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「内でも外でも一触即発」JMM連載 「レバノン〜揺れるモザイク社会」
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投稿者 Kotetu 日時 2006 年 6 月 11 日 06:00:54: 7m23/iYy5J8l2
 

JMM連載 「レバノン〜揺れるモザイク社会」 バックナンバー

連載第18回(2006年6月6日配信)

内でも外でも一触即発

イスラエルとの本格交戦

 5月28日未明。レバノン南部から何者かがミサイル砲を数発、イスラエル北部に

向けて発射した。物的・人的被害は大したことはなかった(兵士1名が負傷)ものの、

この攻撃はイスラエル軍首脳を震撼させた。ミサイルのうち一発が、サファド市近く

の空軍施設に命中したからである。

 それまでレバノン領内から発射されるミサイルと言えば、ゲリラが肩に携行してど

こからでも発射できるRPG?7やカチューシャがほとんどで、射程も短かった。し

かし28日の攻撃には別のミサイルが用いられ、国境から20キロメートルも離れた

重要軍事施設に命中したのである。イスラエル軍は国境に近いキリヤト・シュモナな

ど複数の町の住民に対し、シェルターへ避難するよう勧告。程なく、空軍機や迫撃砲

を用いてレバノン領内のゲリラ拠点を空爆した。

 このイスラエル軍の第一次攻撃で標的になったのは、親シリアのパレスチナ・ゲリ

ラ組織、PFLP?GCの拠点である。首都ベイルートからほんの数キロの地点にあ

るナアメ基地も爆撃に曝された。

 その後、午後に入ると午前中は沈黙を守っていたヒズボッラーが参戦。東はシェバ

ア農地から、西は地中海岸のナークーラに至るまで、国境沿いの広い地域で、ヒズ

ボッラーの迫撃砲とミサイルが火を噴いた。イスラエル側は空軍機による爆撃で応戦。

国連(国連レバノン暫定軍=UNIFIL)の介入で停戦が成立するまで、3時間に

わたり国境をまたぐ激しい砲火の応酬が起き、ヒズボッラー側に死者1名、イスラエ

ル軍にも負傷者が出た。ヒズボッラーがこの交戦中にコマンド部隊をイスラエルに侵

入させ、兵士の拉致を試み(ヒズボッラーは捕虜交換交渉に用いるため、これまでに

もイスラエル軍兵士を何人か拉致している)、ゲリラ3名が戦死したとする報道もあ

る。

 幸いなことに流血は比較的少なく済んだものの、2000年5月のイスラエル軍レ

バノン撤退以降では最大規模の交戦となった。

衝突の伏線

 今回の交戦の伏線はその5日前にあった。その日、ベイルートのホテルで開催され

た「抵抗の文化」と題するシンポジウムで、ナスラッラー・ヒズボッラー議長は「レ

バノン国軍だけでは中東最強のイスラエル軍には太刀打ち出来ない。レバノンにとっ

て最良の国防政策とは、国軍とゲリラが相互補完的に連携することにある」と持論を

展開。内外で高まるヒズボッラーの武装解除要求には応じない姿勢をはっきり示した。

さらに、ゲリラの存在がイスラエルの侵略に対する抑止力になっている、と言うため

に「ヒズボッラーは1万2千発以上のミサイル砲を所蔵している。イスラエルの北部

はあまねくヒズボッラーの攻撃の射程範囲内にある」と宣言した。

 1996年4月、イスラエルは「怒りの葡萄」作戦と銘打ち、レバノン南部を数週

間にわたって大規模に空爆、ヒズボッラー・ゲリラの掃討を図った。しかし神出鬼没

のゲリラは連日違う地点からイスラエル領内にカチューシャ・ロケットの雨を降らせ、

イスラエル北部の住民はシェルター生活を強いられた。ヒズボッラーにはこの「実績」

があるから、ナスラッラーの恫喝は単なるブラフではない。

 ナスラッラーの恫喝の3日後、26日に南部のサイダ市で、イスラーム聖戦(ジハ

ード)の活動家「アブ・ハムザ」兄弟が自動車爆弾で殺害された。「アブ・ハムザ」

が実際にレバノンでどんな活動を行っていたのかはトップ・シークレットで謎に包ま

れているが、パレスチナ・ゲリラ組織の中でもジハードがイラン及びヒズボッラーに

最も近い組織であることは周知の事実。「アブ・ハムザ」暗殺は、ナスラッラーの恫

喝に対するイスラエルの返礼であったと考えるのが自然だろう。

「アブ・ハムザ」の葬儀にはヒズボッラーの南部地区司令官、ナビール・カウークも

出席、暗殺をモサドの仕業と断定し、報復を誓った。

 28日の交戦のきっかけとなった未明のミサイル発射は、こんな状況の中で起きた

のである。

 一連の事件を通じて、レバノン南部ではパレスチナ組織やイスラエルの情報機関が

暗躍していること、レバノン・イスラエル国境はいつ狼煙が上がってもおかしくない

一触即発の状態にあることなどが浮かび上がった。

シーア派地区の暴動

 一触即発はイスラエルとの間だけの話ではない。今のレバノンは国内にも多くの火

種を抱えており、いつどんな原因で大爆発を誘引してもおかしくない、さながら火薬

庫のような状況にある。6月1日夜のシーア派住民の暴動も、まったく突発的に起き

