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マイケル・ムーア最新作『シッコ』公開前から大評判 [暗いニュースリンク]
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投稿者 white 日時 2007 年 6 月 24 日 15:31:47: QYBiAyr6jr5Ac
 

□マイケル・ムーア最新作『シッコ』公開前から大評判 [暗いニュースリンク]

 http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2007/06/post_e874.html

06/23/2007
マイケル・ムーア最新作『シッコ』公開前から大評判
現在、アメリカ合衆国にはマイクという名の要注意人物が3人いる。マイク・グラベル、マイク・ブルームバーグ、そして、日本にもお馴染みの“野球帽を被ったむさ苦しい男”マイケル・ムーアだ。

今回はその、マイケル・ムーアの話題。彼の最新作『Sicko』(日本語タイトル『シッコ』、今年8月公開予定)は今年6月29日から全米で公開されるが、その前評判が凄まじい。特徴的なのは、前作『華氏911』と違い、今回はリベラル派はもちろん、かつてムーアに批判的だった人々からの支持も拡大しつつある事実だ。ワシントンで開催されたプレミア試写会にはダレル・アイシャ議員(共和党・カリフォルニア州)も姿を見せ、「医療危機問題は党派を超えた課題ですからね。」と作品を讃えた。前作に冷静だった政治批評家達からも、「ムーアのキャリア中ベスト作品」との呼び声が上がり始めている。

ムーアは、『シッコ』でアメリカの医療危機問題をテーマにしているが、作品中で取り上げるのは5,000万人近い医療保険未加入のアメリカ人だけではなく、民間の医療保険に加入しながら適切な保障が受けられなかった多くの中流層の人々の物語である。攻撃のターゲットは、医療現場で暴利を貪る医療保険業界と製薬業界、さらにそうした業界の横暴を許す政治家たちだ。ムーアはストレートに、民間医療保険業界は廃止すべきで、製薬企業には大幅な規制が必要と訴え、両業界から金を受け取って政府規制緩和に努める共和・民主両党の有力議員たち−リック・サントーラム、ヒラリー・クリントンらを批判し、カナダやイギリス、フランス他の先進国事例を引用し、国民皆保険制度の導入を主張する。

ムーアの批判に医療保険・製薬業界側が黙っているはずはなく、保守派シンクタンク各グループと協力して映画公開を前に着々と反論準備を進めているらしいが、おそらく今回の業界批判は抑えられないだろう。ムーアの主張に同意する国民は大勢いる。例えばウェブ動画最大手YouTubeはムーアに共鳴し、「医療サービス恐怖体験」「医療保険業者とのやりとり」の動画投稿を受け付けていて、投稿動画はどんどん増えている。全米で高い人気を誇る女性タレントのオプラ・ウィンフリーは自身のショーでムーアと対談し、公式サイトで専用意見投稿フォームを設けている。

医療業界以外で戦々恐々としているのは、どうやら2008年度大統領候補達らしい。ムーアは、民主党先頭集団(オバマ、エドワーズ、ヒラリー)らの医療制度改革案を「依然として医療保険業界を擁護する妥協案」として批判する。おそらくもっとも慌てているのは、映画の中で強烈に批判されているヒラリー・クリントンだ。かつて国民皆保険制度導入を試みたこの上院議員は、最近では医療保険・製薬業界から献金を受ける議員リストのトップに立ち、2008年大統領選にむけて、「我こそは医療危機問題にもっとも強い大統領候補」と宣伝している。この矛盾に彼女はこの先どう応えるつもりだろう?(もっとも、ムーアの“医療保険業界廃止プラン”に沿った医療制度改革を唱える民主党候補者は、プレミア試写会にも参加したデニス・クシニッチだけのようだが・・・)

『シッコ』にまつわる今後の反響については追ってカバーするとして、今回は以下に、英インディペンデント紙上に掲載された作品関連記事を翻訳して掲載。(文中リンクは訳者による)



