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植草一秀:今来週の内外経済金融情勢の展望 = スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.asyura2.com/07/hasan52/msg/214.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 31 日 19:59:58: mY9T/8MdR98ug

http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html

米国のサブプライムローンの焦げ付き問題に対する懸念が強く残存している。
『金利・為替・株価特報2007年8月22日号=049号』で、米国発世界連鎖株安後の金融市場展望を詳しく論じ、サブプライムローン問題についても解説した。
NYダウは終値で8月16日に12,845ドルまで下落した。7月19日終値の史上最高値14,000ドルから1155ドル、8.3%の下落である。
一方、日経平均株価は8月17日に前日比874円下落し、終値は15,273円となった。1日の下げ幅としては、ITバブル崩壊で1426円下落した2000年4月17日以来、7年4ヵ月ぶりの大幅な下落を記録した。日経平均株価は7月9日終値18,261円からわずかひと月で2988円、16.4%の下落を示した。
2006年央の株価調整では、NYダウが5月10日11,642ドルから6月13日の10,706ドルへ936ドル、8.0%下落したのに対し、日経平均株価は4月7日17,563円から6月13日14,218円へ3345円、19.0%下落した。

 NYダウは8月28日に前日比280ドル下落し、29日には前日比247ドル上昇した。28日には、米国の住宅価格指数の下落数値が発表されたことに加えて、8月7日のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録が発表されて金融市場の金利引下げ期待が後退したことが株価下落を誘発した。29日には、バーナンキFRB議長がシューマー上院議員に送った書簡の内容をメディアが伝え、株価上昇が誘発された。書簡の日付は27日で、「金融市場の混乱から生じる経済へのマイナス効果を抑えるための準備ができている」との表記がFRBによる金利引下げ政策実行への期待感を高めた。
日経平均株価は8月29日、NY市場での株価下落を受けて275円下落して16,012円に到達した。7月中旬以降、米国での株価の乱高下がそのまま日本市場での株価乱高下に反映されている。私は本コラムならびに『金利・為替・株価特報』において、7,8月の米国での金融市場調整に連動して日本市場でも株価調整が生じるリスクが高いことを再三記述してきた。この意味では、想定された市場調整が広がっていると判断できる。

 問題は、今回の金融市場の調整が一時的な調整にとどまるのか、それとも株価トレンドの転換の契機になるのかの見極めである。米国市場で観察されている株価調整の背景に住宅価格の下落がある。米国経済の安定的な拡大を支えてきた原動力が住宅価格上昇を背景にした住宅投資と個人消費の拡大であったことを踏まえれば、住宅価格下落に伴う住宅投資と個人消費の減少という新たな事態に対しては、十分な検討が求められる。

 日本では1990年年初からバブル崩壊が始動した。不動産価格の下落が始動したのは1991年年初からで1年ほどのタイムラグがあった。日本経済は1991年年初からバブル崩壊不況に突入したが、日本経済の調整を当時の宮沢政権が公式に認めたのは1992年の年初だった。日銀はバブル崩壊が本格化した1990年に大幅な金利引上げに動いた。大蔵省はバブル崩壊が始動した1990年3月に不動産融資総量規制を設けた。バブル崩壊が始動してから強烈なブレーキを踏みこんだのである。
日本のバブル崩壊とそれに連動する経済の混乱は2003年まで持続してしまった。1990年代後半以降の経済混乱持続の原因は日本政府のマクロ経済政策対応の失敗に起因している。1996年と2000年の二度、日本経済は完全浮上のチャンスを得た。しかし、この二度のチャンスを財政当局が主導した超緊縮財政がつぶしてしまった。橋本政権の大増税が一度目の失敗であり、二度目の失敗は森・小泉政権によって実行された。小泉元首相は橋本元首相の忠告を無視して二度目の大失敗を演じたのである。「歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返す」のである。

 日本のバブル崩壊局面を知っている我々は、米国でいま問題となっているサブプライムローン問題を深刻に受け止めないわけにはゆかない。米国が「バブル崩壊=バブル崩壊不況」の入口に立っているのであれば、金融行動、投資戦略を抜本的に見直さなければならないからだ。
『金利為替株価特報』にこの問題に対する私の見解を記述した。詳細はレポートを参照いただきたいが、結論を示せば、現段階での警戒感の行き過ぎに警戒すべきと考える。日本の政策対応が後手後手に回り、経済、金融の混乱を無限に拡大してしまったことを米国は他山の石として最大限に教訓として生かしている。バーナンキFRB議長が書簡に記述したように、FRBは市場の混乱に対して対応する準備を整えているのである。

 株式市場の調整規模は、現段階で日米市場ともにほぼ昨年並みのものとなっている。昨年の場合、5月を起点とする調整の底が7月と8月だった。5月高値を更新したのは10月である。約2ヵ月間の安値波乱をはさみ、4-5ヵ月の調整時間を要した。調整に要する時間を考察すると9月中旬までは依然として株式市場の波乱に警戒を払うべきと考える。日本市場は他の市場と同様に米国市場と連動する傾向を強く有している。当面は米国市場に連動する波乱に警戒感を維持しておくべきだと考える。

