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右翼・左翼の遺伝子【鈴木邦男 今週の主張】
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 3 月 04 日 17:27:10: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2207/2007/shuchou0226.html

1)この国を愛し、抱きしめるには…

 2月10日(土)、午後7時から中野ZEROホールで「教育に自由を!2.10集会」が行われました。小森陽一さん(東大教授)と僕は対談をしました。楽しかったですし、いろいろと教えられました。「教育基本法」改正問題から話に入りました。改正教育法ではこう書かれています。

〈伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う〉

 養うべき「態度」という言葉は文の全体にかかるんですね。勿論、「我が国と郷土を愛」する態度も養うのです。「愛する心」を持て、というのではなく、「愛する態度」を養えという。行動的です。攻撃的です。
 「国を愛する心」というと、心ですから各人が胸の中にしまっておく。それも可能です。でも、「国を愛する…態度」となると違います。「態度」は行動で示さなくてはいけません。「私は愛国心を持ってますよ」「愛国者ですよ」と大勢の前で叫ばなくてはなりません。それだけでなく、「証拠」や「実績」を示さなくてはなりません。
 「幸せなら手を叩こう」という歌がありましたね。「幸せなら手を叩こう。幸せなら態度で示そうよ。ほら、皆で手を叩こう」という歌でした。手を叩くという「態度」「行動」で幸せであることを示すのです。まあ、こんなことは簡単ですし、他愛のない事です。
 でも、愛国心を態度で示すということはどういうことか。手を叩いて済むことではありません。「愛する」態度について小森陽一さんはこんなことを言ってました。お母さんが子供を抱きしめる。これは「愛する」態度だし、証明です。恋人同士も抱き合います。さらに接吻し、交わります。これが愛する態度です。愛する行動、証明です。又、愛する人のために、イザという時は命をかける。これも愛する態度です。究極の愛です。
 相手が人間なら分かりやすいです。じゃ、相手が国ならばどうか。つまり、国を愛する〈態度〉というのは、どうか。どういう風に愛を示すのか。小森さんに聞かれて私も、分からなくなりました。大体、理詰めで考えることは苦手なんです。頭が緻密には出来てません。だから、面倒だから、こう答えました。
 「ウーン、どうなんでしょう。じゃ、日本に接吻することじゃないですか」と。破れかぶれです。でも、さすがは東大教授です。それに文学の先生です。
 「あっ、大地に接吻するんですね。それもいいですね」
 文学的に表現し直してくれました。「あれっ、大地に接吻した人がいたな。誰だっけ」と思っていたら、私の心を読んだのでしょう。「『罪と罰』のラスコーリニコフです」。あっそうだった。小森さんは「日本近代文学」の専攻です。文学には詳しいのです。「国を愛する態度」とは結局のところ、「国のために死ね」という所に行く。そんな国民を国家は作りたいんです。と小森さんは言ってました。
 その日の対談の模様は「オーマイニュース」で、市民記者の安住るりさんが書いてくれてます。とてもよくまとまってますし、写真も出てますので、そちらを読んで下さいませ。私の下手なサインまで紹介されていて、恥ずかしいですが…。
 当日は会場一杯の人で驚きました。「教育委員会を告発する」「教え子を学校に送れるか」といった報告。「日の丸・君が代裁判」原告、弁護士、市民、若者などの発言もあり、実に活発な、元気のいい集会でした。左翼的な人が多いのでしょうか、私は、こういう集会の方が居心地がいいし、落着きます。というより、考え方の違う人達と話す方が楽しいし、勉強になります。
 右翼、保守派の集会ですと、「100%考えが同じはずなのに、ここは違う!」「許せん!」と批判されることが多いので疲れます。ビクビクします。その点、左の人の集会は、「全く考えが違うはずなのに、あれっ、こんなに一致する所がある。話し合えるんだね」というサプライズがあります。
 つまり、「許容量」というか許容度の問題なんだわさ。「同じ思想の集団」では許容量が狭い。違う集団だと、許容量が広いのです。
 「フーン、右翼は人殺しだと思ってたけど、温和な人じゃん」とか、「全然こわくないじゃん」と思われる。イメージと違う。それだけで喜ばれちゃう。その〈落差〉だけで持ってるようなもんですな、私は。