シッコ?アメリカ医療システムの真実(Sicko? The Truth About the US Healthcare System)

by アンドリュー・ガンベル:英インディペンデント紙2007年6月4日付記事

マサチューセッツ州ケンブリッジに住むシンシア・クラインは、自宅で心臓発作に襲われても手順を心得ていた。救急車を呼んで、緊急時のためにあらかじめ処方されたニトログリセリンの錠剤を服用し、助けが到着するのを待った。

手順どおりなら、全てうまくいくはずだった。他の数千万人に昇るアメリカ人と違い、彼女は医療保険に加入していたからだ。救急チームはまもなく到着した。普段から彼女の心疾患治療を受け持っているハーバード・メディカル・スクール提携の民間付属病院は、目と鼻の先にあった。

問題は、そのマウント・オーバーン病院の救急病棟が、急患で溢れていたことだった。病院側は彼女の受け入れを拒否した。救急車はシンシアを近所にある別の病院に運んだが、彼女が必要とする緊急カテーテル治療は、そこでは行われていなかった。ボストン地区にある他の病院施設へも大急ぎで連絡したが、無駄だった。数時間後、シンシア・クラインは死亡した。

シンシア・クラインが死亡した地区は、アメリカで最も一流の医療専門家が集中する地域だった。それでもそのような事件が起きたのは、アメリカの崩壊した医療システムに原因がある。全くの無保険状態で暮らす国民が5,000万人ほどいて、さらに数千万人が、本来必要とする治療を承認されるために奮闘しているのだ。結果として、危機的状況に陥るまで疾患が治療されないままになる。患者達は救急病棟に急いで運び込まれるが、そこでは法律上患者を受け入れる義務があるので、医療システム全体を圧迫している。医者であれ患者であれ、右派政治家であれ左派政治家であれ誰でも、現状の医療システムは狂気の沙汰だと感じている。

テキサス州オースティンに住むエリザベス・ヒルザベックが双子を早産した時も、別の種類の狂気の沙汰に遭遇した。彼女もまた、医療保険に加入していた−銀行で良い仕事に就いている夫の保険である。しかし、双子を出産した時の彼女はわずか妊娠6ヶ月で、男児のパーカーは脳性まひを患った。医者は理学療法により男児に筋力をつけて歩行訓練できる機会を与えるよう薦めたが、マネージド・ケア業者側は費用負担を拒否した。

ケア業者側の常軌を逸した官僚的論理によれば、保険適用の対象は“リハビリ”療法であり、言い換えると、患者の失われた肉体的技術を回復させることであるという。パーカーの場合は歩いたことがないので、その理学療法は男児に新しい技術を訓練することになり、それゆえ適用外というわけだ。ヒルザベック夫妻は抗議し、意義を申し立て、一時的救済を得たが、結局医療費を支払うために家屋を売り払いトレーラー暮らしとなった。エリザベスの夫、スティーブンは、より高い給与を求め転職を考えたが、医療保険補償範囲に関する注意深い喚問を受けた後で転職を思いとどまった。ヒルザベック夫妻に、将来加入予定の医療保険担当者は陽気に尋ねた:「脳性まひの治癒はいつ頃になります?」脳性まひは克服できないとエリザベスが担当者に説明すると、担当者は彼女に独力で治療してくださいと伝えた。

アメリカ人なら誰でも医療にまつわる恐怖体験を持つか、そういう体験をした人が身近にいる。官僚的な電話対応や通知書、信用格付けへの不満、あるいは、高額な一連の検査を受けてから、即座に支払い能力を超える治療コースに繋がることを恐れ、ゆっくり悪化していく病状を無視する人々の話などである。

ひどい間違いが起きない場合でも、生き残るのは至難の業だ。

モンタナ州のメリッサ・アンダーソンは、個人事業主のために手頃な医療保険を見つけられなかった。常識化しつつある苦悩だ。2年前、息子のケイシーがてんかんで倒れた際、州に設けられたばかりの児童医療保険プログラムのおかげで彼女は助けられた。同プログラムは、貧困層ではないものの超高額な医療費を支払う財力のない住民向けに特別に用意されたものである。重大な治療の必要性がないため、メリッサ自身は未だに無保険のままである。

