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教育基本法改正 エリート校あえて反対 (東京新聞)
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投稿者 彗星 日時 2006 年 11 月 03 日 08:56:14: HZN1pv7x5vK0M
 

特報
2006.11.03

教育基本法改正 エリート校あえて反対
評価で締め付け 委縮する教員

 安倍政権の最大課題である教育基本法「改正」は地方公聴会の日程も決まり、成立に向け着々と歩みを進めている。現場、とりわけ公立校の校長、教職員の大半が沈黙する中、私立進学校の校長二人が「こちら特報部」の取材に対し、実名で異議を申し立てた。果たして、こうした声が国会審議で十分反映されてきたのか。広島学院の李聖一、麻布学園の氷上信廣両校長に話を聞いた。 (片山夏子)

 国会での攻防の傍らで、学校現場では自殺が相次いでいる。いじめに遭った生徒のみならず、教員たちもだ。「必修」問題で高校にも激震が走った。もはや学校は「戦場」のようだ。

 この現実について、麻布学園の氷上氏は「学力は子どもの可能性の一つ。勉強のできない子が、行き場を失い自殺を図ったり、不登校になる気持ちはまともだと思う。その気持ちに寄り添えない教育現場の方がおかしい」と切り出した。

 「改正」派はこうした荒廃を「少年犯罪の増加」で語ったり、「規範意識の低下」に原因を求め、それを改正の根拠としてきた。

 しかし、広島学院の李氏はこう反論する。「少年犯罪は本当に増加しているのか。規範意識の低下や犯罪も子どもたちが大切にされてこなかったつけだ。それに教育だけで変わるものではない。社会情勢や家庭崩壊など根深い背景がある」

 「改正」にはシステムと理念の両面がある。柱は基本法一〇条だ。現行の「教育は(中略)国民全体に対し直接に責任を負って行われる」が、改正後は「国と地方公共団体の適切な役割分担」と国の介入を認める形に転換される。

 李氏は「現行法は教育の使命は人格形成という崇高な理念を掲げ、国家権力も政治権力も介入させないと誓った。だが、改定後はいくらでも国が介入できるようになる」と指摘する。

■人格の完成がないがしろに

 そんな「使命」が教育の現在の荒廃を招いた、という逆説も強調される。しかし、李氏は「むしろ、基本法の理念を追求しなかったことが現状につながっている」と分析している。

 「六十年前、日本は焦土と化した。そこで、崇高な理念を掲げた。だが、次第に経済界の要求が先行し、人格の完成という目標はないがしろにされた」

 理念の変ぼうと、現場教師への上からの指導強化は教師自身をも追い込んでいると氷上氏は懸念する。

■教職の魅力が失われていく

 「現場が悪いとたたかれ、評価で締め付けられ、教員は委縮する一方。いじめだ、少年犯罪だ、さあ解決策を出せと言われれば、上からのマニュアルに従うしかない。生徒と苦しみ悩む自由すら失われていく」

 その結果、氷上氏は「生徒の人間的な成長の手助けをするという教育本来の目的ができなくなり、教職の魅力が失われる。魅力がないのになり手が来るのだろうか」と素朴に問う。「これは進学校か否か、ということにはかかわらない。教育界全体の危機だ」

 李氏は自身の危機感をこう表現した。「どのような拘束力を持って国が介入してくるのか。心情の自由にも抵触してくるのではないか。その程度によっては、私は教職を辞めなくてはいけないかもしれない」

 「改正」の具体的な中身は端的にいえば、学校への市場原理の導入と「愛国心」や「徳目」の強調といった二本柱がある。

 前者については、両校ともエリート校だ。さらに私学関係者の中には、改正案に「私立学校」の項目が新設されたことを「私立も公の性格が認められた。私学への助成は根拠を得た」と喜ぶ声があるという。

■私立の独自性なくす恐れも

 だが、氷上氏は「国の決めた指導に沿っているか、全国学力調査で結果を出しているかで学校が序列化され、助成金も決まるのだろう。そうなれば、私立は独自性という存立根拠を失う」と先行きを懸念する。

