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<イラク・サマワの自衛隊について>「広報」と「報道」(綿井健陽のチクチクPRESS)
http://www.asyura2.com/0601/war80/msg/903.html
投稿者 gataro 日時 2006 年 5 月 24 日 20:47:37: KbIx4LOvH6Ccw
 

以下は http://blog.so-net.ne.jp/watai/archive/20060524 から転載。

サマワの自衛隊の撤退日程がこのところメディアで取り上げられている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060520-00000106-yom-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060520-00000166-kyodo-soci

「6月撤退開始」「7月中に撤退完了」という「見込み」が多いが、実際のところまだ決まったわけではなく、あくまで「予想」に過ぎない。今年の初めごろにも「撤退プラン」が浮上して、そのときは「3月撤退開始、5月中に完了」だった。それに合わせて僕も原稿を書いて、見込み違いで完全に外してしまった(「DAYS JAPAN」4月号掲載http://www.daysjapan.net/dj/bknm/200604.html)。

ところで防衛庁のHPには、サマワの自衛隊の活動の様子が結構掲載されている。http://www.jda.go.jp/j/iraq/iraq/index.htm

ここには「自衛隊の活動がどれだけイラクで役立っているか」「どれほどイラク人から歓迎されているか」「日本にとってどれだけ重要な自衛隊派遣なのか」が書かれている。

当然だ。「広報・PR」なのだから。防衛庁・自衛隊にとっては、極めて重要な「任務」「お仕事」だ。

しかし、「広報・PR」というのは、基本的には深夜にテレビでやっている「テレビショッピング」の番組と同じシステムだ。「この商品がどれだけお得か」「この商品がどれだけ優れているか」「この商品がどれだけ安いか」。それを宣伝して、たくさんの人にその商品を買ってもらうのがその番組の「任務」だ。

だから、あの「ロデオマシーン」http://www.athenesys.com/shop/rodeo/ をいっぱい買ってもらうために、このマシーンでどれだけやせたか、減量できたかの「体験談」と「実証」が延々と語られる。画面の端には小さく但し書きが書いてあるけど。「これは使用者の感想であり、効能ではありません」。

え〜、これはどうでもいい話だが、あのロデオマシーンにまたがって動く女性タレントを見ると、エロチシズムを感じるのは僕だけかな(いやん綿井さんたら、もうエッチなんだからん)。これでまた女性ファンを減らしたか。すいません「自爆」しました。

話は戻って、テレビショッピング番組では、その商品の「負の側面」、つまり「疑問点」「問題点」「弱点」などが提示されることはない。

なぜか。また繰り返すがそれは「広報・PR」だから。「広報・PR」する側にとっては、商品を売る側にとっては、そんな「負の側面」は余計なことであって必要ないから。売り上げのマイナスになってしまうから。そのテレビ番組をつくる側も、番組中に「これで実際どれだけやせるのか怪しいですよ〜。気をつけてください」などとコメントする司会者がいたら、すぐにクビになるだろう。

さて、防衛庁のHPには以下の記述がある。

「2003年12月の航空自衛隊、2004年1月の陸上自衛隊派遣を皮切りに、日本がイラク人道復興支援活動をはじめて2年余りが経ち、イラクの子どもたちにもようやく笑顔が戻りつつあります。そのわけは…」http://www.jda.go.jp/j/iraq/iraq/infoseek/index.htm「学校や街をきれいにしています」「お医者さんの設備が充実しつつあります」「飲み水をきれいにしました」「物資をたくさん届けています」

アッラーの神とイエス・キリスト様、そのほかの神様・仏様にも誓って僕は断言する。
「サマワに自衛隊が来る前から、サマワの子どもたちは笑顔です」
「フセイン政権の時代だって、イラクの子どもたちは笑顔です」。

子どもでも大人でも、どんな国の人でも、ときどき笑ったり、ときどき泣いたり、ときどき怒ったり、ときどき悲しんだりするのだから、学校の建物がきれいになったから、自衛隊が水を配ったからといって、そこで一瞬子どもたちが笑顔を見せたからといって、自分たちだけがその笑顔を唯一作り出したと錯覚するな。これ以外では笑顔を見せないだろうなどと思い込むな。

そんなに子どもの笑顔に対して、自分たちの活動の正当性を押し付けるなよ。子どもたちの笑顔を利用するなよ。以前別のHPで書いたが、「日本の子どもたちからのプレゼント」といって、イラクの子どもたちのご機嫌を取るな。「日本の一部の大人が勝手にやっていることなんだ」から。http://www1.odn.ne.jp/watai/040406.htm

防衛庁や自衛隊の人たちは「イラクの人たちが手を振ってくれるのを見て感動しました、我々が歓迎されていると思いました」などと、この2年間何度も繰り返し言い続けている。そこにしか頼るものがないからなあ。
http://www.jda.go.jp/j/kisha/2005/10/31a.htm
http://www.jda.go.jp/j/kisha/2005/12/04_haneda.htm

皮肉を込めて言うが、サマワに自衛隊が来てからサマワの子どもたちが笑顔になったというのであれば、これからもずっとその笑顔を維持させるために、PKOならぬ「国際笑顔維持活動」としてサマワに自衛隊をずっと駐留させなさい。「人道復興支援」だったら、まだサマワは全然復興していないので、当分駐留させなさい。「自衛隊には自己完結能力」があるんだったら、英軍と一緒に撤退せずに自分たちだけで撤退させてみよう。http://www.jda.go.jp/j/iraq/iraq/q_a/index.htm

