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ウォール街、暴落の歴史に教訓探し = FINANCIAL TIMES
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 9 月 06 日 19:19:03: mY9T/8MdR98ug

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070903/133800/?P=1

 数年前、米バージニア州のビジネススクールで教鞭を執るロバート・ブルーナー氏とショーン・カー氏は、1907年にウォール街を襲った金融市場の崩壊について包括的な研究書を執筆しようと決意した。

 平時であれば、2人の著作はほとんど注目されなかったかもしれない。何しろ、1907年の暴落は1929年の大恐慌のような知名度はない。ところが、素晴らしいタイミングと全くの運が幸いして彼らの研究は今秋出版の運びとなり、思いがけず金融界の注目を集めることになった。

1907年の暴落の教訓

 「今夏に危機が勃発するとは予想もしていなかった」とブルーナー教授は言う。「だが、我々は研究の結果、危機を醸成する材料は常に存在するとの結論に至ったため、1907年の暴落の教訓は投資家、経営者、規制当局にとって極めて貴重な教訓になると考えた」。

 それは今、ウォール街とロンドンの金融街シティが共有する思いのようである。今夏の激しい市場の動揺で投資家や金融関係者はショック状態に陥り、サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)の危機が株式市場を大揺れさせる中、多くの人が今回の危機の行く末を見極めようと、新たな意気込み、もしくは切羽詰った気持ちで歴史書に手を伸ばしているのだ。

 「今みんなが1987年、1998年、あるいは1929年を引き合いに出して、ぶつぶつ言っている」と、あるヘッジファンドの幹部は言う。「私は1907年のことはよく知らないが、勉強すべきなのかもしれない」。

 過去に対する突然の関心は、金融界にとっては180度の転換と言える。金融界はここ数十年、過去ではなく未来を見据えて短期的なスパンで仕事に当たってきたからだ。実際、つい今春まで、10年以上昔の出来事に思いを巡らすようなトレーダーはほとんどいなかった。

市場を揺るがした金融商品は2000年以降に設定されたもの

 その原因の一端は、トレーダーは往々にして若く、過去の景気循環を知らないせいだろう。しかし、より重要なのは、今回の市場動揺の震源地となった金融商品の多くが2000年以降に台頭してきたものだという事実である。つまり、相場の動きを評価したり、リスクの度合いを計測したりするためにコンピューターモデルに入力される“歴史的な”データが、ほんの数年分のデータに過ぎなかったりするわけだ。

 このことは、コンピューターモデルの計算を歪める可能性がある。データを入力する側は事実上、未来が過去と似たものになると仮定していることになるが、その土台となっているのは、ごくごく新しい経験だからだ

1998年の秋の経験さえ反映されてない

 ワシントンで活動するエコノミストのハラルド・マルムグレン氏は言う。「驚くべきことは、(一部の市場で)現在使用されているリスク計測モデルが1998年秋の経験さえも反映していないことだ」。

 過去に対する興味が近年薄れていた理由は、もう1つある。多くの金融関係者がごく最近まで、2000年以降開花した数々の市場のイノベーション(革新)が金融のルールを書き換えたと信じていたことだ。金融界の人間が信用リスクを資本市場全体に分散させる金融商品を開発したおかげで、金融システム自体の働きが変化したからだ。それが信用サイクルの動きも変えた。少なくとも、そう考える楽天家がごくごく最近までいた。

 だが、こうした心地良い想定の多くは今夏の市場動揺で吹き飛んだ。その結果、過去に対する無関心に代わって歴史を学ぼうとする欲求が生まれ、投資家らが「不都合な真実」と再び向き合うことになった。バブルには大抵、イノベーションによってルールが変わったという思い込み――大抵は結局誤りであることが判明する思い込み――がつきものだという真実である。

 「今のネオモダンな信用市場は結局のところ、旧来の信用市場と大差ない」。リーマン・ブラザーズのアナリスト、ジャック・マルビー氏はこう言う。「きっかけは異なるが、市場の反応は以前の危機と似たり寄ったりだ。我々の見るところ、(今の状況を理解するには)金融・資本市場の長い歴史が最良の先生であり、最良の尺度となる」。

