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京大環太平洋計量経済モデルversion5.3モデルの理論的フレームワークとそのインプリケーション
http://www.asyura2.com/07/hasan54/msg/322.html
投稿者 ワヤクチャ 日時 2007 年 12 月 27 日 22:34:48: YdRawkln5F9XQ
 

京大環太平洋計量経済モデルversion5.3モデルの理論的フレームワークとそのインプリケーション
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/pacific/kaisetu/5_3.html


経済学研究科教授 大西広

 は じ め に

 本データベースで構築・公開されている京都大学環太平洋計量 経済モデルversion5.3モデル(KYPAC-5.3)の理論的フレームワークは実はレーニン「帝国主義論」にある.ソ連・東欧崩壊後のマルクス経済学は自身喪失によりその活力を低下されているが、筆者の考えではまだまだ数学的方法、計量 経済学的方法によってモデル化しうる価値有る理論がマルクス経済学には多く存在する.このレーニン「帝国主義論」もそのひとつである.戦後世界は日米間、先進国とアジア間において明らかに不均等発展状況が存在した.この長期的歴史変動の表現にはレーニン「帝国主義論」の不均等発展論は極めて有効な分析道具として活用可能である.したがって、ここではそのフレームワークを簡単に説明し、それが本モデルにどのように反映されているか、またそのモデルがどのような計算結果 を導いているかを説明する.

T. レ ー ニ ン の 世 界 資 本 主 義 不 均 等 発 展 論

1)レーニンの不均等発展論

 レーニン以後の西側「マルクス派」世界経済論が従属学派の強い影響力の下にあったために、「マルクス派」は先進国−後進国間の経済格差は一方向的に拡大するといわなければならないかのような状況が一時存在した。そしてまた、実際に少なくとも多くの途上国が戦後のある時期まで先進国との格差を開く傾向にあったことも事実である。我々の国日本でさえ(一人当り国民所得の急速なキャッチ・アップにもかかわらず)ある時期までは「対米従属性の増大」との主張が違和感なく受け止められるような状況が存在したことも事実である。

 しかし、そうした「時代の状況」が従属学派の主張を許したのだとしても、その次の「時代の状況」は日本の対米キャッチ・アップの説明をこそ求めるものになっているし、あるいはまたNIES、ASEAN諸国や中国の急成長こそが説明されるべき中心問題として浮上して来ている。この理論課題に対し、従属学派内部からもウォーラーステインなどによる理論的修正の作業がなされているが、それもやはり大局的には「修正」の域を脱せず、「キャッチ・アップの可能性」は許容できてもその必然性を説明するものとはなっていない。もしその「必然性」が主張されようとするなら、それは「先進国ほど成長率が低くなり、後進国ほど高くなる」というメカニズムが必ず説明されなければならず、「各国の成長率には不均等性がある」ということが述べられるだけであってはならない。そして、その点では、レーニン『帝国主義論』における各国資本主義不均等発展の法則こそがその最もリーズナブルな説明様式を与えているように思われる。

 レーニン自身の言葉を引用するなら、その最も中心的なメカニズムは次のところにある。すなわち、

「発展の不均等性も、大衆のなかば飢餓的な生活水準も、ともにこの生産様式の根本的な不可避的な条件であり、前提であるからである。資本主義が依然として資本主義であるかぎり、過剰の資本は、その国の大衆の生活水準をひきあげることにはもちいられないで−−なぜなら、そうすれば資本家の利潤はさがることになるから−−、国外へ、後進諸国へ資本を輸出することによって利潤をたかめることにもちいられるであろう。これらの後進諸国では、利潤は高いのが普通 である。なぜなら、資本がすくなく、地価は比較的低く、賃金は低く、原料は安いからである。資本輸出の可能性は、一連の後進国がすでに世界資本主義の取引のなかにひきいれられ、鉄道幹線が開通 するか敷設されはじめ、工業の発展の初歩的条件が保障されている等々のことによって、つくりだされる。また、資本輸出の必然性は、少数の国国では資本主義が『欄熟し』、資本にとっては(農業の未発展と大衆の貧困という条件のもとで)『有利な』投下の場所がない、ということによってつくりだされる。」(『帝国主義論』レーニン全集第22巻, 邦訳278ページ)

