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渡辺 恒雄/TUNEO WATANABE【人間図書館】
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投稿者 そのまんま西 日時 2007 年 7 月 07 日 02:01:54: sypgvaaYz82Hc
 

渡辺 恒雄/TUNEO WATANABE【人間図書館】
座右の銘『百忍自ら憂いなし』『静観自ら得る』

講演    1996.3.27.  第6回 リバティ・オープン・カレッジ


「これからのマスコミの在り方」

ご紹介いただきました渡辺恒雄でございます。今日は非常に熱気のあふれた若い方の前でお話をするので多少面食らっております。いつも平均年齢60歳ぐらいの人たちの前でばかり話をしてるもんですから、たまには若々しい気持ちにさせていただきたいと思っております。最初は今一番問題になっている住専の問題と、TBSのオウム問題と2つだけお話しして、あとはご質問にお答えするということにしたいと思います。
 住専問題は、やっと今日、国会正常化して暫定予算が通ったところですけれども、わずか6850億のために、何で3週間、国会を浪費するのか、全く僕には理解できない。というのは国鉄清算事業団の持ってる債務28兆円を、2年後には一般会計で始末をするということを既に閣議決定しているわけなんです。旧国鉄の持っていた資産を全部いま売っても7兆円ぐらいにしかなりませんから、28兆の債務に対して20兆以上を一般会計から、つまり財政支出しなきゃいけない。こういう問題を抱えておるのにたっ6850億のために、これだけ大騒ぎするのはいったいどういうことだろうか。
 あるいはですね、日本の総森林面積の3分の1が国有林、その55%が木材生産林で416万ヘクタールある。その資産価値はだいたい簿価で6兆、時価でだいたい10兆と言われております。木材の価格は現在、低迷してますけれども(木材の価格は新聞用紙とだいたいパラレルですが)アメリカで過去2年間に木材価格が2倍に上がっている。従って今の日本の国有林の価格ももっと上がるはずなんですね。ところが現在の林野特別会計の借金が3兆2千億くらいあります。そこに毎年500億ずつ一般会計から利子として繰り入れてるわけです。それで人件費だけでも2000億くらいかかる。だから、この国有林を早く売り払ってしまえ、全部民営にしたらいいじゃないかと言ってるんです。国有林を民営化して売り払えば、評価額が10兆だとして、借金と累積赤字とを両方足すとだいたい4、5兆くらいになるが、5兆くらいは出てくるだろう。その金の一部を6850億に当てればいい。どういう財源を作って埋めるかってことを考えればいいんですね。それを6850億を一般会計から支出するのはけしからん、と言って新進党がピケを張ったと。くだらんことなんです。
 中川昭一さんのお父さんの中川一郎さんが、農林大臣の時、僕に「国有林というのは実にけしからん。林野庁というのは潰さなきゃいかんのだ」と言っていた。当時7万人の職員がいて現在1万7千人。しかも林野庁ではあと7千人減らす計画になっている。ということは1万人でできる仕事を何年もにわたって7万人でやってたってことなんですね。これは旧国鉄と同じことですよ。それで、ものすごい人件費を食って、さんざん赤字を出しておった。いま郵便局員の態度は非常にいいでしょう。昔の郵便局の態度の悪さを知らない人には分からないでしょうけど。というのはサービスを悪くしてると民営化されちゃうと思っている。まあ中川昭一君は逓信委員長だから、まあそっちの方の担当、権力者ですから郵便事業の民営化なんていうと、僕は怒られなきゃならんかもしれませんが。まあ僕は郵便貯金、簡易保険、郵便配達、これを全部民営化したら、もっとサービスが良くなって儲かるようになるだろうと考えてるんです。
 今度の日銀特融使えずに、一般会計から出すというのは、返ってくるあてが全くない金を貸すわけですから、これは日銀法違反になるので一般会計から取りあえず6850億出してもらうと。これ以外に方法は無いわけですね。それをけしからん、といって出さなかったら金融不安が起こる。預金者の預金は保証されない。国際的な日本の金融機関に対する信用は無くなる。ジャパンプレミアムは高くなる。その時になって、あわてて一般会計で始末をしようと思ったら、5兆や10兆出したって、足りません。
