称賛し「この戦争は勝てるだけでなく、勝ちつつある」と語って早期撤退論に反論したことは驚くにはあたらない。だがそうブチ上げたところで、イラクの人びとの反占領・反米軍感情がいささかでも和らぐものではない。多くの人びとの選挙への参加はイラクの人びとが自己決定権を奪還しようとする思いのあらわれであって、平たく言えば、「私たちのことは私たちが決める、とにかく早く出て行ってくれ」ということなのだ。
 
昨年10月に国民投票で承認された新憲法の草案策定過程でブッシュ政権が一番衝撃を受けたことは、北部のクルドの人びとと南部のシーア派の人びとが、それぞれ自治を求め、自分たちが住む土地に眠る石油は自分たちの財産であると明確に主張したことだったのではないかと筆者は思う(そういう報道は見かけなかったが)。酒井啓子氏の「イラク―選挙で浮き彫りになる宗派亀裂」(『世界』06年2月号)にはこうある。「結局、日程通りの憲法制定を目指す米政権のてこ入れもあって、焦点となった地方政府と中央政府の財政資金の配分比率は、憲法に明記されないこととなった。具体的な地方政府設立の手順については、『議会開会から6カ月以内に、議員過半数の賛成で地方自治政府設置に関する法を制定する』として、結論を先送りしたのである」。しかし遅かれ早かれ、この問題は再燃し米国政府を脅かすにちがいない。
 
「冗談ではない。血を流してフセインを倒してやって、民主主義を教えてやったにもかかわらず、何を考えているのだ。わが米国の善意と犠牲の見返りに、石油を提供するのはアタリマエではないか」とブッシュ政権は考えているに違いない。軍事的な恫喝によって石油資源を奪取する気なら、撤兵など夢のまた夢だろう。

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