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壊れた中国 無秩序国家の惨憺たる状況は10年後も変わらない = BusinessWeek
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 17 日 09:36:42: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070803/131649/?P=1

Pete Engardio (BusinessWeek誌、国際シニアライター)
Dexter Roberts (BusinessWeek誌、北京支局長)
Frederik Balfour (BusinessWeek誌、香港駐在アジア特派員)
Bruce Einhorn (BusinessWeek誌、香港支局特派員)

米国時間2007年7月12日更新 「Broken China」

 中国の官僚機構には驚異的な底力がある。どこかの市長が、海を埋め立てて大規模な工業団地を作る計画を発表したとしよう。ほんの2〜3年後にどうなっているか。見渡す限りに工場が立ち並び、道路が伸び、何千棟ものアパートで多くの家族が生活を営み、1万人単位の労働者が「第2期工事」に取り掛かっている…。

 これが世界が恐れおののく中国の姿だ。人と資本を一気に動員して驚異的なスピードで偉業を成し遂げてしまう途方もない能力こそが、過去30年にわたって年平均9.5%もの急成長を続けさせた原動力である。Tシャツからテレビまで中国はあらゆる分野で輸出大国となり、その消費者市場は世界で最も急拡大している。蓄えた巨額の富によって、南米の鉱物資源や米IBM(IBM)のパソコン部門、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループの大量の株式などを買い漁っている。

奇跡の経済成長の裏では行政的失敗だらけ

 北京では2008年夏のオリンピックまでにスタジアムや高速道路、ホテルなどを完成させられるか――。もちろんである。しかも、ほとんどの金メダルを獲得するという目標を成し遂げることも請け合いだ。

 では、その中国政府がなぜ、人体に危険なほどに汚染された海産物や練り歯磨き、医薬品などを輸出する業者を取り締まることができないのか。国内外の専門家から何年も警告を受けていたのにもかかわらずである。嫌になるほど続々と出てくる中国製品に関する報道にその答えがある。

 すなわち、中国が遂げた「奇跡の経済成長」も、1枚皮を剥げば、行政上の失敗だらけということだ。製品の安全性が問題になっているが、それは北京政府の無能さをさらけ出したほんの一例に過ぎない。製造業から環境問題、著作権、資本市場に至るまで、中国政府がまともに統制できている分野は1つもない。

 中国共産党はインターネットの検閲は完璧にこなすのに、北京のど真ん中で偽キャロウェイのゴルフクラブや偽アイポッドを売る連中は野放しにしている。1990年代初頭に知的財産権の遵守について米国に確約したにもかかわらずである。

 上海証券取引所は世界で最も活気のある取引所であり、最先端のペーパーレス取引システムを備えている。だが、90年の設立当時の上場株はわずか8銘柄で“カジノ”同然だった。規制緩和によって上場株は1118銘柄に増加したが、依然として規模の大きいカジノに過ぎない。

 中国政府は環境対策に積極的に取り組むと公言しながら、深刻な汚染をもたらす工場や石炭発電所の新規建設をやめようとしない。

 共産党は何十年も社会保障制度の整備について議論してきたが、労働者人口の高齢化が進んでいるというのに、医療、教育、年金などで迫る危機を食い止めるために十分な投資をしているとは言えない。

 経済協力開発機構(OECD)によれば、研究開発費の支出で中国は日本を上回っている。しかし、その成果はお粗末なものだ。

中国の経済成長モデルは限界を迎えた

 こうした様々な問題は、計画経済から自由経済へと驚異的な速さで移行中の国が経験する「成長の痛み」であって大目に見るべきだという意見もある。だが、中国が抱える構造的欠陥の多くが包み隠されたままでいるということが分かってきたのだ。輸出産業を育成し、公共事業を推進する政策は、国内総生産(GDP)を大幅に引き上げたが、同じ政策を続けていては中国経済をもっと高いレベルに押し上げることはできない。経済成長を追求するあまり、誰もが利用できる基本的な医療保障や、環境、安全、企業に対する行動規制などを、国全体に整えるための投資を怠った。

 この状況を変えるためには、多くの経済プロジェクトに投入している資源を大胆にシフトさせることが必要だ。北京政府は経済の過熱を警戒してはいるが、高い成長率を減速させることには極めて慎重である。成長を維持しなければ、毎年労働市場になだれ込んでくる何百万人もの若者に仕事を提供できなくなってしまうからだ。この秋に5年に1度の党大会を控える中国では、成長に水を差すようなことは誰にもできない。

