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『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』のウソ(JANJAN)
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投稿者 あっくん 日時 2007 年 7 月 03 日 07:04:19: hhGgKkD30Q.3.
 

文化・『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』のウソ
http://www.janjan.jp/culture/0707/0707018158/1.php

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』のウソ 2007/07/02

 勤務先で環境問題を担当しているので、最近よく同僚から、武田邦彦著『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)にまつわる質問を受ける。

 「地球が温暖化しても、海の水位は上昇しないって本当ですか?」「紙のリサイクルをしても意味がないのですか?」「ペットボトルは、ほとんどリサイクルされていないのですか?」……。この本を読んでから聞いてくる人もいるし、「テレビで見た」といって質問してくる人もいる。

 テレビとは、やしきたかじんが司会を務める「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)のことである。この番組は東京では放送されていないそうだが、関西では平均16%ほどの視聴率を稼ぐ人気番組である。この番組の07年3月25日(日)放送分に武田氏がゲストに出て、上記のような話をしていたという。

 私は当日の番組は見ていなかったが、6月3日(日)にテレビをつけると、再び武田氏がゲストに呼ばれ、主張の違う細田衛士氏(慶應義塾大学教授)と議論を戦わせていた。細田氏はごくまっとうな話をされ、「(武田氏の著書にある)ペットボトル再利用量の数字はおかしい」とも指摘されていた。
 
 さて、私も同僚の質問には丁寧に答え誤解を正していたものの、次第に腹が立ってきた。武田氏は、何のためにこんな人騒がせな珍理論をまき散らしているのだろうか。さらに、番組出演のおかげでこの本が25万部突破のベストセラーになったと聞いて、堪忍袋の緒が切れた。

 本当は専門家の方にきちんと反論していただきたいのだが、ネット上を探し回ってもうまくヒットしないので、仕方なく自分でこの本を買い求めて反論することにした。

1.「地球温暖化で水位は上昇しない」のウソ

 武田氏は同書第3章「地球温暖化で頻発する故意の誤報」に《もともと地球の気温が上がったからといって南極や北極の氷が溶けて海水面が上がるということはない》。またIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)報告を引用して《「北極の氷が溶けたら海水面がどうなるのか」ということはほとんど書いていない》《「南極の周りの気温が高くなると、僅かだが海水面が下がる」という結論だ》、それなのに、環境省の環境白書(今は環境・循環型社会白書)の記述は《IPCCの英語の原文とは全く逆》とまで書いている。

 なおIPCCとは、世界気象機関(WMO)国連環境計画(UNEP)が共同で開催する国連の下部組織のことだ。地球温暖化に関する科学的根拠やその影響・対策などをまとめて報告する権威ある組織で、武田氏も一目置いているようだ。今回公開された報告書(07.2.2公表)は、科学的根拠を調査分析する第1作業部会の報告である。

 私はIPCC報告書の英語原文は読んでいないが、週刊エコノミスト誌(毎日新聞社刊 07.3.6号)に要旨が掲載されていたので、それを引用することにしたい。

 報告の「将来予測」では《南北両極では海氷の縮小が予測される》《グリーンランドの氷床の縮小は、2100年以降も引き続き海面水位の上昇を引き起こすと予測される。地球の平均気温が産業革命前と比べて1.9〜4.6度上昇し、それが数千年間続くとグリーンランドの氷床はほぼ完全に消失し、海水面が約7メートル上昇する》《人間が排出する二酸化炭素は1000年以上、温暖化と海水面の上昇を引き起こす》とあり、武田氏の引用とは全く違う。

 なお武田氏の著書には《北極の氷が溶けても海水面は絶対に上がらない》というフレーズが何度も登場する。確かに、北極の海にぷかぷか浮かんでいる氷(厚さは3m程度)が溶けても海水面は上がらない。氷は水より軽く(比重が小さく)、その軽い分が水面に顔を出しているだけ(まさに氷山の一角)なので、溶けて水に戻っても水面は上昇しない(=アルキメデスの原理)。

 これは、武田氏が「浮かんでいる氷」しか見ていないからそういう結論になるのだ。IPCC報告のように、極地(北極圏)にある世界最大の島、グリーンランドの氷床(広い土地を覆う厚い氷)に目を向けると、一転して上記のような予測となり、水位は7mも上昇する。なおグリーンランドの急激な氷の消失については、アル・ゴア著『不都合な真実』(ランダムハウス講談社刊)P190〜P209に、ショッキングな図版とともに詳しく紹介されている。

2.「紙のリサイクルは意味がない」の論点すり替え

 同書第4章「チリ紙交換屋は街からなぜいなくなったのか」には《現代の大学生でも一番、衝撃を受けるのは紙のリサイクルだ。紙のリサイクルが何の意味もないということを知った時、学生は一様にショックを口にする》とある。