 レーニンはこの引用文の直後で「資本の輸出は、資本が向けられる国で資本主義の発展に影響をおよぼし、その発展を著しく促進する。」と述べているから、結局、レーニンにおいては「発展の不均等性」が国際的な資本移動から説明されていることになる。先進諸国では資本が過剰で有利な投下部面 が失われ(つまり利潤率が低くなり)、より利潤率の高い諸国に移動する、と主張されている。そして、その利潤率の高い諸国とは、要するに@資本が少ない国、A地価が低い国、B賃金が安い国、C原料が安い国であって、これらすべては、ともに後進国にあてはまる条件である。なぜなら、@後進国は経済開発が不十分なため、蓄積された総資本ストック量 が少ない、A未開発のために土地に対する需要が少なく地価が安い、B一人当り国民所得も低く当然賃金も低くなる、C原料生産の賃金コストが安く産業需要も少ないので原料も安価、となるからである。そして、もしそうだとすると結局、「先進国ほど資本が逃避し、後進国ほど流入する」ことになり、このことは「先進国ほど成長率が低くなり、後進国ほど高くなる」という不均等発展のメカニズムを説明していることになる。

2)レーニンの国際的政治摩擦不可避論

 レーニン『帝国主義論』は上記のような各国資本主義の経済的不均等発展が世界の政治的再分割のための帝国主義間戦争を不可避とするという。これが『帝国主義論』の全体としての主張点であって、狭義の「不均等発展論」はその部分理論にすぎない。そして、実は、この全体的主張点についても、「帝国主義間戦争」を「帝国主義間の政治摩擦」と読み替えることによって現代に適用することができる。この読み替えが正当化されるのは、<政治−経済>という最も大局的な枠組み、あるいは史的唯物論的枠組みでは「戦争」も「政治の延長」と捉えられるからである。「資本」間の自由な経済競争から区別 された「国家」間の政治闘争という意味では帝国主義間戦争も帝国主義間の政治摩擦もまったく同一次元に属する諸現象である。

 このことを近年の日米摩擦に即して論ずれば次のようになる。すなわち、戦後日米は経済的に不均等発展をしたが、その変化した経済力を直接に反映するものは輸出競争力の獲得、したがって、たとえばここでは対米輸出の拡大である。しかし、もちろん、この日本の対米輸出の拡大はアメリカ国内の産業を圧迫し、そのためその政治的代弁者としてのアメリカ政府は国内産業保護のために保護関税を強化したり「不均衡是正」を主張して政治交渉を日本に求めてくることになった。要するに、経済力の不均衡発展が市場シェアの再分割をめぐって国家間の政治闘争にまで発展する。日米貿易摩擦の厳しさは時に時評家をして「昔なら戦争になるような対立」と評さしめるが、それはまさにその本質的な意味において「戦争」なのである。第2次大戦後、「西側」帝国主義間での戦争がなくなったことをもって、「大戦後、レーニン理論は古くなった」とする議論もあるが、それは「戦争」と「政治摩擦」の本質的同一性を見ないものである。

 次節ではこれらのレーニン理論−−広義の「不均等発展論」の数学的な定式化を行う。

U. 数 学 的 定 式 化 と 回 帰 方 程 式 の 推 計

 本稿の課題は上述のレーニン「不均等発展論」を計量 経済モデルで表現することにあるから、我々は上述の関係をまず数学的に定式化しなければならない。そして、その次にそれらの方程式を個々に回帰方程式として推計する。本稿では具体的には、この推計を戦後環太平洋地域の米国、日本、韓国、中国、台湾、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリアという10ケ国・地域のデータについて行なっている。なお、推計された全方程式は本データベースの方程式リストを参照されたい.

