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[AML 9755] 反戦の視点 その36/戦争を拡大する米ブッシュ政権とNATO列強、そして改憲宰相……
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投稿者 Kotetu 日時 2006 年 10 月 03 日 22:27:17: yWKbgBUfNLcrc
 

[AML 9755] 反戦の視点 その36
加賀谷いそみ QZF01055 at nifty.ne.jp
2006年 10月 3日 (火) 09:21:56 JST

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(転載歓迎)

反戦の視点 その36

 戦争を拡大する米ブッシュ政権とNATO列強、そして改憲宰相……

               井上澄夫(市民の意見30の会・東京)


イラクでの米国の勝利?

 9月30日付『朝日新聞』によれば、米『ワシントン・ポスト』のボブ・ウ
 ッドワード記者が近く出版する著書で、イラクでの米英など駐留軍に対する
 攻撃は、実は15分に1回以上の頻度で、週800〜900回発生している
 が、ブッシュ政権はそれを隠していると暴露していることが分かった。同氏
 は、米情報機関はイラクの状況が来年にはさらに悪化すると予測している、
 とも明かした。だがブッシュ大統領は与党共和党の幹部らに対して「ローラ
 (夫人)と(飼い犬の)バーニーしか私を支持しなくても、(イラクから)
 撤退しない」と述べたという。同記者によると、大統領とチェイニー副大統
 領はしばしば会い、キッシンジャー元国務長官から「有効な出口戦略は勝利
 しかない」といった助言を受けているという。

 ありそうな話である。久々にキッシンジャーの名を目にしたが、ウッドワー
 ドの証言が事実なら、要するに米国の支配層は無惨に敗退したベトナム侵略
 戦争から何も学ばず、イラクでも同じ犯罪を繰り返しているということだ。
 有効な出口戦略が勝利だと? キッシンジャーの言う勝利とは何だろうか。
 おそらく軍事的な勝利だろう。だがそれが夢でさえあり得ないことは、ブッ
 シュ政権の閣僚たちもよくよく分かっているにちがいない。ブッシュの「つ
 れあいと飼い犬しか私を支持しなくても」という言葉は、彼が事態の政治的
 解決や収拾を完全に放棄していることを示している。実際彼は、自分の任期
 中の事態の解決などとっくに放棄しているから、「有効な出口」としての軍
 事的「勝利」を追求するふりをして、共和党選出の次期大統領に後事を託す
 つもりなのだ。バグダッド政権と自分たち(米軍)を守ることだけに汲々と
 せざるを得ないイラク駐留米軍の疲れ果てた兵士たちは、「フセインを倒し
 て米国と世界は安全になった」というブッシュの言をどのような思いで聞い
 ているのだろうか。
ブッシュの「イラク政策」が悲惨な結末しか迎えないことは疑いの余地がな
い。しかしあえて、再度、問おう。イラクにおける「米国の勝利」とは何か?


戦争を広げるブッシュ政権

 前回(「反戦の視点 その35」)触れた、米国家情報長官の下で今年4月
 にまとめられた機密報告書「国際テロリズムの動向」についてだが、ブッシ
 ュ政権は機密指定を解除し、一部を公表した。『ニューヨーク・タイムズ』
 にすっぱ抜かれて、そうせざるを得なくなったのである。9月27日付『毎
 日新聞』から引用する。
 〈報告書はイラク戦争がイスラム過激派の活動を活発化させ、テロのネット
 ワークを拡大させる結果となったと結論付けている。報告書は国家情報評価
 (NIE)と呼ばれる高度の機密文書。全体は30ページだが、4ページに
 要約されて発表された。報告書は米国が対テロ戦争で撲滅を目指している国
 際テロ組織アルカイダについて「米国のテロ対策によりアルカイダは指導部
 が打撃を受け、組織は混乱した」と説明しながらも「単一のテロ組織として
 は、米本土や海外の米国の権益に対する最大の脅威であり続けている」と分
 析している。
 その上で報告書は「イラクでの『聖戦』は新世代のテロ指導者や活動家を作
 り上げている」「反米を掲げる新たな過激派が出現する可能性が高まってい
 る」と指摘。イラクでの紛争が「米国に対する深い憎悪を生み、世界規模の
 聖戦の動きを支援する勢力を助長させている」と警告している。ブッシュ大
 統領は9月26日「報道でイラク戦争開戦は誤りだったと結論付ける人も出
 てくる。それには我慢ならない。自分自身で結論を出してほしい」と述べた。
 〉