 国内では31日(金)に経済統計の発表が集中する。7月鉱工業生産指数、7月失業率、7月有効求人倍率、7月新設住宅着工件数に加えて、8月東京都・7月全国消費者物価指数も発表される。来週は3日(月)に4-6月期法人企業統計が発表される。
米国では31日(金)に7月個人所得・消費支出、7月製造業新規受注、8月シカゴ地区購買部協会景気指数が発表され、ジャクソンホールでのカンザスシティー連銀主催シンポジウムでバーナンキFRB議長が講演する。バーナンキ議長発言に最大の注目が寄せられる。
米国で来週は、3日(月)がレーバーデーで休場となり、4日(火)に8月ISM製造業景気指数、8月自動車販売台数、5日(水)に地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、6日(木)に4-6月期雇用コスト指数および労働生産性、8月ISM非製造業景気指数、7日(金)に8月雇用統計が発表される。また、6日(木)にはイエレン・サンフランシスコ連銀総裁、グロズナーFRB理事、ロックハート・アトランタ連銀総裁、フィッシャー・ダラス連銀総裁、プール・セントルイス連銀総裁の講演や挨拶が予定されている。FRB関係者の発言に関心が寄せられる。
欧州では9月6日(木)にECB(欧州中央銀行)の定例理事会が開催されて、金利引上げの有無が決定される。利上げが実施されれば、ユーロが上昇し、各国株式市場に下方圧力が生じる可能性が高い。日本や米国の金融政策運営にも影響を与えるだけに注目を怠れない。

原油価格がWTI先物価格で8月1日に1バレル=78ドルの史上最高値を記録したのち、1バレル=70ドル近辺に下落したが、その後1バレル=73ドル水準に上昇している。原油価格の落ち着きが金融市場のインフレ懸念払拭には不可欠である。FRBが状況に応じて金利引下げを実行する必要条件である。原油価格が1バレル=75ドルを突破してくると、FRBの利下げ政策の大きな障害になってくる。原油価格動向にも注目を怠れない。

 為替市場では円ドルレートは円高材料に反応しやすい地合いが形成されつつある。米国短期金利の引き下げ期待が徐々に拡大する一方、日本の短期金利については、なお小幅の上昇観測が残存している。一進一退を繰り返しながらもドル下落がやや強まる可能性を念頭に入れて置きたい。
長期金利は株価とシーソーの関係を演じる可能性が高い。株価が上昇すれば債券価格が下落(長期金利上昇)し、株価が下落すると債券価格が上昇(長期金利低下)する。短期変動と中期変動とを区別して市場変動に対応する必要がある。

 安倍政権は27日に自民党役員人事、内閣改造を実施した。自民党3役には麻生太郎幹事長、二階俊博総務会長、石原伸晃政調会長、幹事長代理に細田博之氏、政調会長代理に塩崎恭久氏が起用された。主要閣僚では与謝野馨官房長官、町村信孝外相、額賀福志郎財務相、高村正彦防衛相、舛添要一厚労相、増田寛也総務相、鳩山邦夫法務相が起用された。経財相、経産相、行革相、国交相、文科相などは留任した。
9月10日に召集される予定の臨時国会では、民主党が年金保険料流用禁止法案を提出する予定であり、テロ特措法延長に対しては小沢一郎民主党代表が反対の意向を表明している。内閣改造では舛添要一厚労相、高村正彦防衛相を起用し、国会論戦に備える対応が示された。同時に安倍改造内閣は次期総選挙を強く意識した布陣になった。選挙対策総局長に菅義偉前総務相が就任した。

 内閣の要である官房長官に与謝野氏が起用された。調整能力の高さが買われたと言えるが、官僚機構と対決する姿勢は大幅に後退する可能性が高い。公務員の天下り禁止、消費税増税回避の姿勢が後退する可能性が高い。健康問題も大きな不安材料である。麻生太郎幹事長、舛添要一厚労相などが不規則発言を示すリスクも小さくないと考えられる。
 安倍首相が日本政策投資銀行、国民政策金融公庫(日本政策金融公庫に再編予定)、国際協力銀行のトップについて、財務省からの天下りを遮断する方針であることが伝えられた。財務省の重要な天下り先に対する天下りを遮断するなら、評価できる。制度的にこれらの機関への天下りを永続的に遮断するのかどうか、注視する必要がある。

 参議院選挙で民主党が大勝し、与党が参議院で過半数割れに追い込まれて以降、マスメディアを利用した猛烈な民主党攻撃が開始された。テレビ朝日の報道番組では、民主党内の小沢一郎代表に対峙するグループに所属する議員の登場が圧倒的に多い。テロ特措法延長に対する民主党内部の意見対立を誘導する姿勢が鮮明に読み取れる。
また、大手週刊誌が民主党当選議員のスキャンダルを一斉に報道し始めた。米国は自民党政権の崩壊に対する危機意識を高めていると考えられる。自民党政権を支えようとする壮絶なエネルギーの噴出が感じられる。メディアの偏向については政治に関するブログ「喜八ログ」や政治評論家の森田実氏のサイトに詳しいので是非参照していただきたい。

 マスメディアをフル動員した激しい民主党攻撃が始動していることが、既成権力の強い危機感の表れである。小沢一郎民主党代表は米国に対しても「言うべきは言う」姿勢を明確に示した。米国の虎の尾を意識して踏んだのである。米国があらゆる手段を動員して総攻撃に出てくることは火を見るよりも明らかである。
 日本の独立自尊を守り抜こうとする勢力と対米隷属勢力の壮絶な戦いの火ぶたが切っておろされたと判断するべきである。マスメディアはあらゆる手段を用いて民主党のイメージ低下をもたらす戦術を展開すると予想される。民主党は党内の意思統一を急ぎ、外部からの撹乱に早急に備えるべきである。表面化したスキャンダルに対しては迅速に抜本的な対応を示さなければならない。日本政治の正常化、対米隷属外交からの脱却は正念場を迎えている。

2007年8月31日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀

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