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(回答先: カナダに渡った侍の娘〜ある日系一世の回想（かなだ・じゃーなる） 投稿者 kamenoko 日時 2007 年 4 月 03 日 01:56:01)
日系カナダ人
・移民の歴史
現在カナダに在住する日系人の数は、約７万人。すでに５世の時代が迎えるが、カナダ社会を形成する移民では、少数派である。
カナダの移民第一号は、1877年ビクトリアに到着した永野萬蔵だ。1901年までに、日本人移民の数は4738に増えていた。カナダで一儲けして、いずれは故郷へ錦を飾って帰るのが、多くの日本人移民の夢だったのだ。そのほとんどが独身男性で、日本からの花嫁を呼ぶため、「写真花嫁」と見合い結婚する。やがてバンクーバーのパウエル街は、多くの日本人が集中して住み、商売を繁盛させ、リトル・トーキョーと呼ばれるようになった。
だが、こうした移民の数が増えると、白人の間ではアジア系への反感がつのり、1895年、ブリティッシュ・コロンビア州政府は、たとえカナダ生まれであろうと、アジア系カナダ人の投票権を剥奪。さらに政府の許可なしでは、弁護士や公務員などの専門職につくことも不可能にした。
・強制立ち退き
1941年12月7日、真珠湾攻撃を境にカナダ政府は日系社会を本格的に破壊し始めた。日系人の漁村として栄えていたフレーザー河口のステブストンなどで、漁船は没収され、1800人もの日系漁師が職を失った。
1942年、日本人の血が流れる者はすべて、BC州沿岸から東100マイル以内の土地への立ち入り禁止命令が発令。カナダを自国とする日系人でありながら「敵国人」と規定され、IDカードの所持を強制され、夜間外出禁止令、令状なしの家宅捜査、さらに車やラジオ、カメラ、銃器は押収される。そして48時間以内の退去命令で、家族は引き離される運命になったのだ。
日系男子は少しでも政府に抵抗したり、道路キャンプ行きの命令に従わないと、オンタリオ州のアングラーやペタワワの有刺鉄線と監視に囲まれた戦争捕虜収容所に送られた。1942年11月までに約２万２千人の日系人が家を失い、強制移動した。
・収容所での生活
約１万２千人の日系人は、BC州内陸部のスローカン、サンドン、ベイファーク、レモンクリーク、タシメといった収容所に送られた。
当時、徴兵のためカナダ男子が流出し、アルバータ州やマニトバ州の砂糖大根農場では人手が不足し、安い労働力を求めていた。家族を引き離すことがカナダ政府当初の目的だったが、砂糖大根農場で働く意思のある日系人に限り、家族一緒の移動を許可し、その結果約４千人の日系人が農場で働くことになる。しかし、生活はきわめて貧しいものだった。
「私達が住んだ家は、薄い壁板１枚だけで出来ていました。家の中は薪ストーブで暖まりましたが、ベッドは凍り、毛布はベッドに凍って張り付きました。最初の年は零下43度近くまで気温が下がりました。夜通し薪を燃やし続けたものです。今から思うと、どうやって皆が耐えたのか、わからないほどです。"Dream of Riches" by Hirayama
1945年の春に、日系人はロッキー山脈の東へ移動するか、日本へ帰国するかの二者択一を迫られた。この政策の目的は、日系人をBC州から完全の退去させるとだった。
1947年マッケンジー・キング首相により、この強制送還命令は取り下げられたが、すでに４千人の日系人（そのうち半分はカナダ生まれ）は日本へ渡っていた。敗戦国日本は貧しく、帰っていった日系人は言葉や文化の問題でたいへん苦労した上、厳しい生活難を味わったのである。日本へ帰らなかった過半数の日系人は、ロッキーの東部、トロントや近郊都市へと移っていった。
・リドレス運動のはじまり
1977年日系カナダ人移民百年祭が催され、若い日系人の間に自分たちの歴史への興味が高まった。そのころ、アメリカでは日系人の補償問題に関する委員会を設置し、83年委員会は政府の正式謝罪と個人への２万ドルの損害賠償を支払うよう要求していた。
このアメリカでのリドレス（不正を正す・補償という意味）運動は日系カナダ人を大いに鼓舞し、84年日系人協会がカナダ連邦政府を公式訪問し、カナダ政府が日系人に対して行った不当な仕打ちを認め、損害賠償するよう要求したのだ。
しかし、最初の年は試練と困難のときだった。多くの日系人は、リドレス運動に懐疑的で、何も起こらないだろう、逆にカナダ人からしっぺ返しがくるのではないか、と恐れていた。それに、自分たちの経験を話すことをためらっていたのだ。
日系人の過去の収容所経験についてお互いに語り合う小さなグループ・ミーティングが、あちこちで開かれた。ほとんどの人たちは、それまで自分のこどもたちにすら「仕方がないこと」だと過去を語ったことがなかった。
やがて他の人々からサポートがあることに気がつくと、日系人は自信を持って堂々と行動するようになった。1988年４月、500人の一世や二世がオタワ国会議事堂前でデモ行進を行うまでに至ったのだ。
アメリカではレーガン大統領が日系アメリカ人リドレス法案に調印し、リドレス運動の勝利が決定した同年９月22日、とうとうカナダ連邦政府も第二次世界大戦中と戦後にかけ、日系人に与えた不正な仕打ちを認めた。
・補償問題の合意
カナダ政府は日系社会に対して
・過去の不当な仕打ちを認め正式に謝罪する。
・個人補償として（1949年3月31日までに誕生した）日系カナダ人へひとり２万１千ドル支払う。
・日系社会復興のための資金1200万ドルを支払う。
・人種関係資金の設立。
・戦時措置法の改正。
・日本へ送還された日系カナダ人の市民権を復権する。
以上を合意した。
日系社会へ支払われた資金で、トロントではモミジ・シニア・センターの建設や日系会館の拡張、日系アーティストや作家への支援、日系史書籍プロジェクトが実現した。
バンクーバーでも日系ヘリテージ・センターや日本語学校の建設、ニューデンバー、カスロー、ミッションには日系人の歴史を紹介する博物館が建設された。
・これからの日系人社会
かつてのカナダ政府の政策によって、日系人はロッキー山脈の東へ強制移動させられ、コミュニティーが散り散りになってしまったため、三世や四世は日系社会との繋がりを失い、その結果日本語が話せず、非日系人との結婚がほとんどだ。インターマリッジ率は95％以上で、カナダのエスニック・グループの中で最も高くなっている。
現在日系カナダ人口は約７万人だが、そのうち２万５千人は混血である。こういった驚くべき統計は、将来の日系社会に大きく影響している。これからの若い世代が、どれほど日系社会の組織に興味を持つかに関わってくるからだ。
初出：『カナダおもしろモザイク探訪』より抜粋
http://www.omoshirocanada.com/mosaic9.html
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