 この記事の最後のくだりは噴飯ものである。自分自身で結論を出してほしい?
  ブッシュ自身にもう打つ手がないから、『ニューヨーク・タイムズ』よ、
 おまえがなんとかしろということか。これまたブッシュ自身のパニック状態
 を示している。

 9月28日付米『アンガス・レイド・グローバル・モニター』の記事を抄訳
 する。
 〈ハリス・インターラクティブ(世論調査会社)の世論調査によれば、米国
 政府による連合国軍(多国籍軍)の指揮が適切であったと信じる米国の成人
 は少なくなった。回答者のわずか20%だけが米国のイラク政策が成功する
 と確信しており、この2年間で9ポイント下がった。フセイン政権との連合
 国軍の戦いは2003年3月に始まった。その軍事作戦のなかで少なくとも
 2,708人の兵士が死に、20,400人以上が負傷した。〉

 次は同日付『ワシントン・ポスト』から。
 〈米国務省と非政府系調査機関による新たな世論調査によると、大多数のイ
 ラク人が米軍が指揮する軍隊の即時撤退を求めている。彼らは、それら軍隊
 の迅速な出国がイラクをもっと安全にし、宗派間の暴力を減らすとのべてい
 る。本紙が得た国務省の調査結果によれば、たとえばバグダッドでは、調査
 された住民のうち4分の3が、米軍およびその他の軍隊がイラクを離れるな
 ら、より安全と感じるようになるとのべ、65%が即時撤退に賛成している。
もう一つの世論調査、米メリーランド大学の調査機関「国際政策傾向プログ
ラム」が実施した調査によると、質問を受けたイラク人のうち71%が、イ
ラク政府が外国軍隊に対し一年以内の出国を求めるべきと考えていることを
明らかにしている。しかしそれより多くのイラク人が、米国政府はそのよう
なイラク政府の要請を拒否するだろうと信じていて、調査された人びとのう
ち77%が米国はイラクに恒久的な軍事基地を維持するつもりだとのべてい
る。
この生々しい調査結果は、米国が率いる諸国軍が2003年にイラクを侵略
して以来、諸外国軍隊に対する最も否定的なものであり、マリキ首相の政府
が表明している見解と鋭い対称を見せている。イラクのタラバニ大統領は先
週国連で、イラクの治安部隊がテロを終わらせ安定と安全を維持できるよう
になるまで連合国軍はイラクに残るべきだとのべ、そうなったときにのみ、
イラクからの多国籍軍の撤退がテイムテーブルにのぼると語った。しかし、
最近の諸世論調査はイラクのほぼ全地域のイラク人が、タラバニの見解に同
意していないことを示している。〉

 ブッシュに出口はある。イラクの人びとの要求を受け入れ、さっさと撤退す
 ればいいのだ。しかしそれでは敗北したことになるし、特に11月の中間選
 挙前は具合が悪い。しかも全面撤退となれば、イラクの地下に眠る膨大な石
 油を確保できなくなるし(2003年3月のイラク侵略を空爆で始めたとき、
 せっかく石油省だけは無傷で温存したのに!)、中東全域を支配するための
 多数の空軍基地をイラクに置くことができなくなる。だからラムズフェルド
 米国防長官は、イラク駐留米軍の一部の帰国を先延ばしにし、別の部隊の派
 遣を前倒しする。つまり米軍は事実上、増強される。


広がる戦争、広がる抵抗

 アフガン・イラク反戦運動は維持されているが、広がっているだろうか。戦
 争は、残念ながら確実に広がっている。
 〈北大西洋条約機構(NATO)はスロベニア南部ポルトロジュで9月28
 日、非公式国防相理事会を開き、アフガニスタンで約2万人の国際治安支援
 部隊(ISAF)を指揮しているNATOが数週間以内に米軍からアフガン
 東部の指揮権を引き継ぐことを承認した。ロイター通信などが伝えた。20
 01年12月に派遣されて以来、展開地域を順次拡大してきたISAFが約
 5年がかりでアフガン全土を指揮下に入れることになる。
 アフガンでは東部や南部を中心に旧政権タリバン残存勢力が攻勢を強化して
 いる。タリバンと国際テロ組織アルカイダを標的とした米軍主導の「不朽の
 自由」作戦に参加している米兵約2万人のうち1万人をISAFに繰り入れ
 る予定で、NATOのアフガン駐留規模は約3万人となる。残りの米兵は同
 作戦を続ける。NATOは今年7月末、米軍からアフガン南部6州の指揮権
 を移譲され、全土の約75%を指揮下に置いたが、その後、自爆テロなどが
 続発。今年に入ってからの米軍、ISAFの死者は計100人を超えた。〉
 (9月29日付『共同』)