過去15年間、医療サービスを受けるための経済的手段を持たない貧困層−未だ重大かつ未解決のままだが−そうした人々に関する話題は少なくなっている。代わりに、医療サービスを受けられると期待された人々の恐怖体験話が増加している。中流層の人々−定職を持ち、職場で医療保険に加入できる人々−この問題も悪化しているが−あるいは、かつて手堅い医療保障を受けられた職業に就いている人々が、より退化した保障、さらに様々な理由で保障を削減される危機に瀕しているのだ。

この泥沼こそ、マイケル・ムーアが今月末公開の最新ドキュメンタリー『シッコ』で暴露するものである。ムーアは映画の大部分を割いて、保険企業や製薬企業を潤わせ、誰にとっても全く公正でない現状の医療システムには必然性も必要性もないと実証してみせる。ムーアの調査はフランス、イギリス、カナダに加え、未だ開発途上のシステムと見なされているキューバにまで及ぶ。

ムーアは残酷な話も披露する。映画の冒頭では、無保険の大工が、1万2,000ドル払って切断された薬指を接続するか、もしくは6万ドル払って切断された中指を接続するかという選択を迫られる場面が登場する。それからムーアは、珍しい病気を治療するために骨髄移植手術が必要になった夫を持つ病院職員に注目する。その夫婦の加入する医療保険会社は、移植手術が“実験的”であるとして費用負担を拒否した。職員の夫は死亡した。

ジョナサン・コーンの新刊『Sick: The Untold Story of America's Health Care Crisis---and the People Who Pay the Price』では、さらに多くの話が収録されている。ネレーン・フォックスというカリフォルニア女性も、医療保険会社から骨髄移植手術の費用負担を拒否された結果、乳癌で死亡した。ジョージア州では、或る夫妻の乳児が心臓停止に陥った際に、医療保険会社側の命令で45マイル(約72キロ)も離れた病院に連れて行かざるを得なくなった話もある。乳児は生き延びたが、迅速な治療があれば避けられたはずの永久的障害に苦しむことになった。ニューヨークでは、ブライアン・ジョーンズという名の乳児−事件当時、地元メディアで盛んに言及された新生児が、出産後24時間で病院を退院せよという医療保険会社側の要求により心臓疾患が発見されず死亡した。異常を発見できたかもしれない検査をあまりにも急いで実施したためだ。

アメリカの医療システムは極端な矛盾を抱えている。医療技術と疾病研究では、比類するものがない。アメリカの医者は世界各国の医者よりも高給であり、最高の医者たちが集まることになる。それでもなお、ほとんどではないにせよ、多くのアメリカ人はこうした恩恵を受けられない。実際、ニューヨークタイムズ紙で経済学者ポール・クルーグマンが指摘するように、研究とハイテック機材は、その利益を享受できる少数の富裕層と、ますます享受できなくなる大衆という不公正の原因のひとつとされている。「(医療システムは)一部の人にはより高額な治療を提供し、ついでに、それ以外の多くの人々をさらに遠ざける−少数に最先端治療を受けさせるために、大多数の基礎医療機会を奪っている。」クルーグマンは書いている。「このように、我が国では医学の進歩が多くのアメリカ人の健康にとって悪い事態になるという矛盾に直面しているのだ。」

利益追求型の医療保険企業によってシステムが運営されると、非効率で高額、さらに人間性まで奪われてしまう。アメリカ国民1人あたりの医療費負担額はフランスの2倍以上、イギリスの2倍半ほどになる。それでもなお、国民健康指標ではほぼ全ての面で他国を下回っており、おそらく最もショッキングな指標として乳児死亡率を挙げると、イギリスに比較してアメリカは36%も乳児死亡率が高いのである。