 それともう1つ問題は、やたらに国債を出すこと。いま国債の残高が240兆ありますが、他に例えば国鉄の債務が28兆あり、その他にもいろいろ国の隠れ借金が至るところにもぐり込んでいる。そういう借金を全部合わせると、だいたい300兆あるだろうと言われてる。表に出てるだけで240兆。その金利が12、3兆になり、それを毎年、一般会計から、つまり税金から払ってるんですね。このままでは、70兆ぐらいの国の財政規模のなかで税収は53兆ぐらいしかないんですから、社会保障費とか公共事業費などはもう出せなくなってくる。そうすると、例えば、いま景気を浮揚させるためにというので、出してる赤字国債、建設国債がまあ財政支出で景気浮揚に役立ってるかどうかということですが、それすらやらなくなったらものすごい不況になって、税収はさらに減り、財政も縮小する。日本経済全体が縮小してしまうのは目に見えてるから、まあ6850億は仕方がない。とりあえず金融システムの崩壊を防ぐために支出しようと、こうなった。
私は今まで日本の財政で、6850億どころじゃない猛烈な無駄を随分やってきたと思うんですよ。今もやりつつある。例えば、青函トンネル。着工したときは意味があったんだろうが、いまはだいたい飛行機で行っちゃう。永久に赤字を再生産するだけ青函トンネルに、今の金に直したら200兆ぐらいの金をかけた。これも壮大な無駄。本四架橋だって利用価値あまりないんですね。四国はそれによって経済的に非常に発展したかというとちっとも発展してないですよ。一本造ればいいんです。それを3本も造ったでしょう。それから、整備新幹線ってのはいま5線着工ってことになってますけど、あれも全く余計なことで、もういっぺん赤字国鉄をつくろうというのが整備新幹線問題。あれも壮大な無駄遣いですね。
 それともっと馬鹿げた無駄なことをこれからやろうとしてる。首都移転論ですよ。首都を移転するのに100兆かかりますね。5兆や10兆じゃ首都が移転できるわけがないですよ。道路を作り、宅地を作り、住宅を作り、ビルをたくさん作りですね、何十兆するビルを大蔵省ビル、外務省ビル、何とか省ビル、全部作らなきゃいかん。首都はいま東京のオフィスビルはガラガラなんだ。宅地も商業地もどんどん値段が下がってる。この値段が下げ止まらない限り景気は良くならないんですから。もういいですよ、ここまで下がったら。バブル前の水準まで下がったんですから。値下げになるよりは止まったほうがいい。そのためには土地譲渡取得税とか地下税とか保有税とか、ああいう税金を全部廃止したら土地は流動化し始めますね。土地が動き始めますよ。
 あとTBSの問題ですが、まあ僕はTBSと3年に及ぶ名誉棄損訴訟を争ったんです。僕は名誉棄損されたんですからね。新大阪の駅前に読売新聞は土地を持っていた。それを手分けして買いそうな相手に電話入れろと指示した。これはバブルの崩壊する直前だったんです。その年の3月に事業用資産の減価償却資産への買換え特例というものが切れるというので売った。佐川急便がたまたま202億で買うと言ってきたんで契約したんです。ところが、TBSは160億の値打ちしかない土地を260億で売った、渡辺恒雄と渡辺広康という、両渡辺社長が会って決めた、その背後には大物政治家の影がちらちらしておりました、と放送した。僕の写真出してテレビでじゃかじゃかやったわけですよ。それで僕は裁判を起こした。裁判長、こちら側の弁護士が相手を尋問しますね。「その260億で売ったのなら契約価格との間の差額になる60億どこに行ったんだと思っていたんだ」と聞いたら、TBSの記者は「渡辺、中曽根康弘」などという。中曽根さんなんていうのはそんなとこに土地があるなんてのは全然知らない。裁判になってから「読売新聞は、すごいところに土地持ってたんですね」なんて言われたけども。3人で20億づつ山分けしたって言うんだ。そういうでたらめを放送して3年間詫びないんだ。TBSっていうのはそういう体質があるんだな。そういうことを何度も重ねてんだTBSは。
 それからサブリミナルもやったし。今度が初めてじゃないんですね。今度のことは、僕は間接的な殺人だと言ってる。つまり、あの時にTBSがフェアな態度をとり、マスコミ人らしい、ジャーナリストらしい態度をとっていれば、坂本弁護士は殺されずに済んだ、と思うんです。社長同士ってものはいろんなところで会う。TBSの杉本君という専務は僕がワシントンの特派員の時に一緒にいたもんだから個人的には親しい。これが、あるパーティーで会った時に「本当に申し訳なかった、お詫びいたします」と詫びたですよ。しかし、専務が詫びたって何になるんだ、と返事をした。その後、僕は磯崎(TBS社長)に何度も会ったんだが知らん顔してる。