上の動きは、米軍がアフガンへの軍事介入を止めるということではあるまい。
イラクで動きがとれなくなっているから、とりあえずアフガンはNATO主
力でいいということにすぎないだろう。だが「ISAFがアフガン全土を指
揮下に入れる」ことは何を意味するのか。
 冷戦が終わったとき、NATOは存在理由を失った。しかしワルシャワ条約
 機構のように解散しなかった。逆に「非5条任務」(注参照)を設定してバ
 ルカン半島に出兵した。それはおそらく中東の資源をにらんでバルカン半島
 を中東への出口、回廊とするためだっただろう。そう考えれば、アフガンで
 の「対テロ戦争」で主導権を握ることも、レバノンへの派兵も理解できる。

 ※ 非5条任務 NATOはもともと加盟国が攻撃された場合に集団で反撃
 する攻守同盟だった。北大西洋条約第5条は、1または2以上の締約国への
 武力攻撃を全締約国への攻撃とみなし、それに対して個別的または集団的自
 衛権の行使による集団防衛により締約国を援助することを規定している。N
 ATOは旧ソ連を主軸にしたワルシャワ条約機構に対抗する集団防衛体制だ
 ったが、ワルシャワ条約機構の消滅により存在理由を喪失した。しかし19
 99年4月のワシントン首脳会議で「新戦略概念」を採択し、「欧州・大西
 洋地域内・周辺の不確実性・不安定性、NATO周辺部での地域紛争、人権
 侵害、国家システムの崩壊等」への対応を「非5条任務」として加えた。旧
 ユーゴへの軍事介入はワシントン首脳会議に先行して行なわれていたが、
 「非5条任務」の追加で正当化され、その後NATO軍の海外派兵は常態化
 することになった。

 さて、イスラエルによるレバノン・パレスチナ侵略と米国の黙認に世界が憤
 激したのは当然だが、NATO主要諸国がレバノンに派兵することを歓迎し
 ていいのだろうか。アフガンでISAFが米軍と共にやっていることは「タ
 リバーン掃討作戦」である。だが、カブールのカルザイ米カイライ政権に絶
 望したアフガンの人びとがタリバーンを支持するようになっていることは、
 タリバーン構成員ではない民衆もISAFの掃討作戦の対象にされることを
 予想させる。作戦の巻き添えになる人びとも多いにちがいない。それはイラ
 クで現に起きていることである。
 NATO主力のISAFがアフガン全土を指揮下に入れたことは、〈NAT
 O列強によるアフガン支配〉と同国の人びとに受け取られるだろう。そして
 広く「中東」・アラブ世界の人びとにとっては、米軍の手詰まり状況を打開
 するために、西欧列強が身を乗り出してきたと感じられ、《欧米による「中
 東」支配の再来》と受け止められるのではあるまいか。NATO軍はバルカ
 ン半島を平定し、ついに我々の世界に侵入してきた……。
 米国同様、西欧列強も「中東」の石油・天然ガスをのどから手が出るほど欲
 しがっている。プーチンのロシアに脅かされることなく、エネルギー資源を
 確保したいのである。だから米国と競合しつつ「中東」に軍隊を派遣する。
 その事態が今、始まっているのだ。繰り返すが、「中東」で戦争は拡大して
 いる。

 米国の情報機関はブッシュの「対テロ戦争」が「テロのネットワーク」を広
 げたと言うが、「対テロ戦争」を批判するのは、アルカイーダの同調者だけ
 ではない。「対テロ戦争」は米国の戦争政策に反対する人びとを日々増やし
 ている。だから実際は「テロのネットワーク」ではなく「米国批判のネット
 ワーク」、「米国への反撃のネットワーク」を際限なく広げているのである。
 とすれば、「対テロ戦争」を続ける限り、米国の支配層が安眠できる夜は永
 遠に来ないだろう。