1)資本輸入と経済成長に関する定式化

 前節1)の論理はいくつかの部分によってなりたっている。まず、短い第2の引用文の部分は、

  Y=f(BC)    f´>0              ・・・(i)

であることを示している。ここで、YはGNPを、BCは資本輸入額を示し、f(・)という記号は、YがBCによって決められるという関係を表わす。ただし、BCは直接に諸国の生産力水準(Y)を決めるのではなく、直接には資本の存在量 (「資本ストック」、これをKとおく)によってYが決められるから、

  Y=f(K)     f´>0              ・・・(ii)

また、そのK(期末値)は前期のK-1と、減価償却率d、今期の投資Iによって

  K=(1−d)K-1+I-1                 ・・・(iii)

と表わすことが出来、さらに、このIは海外からの資本流入によって増えるから、

  I=f(BC)    f´>0              ・・・(iv)

となる。それ故、(ii)〜(iv)の関係を総合すると、BCがI,Kを通じてYを決めることになる。レーニンの言う(i)の関係はこの(ii)〜(iv)を要約したものなのである。ただし、具体的には、それぞれ他の説明変数も付加して推計している。たとえば、上述(ii)式はKとともに人口N(労働力の代理変数)も説明変数とするC-D型生産関数として推計し、また、(iv)式は、S,ME,CDをそれぞれ国内総貯蓄、軍事支出、関税として、

I=f((S+BC),ME/Y,CD/Y)              

fS+BC>0, fME/Y<0,fCD/Y<0                   ・・・(v)

との形で推計されている。ここで、この第1の説明変数がBCでなくS+BCとしたのは、投資資金が国内から供給された資金と外国から供給された資金(資本輸入)の和であるからである(直接投資もここではBCに含む)。また、第2の軍事費の対GDP比と第3の関税対GDP比が説明変数となっているが、この理由は本節3)で論じる。

2)賃金水準と国際資本移動に関する定式化

 次に、前節1)で見た第1の長い引用文の定式化を行なう。引用文の説明は次の2段構えになっている。すなわち、まず第1に、利潤率をπとおくと、資本は利潤率の高い後進国に移動するとされるから、

BC=f(π)  f´>0                    ・・・(vi)

また、その利潤率は資本の希少度、地価、賃金水準、原料価格によって決まるとされているから、地価をPL、賃金水準W、原料価格をPMとすると、

 π=f(K,PL,W,PM)

    fK <0,fPL<0,fW <0,fPM<0        ・・・(vii)

と定式化することができる。あるいは、(vi)式に(vii)式を代入して、

 BC=f(K,PL,W,PM)

    fK <0,fPL<0,fW <0,fPM<0        ・・・(viii)

と表現することも出来る。

 ただし、我々のモデルではこの4つの説明変数の内、まず、KとPMを無視する。その理由は、第1次大戦前と違って少なくとも第2次大戦後の現代世界においては原料の国際間移動は極めて容易になっており、国内で「過剰」な資本も、それによって生産された製品を輸出できれば「過剰」ではなくなるからである。原料は24時間オープンの国際市場で「国際価格」として決まるようになり、同様に生産された財の市場も完全に世界市場化している。そして、さらに、現代の資本輸出を考えた時、少なくとも直接投資に関する限り、企業は今や世界のどこにでも運ぶことができるという前提でその資本輸出の「する/しない」を決めている。そこで企業がその「する/しない」の判断の主要なポイントはただその設備を動かす側のコスト=賃金の高低にしかない。ここでは資本の国際間移動は容易でも労働力の移動は困難であるとの判断が働いている。(労動力は長期に再生産されなければならず、そのシステム、たとえば学校教育制度の国際的移動は少なくとも不可能的に困難である。)そして、こうした判断の存在は日本からNIES諸国、ASEAN諸国、中国といった低賃金諸国への資本輸出が激増する諸状況だけからでも我々は容易に推測することができる。これらの理由で、(vii)ないし(viii)の定式化からKとPMを省くことは十分な根拠がある。

 ただし、実際の推計では(viii)式についてさらにPLをも省略して(賃金は各国賃金比にし、また日本と米国については日本の利子率も入れて)推計している。これは、適当なPLの値を入手することの困難ばかりでなく、PLもWもがともに「経済の発展水準」という同じ変数で説明可能だということにもよっている。すなわち、今この「経済の発展水準」をY/Nで表現するとすると、

