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ポーランドのパラノイア【イグナシオ・ラモネ(Ignacio Ramonet)ル・モンド・ディプロマティーク編集総長】
http://www.asyura2.com/07/kenpo1/msg/566.html
投稿者 そのまんま西 日時 2007 年 6 月 24 日 11:36:11: sypgvaaYz82Hc
 

(回答先: ポーランドはこんなことまで言って抵抗していた ⇒ ポーランド首相:ナチス侵略なければ人口2倍…発言が波紋(毎日新聞) 投稿者 gataro 日時 2007 年 6 月 24 日 09:41:21)

ポーランドのパラノイア【イグナシオ・ラモネ(Ignacio Ramonet)ル・モンド・ディプロマティーク編集総長】訳・三浦礼恒

通称は「浄め」の法。すなわち辞書的には「浄化の儀式」である。この言葉は、歴史的にカトリック色の強いポーランドでは、必然的に悔悟と悔悛という意味合いを帯びる。2006年10月に可決され、2007年3月15日に施行されたこの法律によって、70万人のポーランド人が、1945年から89年までの間に共産政権に協力したかどうかの自白を迫られることになる。72年8月以前に生まれた高級官僚、大学教授、弁護士、学校長やジャーナリストの全員が、この5月15日までに自らの「過ち」を告白しなければならない。

 彼らはみな、所定の書式に必要事項を記入したうえで、「あなたは旧共産政権の治安機関に密かに、かつ意図的に協力しましたか?」という問いに答えなければならない。用紙は職場の上司を経由して、ワルシャワの国民記憶院に提出される。同院は過去の記録と照合し、「政治的潔白」の証明書を交付する。治安機関への協力が明らかになった場合、公共機関に所属するジャーナリストは無条件で解雇される。回答を拒んだり、虚偽の申告が明らかになった場合には、現在の職業に従事することが10年間にわたって禁じられる可能性がある。

 この常軌を逸した法律は、EU内で激しい物議を醸した。これに比べれば、1950年代のアメリカのマッカーシズムでさえ、稚拙な反共主義に見えるほどだ。2005年10月に保守派のレフ・カチンスキ大統領と双子の兄ヤロスワフ・カチンスキ首相が政権に就いて以来、政府当局は猛烈な魔女狩りに乗り出した。今回の法律は、その柱となるものだ。

 非常に多くのポーランド人が、この法律を憲法に反すると考えている。「自分のしていないことをしていないという証明」を強いるものだからだ。5月初旬に憲法裁判所で下される評決によって、無効と判断される可能性もある。

 右派でカトリック色が強く、国民性を重視する現在のポーランド政権は、カチンスキ兄弟の正義と法(PiS)、農村を基盤とする自衛、ポーランド家族同盟(LPR)の3政党からなる連立政権であり、「道徳秩序」の強引な復活という憂慮すべき政策を推し進めている。最近、副首相兼教育相でLPR党首のロマン・ギェルティフが、同性愛者排除法案を準備しているのも、同じ発想によるものだ。この法案もまた、国際的な憤激を呼び、人権擁護団体の抗議を引き起こした。法案は1カ月以内に提出される見込みで、学校や大学の敷地内で同性愛「その他の性的逸脱」を喧伝した者は、罰金、免職、または禁固に処すという内容である(1)。 

 今年2月には、この大臣の父親で、LPR所属の欧州議員でもあるマチェイ・ギェルティフが、欧州議会の経費を使って、議会のロゴ入りの反ユダヤ主義文書を出したことで非難の嵐を巻き起こした。しかも彼はこの冊子の中で「ユダヤ人は自らゲットーを作り出している」とか「反ユダヤ主義は人種差別ではない」などと言明しているのだ(2)。

 反共的な粛清措置の決定や、権威的な道徳秩序の復活という企てには、人種差別が跋扈していた戦前への、吐き気を催すような一種のノスタルジーが潜んでいる。それはポーランドほどではないにしろ、ウクライナやリトアニアなど他の東欧諸国についても言えることだ。周囲に広がる修正主義の流れの中で、公式には厳しく非難されているはずのヒトラーの第三帝国へのソ連の協力を、賛美してはばからない者も出てきている。

 プーチンのロシアは旧ソ連の姿を変えた延長でしかないという考えが、多くのメディアによって広められている。ポーランド政府が、アメリカの防衛のためにペンタゴンが構想するミサイル防衛システムの自国領への受け入れ方針を発表したのも、こうした考えに立っているからに違いない。ポーランド政府はこの方針の発表にあたり、他のEU諸国にもNATO諸国にも相談しようとしなかった。ポーランドの現況は、政治の世界でパラノイアが起これば、何が引き起こされるかを示している。精神の衰退だけではない。それが引き起こすのは、ある種の背信である。

(1) El Pais, Madrid, 20 March 2007.
(2) Le Figaro, Paris, 17 February 2007.

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2007年4月号)

http://www.diplo.jp/articles07/0704.html

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