 「これまで公立は私立に比べて市場競争が少なかった分、多様な子どもたちの居場所があった。市場競争にさらされた公立校は事実上崩壊し、私立は生徒確保のため数字を上げるのに必死になる。学力偏重が増すことで、子どもたちは行き場を失っていく。教育の多様性より、すべてが数字に置き換えられていく。ますます、教育も子どもたちも荒廃するだけではないか」

 さらに「愛国心」や「徳目」については、両氏とも強い反発を隠さない。

 李氏は愛国心について、「愛することは無意識なもの。愛せと言われて愛せるものではない」と話す。

 「徳目」については「親孝行しなさい」と言われたからといって、生徒が心から従うことはないという。「自分の体験の中から学んでいくこと。教え込んで分かるものではない。そんなことをしても生徒は聞く耳を持たないだろう」

 「態度を養う」という表現も乱立しているが、「態度チェックが行われるのだろうが、それに意味があるのか。無理やり言うことを聞かせようとしたら、それはもう教育ではない」

 氷上氏も「国や社会のために『役立つ』人をつくる狙いで、外から強制することでは子どもには何も響かない。大人の言うことを聞かなくなるだけ。教育で本来、最も大切な人間性は育たない」と言い切る。

 「だいたい、国を愛せという前に愛するに足る国なのか、誇りに思える国なのか、を問わずして押しつけても無意味ではないか」

 では、なぜいま、愛国心教育が持ち出されてきたのだろうか。それは「荒廃」への救済策になるのか。

 その点について、李氏はこう語る。「個人を大切にしろ、といった戦後教育の反動が出ているのだろう。でも、これまで本当に個人を大切にしてきたか。してこなかったからこそ、少年犯罪や規範意識の低下が起きているのではないか」

 二人はこれまで教育基本法「改正」への疑問を保護者や生徒たちにも訴えてきた。共感する教育者は少なくない。しかし、現実の政治ではその流れは加速こそすれ、弱まらない。

■生徒指導で余裕ない公立  

 氷上氏は「国家管理が一気に強まるという危機感は一般的にはある。が、公立では物言えぬ雰囲気で、私立では数字を上げるのにきゅうきゅうとしている。漠然と不安を感じていても声が上がってこない」とみる。

 李氏も知り合いの公立校の校長に「おまえのところは上ずみ(エリート)だけだからいいよな」としばしば言われるという。その後に「評価や締め付けが厳しくなり、いまは生徒指導で公立は手いっぱいだ」といった愚痴が続く。そんな状況をどうするか。その答えは李氏にもみつからない。ただ、こう確信する。

 「基本法や憲法は六十年たった現在、読んでも新しい。こんな平和憲法を持っているところはない。憲法や基本法に書いてあることを実現できたら、これほど新鮮なことはない」

 「改正」の理由に「戦後教育は失敗」という言葉を聞く。李氏はそれをこう解釈している。「日本はせっかく上った高みから、現状に合わせて理念を引きずり降ろしてしまうのか」

<広島学院> 広島市にあるカトリックの修道会イエズス会を母体とする中高一貫の男子校。生徒数は1学年188人。李聖一校長は在日韓国人3世で社会科の教諭。2003年4月から現職。

<麻布学園> 東京都港区にある中高一貫の男子校。生徒数は1学年300人。制服や校則のない自主・自立の校風を掲げる。氷上信廣校長は、倫理・社会を中心に教え、2003年4月から現職。

<デスクメモ>

 必修問題の唐突さが引っかかる。現状で長い間やってきた。歴史は現代まではこなせず、厳密には「未履修」が常だ。私学の独自性は学習指導要領を「軽視」して成り立ってきた。この騒ぎは結局、お上のカリキュラムを無視するな、という狙いでは。教育基本法「改正」前夜、どうもタイミングがよすぎる。 (牧)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20061103/mng_____tokuho__000.shtml

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