 パレスチナ系イスラエル人で、変革アラブ運動党の党首、イスラエル議会副
 議長のアハメッド・ティビがインタビューにこう答えている。( )内は引
 用者による。

 〈―イスラエルの日刊紙『マアリブ』の著名な評論家ベン・カスピットが、
 いったい何故レバノン戦争最盛期に、あなたに「イスラエルを出よ」と言っ
 たのでしょうか。

 ▼ティビ  戦時中のイスラエルは、恐怖と欲求不満で満ちていて、何でも
 よいから身近に「敵」を見つけて恐怖と欲求不満を解消しようという雰囲気
 でした。その槍玉に挙げられたのがパレスチナ系国民、とりわけその指導者
 でした。カスピットは私を名指しにして、彼と同じ立場、即ち戦争と軍を支
 持する立場に立つと表明せよ、それとも、戦争反対の立場を維持するなら、
 非国民、つまり敵だから、国を出よ、というマッカーシズム的論評を書きま
 した。

―ヒズボラはシーア派で、しかも彼らの撃ち込むロケット弾がユダヤ人ばか
りではなくアラブ人も殺しているのに、アラブ系国民はヒズボラ支持のよう
です。

 ▼ティビ  イスラエル内アラブ人は圧倒的に戦争反対です。私たちはイス
 ラエルが侵略者で、レバノン人はすべて、この巨大な戦争マシーン、インフ
 ラを破壊し、何百、何千もの一般住民―女性、子ども、老人―を殺す戦争マ
 シーンの犠牲者だと思っています。私たちが犠牲者に同情するのは当然で、
 同時にベイルート(レバノン)だろうとハイファ(イスラエル)だろうとガ
 ザ(パレスチナ)だろうと、一般住民を標的にすることに抗議・反対するこ
 とを表明しています。〉(2006年9月25日号『人民新聞』)

この最近のレバノン侵略戦争中のイスラエル国内にかなり近い雰囲気を、私
たちは「テポドン騒ぎ」で体験した。あのとき、またもや朝鮮学校やその生
徒への陰湿で卑劣な攻撃が繰り返された。「ベイルートだろうとハイファだ
ろうとガザだろうと、一般住民を標的にすることに抗議・反対する」という
ティビの発言は、「反戦をどのような立場で主張するか」について、私たち
に多くの示唆を与えているのではないだろうか。


「集団的自衛権の行使」について

 安倍首相は9月29日の所信表明演説で「日米同盟がより効果的に機能し、
 平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集
 団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してま
 いります。」とのべた。彼の持論は政府解釈の変更で「集団的自衛権の行使」
 は可能というものだが、それはこれまで内閣法制局が認めなかった。ただし
 誤解がないよう付け加えねばならないが、同法制局は内閣の機関であるから、
 たとえば小泉前首相がその気になれば、政府解釈を変えることはできたので
 ある。それは安倍首相も同じで、問題はどういう口実で解釈を変えるか、連
 立を組んでいる公明党を説得できるか(後注参照)などにすぎない。内閣法
 制局の「抵抗」もどうなるか、まったく予断を許さない。
 ところで、安倍首相のかまえは、明文改憲による「集団的自衛権の行使」の
 合憲化と政府解釈の変更による容認の両様である。首相は演説で「まずは、
 日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を期待します。」とのべた。
 これは明文改憲の意思表示だが、かりに国民投票法案が成立したとしても、
 9条改憲はそう簡単ではない。改憲が遅れると米国政府に顔向けできなくな
 るし、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)との軍事的緊張に米日共同
 で対応できなくなることもあり得る。だから解釈改憲も視野に入れて、とい
 う両様のかまえになるのだが、これは奇妙な話だ。なぜなら、彼自身が北朝
 鮮との緊張を非常に煽っているのだから、自作自演のシナリオに合わせて
 「集団的自衛権の行使」を可能にしたいということなのだ。彼の言う「美し
 い国」とは、彼の吹く笛に合わせて、中国や北朝鮮、韓国を敵視する排外主
 義ナショナリズムが高揚し、「自律の精神を大事にする」と言いつつ、どこ
 までも対米追従を続けて、日本資本の海外権益を米日の軍事力で防衛する戦
 争国家のことである。