 PL=f(Y/N)  f´>0               

 W=f(Y/N)   f´>0               ・・・(ix)であって、基本的にはPLもWも同じ動きをするからである。つまり、ここではWをPLの代理変数としても利用していることになる。

 

3)経済力と政治変数に関する定式化

 前節2)で見た「国際的政治摩擦」は比較的データとしてとり易い関税政策と軍事支出について定式化する。

 まず、各国の市場分割を直接に決める保護関税(CD)についてであるが、BPを貿易収支とした時、一般 的には

  CD/Y=f(BP/Y)  f´<0           ・・・(x)

の形をとると考えることができる。なぜなら、各国の経済力は輸出競争力の強弱、したがって貿易不均衡の程度(対GDP比)で測ることができるが、その変化=不均等発展が各国政府をして市場分割に関わる政治変数(ここでは対GDP関税率)をめぐる闘争を引き起こすからである。実際の推計では、統計的に有意な結果 を出すためにBP/Yでなく対GDP輸入比率(IM/Y)や各国BPの比率、米国にとっての対ASEAN輸出依存率といった変数をとったケースもあるが、それらは本質的に同じ考え方に因るものである(帰国後再度チェック)。

次に、軍事支出(ME)については、次のような定式化を考える。すなわち、  

ME/Y=f(当該国のGDP/他の2国のGDP)     ・・・(xi)

ここで注目されたいのは、右辺の説明変数がまさしく各国経済力の不均等発展を直接に表現していることである。そして、その経済力の変動が「国際政治」における発言力を決める変数=軍事力の増強ないし削減をもたらす。あるいは、もっと言えば、経済力の相対的上昇は市場のより大きな占有を要求して、そのための対外交渉力である軍事力の増強をめざさせる。とりわけ、(xi)式の左辺が(当該国のME/他の2国のME)とならず軍事費の対GDP負担率となっていることにも注目されたい。この定式化は「大国」(相対的に経済力の大きな国)ほど軍事力への志向性を持つ(「軍国主義的になる」)ことを示している。そして、実際、日、米、ASEANの3地域のどれもがこの定式化で推計できたことは推計式(30)〜(32)によって知ることができる。69年以前の日本のみがこの形で推計できなかった(統計的なあてはまりが悪かった)が、これはこの段階まで敗戦国日本の軍備に対する国際的抑制圧力が強かったためと思われる(実際、1969年までは日本の軍事費の対GDP比率は傾向的に低下していた)。 

なお、ここで(x)式と(xi)式について付言しておきたいのは、(x)式でCDの強化をもたらすものが経済力=競争力の減退であるのに対し、(xi)式の場合はME増強への圧力は経済力の増大につれて大きくなり、これが非対称となっていることである。この点、場合によると両式の理論的基礎に相違があると考えられるかも知れないがそうではない。CDの強化は他国資本の国内市場への進出を阻止する防衛的措置であるが、MEの増強は他国政策に介入する攻撃的政策である。この非対称性によるものである。

4)政治変数の経済変数へのフィード・バック

 ところで、以上に見た政治的反応はどれもが自国資本の利害を代弁してなされるものであるが、長期的視野からする時、その意図は必ずしも達成されず、場合によれば逆の効果 しかもたらさないようなケースも存在する。たとえば、P.ケネディは『大国の興亡』(1987年)で大国の軍事費負担がまわりまわって経済成長への阻害要因となることを主張している。これはまさに(xi)式における「大国の意図」と逆の効果 が生じることを示しており、経済成長が究極のところ投資の累積によるものであることに注目すれば、我々が先の(v)式でME/Yを投資の説明変数にし(、fME/Y<0と置い)たのはこのためである。そして、この意味において、我々のモデルは“レーニン=ケネディ・モデル”と呼ぶことができる。

 また他方、同じ(v)式でCD/Yが説明変数となっていることはもっと「レーニン的」に説明することができる。それは、レーニン『帝国主義論』が「資本主義の寄生性と腐朽」として述べた事柄の中に、以下の2つの内容が含まれているからである。すなわち、