 講演にならんことを申し上げてしまって申し訳ありませんでしたが、時間がだいぶ来ちゃったから、後はトークショーというのがあるそうで、そちらの方で、ひとつ。
 
永井 
それでは皆さんから事前にいただきました質問などを中心に、トークショーの方に移らせていただきます。、私も後ろのほうで聞いていてドキドキしてしまうような爆弾発言を伺うことができましたが、このあたりのお話ですとか、そういった詳しいお話も伺ってみたいと思います。私は朝6時から毎朝、月木金なんですが、『ジパング朝6』という番組をやっておりまして、そこで読売新聞にお勤めになっていた政治評論家の中村慶一郎さんと一緒に仕事をさせていただいていて、お噂は随分うかがっていますが、お喫いになるのは葉巻、それからパイプですか。趣味は音楽でクラシックを聴くこと、とうかがってます。とてもモダンな方ですよ、と。
渡辺 
クラシック音楽と、僕の趣味はね、哲学の本を読むことなんですね。学生時代、哲学をやって、哲学者になろうと思ってましたから。それが、いまでも欲望は無くならないんで、夜寝る時に雑念を払ってストレスを解消するのにはね、哲学書を読むのが一番いいんですよ。これはまあ僕の趣味で。普通趣味っていうと、ゴルフと、こうくる。僕にとってゴルフはね、労働なんですね。労務。これは交際のためにやむを得ず、体を酷使するのがゴルフだと。これは、もう、僕ほどゴルフの下手な人間は読売新聞にもいないですね。
永井 
でも最近、100をお切りになって、その記念にテレフォンカードをお作りになったという噂を。
渡辺 
それは、僕が刷ったんじゃない。部長連合会というのがあって、その忘年会の日の朝に役員会があった。12時に終わった。6時には忘年会だった。その12時の段階で、僕は「役員会をこれにて閉会する。時に私事だが、岸内閣依頼、内閣は17代変わり。約40年経つが、その間ゴルフをやって100を切ったことが一度もないのは僕ぐらいだろう。その僕が突如93を出した」という報告をしたんです。そうしたら夕方の忘年会の時に、僕が壇上でスピーチを終えたら、ちょっと社長、そこでお待ちください、と言われてもらったのがそのテレフォンカードね。つまり12時にそのニュースが入って、僕のあなたのような美人秘書がですね、さっさっさっさと漫画、イラストを描きましてね、そのイラストを入れて何十枚か印刷をして僕にくれたのは6時ですね。新聞記者っていうのはそういうこともスピーディーにできるということですね。
永井 
また渡辺社長ご自身が、とても進取の気性に富んだ方だという話をうかがっているんですが、なにしろ、記者時代に新しい文房具などのアイテムを取り入れるのが誰よりも早かったというのをうかがったんですけれども。
渡辺 
そういう趣味はありますね。それから、ワープロも今は誰でも打つけれども、僕が論説委員長のときに、論説委員会のまんなかにワープロを持ってこさせて、僕が打ち始めたものだから、論説委員もみんなワープロを打ちはじめ、記者もワープロを打ち始め、いまワープロじゃない原稿は通用しないというふうになったんです。ところがいま自分じゃ打てないです。秘書に全部打たせてます。
永井 
いまだにやっぱり新しいものにはこうぱぱっと触覚が動くタイプですか。
渡辺 
僕は今年古稀ですから、70年間働き続けた触覚は老化状態で退化しまして、世の中の動きのほうがテンポが速くて追いつけないいというのが現状ですね。
永井 
だいたい1週間の過ごし方というのをここでうかがわせていただきたいんですが、土曜日、日曜日というのはお休みになるんですか。
社長 
土曜日はしばしば交際上のゴルフですね。1週間分の新聞のスクラップを秘書が何人かで作ってくれるんです。例えば金融、財政、外交、安全保障、社会保障などの項目に分けて全部スクラップする。日曜日はその1週間分を持って帰り、一日それを読んで自分で要るものと要らないものと分け、古かったりだぶったものは捨てて半分とか3分の1くらいに縮小して、それをまた自分で大きく項目別に並べてクリップをし、僕の部屋の脇の幾つかの棚に全部入れておかないと落ち着かないという性癖が40年間続いている。野口悠紀雄さんの「超整理法」は役に立たない。