 私の勤務先では、最近大型シュレッダーを設置して紙を集中破砕し、製紙工場でトイレットペーパーにリサイクルしてそれを買う、という仕組みを作った直後なので、同僚たちが「ショックを口にする」のは当然のことだろう。

 武田氏の著書をよく読むと、根拠はこうだ。《紙の原料のほとんどは先進国の森林から採られたものであり、守らなければいけない開発途上国の森林からではない》《先進国から来る紙の原料を節約しても、熱帯雨林の減少は止められないのは当たり前なのである》。

 つまり「何の意味もない」のではなく、単に《熱帯雨林や開発途上国の森林は関係ない》と言いたいだけなのだ。確かに、途上国の森林はほとんどが燃料(薪炭材)として使われ、パルプ用に回るのは全体の2.5%程度だ。これを守るには紙のリサイクル以外の手段が必要だろうが、だからといってリサイクルは「何の意味もない」などと紛らわしい主張をしては、誤解を生じる。

 なお同氏は《紙のリサイクルを民間から自治体がやるようになった》ので《チリ紙交換屋さんが消えた》、《新しい紙のリサイクルシステムが発足し、額に汗して働いていた人たちが追放された》と主張するが、わが家の周辺(奈良市郊外の新興住宅地)には今も毎日のようにチリ紙交換屋さんが巡回し、古新聞・古雑誌や段ボールなどと引き換えにゴミ袋をくれる。決して「いなくなった」わけではない。

3.「ペットボトルのリサイクル」のデータ捏造

 同書第1章「資源7倍、ごみ7倍になるリサイクル」には、ペットボトルに関するあれこれが書かれていて、テレビではこれが主張の中心になっていたようである。

 同書には「ペットボトルの消費量と回収量、再利用量の変化」(出典:PETボトルリサイクル推進協議会)というグラフが掲げられている。これについて、リサイクルする前の《平成5年は消費量12万トンだったが、平成16年はペットボトルの消費量が51万トンで、分別回収量が24万トンだ》《ペットボトルの分別回収が進むと販売量、つまり消費量が増えたことが分かる》つまり《分別回収した方がごみが増える》と結論づけている。

 これは明らかに本末転倒だ。消費者は、分別回収されるという安心感(原因)からペットボトル飲料を買う(結果)のではない。消費者は商品としての多様なペットボトル飲料の魅力、簡便性、派手な広告宣伝などによって購買を増やす(原因)、だから当然回収するボトルも増える(結果)のだ。

 このグラフにはペットボトルの再利用量も出ていて、平成16年の《ペットボトルの販売量が51万トンなのに、再利用量が3万トンである》との説明もついている。これだと再利用率は、わずか5.9%という低さになる。

 しかし、出典と記されたPETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書 2006年度版」を読むと、05(平成17)年の国内生産量は53万t、実質回収量(国内回収+輸出)は38万t(回収率72%)、そしてその全て(38万t)がリサイクル(指定法人による引き取り+輸出による海外リサイクル)に回っているとあり、同書の3万tとはひと桁違う。

 6月3日のテレビで、細田教授が「数字がおかしい」と指摘していたのはこのデータのことだが、果たして6月28日、同協議会はこの本を名指しして「『再利用量』データに関しては、一切弊協議会のデータではなく、弊協議会の名前を騙った捏造データであります」とのコメント(参考リンク)を発表するに至った。

 その他、この本には突っ込みどころが満載で、とりわけ《節電すると石油の消費量が増える》のくだりは笑わせる。

 ガソリン代も電気代も節約して家計が2万円浮いた人が、そのお金を銀行に預金したとする。《しかし、彼が銀行に預けた2万円は一瞬だけ銀行の金庫にあったが、すぐ貸し出されて企業の社長が持って行った》《そのお金はその日のうちに社長さんが使った》《自分で使えば一度しか使われないので、その分しか石油を消費しないが、銀行に預けると2回使われる。だから石油の消費量も2倍になる》

 どなたか武田氏(東大教養学部卒。中部大学総合工学研究所教授)に、「銀行の信用創造機能」(参考リンク)のイロハを教えてあげてほしいものだ。

 お金は2回どころか、当初の預金が引き出されるまで繰り返して使われ、マネーサプライは増加していく(例:社長が2万円で食事する→その売上代金を飲食店が銀行に預ける→銀行はそれをOLに貸し出す→OLはそれで家電製品を買う……)。また借りたお金は、石油を消費する用途だけではなく、省エネ家電やハイブリッドカーの購入、屋上緑化など、地球環境を守る用途にも振り向けられるだろう。

 それにしてもお騒がせな本だ。特に、データ捏造は許されるものではない。今後の著者および出版社の対応を注視したい。最もお気の毒なのは、こんな教授に学び、あげく著述にまで協力した6人の学生たちだ。若者よ心配するな、マトモな大人も多いのだから。

筆者ブログ:日々ほぼ好日

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