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植草一秀:今週の内外経済金融情勢の展望 = スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.asyura2.com/07/hasan50/msg/865.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 6 月 18 日 23:49:21: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html

 米国株式市場の株価調整は軽微に終了しつつあるように見える。米国経済のソフトランディング期待が基本的背景である。本年前半、米国経済悲観論が広がった。米国での住宅価格下落が不動産ローンの焦げ付きを生み、資産価格下落、個人消費減退につながり、米国経済が失速するとの懸念が強くとなえられた。筆者は住宅市場の先行き動向と住宅市場調整が経済全体に与える影響を見極める必要があると見たが、FRBの適切な金融政策運営により、米国経済がソフトランディングする可能性が高いと予測した。
 先週は市場に「ソフトランディング期待」が再び回帰した。米国経済は底堅く推移する一方、物価は根幹の部分で安定している。「インフレなき成長」が持続する可能性が高いとの見通しが再び優勢になった。筆者は原油価格、中国経済などにリスクが残存はするが、FRBの適切な政策運営を基本背景として米国経済がソフトランディングしてゆく可能性が高いと予想してきた。ただし、本年3月以降のNY株価の上昇速度が非常に速いので、小幅の株価調整が生じるリスクを念頭に入れておくべきだと述べた。

 6月初旬に小幅の株価調整が生じた。懸念してきた調整が現実化した。しかし、その後の政策当局の先行き見通しの公表、経済活動および物価動向を示す経済指標の発表を受けて、米国経済「ソフトランディング期待」が強まり、NY株価は反発に転じた。
 日本の株式市場は米国株式市場の影響を強く受けている。日本企業の株価が全体として割安であることを繰り返し述べてきたが、短期的な株価変動は米国市場動向、適正な株価水準への回帰以外に、短期的な景気の変化方向、金融政策および長短金利動向、政府の経済政策の影響を受けている。
 日本経済の活動に頭打ち傾向が観測されており、日本銀行の追加金利引上げも予想され長期金利が上昇し、これらが株価上昇抑制要因になっている。だが、米国経済および米国株式市場が堅調に転じ、日本経済の先行き不安が後退し、金利上昇懸念が後退するなら、日本の株価は自律的な上昇を示す潜在力を有していると考えられる。今週は日経平均株価が2月26日に記録した18,215円の年初来高値を更新して新たな株価の上方への水準修正を開始する可能性があると考えられる。

 先週13日(水)に発表された米国5月小売売上高は市場予想前月比+0.6%を大幅に上回る前月比+1.4%を記録した。米国個人消費が依然として堅調であることを示した。同日公表された地区連銀経済報告(ベージュブック)では、米国の経済活動が4月中旬から5月にかけて引き続き拡大したことを示した。景気失速の懸念は大幅に後退している。ただし、15日(金)に発表された5月鉱工業生産指数は前月比横ばいとなり、同日発表された6月ミシガン大学消費者信頼感指数は10ヵ月ぶりの低水準となる83.7に低下した。米国経済は底堅いが弱めの経済指標も発表されている。
 14日(木)に発表された5月卸売物価指数は前月比+0.9%の高い上昇を示したが、食品、エネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%上昇にとどまった。15日(金)に発表された5月消費者物価指数は1年半ぶりの高い伸び率となる+0.7%上昇を示したが、コア指数は市場予想の+0.2%を下回る+0.1%上昇にとどまった。原油価格上昇の影響で見かけの物価上昇率は高まったが、コアの物価上昇率は抑制されていることが改めて確認された。

日本では11日(月)に発表された2007年1−3月期実質GDP成長率が前期比+0.6%(年率+2.4%)から、前期比+0.8%(年率+3.3%)に上方修正された。民間設備投資が大幅に上方修正されたことが主因だが、事前の市場予想の範囲内の統計発表だった。
5月下旬から先週にかけて、国内長期金利が大幅に上昇した。10年国債先物利回りは1.9%水準から2.2%水準へと30べーシス・ポイントも上昇した。米国長期金利上昇の影響が強いが、日本銀行の追加金利引上げ観測も影響した。日経平均株価が18,000円水準から17,600円水準に下落した大きな背景が長期金利の上昇である。

 しかし、米国経済堅調=米国早期金利引下げ期待後退=米国長期金利上昇=米国株価下落を背景にした日本長期金利上昇=日本株価下落の連動はとりあえず一巡した可能性が高い。原油価格が再び騰勢を示し始めており、警戒を維持する必要があるが、米国経済過熱=インフレ圧力増大=米国長短金利大幅上昇=株価下落拡大のシナリオが現実化する可能性は低い。経済指標、物価指標、金融政策に引き続き注視が必要だが、米国経済がソフトランディングを実現し、株価が堅調に推移する可能性は依然として高いと考える。
 米国経済がソフトランディングを実現する場合、日本経済の調整局面入りのリスクは低下することになると思われる。日本経済の成長が持続する場合、日本銀行は追加金利引上げを段階的に実施してゆくと考えられる。株式市場、債券市場は日銀の政策対応に神経質になると考えられるが、経済成長率は鈍化しており、インフレは完全に抑制されており、一方、日本企業の株価水準は割安であることから日本の株価は今後も堅調なトレンドを示す可能性が高いと考えられる。日経平均株価が2万円の大台を回復することはそれほど遠い先でないと考える。

 今週、米国では19日(火)に5月住宅着工件数および住宅着工許可件数、5月半導体製造装置BBレシオが、21日(木)に5月コンファレンスボード景気先行指数が発表される。FRB関係者の発言機会としては、18日(月)、19日(火)にミネハン・ボストン連銀総裁挨拶、20日(水)にイエレン・サンフランシスコ連銀総裁の挨拶、フィッシャー・ダラス連銀総裁の講演、22日(木)にピアナルト・クリーブランド連銀総裁の挨拶、23日(金)にミシュキン・FRB理事の講演が予定されている。
 国内では20日(水)に4−6月法人企業景気予測調査、4月全産業活動指数が発表される。重要経済統計の発表は予定されておらず、金融市場は内外経済の先行き見通しの振れに左右される展開となる。
米国経済ソフトランディング期待が高まれば、NY株価が堅調に推移し、日本の株価が上昇することも期待される。債券市場が落ち着きを取り戻すかどうかも重要なポイントになる。

 国内政局では通常国会が12日間延長され、参議院選挙の投票日が7月29日になる可能性が高まった。年金記録の杜撰な管理が明るみに出て、安倍政権の支持率が急落した。与党はこの逆風を弱めたうえで参議院選挙に臨みたいとの意向を強く有しており、通常国会の会期延長はその文脈上の戦術と理解できる。
 問題はテレビなどの主要メディアの報道姿勢に著しい変化が観測されることだ。「消えた年金記録」問題の責任は政府にあることは明白であるが、「問題の所在は社会保険庁内部の強固な組合にある」、「政府提出の国家公務員法改正案や社会保険庁解体法案がこうした問題への有力な対応策である」といった、与党の選挙向けアピールを大手メディアが一斉に報道し始めている。
  政治権力がメディアをコントロールし、世論を操作し、国民の投票行動が誘導されるなら、民主主義は根幹から崩れ去る。野党は政権によるメディア・コントロールの実態とその弊害を有権者に分かり易く示す必要がある。政府提案の公務員法改正案は「天下り廃絶」ではなく、「天下り温存」をもたらすものである。有権者に正しい情報が的確に伝えられる報道の在り方を真剣に考えなければ、日本の将来はますます危うくなる。

2007年6月18日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀

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