@金融資本による国家財政への寄生(販売先の確保)。

A独占による技術的進歩への刺激要因の減少。

 筆者はこの2つの内容を関税政策に関して次のように読み替えたいと思う。というのは、

@´自国資本の国家政策への寄生。具体的には、保護関税によって外国資本の参入を

   阻止し、それによって国内市場(販売先)を確保すること。(もし外国製品を完全にシ

   ャット・アウトすると、それは「国内資本による国内市場の独占」となる。)

A ´保護関税により市場を守られた(=その意味で国内市場の部分的「独占」に成功した

 )国内産業は技術的進歩を怠るようになる。

 先の@Aとこの@´A´が本質的に同性質であることは多言を要しないであろう((v)式では「技術的進歩を怠る」ことが「投資を怠る」こととして定式化されている)。ともかく、こうして経済力の発展はME/Yの上昇を通 じて投資にマイナスに作用し、また衰退局面に入った大国が(現在の米国のように)貿易収支の悪化を保護政策で乗り切ろうとする限り、それも長期には投資にマイナス効果 を持つことになる。この意味で「不均等発展」は「政治」の「経済」に対する反作用によっても生み出され、また増幅されることがわかる。

V. 「 レ ー ニ ン ・ モ デ ル 」 の ワ ー キ ン グ と イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン

 以上で定式化された「レーニン・モデル」について、本節ではそのワーキングを調べ、またその理論的意味を探る。

1) 「不均等発展」のモデル的表現

マクロ計量モデルには各種の現実説明力のテストがあるが、ここでは紙数の関係で「不均等発展」の表現力に重点を置いてみることにする。まず、第1表は95年から始まる予測期間の2025年までの5年間毎のドルベースの実質成長率を示している。この予測は1998年初のアジア危機の深化過程で行ったものであるため「楽観的」と他者に評されたが、その後の経過はこの予測の正しさを大局的には示している。そして、これら予測期間を含めて、1950年以降の約75年間について、ドルベースの各国・地域の高度成長期をグラフ的に示すと次の第2図となる。見られるように、どの国・地域でも30-50年程度の高度成長期が必ずあること、各国・地域の不均等発展とはそうした高度成長期間の次々と移動する現象にすぎないことがわかる。

第1表 環太平洋10ケ国・地域のドルベース実質GDP成長率予測

(95年価格ドルで測った5年前に対する平均成長率、単位%)