た。

 きっかけはLBCテレビの政治風刺番組がナスラッラー議長を茶化したことだった。

「バス・マート・ワタン(祖国が滅んだら、の意)」という毒々しい名前のこの番組

のウリは、コメディアンたちが大統領や首相、各勢力の指導者など、あらゆる著名な

政治家に扮して皮肉なコメントをすることにある。1日にその槍玉に上がったのが、

イスラエル軍が撤退してもあくまでも武装解除を拒み続けるナスラッラー議長だった。

 この番組を見たベイルート南郊外(通称「ダーヒヤ」、シーア派地区でヒズボッラ

ー関連施設が集中する)の青年たちが、神の如く崇拝する指導者を冒涜された、と憤

激して、街頭に繰り出しタイヤを燃やして高速道路を封鎖するなどの行動に出た。数

千人の群集のうちの一部は暴徒化し、ダーヒヤに程近いキリスト教徒地区やスンニ派

地区に繰り出して、通行人を殴ったり、車両を破損するような出来事もあった。

 ナスラッラー議長は自らマナール・テレビ(ヒズボッラーのテレビ局)で支持者に

自制を要請。LBC側も番組プロデューサーが謝罪のコメントを発表して、とりあえ

ず暴動は収拾された。しかし、攻撃された側のキリスト教徒やスンニ派の間でも、血

気盛んな若者たちの中にはグループで暴徒に挑む動きもあり、国軍の出動が遅れたら

宗派紛争に発展していたかも知れない。また、短時間とは言え、暴徒がベイルートと

空港を結ぶ道路を封鎖したことも、これから本格的な観光シーズンを迎えるレバノン

にとっては不吉極まりない出来事である。

 報道の自由が認められている多様なモザイク社会レバノンでは、古くから自由なメ

ディアが花開いてきた。衛星放送の時代になってアル・ジャジーラ・テレビが台頭す

るまでは、レバノンは中東のメディア・センターだった(アル・ジャジーラなど湾岸

諸国の衛星テレビ各局でも、報道や経営分野でレバノン出身者が占める割合は大き

い)。そんな伝統があるから各派の政治宗教指導者であっても日常的に批判にさらさ

れるし、戯画化されることもある。ナスラッラーにしても、茶化されたのは今回が初

めてというわけではない。

 にも関わらず今回に限って風刺番組が大問題に発展した背景には、LBCの母体、

レバノン軍団(LF)とヒズボッラーの対立がある。

 ヒズボッラーにとっては、かつてイスラエル軍と同盟し、レバノン南部にイスラエ

ル軍を引き入れたLFは、原理原則的に相容れない仇敵である。だからヒズボッラー

所属議員は、シリア軍撤退後にジャアジャアLF司令官が恩赦法改正で保釈されるこ

とになった際にも、最後まで反対した。3月に始まった国民対話円卓会議でジャア

ジャアとナスラッラーは初めて面会、国政に関する対立事項を直接協議することに

なったが、大統領進退問題や、ヒズボッラーの武装解除問題などで両者の溝は一向に

埋まらない。マナール・テレビは今でも1987年のラシード・カラーミ元首相暗殺

事件など、ジャアジャアの旧悪(容疑)を追及し続けている。

 一方のLFも、米国ネオコン政治家の中でも親イスラエル派の筆頭、ボルトン国連

大使を「レバノン解放(シリアからの)に多大の貢献をした」と顕彰するなど、ヒズ

ボッラーから見れば挑発的な行動をとってきた。こんな経緯があったため、LF系列

のLBCによるナスラッラー風刺が、今回の暴発につながったのだ。

 実はLF指導部とLBC経営陣の間では、経営方針をめぐる対立があり、暴動の前

日、5月31日にLBCはLFからの独立を宣言したばかり。しかしヒズボッラー支

持者はそうは受け止めず、LFに対して怒りを爆発させた。

 いや、LFだけではない。ベイルートではキリスト教徒やスンニ派地区各地が攻撃

の対象になった。政治的立場の対立が容易に宗派対立に転化してしまうところに、レ

バノンの怖さがある。

第二ブランメルツ報告書

 今後、6月中旬にはハリーリ暗殺事件国際捜査団のブランメルツ検事が、二度目の

捜査報告書をアナン国連事務総長に提出する予定になっている。

 ブランメルツは隠密捜査に徹しており、新たな報告書の内容に関して、ほとんどリ

ークらしいリークはなされていない。シリアの関与を今度こそ断定するという予測が

あれば、いや、シリアではなくイスラーム原理主義組織の関与を指摘するという憶測

もある。前回同様、今回も固有名詞には触れず曖昧な表現にとどめるのでは、という

見方もある。ブランメルツは6ヶ月間の任期延長を受け入れる意向であるという報道

と照らし合わせると、あるいは最後の憶測の可能性が高いのかもしれない。

 しかし、もし新報告書がシリアの関与を指摘した場合、再びレバノンの国論がまっ

ぷたつとなり、親シリア派と反シリア派の論戦が激化するのは必至の情勢だ。それが

論戦にとどまらず、1日のような暴動や紛争に発展することが無いよう祈るばかりで

ある。

http://www.geocities.jp/beirutreport/lebanon009.html

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