永井 
私あれやっているんですけれども。だめですか。
渡辺 
野口さんの場合は経済学者ですから、彼の必要な項目は少ないですよ、僕の場合はいま言った項目だけでも100ぐらいあるんですから。その他にも販売、広告、制作、編集、論説、調査研究部門があり、巨人とかヴェルディとか、その他30いくつかの関連会社子会社を持ち、その人事、決算等ですね、全部見ているんで野口流のファイリングをやっていたんじゃ何の役にも立たないですね。
永井 
かなり細分化していらっしゃるわけですね。
渡辺 
そうです。細分化しなければ、どこに何が入っているかわからない。毎日書類との格闘をしていますから。一日に何人も人が来ますよね、局長だとか、部長だとか。いろんな書類を持ってきます。書類はだんだんうず高くなって、ピサの斜塔みたいになってくる。世の中から印刷物っていうのは全部取り除いたら楽でしょうね。
永井 
毎朝番組で新聞を紹介させていただくコーナーがあって、読売新聞も紹介させていただいているんですけれども、あの休刊日の朝の幸福ってないですよね。
渡辺 
まったく同感だな。
永井 
今日はスポーツ紙だけだと思うと1時間眠れるとか、2時間眠れるとか。
渡辺 
テレビがないともっといいですね。
永井 
すみません。休局日みたいなのがあると。
渡辺 
月に一度あったらね、人間少し中休みができる。
永井 
休刊日があるのに、なんで休局日がないんでしょうね。私はよくそれを思うんですよ。全員休んでいいよっていう日があったらこんなに幸福なことはないなと、これは私的なことなんで別に置いておいて。ということは、毎日デイリーで新聞を読んでいらっしゃって、そうやって土曜日も日曜日も仕事で費やしていらっしゃる。そうするとあのお休みっていうのはいつお取りになるんですか。
渡辺 
休みは夜中で、夜寝る前に好きな本をだいたい2時間前後読んで、この浮世から離れた思索にふける、これが最大の休憩、休養方法ですね。
永井 
何時間ぐらいですか。
渡辺 
これはまた難しいんでね、夜あるものを読んでいて興奮し始めると4時間か5時間眠れなくなることがある。そうすると翌日非常に苦しいですから、催眠剤飲んで、まあ2時間ぐらいで寝るようにしてますけどね。夜家に帰るのが遅いですから。
永井 
何時ぐらい。
渡辺 
だいたい10時ごろに帰って、やっぱりしゃくにさわるけどニュースステーションをちょっと見たり、もっと早く帰れたときは9時のNHKニュースを見てそのまま寝室にもぐり込んで読書の時間に入る。
永井 
私たちの世界でも読める本を何かご愛読の中から紹介していただけないですか。
渡辺 
あなたがたの世代で読んで役にたつ本ですか。うーん。
永井 
いま膨大なインデックスの中から探しておられる。
渡辺 
いや、僕は人に読むことを勧めるときには、古典を読めとばかり言うんですが、古典は興味がないと思うので。最近の本で読んで面白いのは、中谷巌さんとか竹内靖雄さん。竹内さんの本で僕はぜひ読んでもらいたいと思うのは一番簡単なのは中公新書にある「経済倫理学のすすめ」っていう本ですね。それからやっぱり同じ著書で、最近出たのでは「イソップ寓話の経済学」、その中間に竹内さんは毎年一冊ぐらいずつ出しております。特に「経済倫理学のすすめ」は絶対に読んでおいてもらいたい。というのは人間社会の経済行動っていうのは特に税制などは国の政治の中で一番大事なのは財政であり、財政の中核になるのが歳入、つまり税制をどうするかということです。その税制を動かしている心理的な要因は嫉妬心なんです。それをうまく分析して書いているのがこの竹内さんの本。これは大蔵省の課長クラスが僕のところに来ると、局長クラスでもそうですが、「君は『経済倫理学のすすめ』を読んだか、竹内さんの」と聞くんだが、ほとんど読んでいない。僕は10冊ぐらい買って大蔵省の役人にはみんなやりましたよ。「これをまず読んどいてくれ」と特に税制を議論するような立場の人間はこれを読んで頭をチェンジしてくれと、発想を変えてくれということをいってますがね。
永井 
