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Re: 【救急医療崩壊】  82歳心肺停止患者の蘇生中に呼吸困難の男性受け入れ不能と伝えても 「受け入れ拒否」
http://www.asyura2.com/07/iryo01/msg/296.html
投稿者 どっちだ 日時 2008 年 1 月 17 日 00:17:35: Neh0eMBXBwlZk
 

(回答先: 【救急医療崩壊】  82歳心肺停止患者の蘇生中に呼吸困難の男性受け入れ不能と伝えても 「受け入れ拒否」 投稿者 どっちだ 日時 2008 年 1 月 17 日 00:12:20)

昨今の救急報道に関する私見 [雑感]  


今回のエントリーは、昨今の救急報道に関する個人的な視点を述べてみます。ご批判はお受けしますが、コメント上で、議論を戦わすつもりはございませんので、あらかじめご承知おきください。

http://www1.ntv.co.jp/action/theme/02/

「医療崩壊」過酷な勤務医をサポートせよ
小児科や産科のたらいまわし救急医療など、今、日本中で起きている”命の格差”問題を徹底取材。あるべき「医療体制」の提案を!
というタイトルのブログがあります。報道関係者がおつくりになったブログのようです。コメントも書き込めるようで、医療関係者から多くのコメントが入っています。テレビ関係者は、どうしても、わかりやすく印象的にというところに力点を置くためでしょうか?すでに、サブタイトルに、「たらいまわし」という用語を使用しています。

メディアがこの言葉を使うことによって、メディアリテラシーがまだ十分に育っていない声なき多くの方々に、潜在的な医療不信の根を植え付ける・・・・そして、それが、現場の医師患者関係の構築に支障をきたすということが、どうもおわかりにならないようです。

それは、現場にいらっしゃらないので、無理もないかもしれません。 私も自分のこのブログ上で、「たらいまわし」という用語をメディアが使用することに関して、抗議の意を表明し続けてきましたが、そろそろ、諦めの心境になってきました。

次の報道でも、キャスターさんの原稿に、しっかり「たらいまわし」とあります。

http://www.news24.jp/101208.html   
魚拓 http://s03.megalodon.jp/2008-0116-1228-45/www.news24.jp/101208.html

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06年救急搬送 20か所以上要請104件 <1/16 0:36>

大阪市消防局は15日、救急搬送の際の「患者のたらい回し」問題で、患者の搬送先を探す際、延べ20か所以上の病院に受け入れ要請をしたケースが、06年の1年間に、大阪市だけで104件あったことを公表した。3〜4日に1回の割合で起きていたことになる。
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これは、動画もみれます(いつまでリンクがあるのかはわかりませんが?)。

救急の受け入れが難しいという医療の現場の状況は、今に始まったことではなく、昔からあることが、今大騒ぎになっているだけという感が、個人的には強いのですが、この昨今の報道により、いい意味で世論が変わってくれることに期待します。そこには政治の力も重要でしょう。医療機関だけが悪くないという認識も増えてきたようには思います。ですが、やはり、こんな事例があるのも事実です。メディア報道が生んだクレームだと私は考えています。

82歳 女性 来院時心肺停止(CPAOA) (症例には、いつもの如く脚色入れています。相当変えました。)

ある当直帯のこと。
当院の救急外来の体制:看護師2名、医師2名(内科系、外科系一名ずつ)、臨床初期研修医1名。 

そんな体制で、午前3時に、ホットラインが鳴った。心肺停止患者(CPA患者)でした。 

このとき、歩いてきた患者さんが外来に2名ほどいましたが、二人とも声をかけて、一端診療が中断する旨を告げました。お二人ともそれは快く理解していただきました。分別のある患者さんたちでした。そして、5名全員で、心肺停止患者に備えて待機しました。 

懸命に、心肺蘇生処置をがんばりました。

約20分後、心拍再開しました。しかし、不安定でした。

まだまだ、その患者さんに外来スタッフがかかりきりにならざるを得ませんでした。

その途中に、ホットラインで新たな受け入れ要請がありました。呼吸困難の高齢男性だったそうです。事務の方に、医療スタッフは、対応不能と返答するように、電話対応をお願いしました。

