★阿修羅♪ > 戦争82 > 906.html
 ★阿修羅♪
たった2時間のピクニック──ガザの子どもたちの夏休み(ナブルス通信2006.7.25)
http://www.asyura2.com/0601/war82/msg/906.html
投稿者 gataro 日時 2006 年 7 月 25 日 08:41:21: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.onweb.to/palestine/siryo/najwa-2hour12jul06.html から転載。

イスラエルによる6月25日以来の攻撃で、殺されたパレスチナ人は110人を超えました。そのうちの4分の一程度が子どもたちです。ガザ中部のヌセイラート難民キャンプに住む2児の母親であり、お腹に7ヶ月の赤ちゃんがいるナジュワさんが友人に出したメールを許可を得て、配信します。4通のメールの内、3通の抄訳になっています。訳出していない1通には、陣痛が始まっているのに、複数の病院で、電気・必要な医薬品・機器がないために受け入れを断られた妊婦さんのことも書かれていました。何事もない環境でさえ、出産は心身ともにたいへんなストレスを伴うものです。まして、このような状況では、自身、妊娠中のナジュワさんも深刻な不安を感じているようでした。
パレスチナでもレバノンでも子どもたちは夏休みの真っ盛りにいるはずでした。その子どもたちがどんな夏を過ごしているか。パレスチナとレバノンで人命とともに失われていく「子どもたちの時間」。母親の目を通して伝えられるレポートです。[ナブルス通信]

 

たった2時間のピクニック
──ガザの子どもたちの夏休み

ナジュワ S.
2006年7月6日〜12日

2hour-picnic of the children in Gaza
Najwa S.
6〜12 Jul. 2006

 

友人たちへ

7月6日

ガザはいったいどうなっているのか、みなさん、いろいろと思いをめぐらせ、心配してくださっていることでしょう。でも、ガザに住むパレスチナの人たちが体験していることは、通常の意味での想像力の及ばないところにあるように思います。

「地獄のような生活」という言葉はしょっちゅう耳にしますが、私たちは今、本物の地獄を体験しています。私たちイスラーム教徒にとって、地獄とはどこか高みにあって、アッラーが不信心者・悪人たちを罰するところでした。でも、その地獄が今、天空から私たちの住むガザに移ってきたのです。

この21世紀の時代、夏の最も暑い盛りに、私たちは、水も電気もガソリンも医薬品も食べ物もない生活を強いられています。朝から晩まで、砲撃と超音速機の衝撃波によるすさまじい轟音にさらされ、来る日も来る日も「ガザ侵攻」のニュースが重くのしかかってきます。自分の命が、あるいは、大切な人たちの命が、いつなんどき失われるかもしれないという不安と恐怖……。

息子のムスタファ(もうすぐ6歳になります)は、子ども向けの番組を見る気をすっかりなくしてしまいました。見るのはニュースだけ。そして、子どもらしい意見を述べ、「私たちとイスラエルの間の問題」を終わらせるための自分なりの案をあれこれと出してきます。

アーメド(もうすぐ5歳になります)は、外に出てほかの子たちと遊ぶのを拒否するようになりました。衝撃波の轟音が聞こえると、体をこわばらせて何も言わなくなります。泣いたり叫んだりすることはありません。アーメドが表すのは沈黙だけ。アーメドの感情は、いかなる表現も超えたものなのでしょう。

7月9日

息子たちからの果てしない要求──泣いたり、「いい子にしてるって約束するから」と何度も繰り返したり──に負けて、私たちはふたりを海に連れていくことにしました。危険を冒してでも、と心を決めたのです。

ふたりがどんなに喜んだか、想像できるでしょうか? 喜びを言葉で表すことができずに、ふたりは興奮のあまりひたすら大声をあげていました。これほど喜んでいる子どもたちを見て、私もとても幸せでした。海岸で何か起こるかもしれないということは、考えないことにしました。もし死ぬのなら、幸せな時に死のう──そう自分に言い聞かせました。

今回は「2時間」というごく短いピクニックです。いつもなら、この時期には、朝早くに出かけて夜遅くまで海で過ごすのが常でしたから、子どもたちも最初は不満でいっぱいでした。でも、もちろん、どうしようもないことは、ふたりにもよくわかっています。

海岸が見えてくると、ふたりは、全世界が自分たちのものだという顔になり、わずかな時間も無駄にするまいと、車が止まるより早くドアを開けて飛び降りました。夢中で水際を走り、水を跳ね散らし、砂遊びをし……ふたりはすばらしい夢の中にいて、その夢をしっかりつかみ、堅く握りしめていました。

ふたりはクラゲを恐がるどころか、追いかけて捕まえさえしました。ふたりにとって重要なのは、この時間を充分に楽しみ遊びつくすこと。私にとっても、このふたりの姿を見ているのは、もう本当に最高にすばらしいことでした。まるで、普通の子どもの生活に戻ったような息子たち。本来なら、日々、こういう気持ちを感じているはずなのに……。