1622年以来、60件以上の市場暴落

 ただ、マルビー氏のような人を悩ます大きな問題は、“長期にわたる歴史”が実際目も眩むほど多彩なモデルを提供してくれることだ。事実、リーマン・ブラザーズが調べたところでは、1622年以来、60件以上の市場暴落があった。このため専門家の間では、今のマクロ経済の状況を楽観的に捉えるか否かによって、現在の市場動揺と似た最良の比較事例がどの暴落かについて激しく意見が割れている。

 例えば、目下大いに論じられている類似例は、2000年初頭のインターネットバブルの崩壊。今回の出来事と似ていると思われるのは、ある程度の期間、株式市場の「熱狂」が続いた後に市場が暴落した点だ。最近の信用市場も、危機に先行して熱狂していた。

 最も注目に値するのは、1990年代の終わり頃、金融システムの中で債務水準が上昇していたこと。当時、金融革新によって投資のルールが変わったと広く信じられる中で、株式投資家が用心という武器を棄てて顧みなくなった結果だ(1999年当時は特に、インターネットの台頭も景気循環を変化させたと受け取られていた)。

 ところが、投資家らが過大評価されたIT(情報通信)株に突如不安を覚えると、彼らは債務を減らそうと一気に動き出し、今夏と同様のレバレッジ解消が起きた。

「過剰にレバレッジを利かせたシステムにおけるレバレッジ解消の動きは、例外なく危険だ」。クレディ・スイスは最近、投資家向けメモでこう述べた。「それが起きた直近の代表例はITバブルの崩壊だった。当時、中心的役割を果たしたのは企業の借り入れだったが、株式投資家も通常は避けるような非常にリスクの高いポートフォリオを組んでいた」。

 7年前、こうした出来事は深刻な景気後退が間近に迫っているという懸念を掻き立てた。米連邦準備理事会(FRB)の利下げでそれは多少回避されたものの、当時、レバレッジ解消の動きは企業が短期資金を調達するコマーシャルペーパー(CP)市場での信用収縮の発生に手を貸した。

「2002年にCP市場は機能不全に陥った。信用を補完する流動性提供者がその空隙を埋めざるを得なくなり、銀行システムにおける信用リスクの増大を招いた」。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ジェフリー・ローゼンバーグ氏はこう語り、8月にCP市場の一角で同様の現象が再び起きたと指摘する。

2002年と今回は何が違う

 しかし、ローゼンバーグ氏も別途指摘するように、2002年と今とでは際立った相違点がある。今回、資金調達難に苦しんでいるのは金融関連企業であって、メーカーなどではないという点だ。このことはさらに決定的な相違を浮き彫りにする。2000年に多大な債務を抱え込んでいた企業の中には様々な大企業の名が含まれていたのに対し、今回過度の借り入れに頼っているのはヘッジファンドや銀行などの金融関連の法人なのだ。

 これによって、今回の市場の動揺が2000年当時と異なり、株式市場よりももっぱら信用市場に端を発した理由が一部説明できる。一方、それはまた、今日の動揺が7年前と比べ、実体経済に及ぼすマイナスの影響が小さいことを示唆している。大手メーカーなどが少なくとも今のところは打撃を受けていないからだ。

 このためアナリストの中には、今回の市場の動揺を分析するうえで、もっと適した事例はさらに過去をかのぼる必要があると感じている人もいる。すなわち、1997〜98年、アジアの金融危機に端を発した嵐がロシアのデフォルト(債務不履行)の引き金を引き、それが今度は大手ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)を破綻寸前に追い込んだ一連の出来事である。

 この事例が一部のトレーダーにとって魅力的に映るのは、今夏の市場の動きがあまりに激しく、まだ特定されていない一部大手機関が苦境に陥り、保有ポートフォリオの投げ売りに走っていると考えられるからだ。もしそうなら、それは1998年8月のパターンの再現を意味する。当時、LTCMとその取引相手がポートフォリオの解消を急ぎ、一見奇怪な株価変動と銀行間の信頼の崩壊を引き起こす事態を招いた。

金融界を舞台とした混乱

 しかし、もう1つ重要な類似点は、1998年の市場の混乱が、大手メーカーなどではなく、やはり金融界を主たる舞台としたことだ。その結果、LTCMの問題が直接、実体経済にマイナスの影響を及ぼすということはほとんどなかった。

