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2007年5月31日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.429 Thursday Edition
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http://ryumurakami.jmm.co.jp/
▼INDEX▼
■ 『ロンドン〜スクエア・マイルから』 丸國葉 第８１回
「ハラキリ」
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■ 『ロンドン〜スクエア・マイルから』 第８１回
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「ハラキリ」
イギリスの新聞サイトをサーフしていて見つけた、「Japanese minister kills
himself.」の文字。詳細を知りたくて今度は日本の新聞サイトに入ると、ＺＡＲＤ
・坂井泉水さんの急死も見つけてショックを受けつつ、松岡農水相の自殺記事を閲覧。
実のところ、長期休暇を終えたところで最近の日本政治動向はきちんとフォローして
おらず、この自殺の裏にあるとされる不祥事は知らなかったのだが、いつの時代も、
どこの国でも、政治には腐った匂いが漂うものである。
さて、一部イギリスのメディアは日本の自殺文化の特異性にもふれていた点が興味
深い。たしか昨年初めだったか、ＢＢＣが日本の集団自殺について報道し、ネット上
で自殺志願者を集めたり、自殺指南本の存在にもふれていたことを思い出す。という
ことで、今回の松岡氏に関する主要メディア報道を「自殺」に注目してピックアップ
してみた（インターネット版であることをご了承していただきたし）。
デイリーテレグラフ
読みやすさがウリで、一般紙で発行部数トップ（９０万部）と言われる、ちょっと
右寄りの新聞。
２８日付けのタイトルは「不祥事をおこした議員が首吊り」で、２９日付けでは日
本の自殺の多さに言及。「１０年以上続いた不況下で、特に中年男性の自殺が増加。
古代日本では"腹切り（腹を切り開く儀式＝the ritual cutting open of the
stomach）"は失敗や不祥事の罪滅ぼしを意味する。１９９３年に発行された自殺マニ
ュアルは約２万部以上を売り上げ。」
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/05/29/wjapan29.xml
タイムズ
１８世紀後半発行の老舗。上流階級、保守派ビジネスマンが主な愛読者。ちなみに
ＳＵＤＯＫＵ（数独）を普及した新聞（らしい）。
ちょうど今月に日本政府が発表した自殺データを取り上げ、日本は世界でも自殺者
の多い国の一つで（２００４年には３万２千人）、日本文化における自殺は西欧のそ
れとは大きく異なると言及。「自殺行為は社会への個人的拒否のあらわれというより
も、社会との一体性の表現とみなされることが多い。一方、社会への不満をあらわす
こともあり、１９７０年の三島由紀夫の自殺はその例。彼の小説の中で自殺は更なる
幸福を求めるべく自我征服の行為として理想化。また、体面を汚した人の自殺は状況
からの逃避というよりも修正と解釈される。戦いに敗れて生き残った侍はむしろ自ら
の命を絶つことを求め、それは自殺は主人や仲間の名誉を守るためである。第二次世
界大戦で日本が降伏した際、東条英機は自殺を試みたものの未遂。これを詫びてい
る。」
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article1853848.ece
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article1851710.ece
インディペンデント
新聞業界が経営権のごたごたで揺れている時に、大手新聞各社の名記者たちが１９
８６年に創刊させた若い新聞。右寄り／左寄りのない独自の主張を前面に押しだし、
リベラル派に人気。
あくまでも松岡農水相の自殺の事実と、他の主要紙同様、彼をとりまいた疑惑・ス
キャンダルと安倍内閣の支持率の低下などを報道。日本文化における自殺にはふれず。
http://news.independent.co.uk/world/asia/article2589328.ece
フィナンシャルタイムズ（ＦＴ）
ご存知ピンク色（薄オレンジ色？）の金融紙でビジネスパーソン必読の新聞。値段
の高さでも高級ぶりを誇示。
やはりこちらも日本の自殺の特異性にはふれず、スキャンダル続きできびしい立場
に置かれた安倍首相や野党の出方、年金に関わる不祥事などに言及。学者のコメント
も掲載。
http://www.ft.com/cms/s/d884113c-0dd8-11dc-8219-000b5df10621.html
http://www.ft.com/cms/s/ded67514-0d80-11dc-937a-000b5df10621.html
サン
ゴシップ、スクープ記事満載で低俗と言われつつも３００万部を超える発行部数は
日刊紙で最大。FT紙を愛読するような硬派でも（こっそり？）目を通す人気のタブロ
イド紙。「ページ３（スリー）」一面にドンと乗る若い女性の生まれながらの姿が目
玉だが（豊胸手術は認めないらしい）案外女性読者も多い。ちなみに、以前の英人同
僚はオフィス・カジュアルにどうしてもなじめず毎日スーツを着通したのだが、愛用
の黒のアタッシュケースにはサン紙しか入っていないと言われていた。
さて、この日本政治に関する報道となると、どうも興味がなかったらしく掲載なし
…だった。実は一般イギリス人の日本への興味とはこんなものなのである。
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丸國 葉（まるくに・よう）
外資系銀行・東京支店勤務を経て、１９９８年渡英。ＭＢＡ取得後、ロンドン金融機
関にて勤務。個人サイト <http://yomarukuni.livedoor.biz/>。
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JMM [Japan Mail Media] No.429 Thursday Edition
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】 <http://ryumurakami.jmm.co.jp/>
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