時間はあっというまに過ぎていきました。迎えのタクシーが来るまで30分ほどという時になって、不意に、水平線にイスラエル軍の巡洋艦が現れました。夫と私は巡洋艦に注意を奪われて、子どもたちが同じように目を凝らし耳をすましているのに気づきそこないました。イスラエル軍の巡洋艦は、「普通の生活」という夢を中断せよというしるし、現実の生活に戻らなければならないというサインです。

ムスタファが不意に、真っ青な顔でゲートに続く階段に向けて走り出しました。「戻って!」という私の叫びにも反応しません。「あれは撃たないから。大丈夫だから」という言葉にも。ムスタファは、浜辺のいっさいを忘れ去り、ただひたすら安全な場所へ、イスラエル軍の銃火が届かないところへ逃げようとしていたのです。一方、アーメドはいつものように黙っていました。ひとことも発しませんでした。*1

私たちは急いで荷物をかき集め、沈黙の淵に沈んだアーメドとともに、ムスタファのあとに続きました。タクシーが来ると、即座に海岸を離れました。

教えてください。ムスタファの心理を解きほぐし、あの子に自信を取り戻させることのできる人がいるでしょうか?アーメドに、自分の恐怖を外に表出できるようにさせられる人が、果たしているでしょうか?


7月12日

心理学者は、大人たち、親たちに、子どもにはTVの暴力シーンを見せないようにとアドバイスします。暴力シーンは、子どもに悪影響を与え、情緒不安定で暴力的な人間を生み出す、と。また、ガザ以外の場所にいる友人たちからも、子どもたちがそうしたシーンを見て気分的に不安定になったり、おねしょをしたり、悪夢を見たり、といった話も聞きます。でも、そんな時、私は笑みを浮かべながら、心の中でこう言うのです。それじゃ、ガザの子どもたちはいったいどうなるっていうの?

ここガザでは、子どもたちが目にしているのは現実、リアルなことなのです。死体、バラバラになった体の断片、血──子どもたちはこうしたものに取り巻かれています。夢の中でさえも。

ほかの世界の子どもたちとは異なって、ガザの子どもたちは、特異な夏を過ごしています。1日は、聴覚をとぎすますことから始まります。砲撃や衝撃波の轟音を聞き取ったり、上空で聞こえる音がF16戦闘機なのかアパッチ攻撃ヘリなのかを判断したり。続いての大事な行動は、シャヒード*2の葬列についていって、自分たちの目でシャヒードを見ること。死と死の匂いは、ガザの子どもたちの世界できわめて重要なイメージを形作っています。死体はいつでも見ることができます。

そして、死を「体験する」こと。これは、子どもたちの1日のうちで、いつでも起こりうることです。予告もなく、どんなふうに起こるのか考えたりもしていない時に、死はやってきます。ほかの子どもたちと遊んでいる時に。母親に「おばあちゃんのところに行くから、ついてきていいわよ」と言われ、幸せでいっぱいになっているさなかに。夜、家族と一緒にお茶を飲みながら、こんないい家族がいて、うちは幸運だね、と話している時にも。

どなたか教えてください。こんな子どもたちには、いったいどんな未来が待っているのでしょう!?

ナジュワ

 


--------------------------------------------------------------------------------

原文(全文):http://www.onweb.to/palestine/siryo/najwa-2hour_en06jul.html

翻訳:山田和子

[編集者註]
*1……6月8日、ガザの海岸にピクニックに来ていた人々に向けて、イスラエルの軍艦は砲弾を発射し、一家7人が惨殺されるということが起こった。このとき、生き残って家族の名を泣き叫ぶ娘フーダさんの映像はパレスチナ内外のメディアで広く何度も流された。(この事件については「ガザでのパレスチナ人殺りくが止まらない!」に ― http://www.onweb.to/palestine/siryo/sami-huda_jun06.html

*2……「シャヒード」とはアラビア語で「殉じて死んだ者」を指す。パレスチナでは自ら武器を取って殺された者でなくとも、イスラエルによって殺された者全員をそう呼ぶ。英訳の martyr(殉教者)とは必ずしも一致しない。


--------------------------------------------------------------------------------

◇レバノンでも民間人が次々と犠牲になっている
新聞では数でしか伝えられないレバノンでの被害が実際にはどういうふうになっているかを伝える記事が訳されています。最近のものから、上はガーディアン紙(英国)、下はインデペンデント紙(英国)のロバート・フィスク記者の報告によるものを。どちらにも子どもたちが登場します。
・「避難する途中でミサイルを食らった白いヴァン(レバノン南部)」
  http://ch.kitaguni.tv/u/917/todays_news_from_uk/0000376405.html

・「人形のように横たわる子供:現在のレバノン戦争のシンボル」
  http://heartland.geocities.jp/fisktranslation/textbn/200706.html


☆イスラエル政府にたいして、声を届けてください。日本政府や米国政府にイスラエルの攻撃を止めるように伝えてください。

イスラエルには「Stop killing people!」の一言でも。
届け先は:http://palestine-heiwa.org/misc/kougi.html

(編集責任:ナブルス通信―http://www.onweb.to/palestine/siryo/otoros/contact.html) 

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ HOME > 戦争82掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。