蘇生をがんばった患者さんは、午前5時ごろにようやくバイタルも低空飛行ながらキープできて、なんとか病棟に上がれるめどが見えてきました。原因は、確定できませんでしたが、誤嚥・窒息を考えました。

そのころです。対応不能とお断りしたはずの呼吸困難の高齢男性の家族から、突然電話が入ってきました。

「お宅は、どうしてたらいまわしするのか! すぐ診てほしかったのに。
 今からでもいいから、そっちに救急車で行くから!」

というクレームでした。搬送された別の病院から家族(50台くらいの男性)が電話をかけてきたのです。まさに、旬のクレームです。昨今の報道はこういう人を作ってしまうのです。だから、昨今のたらい回し報道に、現場ははっきり言って迷惑しています。

この家族は、県知事と後日会う予定だから、本日のことを知事に言うといいました。
(本当に知事に言ったかどうかは、確認できていません)

結局、搬送された病院の医師も家族対応に困り、先ほど蘇生処置を終えたばかりのへとへとの内科医師が電話対応し、この高齢男性の患者さんを引き受けました。

午前7時に転送されてきました。

内科医師は、この患者さんと家族に謝罪をしました。

そして、心不全増悪の診断にて当院で入院となりました。そして、へとへとの内科医師は、翌朝そのまま、定期外来の診察に入ったのです。

関係者は、クレーム対応として、報告書を作成しました。

もちろん、この患者さんもご家族を愛する余り、必死の行動だったのだと思います。

皆が生きるために必死なんだと思います。
病気、死に対する社会全体の認知が、個人個人の行動にきっと影響しているのでしょう。

私の思う社会全体の認知とは、「病気・死とは避けるもの、戦うもの」です。
参考エントリー:日本人の「死生観」と私の思い http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/20080101

少なくとも、この家族は、そういう認知が、根にあるからこそ、これだけ必死になるんだと私は思いました。もちろん、それがいけないとは言いません。

しかし、上記のような救急医療現場は、医師が健全にかつ長く働き続けられうる環境でしょうか?政治家の方々に、私の声が届くことを願っています。

ただ、皆の認知が、「病気・死とは避けるもの、戦うもの」であると、医療という社会システムがおっつかない現状もあります。

難しいですね。個人個人の価値観レベルと社会システムを同じ土俵で述べていいのかという危惧も在ります。同じ土俵で述べることが許されるならば、社会システムがおっつくように個人個人の価値観を意図的に誘導するという戦略を日本国がとればよいことになります。それは、それでなんか変だなあとも思います。

私は、病気・死は、戦うものではなく付き合い受け入れるものだと個人的には思っています。
そして、そのような受容感が社会風潮として浸透していくことを願ってやまないとも思っています。

それが、医師も患者も、ハッピーになりうる一つの道だと思います。

私の考えは、個人の価値観と社会システムを同じ土俵で述べたものであり、それは批判を受けても仕方がないと思っています。でも、私には、医師患者関係が、win-winの関係になるための他の手を思いつかないのです。

少なくとも、今の上記引用のメディアが報じた視点(医師不足、訴訟リスク)だけでは、医療崩壊の窮状を脱するのは難しいと私は思います。
2008-01-16 11:58


コメント


はじめに対応を断られても他院に搬送された時点で、
この呼吸困難の患者さんはきちんと ”死を避ける”機会を保障されたわけですから、本来ならば何の問題もないケースです。
それなのに満足できないというのは、ケーキをひとつ食べても、もう一つたべないと気がすまない子供のような、単なる甘えに見えます。
どうしても別の病院で診て欲しいというのであれば、状態が安定してから日勤の落ち着いた時間帯を選んで転院でもいいわけですし。