ありがとうございます。是非読ませていただきたいと思います。いま税制の話が出たんで、質問をしてくださいと言われたいくつかの項目のなかで、基調講演の方で少しお話いただいた住専の処理問題についてうかがいます。これは私が一個人としてどう思っていらっしゃるか伺いたいんですが、一般会計からこの6850億円を出すということに、私は個人的には納得がいかない。だからといって1日2億円をどぶに捨てているようなピケにも反対である。だからといって別に政策があるわけではないんですが。では6850億円を出したとすると私たちはこのまま泣き寝入りなんだろうかと。その人たちに対する処罰がない。それで私たちはこのまま納得して税金を払っていっていいんだろうかという気持ちがあるんですね。HIV訴訟の時、菅直人大臣が土下座をして謝った。でその瞬間にこれを求めていたんじゃないという感想をみなさん持ったと思うんですね。やっぱり原因になる人たちの顔が見えてその処遇は刑事罰なのかどうかわからないですけれど、そういうことを追求して初めて納得して税金が出せるのではないかと思うんですけれど。
渡辺 
ものの順序がございまして、まず予算を通し、即予算が通ったら直ちにその関係法律案を通して、それからじゃなきゃできない話なんですね。悪い奴の顔は週刊誌等でも報じられてますが、犯罪を構成するに至るのかがこれから調べられて、ある種の検察権を持った人間、捜査権を持った人間にその権力を与える法律、それを作ってから動いて、誰がどれだけ悪いことをしたかが初めてわかることでありまして、いま先に顔を出せって言っても無理なのが、政治というものの仕組みなんです。ただ政治責任と刑事責任とは違うんですね。刑事責任というのはレスポンスビリティというんですね。いま永井さんの言われたのはアカウンタビリティという説明責任とでも言ったらいいと思うんですけれども、それは政治家にあることは事実なんですね。つまりどうしてバブルが発生し、そのプロセスでどうしてそのバブルが頂点にいったときに融資の総量規制をしたが、その時、なぜ農協だけは住専に無制限に金を出していいということにしたか。それについてのアカウンタビリティというものはどこにあるのか、誰れにあるのか、これははっきりしているんですよ。
永井 
負うべきだと。
渡辺 
と思いますね。
永井 
そうですか。政治、政治家の方のお話は今のでわかったんですけれども、今度は役所という意味ではどういうふうにお考えですか。
渡辺 
大蔵省もうかつなことはあったけれども最大の責任は農林省にある。昔の農民というのは実にみじめな時代があった。ところが戦前戦後、農家だけが腹がへらないで済んだ。その後その農家の票っていうのが非常に威力を持ってきて農林族議員というものができ、農林省の役人はそれを背景にしている。専業農家は一番大事にしなきゃならないが、いま400万を超しているはずの農家のうち専業は45万ぐらいだと思いますね。兼業農家は豊かな生活をしている。だから全国平均では農家の貯蓄残高は都会のサラリーマンの倍ありますね。いま個人の金融資産は1千1兆円あるっていうことを忘れちゃいけない。1兆1千円寝かせている人達がたった6850億円のためになんでこんなに騒ぐのか、不思議でならない。だからもっと物事はマクロでその広い視野で物を見ないと、物を間違えることがずいぶんあるんです。
読売新聞も1000万部出ているけども全部の新聞を合わせると4千何百万出ていますから4分の1の少数になってしまうんですね。特に地方紙はほとんど共同通信の配信する原稿を社説として載せてるんですよ。新聞は新聞社の社論がなければおかしいじゃないですか、尾崎咢堂は27歳で新潟日報の主筆になった。僕はそのことに憧れておって今でも主筆を離さないけれども、現在は県紙というのは論説委員なんていらないと、つまり共同通信が瞬時にして送ってくるんですから。いま公取委員会が、新聞の再販を廃止しろと動いている。これは新聞の部数を半分に減らせっていうことと同じなんです。戸別配達が崩壊しますから、半分じゃ済まないでしょう。10分の1になる。いま新聞の部数は世界で日本が一番です。それを潰そうというのが公取委員会の独禁法の専門学者。この連中が国の産業憲法である独禁法の解釈を勝手に変える。解釈を180度平気で変えるんですから。法律によらず国会の議を経ず閣議決定もなしに公取委員会の一片の告示で政策を180度変えることができるんですから。こういう馬鹿なことが民主国家で行われているっていうことに対して、僕は許せないものを感ずるんですがね。
永井 