(2)オルグするなら、双子ですよ

 「よど号」事件の田中義三さんについても、それは言えますね。今年1月1日に亡くなりましたが、とてもいい人でした。お互い、初対面で、意気投合しました。「一目惚れ」の恋人みたいです。多分、お互い、許容度が大きかったのでしょう。変に「政治的期待」をしなかったからでしょう。
 左右の翼ちゃんたちは、人と会う時には、誰にでも〈期待〉〈作戦〉を持って会います。「こいつをオルグして仲間にしよう」「カンパさせよう」「仲間には出来なくとも、少なくともシンパにしよう。集会に来させよう」…と。そんな功利的観点から人間を見てるのです。私だって昔はそうでしたよ。一水会の若者たちに、「革命マシーンになれ!」と言ってたんですから。全員が「機械」になればいいと思ってたんです。
 その点、田中さんと会った時は、そんな作戦、計画は何もありません。白紙の状態であったのです。「北朝鮮の内状を聞いてやろう」というジャーナリスティックな気持ちもありません。変に「求めるもの」「期待するもの」がなかったから仲良くなれたのです。時には変な質問をしても、「あっ、この人は40年も右翼の世界にいたんだから、仕方ないや」と思ってくれたんでしょう。そういう無限の〈許容量〉がお互いにありました。100%違っていても、それを前提にしてるから、一致する所が1%でもあれば、それが嬉しかったんです。
 その点、田中さんの「同志」たちは違います。いろんなことがあっても、葬儀には駆けつけらいいのに、来れない人がいます。「よど号」について暴露・批判本を出した高沢さんとか、喧嘩した塩見さんたちです。僕なんかとは比べものにならない位、親密な同志でした。100%の仲間です。でも途中で考え方が違い、20%か30%、違った。そうなると、もう来れない。僕なんて、99%も違うのに、〈親友〉になっちゃった。何か、申し訳ない気持ちです。
 さらに、「よど号」グループがヨーロッパでの拉致にからんでいた、と報道され、田中さんは悩み、孤立します。田中さんの救援をしてた人の中でも去っていく人もいました。
 「だから皆、面会に来てくれない」と田中さんは嘆いていました。そんなことはないのですが、そう思えたのでしょう。ブントの代表・荒岱介さんには僕が連絡をして連れて行きました。又、塩見さんとも会わせようとしましたが、それは無理でした。でも変ですよね。かつては敵だった僕が、左翼同士を会わせ、仲直りをさせようと必死になったんですから。

 ZEROホールの集会の時も言いましたが、人間には「右と左」があるのではない。「話し合える人と話し合えない人」がいるだけだと。お前とは同じ考えだといいながら、小さな違いも許せない、という狭量な人もいます。考えが違っても、会うとホッとする人もいます。
 40年前、大学で殴り合いをしていた〈敵〉でも、今は話し合えるし、なごむ人も多い。反対に、同じ立場だったのに、狭量な人間は今も狭量です。人柄、人徳の問題かもしれません。思想は動産ですが、人柄は不動産なのでしょう。人柄がいい人は、思想はどうあれ、多くの人に愛されるのでしょう。

 さて、人間が右翼になり、左翼になるのは何故でしょうか。ちょっとしたキッカケです。人との出会い、環境…そんなもんでしょう。だから、右だったから、左だったからといって、人を差別してはいけません。右だっていい人もいれば、卑怯な人もいます。左だって同じです。

 「いや、正しい人が左になり、間違った人が右になる」という人もいます。これは間違ってます。又、「頭のいい人が左になり、頭の悪い人が右になる」という人もいます。これは少し当たっているでしょう。さらに、右になるか、左になるかは、遺伝子が決めるのだ、という人もいます。