 北朝鮮と国交を樹立し、拉致問題を含めて二国間のすべての問題を外交のテ
 ーブルに乗せれば、「北朝鮮の脅威」はなくなる。そうなれば、国家予算を
 湯水のように使って三菱重工業など「死の商人」をボロもうけさせる「ミサ
 イル防衛」も不要になる。すべてを軍事的緊張の増幅・拡大と軍事力による
 問題の解決の方向で考えるから、「集団的自衛権の行使」が必要になるのだ
 が、東北アジアの緊張緩和を外交の基本とし、靖国神社参拝はしないと宣言
 して近隣諸国との関係を根本的に改善するなら、集団的自衛権などまったく
 不要である。米日が「集団的自衛権」を行使することは、日本の防衛にとど
 まらず、日本が米国を防衛することにまで行き着かざるを得ない。世界中に
 敵を無限に作り出しつつある米国の防衛に組み入れられたら、どんなことに
 なるのか、考えるだけで恐ろしいことではないか。しかもそれは将来の危険
 性ではない。日本はすでにアフガン・イラク侵略戦争に荷担しているのだか
 ら、攻撃されている側から反撃されることは十分あり得るのである。

 ※ 公明党の姿勢 公明党の太田代表は10月1日のテレビ番組で、安倍首
 相が集団的自衛権行使の具体例を研究する方針を打ち出したことについて
 「研究自体はいい。それがずるずるとある方向性を持って、結果的になし崩
 しに(憲法解釈を変更)するという形は絶対いけない。海外での武力行使は
 しない、ということは間違いなく譲れない点だ」とのべた(10月2日付
 『朝日新聞』)。安倍首相は「集団的自衛権」を行使できるようにするため
 に具体例を研究するのだから、「集団的自衛権の行使」を「絶対」認めない
 なら「研究は不要」と言うべきである。安倍内閣発足直前の自公連立合意は
 「集団的自衛権の行使」に触れていない。閣僚の椅子を確保するためのこの
 種の曖昧な態度は、「連立の維持」を口実に「絶対いけない」路線を変更す
 る可能性を示唆しているのではあるまいか。


悪辣な手口の「究極の解釈改憲」

 ところで安倍首相は、まず「研究を始める」という。
〈塩崎官房長官は9月29日の記者会見で、安倍首相が所信表明演説で集団的
自衛権の行使を認める研究を始めると表明したのを受け「首相の下に勉強する
場を設けるのが筋だ」として、新たに首相の私的懇談会を設置したいという考
えを明らかにした。塩崎氏は「ハイレベルのプロに集まってもらい、国民が納
得し、近隣のアジア諸国も心配しないような結論が出る枠組みを考えて人選し
ていく」と語った。公海上でパトロールしている日米の艦船が攻撃を受けた場
合など具体例を基に、集団的自衛権の行使に該当するかどうかを含め、従来の
憲法解釈見直しを進める方針だ。〉(9月29日付『毎日新聞』)

 これは「個別具体的な例」を検討し、それを従来の政府解釈の例外にするこ
 とで政府解釈に穴をあけることだろうか。そうだとすると、従来の政府解釈
 との整合性を保つため、その「個別具体的な例」は、あるいは「個別的自衛
 権」に分類し直されるかもしれない。本来「集団的自衛権の行使」とされて
 きたものの一部を「個別的自衛権の発動」に移籍させ、「合憲化」するとい
 う手法である。しかし現段階では、「首相の私的懇談会」なるものがひねり
 出す理屈がどういうものになるかは分からない。安倍首相の持論は政府解釈
 の変更で「集団的自衛権の行使」は可能という乱暴なものだから(安保条約
 を改定し、自衛隊が米国を防衛する任務を負わない限り、米日共同作戦はで
 きないはずだ)、「従来の憲法解釈の見直し」はもっと直接的でもっと乱暴
 なものになるかも知れない。
いま分かっていることは、「個別具体的な例」を蟻の一穴とし、明文改憲を
待つことなく、「集団的自衛権の行使」は可能にすることだ。薄汚く、ずる
がしこい手口と言うほかない。
 ともあれ、《改憲宰相》との闘いが始まった。知恵を絞って反撃しようでは
 ないか。

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http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-October/009352.html

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