私の質問に関して完璧にお答えいただいたと思いますので、いまのお話の中からちょっと、聞きたいことが2つほどあるんですけれども。まずマクロにもっと考えろとおっしゃったと思うんですが、自分のなかでの視野の広げ方っていうのはどういうふうに努力なさったんですか、若いころに。
渡辺 
まあ僕はいろんな人のところに平気で行ったんですよ。ずうずうしいから。いろんな学者とか政治家とかね。こんにちはって言ってのこのこ行って会ってくれたんですよ。だから学生時代に例えば佐藤栄作などいろんな政治家も。不思議でしょうがない。今だったら秘書の段階で断られたでしょう。僕は学生運動やっていました。
正直に申し上げて僕は共産党員でありました。19歳で陸軍2等兵になって徴兵され、朝から晩まで天皇の名においてぶん殴られ、蹴飛ばされ、そして19歳で死に追いやられる99%俺は死ぬと思っていた。軍国少年にならずに絶えず反戦的な立場で、校長を殴るなど悪いこともした。そして共産主義というものに、内部で哲学的に疑問を抱きました。マルクス主義には哲学がない、倫理学がない、人間の価値というものを認めることができない、人格というものが説明できない。これは哲学ではない、さようなら。結局は脱党したら除名されたんですけれども。除名された理由は警察のスパイだということでした。僕は警察になんの御用もなかったんだけれども、その理由がしゃくにさわったから、今度は反共に変わったんです。
そういう学生運動をやっているうちにいろんな人に会って、いろんな意見を聞いたんです。僕は哲学科専攻であったけれども、哲学的な概論、学問や実学をいろいろ勉強したから、いろんな方面に興味を持って来ました。大学を出るまでは僕は哲学専攻ですから哲学書以外は読まない。文学書も高等学校まで。新聞社に入ってから特に政治史、政治学、経済学、財政学等は全部大学出てから勉強したからね。自分の仕事は全部独学ですよ。誰にも教わったことはない。僕は哲学だけしか人に教わったことはないんですから。哲学っていうものは人に教わるものではないんで、これはまさに対話の中からということも言えるけれどもとにかく本を自分で読む以外ないんですからね。特に哲学っていうものはギリシャ語とラテン語とドイツ語がわからなきゃ、翻訳だけじゃ絶対だめなんですよ。これは時間がかかるんです。だから僕は大学にさよならするのをなるべく延ばしてよかったと思っています。
すべて僕は悔いはないという、いい青春を送った。肉体的に物理的にどん底です。 喰う飯はなく栄養失調すれすれ、進駐軍は悪いことばっかりしていた。そういう一番悪い時代だけれども精神的には一番充実した時代ですよね。緊張感もあったし。
勉強はまだまだしなきゃならない。財政学だっていろんな立場がありますし、経済学だってケインズからフリードマン、ハイエといろいろあり、法律敵対経済学なんていうのは一番新しいルーカスという去年ノーベル賞をもらった人の学問。で日本のほとんどの官僚、経済学者はルーカスなんてあんなくだらない経済学はない、と言っていたのにノーベル賞をもらうんですね。だからこの経済っていうのは非常に面白い。財政も、みればみるほど面白いですよね。ドリカムとかなんとかかんとか、いろいろ僕の知らない名前がたくさんあって飛んだり跳ねたり歌ったりするのが面白いという青年がどんどん増えて、活字離れ、文字離れをして、ものを考えなくなって、ただ肉体的な動きのほうがだんだんよくなる世の中になるとまあ日本は退化してだんだんだんだん滅びていく。世界一高い貯蓄率もどんどん減っていますからあと10年か20年で底をつくでしょう。それから国際収支。あらゆる意味で日本はだんだん悪くなるこのままでは。これが心配だから、今日ここにおられるような若いみなさんがそういうことを早く気がついて自分たちの手で日本をつくらないと、この日本は滅びるよと。今の政治家、今の権力者に任せておいたら日本は滅びるよという自覚を持っていただきたいと思うんですよ。
永井 
実はそういう危機感というのは漠然と持っている人たち、これから新しい21世紀っていう時代を担うつもりでいるという人たちがここに集まっているわけなんですけれども、いまのお話、非常に参考になりました。でもまた、本を読むことと同時にやっぱり実践的に人にお会いになってちょっと、これは私も聞きかじりなんですけれども、自転車で散歩にお出掛けになって読売新聞の販売店を尋ねて、「読売新聞、売れてますか」というふうにお聞きになったことがあるというお話をきいたんですけれども、それは事実でしょうか。
渡辺 