マネジメント・コンサルティング企業マッキンゼーの最新調査による試算では、民間医療保険業界の過剰な官僚制のコスト−ビジネスの発掘、苦情処理、客側の医療費負担請求を拒否する理由を説明するための“拒否管理専門家(denial management specialists)”の雇用等の費用は、年間980億ドル(約12兆929億円)に昇る。注目すべきはその金額の大きさで、マッキンゼーの試算によれば、医療保険未加入のアメリカ人全ての費用を合計してもその金額は770億ドルなのである。仮に合衆国政府が、製薬業界の不当に高額な独自価格設定を許すのではなく、医薬品の大量購入割引交渉をするならば、さらに660億ドルの節約になるという。

驚いたことに、アメリカ合衆国ではビル・クリントン政権以来、医療問題に関して真剣な議論が行われていなかった。クリントン大統領は、妻のヒラリーから相当影響を受けて、1994年に医療システム改革を試みて失敗した。しかしそれも、2008年度大統領選挙が白熱するにつれ変わるかもしれない。アメリカ国民5,000万人(うち1,000万人は児童)が無保険状態なのは誰でも認識しており、文明社会としては受け入れ難いのだ。

アメリカに古くから存在する自由市場主義的な議論−医薬品の“社会化”は神を恐れぬ共産主義への坂道を下る最初の一歩になるという主張も、もはや正しくない。機能する民間医療保険体制がないために、結局政府が総治療コストの50%ほどを支払う羽目になっているからだ。貧困層はメディケイドと呼ばれる政府プログラムに依存し、高齢者はメディケアと呼ばれる政府プログラムに依存している。そして、米医療システム全体でおそらく最も効率の良い部分は、退役軍人向けの国民保険サービスの一種、復員軍人援護局である。

19世紀のロンドンやパリで、金持ちや中流層に影響を及ぼし始めてようやく当局がコレラに注目したように、アメリカの医療システム危機は、その不公正さに苦しみつつある上層部に押し寄せ始めたのだろう。

なによりもまず、企業経営層は、従業員向け医療保障のコストが上昇し続ける事態に閉口している。スターバックスはコーヒー豆の仕入れよりも多くの費用を従業員向け医療保険に支払っている。インドや中国等の低賃金国で価格競争にさらされている国際企業にとって、従業員向け医療保険費の高騰はますます受け入れ難い問題になっている。

ウォルマートの経営者であるリー・スコットが、ウォルマートの労働環境に対する厳しい批判で知られる米サービス業界労働組合と一致協力し、国営の全国民向け健康保険システムを2012年までに確立するよう働きかけているのも、そういう事情によるものであろう。この闘争は困難なものになる。これまでのところ、医療保険業界と製薬業界は、多数の議員に選挙資金を提供し、残酷なまでに手際よく自らの利権を守ってきている。クリントン夫妻が1994年に敗北した理由のひとつは、こうした業界側のロビー活動によるものだ。システム改善のためには並外れた政治的勇気が必要になる。

そうこうしている間も、シカゴで修道女をしていたマリオン・ビンダーの体験談のような狂った物語を、我々は聞かされることになる。彼女は或るカソリックの病院に心臓発作で二晩入院したが、慈善事例に値しないとして病院側から治療費1万1,000ドル(約136万4,804円)支払うよう訴えられたのだ。障害を持つお年寄り宅に住み込みで働くビンダーは、入院申込書に保険未加入と記入したが、少なくとも本人の話によれば、病院側はともかく治療を受け持つと請合ったという。

途方もない官僚制との行き詰まる闘争から1年で、裁判官は即座に彼女の支払い義務を免除すると決定した。幸運な結末である。ビンダーは言う:「この体験は屈辱的でした。罪悪感にさいなまれました。まるで犯罪者扱いされたように感じます。」彼女は生きていて、うまくやっていけそうだが、このシステムでは誰もが彼女と同じ救済が得られるわけではない。
(以上)

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