あやまる筋合いではないのにきちんと謝罪された内科医の方を本当に気の毒に思います。
いったいこの内科医が何か悪いことをしたのでしょうか?
医師をしていて一番疲労を感じるのは、
重症の処置で忙しい時よりも、家族や患者のこういう理不尽なクレームの時だと思うのです。
そして、それが度重なることによってモチベーションも下がり、精神的に疲労し、同じ頭数だとしても著しく効率が下がる。
日本の医師は他国に比べてとても勤勉です。
数が少なくても長時間労働でも、ぎりぎりの所でよく働いてきました。
その危ういバランスを崩したのはこのような精神的な攻撃です。
報道機関の方を含め、世間一般の人々にもっとそういうことをわかっていただきたいですよね。
by tidalwave (2008-01-16 15:59)


いつも聡明なブログ内容に感心し、勉強させてもらっております。
先生の意見に全く同感です。

医療崩壊の現状、大変さを(地域の講演会の機会や知人などに)主張しても、実情を分からない一般の人にはなかなか理解していただけないし、医師のわがままと思う人も少なからずいます(これも今の医療不信が蔓延した社会では仕方ないと思っています)。

今後は他の患者で心身ともに一杯一杯でも救急車を断れない当直(夜勤ではない!)を強いられることになりそうです。何とか受けてもそんな状態で受ければ十分な医療は提供できないし、運よく無事に済んでも翌日夜遅くまでの通常業務です、、、。ちょっとつらいですよね。

先生のブログや、「新小児科医のつぶやき」「がんになってもあわてない」などの有名ブログを拝見させていただいておりますが、同じ医師の目からみて(脚色や偏見、わがままなどではなく)なるべく中立に現状を情報発信されているように思います。
明らかに偏った中傷コメントもあるかと思いますが、応援しておりますのでこれからも頑張ってください。
by ある学校医 (2008-01-16 16:08)


すばらしい記事、ありがとうございます。
今年の、医療ブログのベストエントリーだと思います。
by akagama (2008-01-16 16:35)


医師不足や訴訟の話がにわかにクローズアップされている現状を、進歩と捉えればよいと思えません。
医師不足と同様に看護師不足も根深い(これだけ不安を抱えた医師の指示で働きにくいのはいうまでもないでしょう)し、訴訟リスクも自分が回避できればいいだけの問題ではありません。
対策がそこだけに光を与えても、それは違いますよ、と思います。

(少なくとも身近な)人が死ぬことを悲しむばかりで許容しないという前提で行われる議論には、もう付いていけなくなっています。
現在の状況は社会(専門医学の進歩、核家族化や教育)の変化に人が付いていけなくなったことが反映されたもので、個別対応ではなんともならないと、あきらめています。
by ハッスル (2008-01-16 17:41)


救急医療や外科手術は、圧倒的に需要>>供給なので、皆保険制度での維持は不可能です。市場原理に基づく医療がもう少しです。皆さん、米国は嫌いなようですが、日本とは比べのにならない労働環境と収入があり、刑事訴追はありません。民事は、民主主義国家であれば、規制のしようがありませんが、日本の司法判断のほうがはるかにトンデモだし、これは保険で対応可能です。いま、USMLE受験者はうなぎのぼりです。個人の幸福追求は基本的人権ですし、この流れは誰にもとめられません。医療における刑事免責が確立され、市場原理を導入し、労働と技術に相応の対価が支払われるようになるまで、崩壊は続くでしょう。なぜ、皆さん、そうまで赤の他人に尽くそうとするんですか?
by professional (2008-01-16 17:49)


日本には、民間医局や、医師の就職仲介業は、いろいろありますが、日本の医師免もってる人対象に、海外への語学留学+医療職紹介、っていうビジネスは、これからできないのかな?
オーストラリアは、たしか、英語力さえあれば、日本の医師免そのまま使えるし、州によっては、英語力すら、多少は眼をつぶってくれるそうですね。
 
by moto (2008-01-16 18:51)