 「中国の経済成長モデルは、生産拡大というシンプルな考えに基づくものだったが、このモデルはもはや限界に達した」。北京の中国人民大学で経済学を教える陳秀山(チェン・シュウシャン)氏は言う。

 もっと厄介な問題は中国の権力構造そのものに潜んでいる。北京の共産党中央政治局が政治活動を完全に牛耳っていると言いながら、共産党の地方官僚は社会的にも経済的にも好き放題にやっているのだ。GDP拡大に貢献すれば自分たちの昇進や昇給につながるため、規制を無視したり企業に特権を与えたりすることが横行している。かくして中国には、ほとんど改革不能とも思われる官僚機構が出来上がった。北京の中央政府が飲めない水や息もできないほどの大気汚染などに真摯に取り組んでも、現行制度の中で既得権益を握った何十万人もの党官吏の抵抗に遭って何も変わらない。

 北京政府は路線転換の必要性を認識している。中国は1兆2000億ドルに上る外貨準備を抱えており、いかなる国もこれほどの額を蓄えた例はない。膨れ上がる貿易黒字は国力の象徴だが、見方を変えれば、輸出への過度の依存、国内消費の弱さ、金融の未熟さを示している。社会福祉の未整備は都市地域と農村地域の収入格差を拡大させ、政治的な“爆弾”になっている。

 胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席は、儒教を引き合いに出して「調和のある社会」の必要性を繰り返し説くが、要するに今日の中国はその対極にあるということだ。今年3月、温家宝(ウェン・チアパオ)首相は現在の中国経済を「不安定、不均衡、非協調的、持続不可能」と批判した。

地方における官民癒着が中国発展の足かせに

 政府職員の名誉のために言っておくと、彼らは様々な改善策も打ってきた。規制当局は今年に入ってから180以上の違法食品メーカーに業務停止処分を下した。政府機関に合法ソフトウエアの使用を命じる通達を発令したところ、海賊版プログラムの割合は2001年の92%から82%に下がった。北京政府は新たな医療保障の計画を立案し、株式市場の過熱抑制や厳しい環境規制の法制化にも取り組んでいる。また、2006年だけでも3万人近くの官僚が汚職で起訴された。

 もし改革派が失敗するようなことがあれば注意が必要だ。ワシントンから東京まで世界が前提にしているのは、中国が近代的市場経済へ移行し、責任ある世界市民となる過渡期にあるということだ。しかし、問題をいつまでも抱え続けるなら、製品の安全性を保証することもできず、知的財産権は侵害し放題、環境汚染にも歯止めをかけられない、そんなとんでもない国を巨大な貿易相手としてつき合っていかなければならない。

 それでも中国は今後何年にもわたって急成長を続けるだろう。だが、行政が機能不全のままで真の超大国になれるだろうか。世界一流の企業を次々に生み出して、欧米の革新力や“日本株式会社”の組織力に対抗していけるだろうか。

 中国には問題解決のための財源があるし、環境や医療、労働者の安全性などを律する法体系も備わっている。北京政府に絶対的に欠けているのは、辺境の村々に至るまで官僚が国民の経済活動の様々な面で大きな権限を握っている今の政治構造を改革しようという意志である。

 「中国の法律は世界でも最高水準にあるが、地方政府は企業経営者のご機嫌取りばかりしているので法を厳格に適用することができないのだ」と、和民工社区学院を創立したリュー・カイミン氏は指摘する。加えて、低コスト製品だけでなく革新的な製品を作って世界市場で成功できるということを実証している中国企業はほとんどない。経営陣が展望に乏しく、ハイテク政策に欠陥があるためだ。

“悪魔の取引”から中国は官僚資本主義へ

 中国流資本主義のルーツは、経済成長促進のため1980年代から90年代にかけて行われた“悪魔の取引”に遡る。当時の最高指導者だった故・トウ・ショウヘイ氏が「豊かになること」は悪いことではないと認めたのである。その結果、多くの党幹部が人民服を脱ぎ捨てて金儲けの世界に飛び込んでいった。たいていは取引の仲介や調整で稼いだり、国有資産を掠め取るようなやり方だった。同時に北京政府は地方官僚にかなりの裁量権を与え、教育や医療などの社会福祉を管理できるようにした。条件は2つ。党への忠誠を誓うこと、そして高い経済成長目標を達成することである。

