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Re: 人身売買報告書の判断基準に対する疑念広がる  2005/06/15  JANJAN
http://www.asyura2.com/07/asia8/msg/361.html
投稿者 Kotetu 日時 2007 年 6 月 15 日 00:07:00: yWKbgBUfNLcrc
 

(回答先: Re: 日本の外国人研修問題視 米の人身売買報告書 投稿者 Kotetu 日時 2007 年 6 月 14 日 23:44:20)

人身売買報告書の判断基準に対する疑念広がる 2005/06/15

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【ニューヨークIPS=キャサリン・スタップ、6月9日】
 米国務省は毎年「Human Trafficking Report:人身売買調査報告書」を発行(今年は6月3日発表)し、その中で人身売買問題への各国政府の取り組み度合いを審査し、3つの階層(Tier)に分類している。

 第1階層は、取り組みのあり方が国際基準を充たしている国、第2階層は問題への取り組みを表明しているが未だ国際基準を充たしていない国である(日本は、昨年に引き続き第2階層に分類されたが、被害者保護を目的とした行動計画の実施など日本政府の取り組みを評価し、「監視対象国リスト」から外した:IPSJ)。

 そして最下層の第3階層は「人身売買撲滅に向けた最低限の取り組み基準さえ遵守できていない国」、言い換えれば、人身売買を許容、支援している国として、米政府による経済制裁を受けうるブラックリストに記載されることを意味する。同報告書では、その「第3階層」分類にキューバやベネズエラを入れているが、専門家達の間では、これらの決定は人身売買の現実よりは政治的な意図を反映したものではないかとの見方が広がっている。

 今年の報告書では、調査対象となった150か国中、14カ国が「第3階層」該当国として発表された(ボリビア、アクアドル、カタール、アラブ首長国連合、ミャンマー、ジャマイカ、サウジアラビア、ベネズエラ、カンボジア、クウェート、スーダン、キューバ、北朝鮮、トーゴ)。

 今年度版の報告書は6月3日に発表されたが、米国務省人身売買問題担当シニアアドバイザーのジョン・ミラーは、概要説明の中で、「各国の階層分類は、各国の政府が人身売買の問題にどの程度取組んでいるかを、米国の法律の規定に照らし合わせて、厳正な審査に基づいて行われている」「審査基準となる法律は『人身売買犠牲者保護法』で、判断基準は全ての国に公平に適用されている」と述べている。

 ウーゴ・チャベス政権が数年に亘って米国政府と対立しているベネズエラの場合を見てみると、同報告書は「ベネズエラ政府は人身売買に取組むNGOへの支援を一切しておらず、取り組みは不十分。」と厳しく指摘し(一方、具体的な問題事例は挙げていない)、「第3階層」に分類している。

 この報告書の結論に対してベネズエラ大使館は、6月3日、同政府の人身売買対策に関する具体的な取り組み事例を挙げ(1.640団体を動員し数千人を対象にした人身売買問題アウェアネスキャンペーンの実施、2.外国人のモーテル利用状況のモニタリング、3.入出国記録のモニタリング強化)、「(米国務省が)ベネズエラを『第3階層』に分類した背景には、わが政府の取り組みの実態を全く知らないか、或いは、善意の取り組みを歪曲して国際社会に伝える意図があるかだ」と報告書の内容を非難した。

 ベネズエラ同様、米国政府と敵対関係にあるキューバに関する報告箇所では、「人身売買に関する状況を判断するに足る信頼できるデータがない。」「一方で、子供売春の実態は目に見えて深刻である」と指摘し、「第3階層」に分類している。

 しかし、このキューバのケースでも同報告書が「第3階層」に位置づける具体的なデータ根拠を明示していないことから、Inter-American DialogueやHuman Rights Watchを含むNGOコミュニティーの間の中には、同報告書の「第3階層」分類の判断基準を、各国の現状というよりは「政治的な判断」に基づいているのではないかとの声が上がっている。

 「報告書は全くのいかさまだ。」と、ワシントンに拠点を置くシンクタンク西半球問題協議会(Council of Hemispheric Affairs)のラリー・バーンズ専務理事は言う。「麻薬、人権に関する認可、テロ、人身売買に関する報告書の類は全て、米政権が特定の国を非難する際に使う政治的な道具にすぎない」

 「(米国がベネズエラを「第3階層」に分類した)目的は、ベネズエラが失敗国家であることを国際社会に示し、米州機構(OAS)の介入対象国にすることだ。しかし、ここで注目すべきは、米政権がいかに孤立しているか自覚していないことである。このようなやり方を続けていくと、結局は米国の信用そのものが失われていくことになりかねない」とバーンズ専務理事は語った。

 「第3階層」該当国に対して米国が発動しうる経済制裁には、人道上の支援を除く国際支援の停止や、国際通貨基金(IMF)・世界銀行を含む公的な融資機関による当該国への融資に対して、米国政府が反対の立場をとるなどの措置が含まれる。

 今年、ベネズエラ政府は米州開発銀行に対して1億2500万ドルの融資を申請する予定であり、米政府はこの件に関してベネズエラの「第3階層」ステータスを理由に、拒否権を発動して申請を却下する意向である旨を表明している。

