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『核』へ誘導、『個人的発言』という詭弁―東京新聞
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 11 月 11 日 11:59:47: 2nLReFHhGZ7P6
 

『個人的発言』という詭弁
『核』へ誘導

 反戦ビラで逮捕、起訴される時代、政府与党の幹部たちが思いがけず「言論の自由」を訴え始めた。核兵器保有論議がその代表だ。保有を否定すべき役職の人が「個人的発言」を盾に論議をあおる。これも「言論の自由」なのか。長崎市の本島等元市長(84)は現職当時、天皇の戦争責任発言で「個人的発言」の注釈を拒み、銃弾を浴びた。政治家は言葉を操るのが仕事だが、その責任がかすんでいる。

 安倍政権が誕生して早々から、与党幹部、閣僚が政府の見解に反する発言を連発し、それを首相らが「個人的な発言」と容認する風潮が濃くなっている。

 「政府与党幹部が個人的な発言と断るのは、後で問題になるのを防ぐためだろう。だが、発言の内容自体は安倍首相の意を体している。親分の気持ちが分かる人が、われ先に露払いを務めているようにみえる」

 本島氏は皮肉を込めつつ現状をこう評した。

 本島氏はかつて自分の発言を「個人的な発言」というオブラートで包むことを拒んで、信念を貫いた。

 「天皇の戦争責任はあると、私は思います」

 昭和天皇の病気で自粛ムードが漂う一九八八年十二月、市議会で発したこの一言がきっかけとなり、九〇年一月、右翼団体構成員に市庁舎前で胸を銃撃され、生死のふちをさまよった。

 襲われる前、右翼から「発言は個人的なものか、市長としての公的なものか」と問われたことがあったという。「個人的な発言だったと世間に釈明すれば許してやるという脅しだった」が、屈しなかった。

 「市議会での発言はそもそも公的なものだ。それを個人的と言うわけにはいかない。(脅しは)怖いと思ったが、正しいと信じて発言したことを撤回すれば、すべての人の信頼を失ってしまう」。それは「政治家・本島等」の死を意味してしまうと考えた。

 本島氏は「政治家にも公私の区別はある。個人的な発言もあれば、公的な発言もある」と言う。さらに「政治家には発言の揚げ足を取られないよう、うまく逃げる技術や厚かましさも必要だ」とも話す。

 しかし、同時に「仲間内や後援会で話をするのならともかく、意図をもってなされた発言は公的な性格を強く帯びる。ましてや、閣僚や与党の幹部がちゃんとした場所で話すことは、投げやりな発言ではあり得ない」と強調する。

 安倍政権で乱発される個人的発言の裏にある「意図」とはどのようなものか。

 本島氏は「憲法と教育基本法を変えようとしている安倍首相の政治姿勢をみれば分かる」と指摘する。さらに「核武装をやるのがよいという方向に導こうという意図がみえる」という。

 「いきなり核武装を持ち出せば、世論が猛反発するので最初は小出しに発言する。それが受け入れられなければ、個人的な発言だったで済まされるし、もし受け入れられれば、後になって時代を先取りした発言として評価される」

 政界から退いた本島氏だが、引退後も精力的に発言を続ける。論文「広島よ、おごるなかれ」では、日本人自らの加害責任を考えずに戦争責任は追及できないとの主張を展開している。

 現在、この「個人的発言」で焦点になっているのは自民党の麻生太郎外相、中川昭一政調会長らによる核保有論議の容認論だ。安倍首相は「非核三原則を守っていくことは閣僚も党の幹部も一致」と主張しつつ、「それ以外の議論を封殺はできない」と黙認した。

 他にも先月二十五日、下村博文官房副長官が従軍慰安婦への反省を盛り込んだ「河野談話」の見直しに言及。加えて、同副長官は今月五日にも政府が進めている保育所の待機児童解消策に関連し、女性は無理に働かず、家で育児をすればよいという趣旨で発言したが、いずれも「個人的発言」の形で不問に付された。

■閣僚の「舌禍」 かつては引責

 しかし、過去には個人的な発言でも、閣僚が問題発言で更迭、辞任に至った事例は数多くある(別表)。

 「日本だけが悪いわけではない」と侵略戦争の責任を否定した桜井新環境庁長官、「南京大虐殺はでっちあげ」と言った永野茂門法相などは即座に発言を撤回、謝罪したが、引責させられた。