 この構図は、中国の657の市、2862の県、4万1636の郷の隅々まで行き渡っている。官僚の年次業績査定の約7割はGDP成長率を基に算出されるため、幹部連中は地元企業にどっさりと特権を与えようとするのだと、米ミシガン大学の中国専門家ケネス・G・リーバサル教授は解説する。例えば、低利融資、土地利用、免許取得、競争企業からの保護、規制免除などだ。収賄の機会は膨大にあると言っていい。「地元が潤えば自分も潤う。“持ちつ持たれつ”が暗黙の了解になっている。中国共産党なんていう名は返上して中国官僚資本主義党とでも呼んだ方がいい」と、リーバサル氏は言う。

 誰が企業の所有者なのかが曖昧なことが、利害関係を複雑にしている。公式発表によると、国有企業は20年前には全体の80%を占めていたが、現在は全体の3分の1に減っている。しかし、この統計はまやかしだ。北京の省庁直轄の企業しか含まないからだ。実際には、中国企業の多くが地方政府と資本関係を持っている。経済が成長すれば官僚も個人的に潤うという政策は、ある面では非常にうまく機能してきた。巨費を投じた産業計画が記録的な早さで完遂し、インフラは速やかに整備される。欧米でアルミニウム精錬所を建設するには4年かかるが中国なら1年もかからないと、米国際経済研究所のダニエル・H・ローゼン氏は言う。

汚職官僚に死刑を執行

 とはいえ、これらの“赤い資本主義者”たちは現状維持に腐心する強大な富と権力を持ったエリート集団に姿を変えた。真の民間資本市場が浸透すれば、銀行融資や株式上場で手心を加えることで見返りを得る権限を官僚から奪うことになる。著作権法を施行すれば中国ソフトウエア業界は一気に浄化されるかもしれないが、自分の仕事と偽造品から懐に入ってくる“寺銭”を必死になって守ろうとする官僚が、地方レベルで阻止している。北京政府は各省に学校や診療所のための財政支援を行っているが、その多くが別の用途に使われている。

 中国監査機関である審計署の報告によると、年金や医療保障、失業手当への割り当て分も含めた中央政府からの監査済み資金の10%は、企業への不正融資や豪華な庁舎の建築、怪しげな投資に流用されている。「中国の競争力を強化しているように見えるものすべてが、実は競争力を削いでいるのだ」と、ローゼン氏は言う。

 北京政府は汚職官僚を排除すべく最大限の努力を払っている。7月10日、中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)の鄭篠萸(ゼン・シャオユイ)元局長は、製薬会社8社から約85万ドルを収賄、その見返りとして製品の不正認可を行っていたとして死刑に処せられた。最悪だったのは、元局長の在任中にSFDAは多くの欠陥薬品に認可を与えていたことだ。ある抗生物質は10人以上の死者を出した。また、上海市の陳良宇(チェン・リアンユイ)前党書記は、年金基金から4億ドルを不正流用し都市開発計画や有料道路建設につぎ込んだとして告訴され、昨年免職された。さらには昨年9月、国営保険会社の上級幹部2人が、400万ドル相当の保険料を友人や家族の銀行口座に預け入れていたことが発覚している。

 こうした厳しい処罰が見せしめとなって法治の現場は改善しつつある。しかし、中央政府は全国の地方官僚への意思徹底にいまだ苦心している。

中央政府と地方官僚を隔てる厚い壁

 中国の国家環境保護総局(SEPA)の北京本部には約300人の職員しかいないが、全国の環境保護局では6万人が働いている。米国環境保護庁の1万7500人と比べるとかなり多い。ところが、この6万人は直接的には省や地方政府の配下にあり、環境への配慮よりも経済発展を優先することが求められている。2006年にOECDが行った調査によると、公害に関わる罰金は以前よりは引き上げられているものの、公害削減のための設備を導入する費用よりもはるかに安い。しかも監視当局が罰金の引き下げ交渉に応じる始末だ。「政治的な点数稼ぎのために、一部の地方官僚は棚ぼた式の利益を求める企業と癒着している」と、SEPA副局長の潘岳(パン・ユエ)氏は、7月3日付の英字紙チャイナ・デイリーに語っている。

 官僚や企業経営者がいかにSEPAの規則を軽視しているかを理解するには、無錫(ウーシー)の住民230万人の水瓶となっている太湖(タイフ)に行ってみるといい。1990年代、湖畔に次々と工場が建設されて太湖の汚染が進んだため、当局は地元工場に工業廃水の浄化を命じた。99年には工場で処理施設を設置したのでもう大丈夫だと地元の官僚は述べた。ところが、会社側が運転費用の負担を拒否したため実際には浄化施設は稼働していないことが多く、工場は未処理の廃水を湖に垂れ流し続けた。状況は悪化の一途をたどり、この春ついに湖水は不気味な虹色に輝く緑色に変わった。