 双子の話からします。生まれてすぐに引き離され、全く会うこともなかった双子(兄弟)が20年ぶりに会いました。再会というよりは初対面に近いです。でも驚くことに、二人は同じ消防士になっていました。そして同じ服装、同じ口ヒゲをはやしていました。
 又、30年たって会った双子(姉妹)は、同じ色の服、同じ髪形で、同じピアスをしてました。「好み」が同じだからでしょう。さらに驚くべき報告があります。一卵性の双子の一方が犯罪者の場合、他方も犯罪者である率は、50%に及ぶという。これはキチンと統計をとって調べたそうです。大石道夫の『DNAの時代・期待と不安』(文春新書)に出てました。
 ということは、双子が犯罪を犯したら、即、もう一人を逮捕すればいいんだ。「僕は何もやっちゃいない!」と叫んでも、「ウルセー、近い将来、必ずやる。その確率が50%以上だ」と警察官は言う。うん、未然に犯罪を防止したんだね。映画「マイノリティ・レポート」で似た話があったね。犯罪を予知して、あらかじめ逮捕するんです。この「双子の50%」から作り上げたストーリーかもしれましぇん。

 〈犯罪〉と〈思想〉を同じに考えちゃいかんのだろうが。では、右や左はどうなんだろう。それに、体制側にとっては左右は「犯罪者」だ。少なくとも「犯罪者予備軍」だ。
 どうせ統計をとるんなら、思想的な統計もとってくれよな。双子の場合、一方が右翼だと、もう一方も右翼になる。犯罪者の双子は犯罪者になるんだから、多分、そうでしょう。そうするとオルグするのも楽だわさ。一人オルグして仲間に獲得したら、自動的にもう一人がオマケで付いてくる。千人の仲間を勧誘したら、自動的に二千人の仲間が出来る。これはいい。オルグ好きの塩見さんに教えてやろう。何せ、今でも人をみれば喫茶店に連れ込み、1日10時間も話し込んで、オルグしている。
 大変な労力だ。時間のムダだ。どうせなら、双子だけを狙いなさいよ、と教えちゃる。そうしたら、双子でない人は助かるだろう。
 しかし、双子の活動家っているのかな。右にはいなかったな。左にはいたんだろうか。もしかしたら、生まれた時から双子だということを隠して活動してたりして。爆弾事件や内ゲバ殺人で捕まっても、「私にはアリバイがあります」と主張する。双子のもう一人は、別のとこで皆と飲んでたとか。全員がアリバイを証明してくれる。これだと完全犯罪だ。
 ラスベガスの有名マジシャンにはこの手を使ってる人がいる。だから、舞台から消えて、突然、離れた所に現われる。こんなことも出来る。

 そうか、生まれた時、双子でも、一人しか出生届を出さない。もう一人は、ひっそりとどこかに隠して育てる。そんで大きくなったらマジシャンか活動家にする。あるいは、彼らに高い値で売る。うん、これは商売にもなるな。双子オークションをやる。やってみよう。そのためには、まず双子を生まなくちゃ。これが難しい。その為には双子と結婚しなくっちゃ。でも、似てるから、間違って接吻したり、抱き合ったりしちゃうよな。それで査問、総括。そんで埋められたりして。「元右翼団体会長の鈴木、殺害される。犯人は双子」と新聞に出ちゃうよ。