 主張を貫いたケースもある。「日韓併合は韓国側にも責任がある」と月刊誌で主張した藤尾正行文相は「辞任することは主張を撤回することになる」と辞表提出を拒否し罷免された。中西啓介・防衛庁長官も改憲発言で辞任はしたが、発言は撤回しなかった。

 最近では小泉前首相が靖国神社参拝について「思想および良心の自由」で反対論をかわした。これも「個人的発言」と類似している。

 政治家の「個人」の裁量は広がっているが、政治評論家の本澤二郎氏は「国会議員は国民の代表。当然、公人で個人の意見というのはあり得ない」と話す。

 核武装論についても「公人が核武装論を議論するべしと述べ、首相も容認しているということは日本政府の意向と世界では受けとめられる。個人の問題といっても、国際社会では通らない」と批判する。

 前参院議員の平野貞夫氏も「政治家が政治について話す場合、これは公的、これは個人の発言というのは成り立たない。発言には常に責任が発生する。(現在の『個人の責任論』は)『はぐらかし』の小泉劇場型政治の悪い影響であり、詭弁(きべん)以外の何物でもない」と憂う。

 一方「政治家の日本語 ずらす・ぼかす・かわす」の著書がある信州大学の都築勉教授(政治学)は「政治家がいう『個人的発言』は公的発言と私的発言の中間にある」と定義する。

 「昔、社会党の西尾末広書記長(当時副総理)が政治献金に絡み『書記長個人として』と答弁し、書記長なのか個人なのかと問題になった。『公的』として話すと問題になるが、私的な発言でもない場合『個人的に』という前置きが使われている。ただ、個人の自由とは国民が自分の権利を守るためのせりふで、権力者が口にする言葉なのか」

■議論の狙いは「刷り込みだ」

 では、政府与党幹部は好きに発言できないのか。本澤氏は「できる」としたうえで、次のような条件を付ける。「自民党幹部が核武装について発言するのであれば『残念ながら自民党の非核三原則と自分の考えは相いれない』として、党から離れて発言すべきだ」

 平野氏は「非核三原則を守る」という前提で、議論の必要性を認めることは論理矛盾だ、と喝破する。

 「本来、非核三原則を守るのなら核兵器保有論を議論する必要はない。三原則は守るが議論しようというのは、サブリミナル(刷り込み)効果を狙った悪質なやり方だ」。そのうえで、安倍首相の黙認を積極的な「役割分担」とみる。

 ただ、政府与党のそんな作戦に大きな反発が起きていないのも事実だ。こうした社会の反応に前出の本島氏はこう警鐘を鳴らす。

 「日本人は自分の言葉に責任を負わず、むしろ他人の意見になびく軽さと付和雷同性がある。それこそが太平洋戦争の原因になったのではなかったのか」

◆最近の「舌禍」による閣僚の辞任例

(【 】は担当)

 1986・9 藤尾正行【文部】 日韓併合は韓国側にも責任と発言。罷免

 93・12 中西啓介【防衛】 改憲の必要性強調

 94・5 永野茂門【法務】 南京大虐殺を否定

 94・8 桜井 新【環境】 侵略戦争を否定

 95・11 江藤隆美【総務】 植民地政策を評価

2000・2 越智通雄【金融再生】 金融関係者に「手心」発言

<本島等さん 元長崎市長> もとしま・ひとし 1922年2月、長崎・五島列島の新上五島町生まれ。隠れキリシタンの子孫だったことから、戦時中はスパイ容疑をかけられた。京大卒業後、長崎市内の高校で教える。59年から県議を5期務め、79年に長崎市長に初当選。5期目に挑んだ95年の市長選で敗れ、引退した。ドイツ功労勲章一等功労十字章などを受けている。

<デスクメモ> 「憲政の神様」と呼ばれる尾崎行雄は戦前、財閥批判の演説で文相を辞め、翼賛選挙批判では不敬罪に問われた。一時、「愕堂(がくどう)」を名乗ったが「道理が引っ込む時勢を愕(おどろ)く」と皮肉っての命名とか。いまも国会近くに立像があるが「言論の自由」の現在形にさぞ「愕いて」いるだろう。(牧)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20061111/mng_____tokuho__000.shtml

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