 「公害問題を解決できない政府に怒りを覚える」と話すのは、無錫の外資系メーカーで秘書として働くリディア・リー氏だ。5月には、硫黄臭のする黄色っぽい水が蛇口から出てくるようになったため、ボトル入り飲料水を190リットル近く買い込むはめになった。

 食品製造の監視でも問題が絶えない。SFDAには職員が1700人いるが、中国の食品製造者の80%(約35万社)は従業員数10人未満の小企業で、安全基準をよく理解していないことが少なくない。そしてこの場合も、違反業者を厳しく取り締まろうという意欲が地方政府にはほとんど見られない。「地方政府が食品安全規則に違反する業者をすべて業務停止処分にしたら、膨大な数の労働者が失業することになる」と、北京にある中国農業大学の食品科学・栄養科学院院長、羅雲波(ルオ・ユンボ)氏は言う。

貧相極まる社会福祉制度

 誤った経済至上主義が、社会福祉の悲惨な状況をもたらした。1980年代に巨大国有企業の解体に着手し、“鉄飯椀”と呼ばれた手厚い生涯福祉制度を廃止してから、党の最高幹部たちは基本的な国民医療保障と退職金制度を作ると言い続けてきた。ところが、その責任は複数の省庁に分散され、社会保障制度の財源は地方政府に委ねられた。経済成長が連呼される一方で、社会保障は見向きもされなかった。

 英国のような初期診療制度を確立するためには400億ドル前後が必要だが、これは中国政府にとってさほどの金額でもない。「だが、私は悲観的だ」と、米シートン・ホール大学の世界保健研究プログラム責任者、フアン・ヤンチョン氏は言う。北京では対立する省庁間で責任が細分され、地方では党幹部がいまだにGDP成長率に基づいて評価を受けている。「政治制度の抜本的な改革を避けて、ただ政策を唱えるだけでこの問題に取り組んでも、中国国民にとって利用しやすく負担の軽い医療保障制度はできないだろう」(ヤンチョン氏)。

 結果、国民の多くが医療難民となる。政府調査によれば、中国国民の半数近くが病気になっても医者にかかれず、70%が健康保険に未加入であり、30%が経済的理由から入院を自ら拒否せざるを得ない。医療システムも腐敗している。病院は収益の大半を薬の販売で上げ、製薬会社からリベートを受け取るという構造が、過剰処方を招いている。哈爾浜(ハルビン)に住む75歳のガン患者は輸入薬を処方され50万ドル以上を請求されたが、その多くが治療に必要ないものだった。中国ではこのような話が日々報じられている。

 株式市場でも、党の役人の干渉が足かせになっている。活況を呈している上海証券取引所は1990年に国有企業の資金調達のため設立された。最高の施設を誇り、上場株式は2005年から3倍近くに増えた。今年1〜5月に企業が調達した資金は170億ドルに上り、さらに数百億ドル規模の株式発行が予定されている。

 だが、監視は多少強化されたものの、取引は乱高下が続き、ルールは甘く、投機がはびこる場になっている。その大きな原因は、ここが相変わらず国有企業の資金調達の場所に過ぎないからだ。市場の役割は優良企業に効率良く資本を配分することだが、中国では「国有企業に資金を送り込むこと」が最優先される機能なのだと、北京のJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)のマネージング・ディレクター、カール・E・ウォルター氏は言う。

 ここでもやはり官民の癒着という問題に帰着する。上海証券取引所の上場銘柄の95%は国有企業である。昨年について見れば、民間企業は1社も上場を許可されなかったのに国有企業は14社も上場している。国有企業は自社株の10〜30%を売り出すことで支配権を譲ることなく銀行融資への依存を軽減でき、内部関係者は株式公開によって棚ぼた式に利益を得ることができる。たまに重要情報を公開しない企業に対して規制当局が罰金を科すこともあるが、上場廃止やコーポレートガバナンス遵守違反による起訴は滅多にない。

巨額の研究開発投資も“物真似”に使われるだけ

 「中央政府は健全な株式市場を求めているが、企業を所有しているのは強大な権力を持つ省や地方政府であり、党内に人脈も多い。(規制当局は)企業や地方官僚を追及することに恐れをなしているし、追及するための力もない」と、中欧国際商工学院で金融学を教える張春(チャン・チュン)教授は言う。