患者に媚びることが社会の要請であろうと、悪くないことには詫びてはいけない

無知から怒りをぶつける人には無知であることを知らしめて、怒りの原因を取らないといけない。怒りへの慰撫は特効薬ではない。

医師が患者を選別しているのではなく、医療資源を患者が貪って奪い合っているという実情を知らせないと、いつまでたっても当該クレームは消えないでしょう

謝罪した内科の先生は人は良いだけに燃え尽きないか心配になってしまいます。休息も必ず取れなければ、人間潰れてしまいます。
疲れ果てて、クレーマーから開放されるには謝るのが一番時間が短くて済むと考えられたのかもしれません。寂しい・悲しい話です。

一般大衆は自分たちの都合の良い、耳障りの良い情報しか手に入れないだろうし、正論に反応することもないでしょうから、現場で徹底的に説き伏せる必要があります。それに応じないなら契約不成立で受け入れるべきではないと考えます(応召義務との絡みで面倒この上ないですが)
by Med_Law (2008-01-16 19:04)


先生の病院の職員様は優しいですね。
今後、職員を離職させないためには、このようなクレームに近い診療強要に対して毅然と立ち向かわなければならない時代になってくると思います。
(もうなってる!?)

このケースの場合、相手方(初期受け入れ病院)との関係もありますので、転送受け入れは仕方がなかったとは思います。

しかし、その後の処理がマズイ。
正しい対応として、この患者&家族は徹底的に糾弾して、逆に謝罪させるくらいの対応をするべきだったと思います。実際問題、無理だ〜という話もあるかもしれませんが、一生懸命治療を行った心肺停止患者の家族も味方にして資源である医療従事者を守らなければ病院が維持できないのではないでしょうか?

「知事?それがどうした。」と言い返しましょう。
by 逃散の勧め (2008-01-16 20:06)


初めてお邪魔するかと思います。良い文章で、考えさせられるものでした。自分の日記で引用させていただきましたので、事後ですが連絡させていただきました。

酷い患者ですが、その人だけの問題ではないところが悲しいです。人は皆、必ず一定確率、そういうエゴ丸出しの部分が存在します。それにしても、ここまで抑制のきかない人は珍しいのではないかと。

くれぐれも、無理はなさいませんように・・・
by 鴛泊愁 (2008-01-16 20:35)


興味深いエントリーでした。
ちょうど昨日自分の担当患者の転倒で家族からものすごい攻撃を受けて気がめいっていたところでした。
僕は自分やスタッフは間違ったことや謝罪するようなことをしていないと思い一切謝罪はせず、こちらの非を認めませんでした。
(家族はあんたじゃ話にならん直接院長に直訴すると言ってましたが。これで院長に怒られたら病院辞めてやると思ってますが。)
この内科医の先生の対応は大人だと思いました。僕なら絶対に謝罪しないなと。
しかも知事とか他の権力を出してくるような人はだいっ嫌いなのでなお更意固地になっていたと思います。
でも、対応としてはその内科の先生のほうがいらぬ揉め事を作らないので良いのでしょうか。
by 優駿 (2008-01-16 21:08)


救命センターで10年間働き、似た体験もしてきました。これもモンスターぺーシェントの一例ですよね。
先生方のご苦労もよくわかります。内科の先生も辛くやるせない思いをされたでしょう。
でも逃散の勧め様、優駿様のおっしゃるように、小生も当方に非がないのであればすぐには謝罪はしないでしょう(それこそ知事に事情を説明して裁定を仰いでは?)。
そうでないと、救急に従事する者の無力感がますます強くなってしまうのではないでしょうか。
by Bundo (2008-01-16 21:43)


いつも読ませて頂いています。
先日、「広辞苑 第六版」が発売になりました。
さっそく購入し、「たらいまわし」の語句を引いてみたところ・・・

1.足で盥をまわす曲芸
2.一つの物事を、責任をもって処理せずに次々と送りまわすこと。「政権の―」「あちこちの病院を―にされる」

とあり、とてもがっかりしました。マスコミ用語をそのまま広辞苑に載せちゃったのですね・・・。
by MARUKO (2008-01-16 21:58)

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