 アメリカン大学ワシントン校法学部の国際法学者のジャニー・チャンは、人身売買報告書についてのコメントとして、「各国に関する審査内容をレビューしてみたが、少なくとも人権の観点から見て、3つの『階層』がどのような基準で設定され、対象国がその間をどのように振り分けられているのか、明確な判断基準を見出すのは難しい。」と語った。

 「『第1階層』に分類されている国々の中に、人身売買の『犠牲者』を逮捕、投獄し罰金を課している国々、あるいは、不法入国と人身売買の区別がつかず、犠牲者の人権を保護するための適切な措置をとることなく、まとめて強制送還措置をとっている国々が含まれているのはいかがなものだろうか? 」とチャン女史は語った。

 「労働力目的の人身売買に関する調査内容は、今回の報告書で大きく改善していると思います。」「しかし、中東諸国のみがこの形態(労働目的)の人身売買の問題を独占的に抱えているという訳ではありません。この報告書の各国の評価について、全体的に言えることですが、労働目的の人身売買問題に対する各国政府の取り組みに関する情報をもっと報告書に取り込む必要があります」 とチャン女史は語った。

 国際労働機構(ILO)は、5月に発表した調査報告書の中で、「世界で少なくとも123万人が強制労働を強いられる立場に置かれており、その内、少なくとも、240万人は人身売買の犠牲者」と推定している。.

 「実際にどの国が人身売買に許容的との理由で制裁の対象になっていくか、関心を持って見極めていきたいと思います。」とチャン女史は言う。彼女は、「米国がこれまでに制裁対象として標的に挙げた国々は、ミャンマー、北朝鮮、キューバ、スーダン、ベネズエラといった、米国と外交関係にない、もしくは、緊張関係にある国々でです。」と指摘した。

 その他の活動家の中には、(このような国別評価に基づく)制裁措置を行うことの賢明さや実際の効果に疑問を呈する人々もいる。

 「経済制裁措置が(人身売買の)問題を解決する効果的な方法ではありません。」と、ネパールで人身売買の問題に取組むマイティ・ネパールの代表アヌラダ・コラララ女史(
http://www.janjan.jp/world/0506/0506057903/1.php
)は言う。「(制裁措置よりも)人身売買の状況を把握するモニタリングのメカニズムを向上させる努力をした方が効果的だと思います」

 強制労働と売春を目的とした人身売買が世界的な規模で各方面に浸透し恐ろしい状況を作り出しているという現実については、異論を挟むものはいない。米国政府のデータによると、年間60万人〜80万人の男女・子供が国境を越えて売買されており、犠牲者の8割を女性・少女が占め、そのさらに半数が未成年者である。そして、犠牲者の大半が性産業に組み込まれ性的搾取を受けている。しかし、これらの犠牲者数には、世界各国の国内で搾取を受けている数百万人にのぼる犠牲者の数は含まれていない。

 「人身売買報告書の記載で主に欠落しているポイントは、人身売買の背景となっているラテンアメリカ諸国における経済状況についての説明です。」と、女性の人身売買反対連合ラテンアメリカ・カリブ地域代表のテレサ・ウジョア・ジャリスは語った。

 「貧困そのものだけが人身売買の原因ではありません。その貧困による人々の苦境を食い物にする仲介者(友人・恋人を装って声をかけるリクルーター、運び屋)や、売春斡旋業者の存在が人身売買の問題を引き起こしているのです」とジャリスは言う。「そして、各国内外の売春婦を求める需要が人身売買の犠牲者を飲み込む市場を形成しているのです」

 「人身売買は、麻薬取引、武器取引に次ぐ、世界で3番目に最も利益を生む非合法活動です」と、ジャリスは付加えた。

 「その売春婦を求める男達の需要こそが、女性をして男性に対して従順で劣った存在、そして男達の快楽のために売買、貸出ができる「商品」といったステレオタイプを助長しているのです」とジャリスは語った。「メキシコとラテンアメリカに買春旅行に訪れる顧客需要の8割は米国人とカナダ人が占めているのです」

 「裕福な国々は、(人身売買の温床となっている貧困対策として)貧しい国々の人々の生活レベルの向上に寄与したり開発のための投資を積極的に行っていくべきだと強く思っています。そして、ラテンアメリカ・カリブ海地域で売春と女子供の人身売買の問題に長年取組んできた私達の団体(女性の人身売買反対連合)のような各地の組織と技術協力を行っていくニーズがあると思います」

翻訳:IPSJapan 浅霧勝浩

原文: http://ipsnews.net/interna.asp?idnews=29014
人身売買調査報告書:http://www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2005/
半球問題(西半球)協議会:http://www.coha.org/
マイティ・ネパール:http://www.maitinepal.org/
女性の人身売買反対連合:http://www.catwinternational.org/
米州機構概要:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/latinamerica/kikan/gaiyo.html

(IPSJapan)
JANJAN
http://www.janjan.jp/world/0506/0506158388/1.php

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