1995-2000
2000-05
2005-10
2010-15
2015-2020
2020-25

米国
4.8
3.1
-1.6
-3.9
4.1
2.8

日本
-2.6
1.7
1.4
1.2
1.1
1.0

韓国
-0.7
4.9
3.6
2.8
2.4
2.1

中国
4.2
8.4
10.7
11.4
12.2
13.9

台湾
2.3
3.7
2.7
2.1
1.8
1.6

フィリピン
2.6
6.8
6.6
6.8
7.0
7.3

タイ
-1.7
6.9
6.3
5.9
5.6
5.4

マレーシア
-1.5
4.7
4.0
1.0
1.4
8.7

インドネシア
-7.1
5.7
7.0
8.1
9.5
11.4

オーストラリア
3.6
3.1
2.0
1.5
1.7
2.1

第2図 環太平洋諸国における高度成長期の移動

       1950  55  60  65  70  75  80  85  90  95 2000 05  10  15  20  25

日本            ←————————————……———→

オーストラリア                   ←—……——…………—→

台湾                  ←——————————————→

韓国                  ←—……——————……———→

マレーシア                ←—……————……———→

タイ                      ←———————……————……———————→

インドネシア                                ←———……………………—————————→

フィリピン                        ←———……………………—————————→

中国                                                        ←———————→

注)四捨五入で6%を超える成長率を「高成長」とみなしている。

2) 国際資本移動を通じた国際的相互依存関係

第2表 資本蓄積ショックの他国・地域への効果の方向

  影響受ける国  影響与える国
米国
日本
韓国
中国
台湾
フィリピン
タイ
マレーシア
インドネシア
オーストラリア

米国
  +
+
+
-
+
+
+
+
-

日本
+
  +
+
+
+
+
+
+
+

韓国
+
+
  +
+
+
+
+
+
+

中国
+
+
-
  +
+
+
+
+
+

台湾
+
+
+
+
  +
+
+
+
+

フィリピン
+
+
-
+
+
  +
+
+
+

タイ
+
+
+
+
+
+
  +
+
+

マレーシア
+
+
-
+
+
+
+
  +
+

インドネシア
+
+
-
+
+
+
+
+
  +

オーストラリア
+
+
+
+
+
+
+
+
+
 

我々のモデルは、上記の他にも様々な興味ある結果 を示しているが、国際的相互関係を表現するのがひとつの目的があるため、次の第2表で、10の国・地域の中のどこかで資本蓄積が追加的に生じた場合の他国・地域のGDPへの影響を示した。

まず、前者の影響であるが、一部を除いて全体にプラスの記号が支配的であることがわかる。第T節のレーニンの引用でもあるように「過剰」な資本は利潤率を低くし、したがって当該国への他国からの資本移動を少なくするか、あるいは他国への資本流出を拡大する。したがって、本モデルのおけるこのメカニズムが、他国経済へのプラスの効果 を生み出しているものと思われる。このメカニズムをより「国際資本移動」に注目して論じたのが、以下のレーニンの文章である。すなわち、

「資本の輸出は、資本が向けられる国で、資本主義の発展に影響をおよぼし、その発展を著しく促進する。だから、資本輸出がある程度輸出国の発展をいくらか停滞させることになるとしても、それは、全世界における資本主義のいっそうの発展を拡大し深めるということの代価として、はじめておこりうるのである。」(レーニン『帝国主義論』レーニン全集邦訳第22巻280ページ)

したがって、我々は「産業の空洞化」を否定的にばかり評価することはできない。それは日本の成長の結果 なのであって、その成果を途上国に移転する作業である。そして、その「移転」は日本にとっても「いくらか停滞」を意味するにしても全世界の規模で見れば経済発展を意味し、上述の国際的相互依存関係がある限り途上国側の恩恵もまた何らかの形で享受しうる。

3)生産性向上の他国・地域経済への影響

第3表 生産性ショックの他国・地域への効果の方向

  影響受ける国  影響与える国
米国
日本
韓国
中国
台湾
フィリピン
タイ
マレーシア
インドネシア
オーストラリア

米国
  +
-
-
-
-
-
-
-
-

日本
+
  +
+
+
-
+
0
-
+

韓国
+
+
  -
-
-
-
-
-
+

中国
-
+
+
  -
-
-
-
-
-

台湾
-
-
+
-
  -
-
-
-
-

フィリピン
-
+
+
-
-
  -
-
-
-

タイ
-
+
-
-
-
-
  -
-
-

マレーシア
-
-
+
-
-
-
-
  -
-

インドネシア
-
-
+
-
-
-
-
-
  -

オーストラリア
+
+
+
-
-
-
-
-
-
 

他方、特定国・地域生産性の向上が他国・地域のGDPに及ぼす影響を示したのが次の第3表である。ここでの第一の特徴は、先の資本蓄積の影響が全体にプラスが支配的であったのに対してここではマイナスが支配的であることである。この理由は、当該国・地域での生産性の向上が、当該国・地域の他国・地域に対する相対利潤率が高まり、それによってさらに他国資本を吸引する効果 を持つからである。

とりわけ、この図の中で注目されたいのは、第一行に示されたアメリカでの生産性の向上が他国に及ぼす効果 である。効果の方向は他と同じで、その点では特に特徴的なわけて゛はないが、このメカニズムを近年におけるアジア金融危機のそれと重ね合わせて考える時、きわめて興味深い。というのは、近年における米国経済の好調さがタイや韓国の国際資本を吸い上げさせ、それが金融危機の引き金となったことを表現していると理解しうるからである。日本に対するこの影響がプラスとなっていることがシミュレーション結果 として問題だという疑問もあり得ようが、日本経済の不況は別の原因によるものと理解すべきだろう。日本経済はタイや韓国の経済とは違って、他国資本に依存していない。資本輸入国ではなく、資本輸出国である日本経済の不況現象は別 のメカニズムとして説明されなければならないだろう。

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