 政策の方向を誤っているのは地方の党組織だけではない。北京政府には科学技術大国への道を開く責任がある。中国には、生命科学からナノテクノロジー、光技術を含むあらゆる分野でも極めて高度な設備を備えた研究所がある。科学技術系の修士や博士は毎年6万人以上輩出し、軍事技術や有人宇宙飛行でも成果を上げている。中国人科学者は膨大な量の論文を国際的な学会誌に発表している。

 もちろん、科学論文を書くことが技術革新に結びつくわけではない。「中国の努力は空回りしている」と指摘するのは、米カーネギー・メロン大学電気工学学部部長で、武漢(ウーハン)にある国立光学研究所でアドバイザーも務めるジュウ・ジェンガン氏だ。政府や大学の研究所には最高の施設が整っているが、行われている研究の大半はたいしたことではないとジュウ氏は言う。力を入れているのは、画期的な発明よりも、金儲けができる製品づくりへの技術の転用だ。「多くの研究をしてはいるが重要性は低い」。問題は、業績ではなく年功序列や人脈に基づいて昇進が決まることだ。「それで若者を引きつける環境を作れるはずがない」(ジェンガン氏)。

 もう1つの問題は、政府機関が手っ取り早い結果を求めることだ。「中国の官僚主導型プロセスのせいで、“研究開発”のための資金が“製品開発”につぎ込まれてしまう」と語るのはアン・スティーブンソン・ヤーン氏だ。米国情報技術局北京事務所の前主席代表で、革新的な中国企業のインキュベーションに注力している新興企業、米ツイン・ポプラーズの現社長である。その結果、「企業は既存の技術を模倣することによって利益を得るようになった」。

 北京政府はどこか別の国で開発された技術の中国版を作ることに非常に積極的である。DVDやWi-Fi、超高速の第3世代(3G)携帯電話サービスに関して中国独自の技術を持っていると誇らしげに言うが、中国企業にとってのコストは大きい。中央政府が2つの世界標準(W-CDMAとCDMA2000)を採用しようとしているにもかかわらず、規制当局は中国独自規格(TD-SCDMA)の開発が予定よりも数年遅れていることを理由に3Gサービス自体の提供開始を遅らせた。

 その判断が、華為技術有限公司(ファーウエイ・テクノロジーズ)や中興通訊股分有限公司(ZTE)といった中国通信機器ベンダーやTCL集団股分有限公司や寧波波導股分有限公司(ニンボー・バード)といった中国携帯端末メーカーの足を引っ張っている。「中国の3G導入が遅れていることで、業界全体が痛手を被っている」と語るのは、米クアルコム(QCOM)のアジア代表ジン・ワン氏だ。「もし中国で既に3Gサービスが始まっていたら、これらの企業はより重要なプレーヤーになっていただろう」(ワン氏)。

革命でもなければ今の中国はずっと変わらない

 中国の経済モデルの短所を並べると長いリストになる。しかし、今の中国と違う中国を期待する方がおかしいのではないか。多くの親中派は、わずか30年でここまで発展してきたのは素晴らしいと胸を張る。確かに、その成長スピードは史上類を見ない速さだったが、それだけに金融制度や食品の安全確保、年金支給、環境保護の近代的システムを作る前に“欧米の世紀”に取って代わろうとしているのだ。「中国は現在の標準を遵守すべきだと米国人は考えるが、それほど遠くない過去に同じような問題を自分たちも抱えていたくせにね」と、米ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)のジョージ・デイビッドCEO(最高経営責任者)は言う。

 ただし、欧米各国は動乱を経て、国民の手で新政府を樹立し、社会改革を実現した。韓国と台湾は、縁故資本主義を排除し、さんざん苦労して民主主義へ転換を果たした。中国共産党は対照的で、政治改革を断固推進しようという意志は微塵も感じられない。それどころか、反対勢力に弾圧をかける始末である。

 公正を期して、このように問うてみよう。何十年も改革を進めたからといって、中国が金融、法律、行政の制度を作り変えて、近代的な産業社会を構築するなどといまさらどうして考えられるのか。現状を改善するには、トウ・ショウヘイ氏と共産党および人民との間で結ばれた歴史的妥協によって野放しになった利己主義を手当てするしかない。

 そのためには、地方官僚に規制逃れをさせない法制度、単なるGDP成長率だけでない数的指標に基づいた役人の評価システム、起業家を育成し報いるような資本市場が必要となる。つまり、ビジネスから共産党を排除しなければならないのだ。

 だが、今の段階ではそのような革命的変化は政治的に不可能だ。したがって、今日我々が目にしている中国の惨憺たる国内事情は10年後もほとんど変わらないと考えるのが妥当だろう。

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