これらはすべてサマワにいる自衛隊員に向けてではなく、「自衛隊に命令する人たち」と「自衛隊応援団」の皆さんに対して言っている。あなた方シビリアンの側がちゃんと決めてくれ。

「広報」と「報道」の違いとは何だろうか。

別にどちらが正しいという問題ではない。どちらも必要だ。「広報は嘘、報道は本当」でもない。その逆だって大いにあるだろう。ただし、広報・PRでは「負の側面」「疑問点」「問題点」などは絶対に扱えない。「批判」や「反論」もまず扱えない。もしあったとしても、必ずそれらに対する「正当性」「安全性」「有効性」だけが強調される。

だからテレビショッピングも防衛庁のHPも同じなんだ。原子力発電だってそうだ。東京電力のHPを見てみよう。「どれだけ安全か」「どれだけ有効か」「どれだけ必要か」が延々と語られる。http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/index-j.html 自民党のHPを見てみよう。小泉政権の広報・PRだけがもちろん掲載されている。http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/120yakusoku/index.html 

ちなみに、僕の映画「リトルバーズ」の公式HPも広報・宣伝だ。http://www.littlebirds.net/

そこには「DVD絶賛発売中」と書いてあるが、これは映画の「広報・宣伝・PR」であって、どんなDVDでも発売されれば同じようなコピーが書いてある。それが本当に「絶賛されているかどうか」は関係がない。ハリウッド映画での「全米大ヒット上映中」「アカデミー賞最有力候補」などのコピーも、公開前からすでにできあがっている。したがってこれらはお店の「営業中」の看板とほぼ同じような意味の表示と考えてよい。

ついでに「広報・宣伝」させてもらうと、DVDの特典映像のなかに「陸上自衛隊@サマワ」という防衛庁・自衛隊関係者が怒るであろう映像を満載しているので見てください。http://www.littlebirds.net/dvd/dvd.html

自民党党員の広報担当者が、朝日新聞の自民党担当記者になることはできない。防衛庁職員が「それでは防衛庁前からサマワの自衛隊の活動についてお伝えします」とテレビの中継リポートはできない。一方で、ジャーナリストの側で「政府広報・PR」に進んで協力するような人もいる。マスメディアも同じで、産経新聞はその典型だ。あの新聞はいまや政府の広報紙でしかない。

そう考えると、「報道」というものがなぜ世の中に、社会にとって必要なのかが見えてくる。当事者が行う「広報・PR」に対して、別の人たちが行う「報道」がやらなければならないことが見えてくる。当事者たちは「報道」はできない。「報道」は当事者以外の別の人でしかできない。

世の中のメディアがみんな当事者たちの「広報」「PR」「ブログ」になったらどうなるか。世の中のメディアがみんな「テレビショッピング」になったらどうなるか。

それを買ってから、全然やせないし、減量できないし、しかも身体の調子がむしろ悪くなった、病気になったと後から文句を言っても遅い。もっといえば、人が死んでからでは遅い。共謀罪が法律として施行されてから、「知らなかった」「こんなはずじゃなかった」と言っても遅い。米国産牛肉が輸入再開されてから「危険部位がやっぱり入ってました」と慌てても遅い。戦争が始まってから、もし米軍の広報発表だけならば、戦争の「正当性」「有効性」「安全性」しか知ることはできなくなってしまう。なぜならば「敵に勝利すること」が最優先であって、「それが事実かどうか」は関係がないから。だから要所要所で嘘をついて軍事作戦を遂行させる。そして自滅する。つい60何年前の日本もそうだった。「大本営発表」がそれ→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%9C%AC%E5%96%B6%E7%99%BA%E8%A1%A8

そう考えると、「報道・言論の自由」がなぜ必要かがよくわかる。

広報は依頼者(クライアント)のお望みどおりに、商品を宣伝・告知する。しかし、報道は「クライアント」の指示通りには宣伝・告知はできない。取材対象の指示通りの報道はできない。いや、してはいけない。ときに批判したり、反論したり、間違いを指摘したりしなければならない。政治家のお望みどおりの番組や記事など、「報道」とはいえない。

だんだんメディアのなかでその「広報」と「報道」の境目・区別がつかなくなってきている。「マスメディアが情報産業になった」とは10年以上前から言われてきたが、いまや「情報産業」ならばまだましだろう。「情報」であればまだいい。本当に視聴者が知りたい情報を伝える産業であれば、それは必要だ。

ところが、だんだん「広報・PR産業」になってきてやしないか。「テレビショッピング」の番組以外に、様々な番組が「テレビショッピング的」になってやしないかというのが、いまの流れだ。フリージャーナリストの岩下俊三氏が以下の指摘をしているのは興味深い。(JCJ「ふえる代理店の持ち込み企画」の項)。http://www.jcj.gr.jp/relay.html

自衛隊の広報活動をやる人たちに対しては、自衛隊の報道をやる別の人たちが必要だ。そうした広報に対抗して報道するには、独自に現場で取材するしか方法はない。マスメディアにとって、サマワの自衛隊報道はこれからが正念場だ。「撤退のときぐらい、せめて最後ぐらいは、何とかサマワから報道したい」と現場の記者たちは思っているのだが、さて実際はどうなることか。

…………………………………………………
綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds〜イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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