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米大統領選挙 共和党マケイン候補の可能性 − 持田直武 国際ニュース分析 (ブッシュ大統領以上の強硬派)
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投稿者 児童小説 日時 2008 年 2 月 05 日 09:32:33: nh40l4DMIETCQ
 

マケイン上院議員が共和党の最有力候補に浮上した。ベトナム戦争の英雄、イラク戦争ではブッシュ大統領以上の強硬派。その一方で、宗教右派を批判、政治献金の制限や不法移民の救済策で共和党主流派と対立し、共和党の一匹狼として知られた。今後、党内保守派の支持を固められるかが鍵になる。
・評価された一匹狼の行動

 フロリダ州の共和党予備選挙で1月29日、マケイン候補が勝利、同党の最有力候補に浮上した。負けたジュリアーニ候補は選挙戦から撤退し、マケイン候補支持を表明。これを機に、カリフォルニア州のシュワルツェネガー知事はじめ共和党有力者も次々に支持にまわった。2月5日に行われる全米22州の予備選挙は、マケイン候補とロムニー候補の対決となり、勝った候補が共和党の大統領候補となるのは確実。風はマケイン候補に有利に吹いている。

 マケイン候補は昨年2月28日、2回目の立候補宣言をした。前回2000年選挙で、ブッシュ現大統領に対抗した実績があり、立候補直後は支持率も高かった。だが、まもなく失速。昨年後半は5−6%と1桁台の低迷が続いた。理由の1つは、上院議員として政治献金を制限する法の制定や、不法移民に同情的だったことが、共和党主流派に嫌われ、献金が途絶えたためだった。20年を超える議員生活でも、党の枠を越えて行動することが多く、あだ名はMaverick(一匹狼)である。

 ニューヨーク・タイムズは1月25日、民主、共和両党の大統領候補を読者に推薦する恒例の社説を掲げた。そして、民主党候補としてクリントン上院議員、共和党候補としてマケイン上院議員を推薦した。同紙はマケイン候補を推薦する理由として、同候補が議員として党派を越えた活動で立法に取り組んだことや、ブッシュ大統領の取り巻き中心の政治から決別することを約束しているためと説明した。共和党主流が嫌った一匹狼の行動が評価されたのだ。

・ベトナム戦争では捕虜生活5年半

 マケイン候補は1936年8月生まれで現在71歳。祖父と父は海軍大将という軍人一家の家庭だった。マケイン候補も海軍兵学校を卒業して58年、海軍に入隊。62年のキューバ危機では、空母エンタプライズ乗組のパイロットとして海上封鎖に参加。また、67年春からは北ベトナム爆撃に参加。22回目の出撃でハノイの発電所を爆撃中に地上からのミサイルに被弾。ハノイ市北部のチュバック湖に墜落して、北ベトナム軍の捕虜となった。

 当時、マケイン候補は海軍少佐、撃墜された時、両腕と足を骨折。駆けつけた群衆が機体から引きずり出した。重態だったが、北ベトナム側は病院ではなく、刑務所に収容した。長く生きられないと判断したためとみられている。だが、2日後に待遇が変った。当時、マケインの父親は海軍大将、ヨーロッパ駐留海軍の総司令官だった。北ベトナム政府はこれを知って政治的に利用しようとした。マケイン少佐を病院に移して治療、捕虜にしたことを公表した。

 これに対し、米ジョンソン政権は68年7月、父親を太平洋軍総司令官に任命。ベトナム戦域に展開する全米軍の総司令官とした。この直後、北ベトナム政府は獄中のマケイン少佐に対し釈放を提案した。米国は政府高官の子息を特別扱いていると宣伝する目的だった。同少佐は「捕まった順番に捕虜を釈放するなら応じる」と主張して拒否。その後の厳しい拷問にも拘わらず節を曲げなかった。この厳しい試練の後遺症で、マケイン候補の両腕は今も肩より上に上がらない。

・一匹狼を支えるベトナム体験

 北ベトナムは73年3月、マケイン少佐を釈放した。拘束期間は5年半に及んだ。米・北ベトナムが和平で合意、米軍はベトナムから撤退、北ベトナムは捕虜全員を釈放した。ニクソン大統領は5月、ホワイトハウスに捕虜を招いて労をねぎらう会を開催。マケイン少佐も痩せた身体を松葉杖で支えながら出席して、大統領と握手した。この時の写真が残っている。同少佐はそれから8年、海軍に勤務したあと海軍大佐で退役。祖父、父と続いた海軍将官への道を断念、政治家に転身した。

 転進の動機の1つは、ワシントン政界に対する不満だった。マケイン候補の著書「父の忠誠心」によれば、「北ベトナム爆撃では、ワシントン政界が攻撃目標にまで介入、パイロットは1つの目標を何度も繰り返し攻撃しなければならなかった」という。同じ目標の上空を何度も飛ぶことは、敵にわき腹を見せて「撃て」と言うのと同じである。この不満がマケインを政界進出へと促した。海軍当局もマケインを連絡将校として上院軍事委員会に派遣。政治家転身へのお膳立てを整えた。

 海軍を退役して1年後の82年、マケイン候補は夫人の郷里アリゾナ州から下院議員に立候補して当選。86年から上院議員、現在4期目。同候補は「当初はレーガン大統領の下で一兵卒として働いた」と謙虚に回想するが、一匹狼的行動はすぐに現れた。レーガン大統領は83年9月、ベイルートに派遣した海兵隊の駐留延長予算を議会に要請、共和党指導部も了解したが、新人のマケイン下院議員は勝つ見込みがないと反対。その1ヵ月後、テロ組織が海兵隊宿舎を爆破、241人の隊員が死んだ。マケインの杞憂が当たっていた。

・保守派をまとめることが今後の課題

 共和党の場合、党の大統領候補となるには保守各派の一致した支持が不可欠だ。例外は76年、フォード大統領が穏健派の支持だけで指名を受けた例だけだ。同大統領は本選挙でも保守派の支持をまとめられず、無名の民主党候補と言われたカーター・ジョージア州知事に敗れた。今回も、共和党候補の中には、保守各派が一致して支持する候補がまだ出ていない。民主党がクリントン、オバマの両候補のどちらかが党の一致した支持を受ける趨勢なのと対称的である。

 この状況下、共和党はマケイン候補が最有力候補として浮上した。同候補は妊娠中絶問題や同性愛者の結婚、銃規制などの社会問題では、保守派と歩調があっている。イラク問題やテロとの戦いでも、ブッシュ政権主流と反りは合わないが、保守派の主張に沿っている。しかし、政治献金の規制や不法移民の問題、温暖化防止などでは、経済界やキリスト教福音派などと意見が食い違う点が多い。これらの点を調整し、保守派の一致した支持が得られるかが、今後の鍵になる。


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