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自治権と中央集権の鬩ぎ合い
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投稿者 彼岸楼 日時 2008 年 4 月 09 日 03:53:00: njbqC.Mf1PyZ2
 

(回答先: チベットはチベットなんですから 投稿者 Narongchai 日時 2008 年 4 月 08 日 01:31:16)


 Narongchaiさん、こんにちは。


 チベットの問題については今回の事件を契機に、インターネット検索をインデックスとしつつ2,3の書物にあたった程度ですので、当然ながら問題の真相に迫ることなどできずにいます。しかし、外観的には中国側によるチベット人民衆にたいする文化的・宗教的な侵害・弾圧の問題に収斂していくように見えても、より具体的に問題点(対立点)を炙り出すためにはやはり利害関係を切り口にした情勢分析が主軸になるのではないかと想っています。
 勿論、中国(中共)を中華思想の現代的な顕在化と見做して、チベット問題は覇権国による強権支配にたいして自治権を主張する衛星国(属国?)の抵抗(運動)の縮図と捉えることも可能でしょう。しかし、問題がそこまで構造化されたものだとするならば、チベットの経済的価値の喪失や地政学的な位置づけに綻びが生じない限り、根幹の部分の脱構築化は進展しないのではないかと推察されます。

 今回の暴動が中国当局の策動によるものだとした場合、中国政府は大きな読み違いをしていたことになるでしょう。これほどの反対運動が世界的規模で起きるとはおそらく予測していなかったのではないでしょうか。もし、それも織り込み済みであり、無視しても問題がないとする腹積もりであったのならば、天安門事件のときからその強権的体質は全く改まっていないことになります。
 しかし、原因の一端が中国側の挑発にチベット人民衆が乗ってしまったことにあるとしたら、最早ダライ・ラマ14世の影響力が減退しているようにも見受けられ、事態の収拾がどんな結末になるのか楽観は許されないでしょう。オリンピック以後には諸外国の支援活動の散発化や終息化は免れませんので、それを境に本体の運動が沈静化への一途を辿ることになってしまっては、却って自治権確立の道さえも閉ざされることにもなりかねません。

 ところで、天安門事件では、とりわけ左翼陣営はその対応の仕方について明確にすることを迫られたものです。私自身も学生時代には所謂“毛派”に近いところにいて、就職活動時の書面上や面接場面においても最も尊敬する政治家として周恩来の名を誰にも憚ることなく真っ先に挙げていたほどです。そのためかも知れませんが、中国(中共)の動向は絶えず気になっていましたし、今もその行末を注視しています。けれども、私の数少ない交流や限定的な交友関係では、中国の中核部分を構成する中南海の住人達の意識構造や行動様式を把捉することは困難であり、そのために相変わらず不気味さを払拭できずにいます。官僚組織の秘密主義や威圧的体質と云ったものは何れの国においても大差はないと想われますが、殊中国の場合は前近代的な閉鎖性をまだまだ多く残しているような気がします。

 海容なる清朝が退いて、中華民国に続き覇権主義的な中共が君臨することになり、否応なしに西蔵地区もその影響を受けることになった歴史の大きな流れにはある種の抗し難い一面があります。或る人からはそれは漢族中心の中華思想の再来であると謂われ、そこには人権思想の欠片もないと揶揄されます。
 両者の関係を漢族対チベット族と云った対立の図式で捉えることは問題の解明の方向を誤ることにもなりかねないと思っています。何故なら中国の人口の8割以上を占める漢族が民族も言語も限りなく混交が進んだハイブリッドであることは明白であり、少数民族であってもチベット族もまたハイブリッドであることには変わりがないからです。
 重要な点は中国(中共)が社会主義を仮衣に纏いながら再興を図ろうとしている中華思想が今日のアジアや世界にどんな意味を持つのか、どんな影響を齎すのかという問題ではないでしょうか。チベット人民衆のレコンキスタ(生存圏の失地回復運動)はこうした視界の中で捉えられるべきもので、表層の人権問題に止まらず現実には抜き差しならぬ齟齬が横たわっているような気がします。おそらく、それはエスタブリッシュメントがニュー・カマーを心根の部分では全く信認していないような没関係性の状況にも擬えられることができるでしょう。無論、固より誰もが望んでいることではないでしょうが、力関係を背景にしながら究極的にはチベット人民衆が中華思想を受け入れるか否かの決断を迫られることに事の次第は収斂していくのかも知れません。

 有史以来、幸運にも他国による支配を免れて来た日本(人)が幾度も国境が合い乱れた経験を有する人々の想いを忖度しようとしても、それがなかなか現実性を帯びて来ないことにたいするもどかしさを、余程脳天気な人間でなければ誰もが抱懐しているのではないかと想っています。チベット人民衆のレコンキスタに込めた想いには私達の想像を絶するような切実なものがあったとしても、それを直に受けとめ今日的な連帯の形成に資するべき素地(経験)を、遺憾ながら私達は持ち合わせてはいないのです。
 一般的に文化や資源が豊かな地方は自治や独立を希求するでしょうし、一方中央政府は統治を名目にしてそれに制限を加えようとして、時には武力制圧も辞さないでしょう。自治権と中央集権とが折り合いをつけるにはどうしたらよいのか、ミクロ的には企業経営にも通じることなのですが、本当に難問です。

 Auf Wiedersehen.



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