 そのため、8月の市場混乱も経済的打撃は軽微で済むとの結論を下す向きもある。だが、問題は、金融革新のおかげで損失が広く分散されたために、サブプライムローン関連の損失が1998年当時と比べずっと幅広い投資家層に打撃を与えていることである。

サブプライム関連の損失額は500億から2000億ドル以上か

 一方、その痛みもずっと強烈なものとなる可能性がある。LTCMがヘッジファンドの投資家や銀行に与えた打撃は30億ドル規模だったが、サブプライムローン関連の損失額は500億ドルから2000億ドルに上ると推定されている。

「1998年のLTCMの危機が再び繰り返されているのは確かだが、世界の経済成長の見通しが明るいことについては皆意見が一致している」。JPモルガンのジャン・ロイス氏はこう言いつつ、「しかし、歴史が完全に忠実に繰り返すわけではないことも我々は承知している」とつけ加える。

 一部のアナリストは、もっと相応しい教訓を得ようと、さらに歴史をさかのぼる。今のところ、現在の市場の動揺が最も世に知られたドラマ、つまり、 1929年の大恐慌の再現だと主張する専門家は見当たらない。世界経済は依然、活力に溢れているようだし、市場の動揺の程度は1929年やその他の市場暴落と比較すると極めて小さなものに見える(実際、2000年以降の市場のボラティリティーが並外れて低いという事実がなかったら、そもそも今回の状況に「動揺」などの言葉を使用するのをためらう向きもあったろう)。

 アナリストの中には、よく知られたもう1つの市場暴落に類似点を見出す人もいる。株式市場が1日で22%急落し、証券会社が60社破綻した1987年の暴落だ。今日の問題との関連性は、トレーディングモデルの使用にある。

 1987年の市場暴落に先立って、ウォール街は「ポートフォリオトレーディング」モデルを導入していた。これは株価が下がり始めると、実質上、下落に拍車をかける働きをした。同様に今回、定量分析、または「クオンツ」と呼ばれる新たなトレーディングモデルが幅広く利用されたことで、今夏の市場の動揺が増幅され、信用市場のごく一部で起きたショックが幅広い投資対象に波及することになった。

 とはいえ、ブルーナー氏とカー氏がタイミングのいい研究書で明確に述べたように、コンピューターよりも前に「感染」が存在したのは歴史の示すところである。

1907年のニューヨークで市場暴落したのは・・・

 1907年のニューヨークで市場暴落の引き金となったのは、チャールズ・バーニー氏の自殺だった。ユナイテッドコッパーの株式買い占めを図り、ニッカーボッカー信託の社長の座を追われた人物である。これはほかと関連性のない孤立した出来事のように思われたが、様々な影響が広がるにつれ、金融界全体に連鎖反応を引き起こした。それは借り入れレベルが高かったこと、経済が直近の地震によって弱体化していたことなどにより増幅された。

 「危機はハリケーンに似ている」とブルーナー氏は言う。「個々のハリケーンは、それぞれ特異な性質を持っている。にもかかわらず、我々はハリケーンについてかなりの知識があるため、一般化できる。1907年の市場暴落から我々が引き出した概括的結論は、危機は様々な要因の収斂によって起きるということだ。その要因の大半は世界経済の中に常に潜んでいる。しかし、これらの要因が一定の組み合わせになると、金融危機が起きるのだ」。

 こうした言葉は、今の市場の動揺が一時的な嵐に過ぎないのかどうかを判断する明確な指針を欲する投資家には頼りにならないものかもしれない。だが、エコノミストが過去の事例を調べる時、歴然と明確な事実が1つ挙げられる。今夏の市場の動揺が最後の危機にはならないということだ。

金融危機は10年に一度の割合で起きる

 それどころかマルビー氏が指摘するように、歴史から学べるのは、これらの金融危機が周期的に――通常、少なくとも10年に1度の割合で――起きるということである。過剰なレバレッジと金融革新、投資家の奢りの3つが揃った時には必ず起きる。

 「市場は常に3つの局面の間を揺れ動いている。悲観的な慎重さ、自己満悦、熱狂の3つだ」とマルビー氏。「2017年の信用収縮を十分前もって意識することだ。だが、残念なことに、それまでには、市場は再び2007年の危機など決して起こらなかったかのように振舞っているだろう」。

(Gillian Tett)

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