それはね、この間までは体のために自転車にできるだけ乗ると。最近電動自転車っていうのができたの。それは僕がこぐより速いんだよね。70歳の老人からみると電動自転車っていうのは非常にありがたい。行動半径は非常に広がるんですよ。それで、新聞販売店ていうのは面白いですよ、新聞販売店は1軒1軒敵も味方もありますが、悪い販売店っていうのは汚くて中が暗いんです。何故暗くしているかというとね、見られては困るもの、つまり配達しない新聞があるからなんですよ。
永井 
じゃ適地偵察でもあったわけですね。
渡辺 
それもある。ずーっと見るとね、どこの新聞が強い、どこの新聞が弱いというのが実によくわかる。
永井 
販売店の方は驚くでしょうね。
渡辺 
読売新聞だって僕は実は読売の社長だなんて絶対言わないですよ。知らん顔して「空気入れ、貸してください」って入っていくと貸してくれるんです。
永井 
でもお顔がわからないんですか。
渡辺 
いやいやわかんないですよ。店主はわかるだろうけれども、店先の店員はわからない。そして、僕の自慢話になるから困るんだけれども、読売新聞っていうのは蛍光灯をつけて明るくてね、玄関は全部開いていて、きれいに整頓されてだね、中にはよけいなものはなにも置いてないですよ。新聞紙もその日必要なものしか置いてない。だから読売は大丈夫だと。よその新聞では、ここは長いことないなと、あと何年持つだろうかという判断をするのはそういう現地を見ないとわからないですよ。 本当は日本中を見なきゃいけない。東京だけ見ていたんじゃいけないんで。
永井 
熱意の方ですね。
渡辺 
これはね、喰うためにはしょうがないですよ。残念ながら、毎日朝から晩まで哲学書を読んでいたら会社は潰れますよ。やっぱりそれと全く対局的なことをしなきゃしょうがない。ま、政治家がその本会議場で大演説する必要があるけれども、これはどっか辺地に行ってね、農家のおばさんと握手をする必要があるのと同じようなことですからね、そういうものですよ。そうでなければ、ただ一介のサラリーマンとこういうことになる。
永井
まだまだうかがいたいことは実はたくさんあるんですけども、お時間のほうがあまりないので会場の方から、質問をお一人だけ、事前に選ばせていただきました。あのタテノヨシトさん、いらっしゃいますか。では質問をお願いいたします。


 (場内質問:Jリーグについて)

渡辺 
僕とJリーグのチェアマンの川淵三郎君が徹底的に対立しているんですね。彼は理事長なんですが、Jリーグ規約12章に理事長の決定は最終拘束力を持ち、これに反対があっても、裁判所に訴えることはできない。と書いてあるんですよ。これは憲法違反の規約なんです。憲法には日本国民はなに人も裁判所で公正な裁判を受ける権利を持つということが書いてある。こういう憲法違反の独裁権を持った川淵三郎は大変間違った考え方をしている。
僕は地方分権というのは条件つき反対なんですよ。ある条件では地方分権しなきゃならん。地方分権なんてものは3300もある市町村に全部分権してごらんなさい、日本は潰れますよ。そんなばかなことを考えちゃいかん。それよりも道州制をまず作って、日本を8つか9つぐらいに割ってそこから、その大きな地方自治っていうものをやっていかなきゃならん。それを川淵君は行政も知らんくせにそのサッカーのフランチャイズは市町村でなければならない、ということを自分の作った最大の哲学だと思い込んでいる。例えば東京の23区はサッカーのフランチャイズになれないんです。どんなに金持ちの区があっても区だからいけないんです。それから都道府県は持っちゃいけないんです。市じゃなきゃいかんのですよ。
ヴェルディは川崎市の等々力にあるんですね。その競技場には6000しか椅子がなかったんです。ところがJリーグ規約を見ると1万5000以上椅子席のない競技場をフランチャイズにすることはできないと書いてある。そうすると違法でしょう。だから出ていけと読売に言ったのは川淵なんです。それで僕は東京都知事と話をして鈴木都知事が36億出すと、読売は25億出してくれと、周辺3社が5億づつ出すと。そこで100億の第3セクターを作って、400億ぐらいお金をかけてあそこに4万人入れる競技場を作ろうじゃないですかというんで、僕は約束していた。その話がスポーツ新聞に流れて、川崎を出ていくとはなんだと、読売たたきが始まったんです。そしたら川淵君は読売が等々力から出ていくことは許さんと言い始めた。そこで調布騒動っていうのは起きたんですね。