(3)「大和心」と「大和魂」の違いは?と聞かれて…

 話を戻そう。学生運動の盛んな時。双子はいなかったと思うが、兄弟はよくいた。連合赤軍の加藤三兄弟。中核・革マルの小野田三兄弟。日本赤軍、よど号の岡本兄弟…と。昔は兄弟仲がよかったから、兄ちゃんのやることに弟がついて行ったのだろう。兄弟仲良く。日本文化だ。教育勅語でも言ってたな。
 又、お父さんが活動家だったから子供も活動家になる。というのも多かった。しかし、今はないね、こんなの。子供が父の思想を継がない。元日本共産党の No.4の筆坂秀世さんと対談した時、言ってましたね。「共産党はどんどん老齢化で若い人が入らない」と。じゃ、「産めよ増やせよで、どんどん子供を産んで、入党させればいいでしょう」と私は言った。「でも、子供が皆、入らないんです」。
 そうか。親を見て、こんなキツイ活動は嫌だ、と思うのか。そのうち「ゴー宣」を読んで右翼になったりして。これじゃ、〈敵〉のために子供をせっせと産んでるようなもんだ。サケやマンボウの卵のようだ。いくら産んでも、他の魚のエサになってしまう。かわいそうだね。共産党の卵たちは。

 ということで、遺伝子を調べても右翼、左翼は増えないし、左右の翼の出生、増殖、死滅の秘密は解明されませんね。でも大石道夫の『DNAの時代』には面白いことが書かれちょりました。

〈もしDNAを調べることによって、主要な病気にかかるリスク、すなわちその人のある程度の寿命がわかると、病気にかかりやすい、寿命が短いDNAを持っている人と、病気にかかりにくい、寿命が長いDNAを持っている人が同じ額の掛け金を払うのは不合理だという意見が当然出てくるだろう〉

 生命保険の話ですよ。これは言えますね。さて、どうする。

〈もし近い将来ゲノムDNAの情報からある病気にかかる可能性がわかったら、その人を被保険者の対象として除く、あるいは高い保険料を請求する。
 また雇用に際して会社は、一般に病気になりやすい人を敬遠しがちだが、近い将来、就職希望者のDNA情報を雇う側が安易に入手できるようになったら、どういう事態を招くかは明白だろう。本人にはどうにもならない両親由来のDNAによって、雇用までが制限されることになるのだ〉

 こうなったら大変ですね。こうしたことを見越し、アメリカでは、DNA情報を雇用に際し使うことを禁止する法律が出来てます。又、生まれながらの難病を治療するために遺伝子操作を認めるべきだという声もあります。そうすると、治療だけでなく、別の方向にも使われるでしょう。特別な頭脳を持った子を作る。有能なスポーツ選手を作る。有能な右翼を作る(これは無理か)。さてさて未来はどうなるのでせうか。
 そうそう。大石の本の中に、こんなエピソードが紹介されていた。寿命というのは、かなり、遺伝子に原因する。
 イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、長生きの家系に生まれ97才まで生きたが、「長生きをしたければ良い先祖を選びなさい」といって、普通の人には無理なことを言っている。
 ウーン、似たようなことを聞いた。格闘技はグレーシー一族がメチャ強い。かつては、グレーシーにかなう人間はいなかった。その時、ホイラー・グレーシーに雑誌でインタビューした。「強くなるにはどうしたらいいんですか?」と。そしたら何と、「グレーシー一族に生まれることです」。ギャッと思った。一族にしか教えない技があるし、DNAがあるというんですよ。
 おっと忘れるところだった。BBSに質問があったね。「大和魂と大和心」だ。僕も余り厳密に考えてこなかったし、混乱して書いた時もあったと思うけど、要はこういうことだと思います。
 大和心といえば〈心〉ですから、自分のうちにひっそり持ってればいいんです。「国を愛する心」ですね。穏やかな、静的なものだと思います。まァ、日本人としての心得とか、気持ち、みたいなもんでしょう。まァ、水ですよね。だから一水会もその精神で作ったのです。
 それに対し、大和魂は、水が凝縮して固くなった氷でしょう。ツララかな。だから、これは人をも殺せます。「魂」ですから、動的ですし、攻撃的です。他人に示さなくてはいけません。「国を愛する態度」ですね。そんな感じがします。又、ゆっくり考えてみませう。

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