いままで読売新聞はヴェルディのために日本テレビとともに25年間に約300億金かけてアマチュアからやっとプロに育てたんです。そういう企業努力があるから一番人気のチームになった。お金をかけてカズはじめ国産のいい選手を揃え、海外からも選手を連れてきた。そういう企業努力を無視して3300ある市町村のどれか一つにしなさいというのはおかしいじゃないか。自治体にそんな金があるわけないんですよ。あのガンバ大阪っていうのがあるでしょう。あれは協約、Jリーグ規約違反のチームですよ。なぜかっていうと、あれは吹田市にあるんです。大阪市にないんですよ。あれはガンバ吹田といわなければならないんです。等々力というのは昔は東京区だったんです。それであそこに多摩川が流れていましてね、等々力町っていうのがありましてね、当時は村だったかもしらんけれど。多摩川の流れを人工的に変えたわけですよ。それで川崎側に等々力の一部が取り残されましてね、それが川崎市に編入されたんです。もともとは等々力っていうのは東京なんです。
また企業の名前は全部チーム名から完全に外せと、登記上の読売とか日本テレビとかという名前を取れという。これでは企業にとっては何のメリットもなくなる。
金はどこからも出ないですよ。そうするとスポーツ自身が潰れていく。いま16あるチームのうち、6チームが15人の理事会に出れるんです。あとの9チームはJリーグと何の関係もないサッカーボスですね、それが全部決めちゃうんです。1チームに300億円を使った所有者が何も発言できない。そんなら企業を完全に排斥したらどうかと。ナビスコカップ、サントリーシリーズ、ニコスカップなどの企業名はじゃかじゃか使わせてね、5億か10億のためですよ。僕等は300億円もの金かけてきたし、これからもかけるつもりなのに、5億か10億出して「読売カップ」としたほうがいいですよ。 企業排斥、市町村主義というものでスポーツが育つものですか。あのオリンピックだってそうなんですよね。金をじゃんじゃん取ってですね、まあ近代オリンピックとか参加国を数多くするようにしているんだろうと思いますよ。だから財政を無視してスポーツというものは育たないと思いますよ。高校野球だってそうですよ。
永井 
さて、よろしいでしょうか。お時間が過ぎておりますので、そろそろ終わりにさせていただきたいんですが。最後の1問だけ、いつものレギュラーの質問なんで。座右の銘を。
渡辺 
座右の銘はないんですけれども、社長室には大野伴睦さんと佐藤栄作さんが渡辺君の為に、と書いてくれた書が2枚あるんです。ひとつは「百忍自ずから憂いなし」というんです。これは河野一郎さんが自民党を脱党しようという騒ぎの時に大野伴睦さんが河野さんの振り上げた拳を下ろさせるために書いたもので、「忍耐を重ねれば心配はないよ」という意味ですね。それから佐藤栄作さんのは本当に面白いんだ。僕はあわて者で気が短く、すぐカッとくるでしょう。佐藤さんが僕になんという書をくれたか。「静観自ずから得る」っていうんですよ。静かに見てれば自ずからこれは僕は「棚からぼたもち」だと翻訳したんだけれどもね、そのじっとしてればとにかく入ってくる。それは僕はがちゃがちゃ絶えずなんかやってね、川淵三郎を敵にしたりね、まあTBSを敵にしたりね、やたらに敵を作っちゃやってるでしょう。だから長生きしているのか、もしかしたらこれで死んでしまうのか、結果を見なきゃわかりませんけれども。「静観自ずから得る」というのは佐藤さんが僕を諭すためにくれた言葉だなと。大野伴睦と佐藤栄作というのは死ぬまで仲が悪かった。両極の人です。この2つをある意味じゃ座右の銘にしているわけです。
永井 
ありがとうございました。渡辺恒雄さんでした。大きな拍手をお送りください。どうぞ今後とも若い私たちの世代をお導き下さいませ。ありがとうございました。

渡辺氏より若者へのメッセージ
「このままでは、あらゆる意味で日本はだんだん悪くなる。これが心配だから今日ここにおられるような若い皆さんがそういうことに早く気づいて、自分達の手で日本をつくらないとこの日本は滅びるよ。今の政治家、今の権力者に任せておいたら日本は滅びるよという自覚を持って頂きたいと思う。」

http://www.tfcc.or.jp/economy/watanabe.html

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