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よのなか科 杉並区立和田中学校 校長 藤原和博さん【教師の仕事シンプルに】東京新聞特報
http://www.asyura2.com/07/senkyo29/msg/627.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 1 月 03 日 14:13:57: 2nLReFHhGZ7P6
 

私たちの「美しい国へ」 <2>
学校の知識 知恵に変換

■よのなか科 杉並区立和田中学校 校長 藤原和博さん

 「人間にとって宗教とは何でしょうか。最低でも一行、自分の意見を書いてください。その理由も一つ以上考えて」。水曜の朝、東京都杉並区立和田中学校の視聴覚室。校長の藤原和博(51)は、大人でも答えに窮する問題を、二クラス計八十人の三年生に問いかけた。

 この日(先月十三日)は昨年最後の「よのなか科」の授業だった。テーマは「宗教について考える」。生徒は六、七人ずつ、十二のグループに分かれ、同級生と議論しながら自分の意見を磨いていく。授業を受けているのは、生徒だけではない。よのなか科は見学自由。各グループには、教師志望の学生や全国の教育関係者ら約四十人の見学者の中から、最低でも一人の大人が同席する。

 授業の冒頭、藤原は「よのなか科に『参観』という態度はありません。大人も生徒以上に一生懸命学び、ワークシートに自分の考えを記入してください」と求める。見知らぬ大人の目があるせいもあり、居眠りや雑談をする生徒はいない。生徒にとって、見学者の大人は生きた教材でもあるという位置づけだ。

 よのなか科は二時限続きの計九十分。三年生を対象に年間二十回以上行われ、校長自らが担当教師と一緒に教える。

 「自ら授業もできないような校長は、もう(教育現場から)去れということです。自分で授業の手本を見せられないで、教員を従えられるわけがない」

 藤原は、冒頭の問いに答えようと机に向かう生徒たちの様子を見て回りながら、次々に生徒の名前を呼んで意見を発表させる。

 「宗教とは信じる心を育ててくれるものです」

 「宗教とは目に見えない心の支えです」

 生徒からは、こんな答えが返ってきた。藤原は「意見を言ったみんなに拍手!」と呼びかける。この日の授業で生徒が考えた問題はほかに「人気タレントと教祖、ファンと信者の相違点」「もし自分が宗教をおこすとしたら、教団名や教義は」などだ。藤原が自ら模範解答を示すことはない。いずれの問いも正解が一つではないからだ。

 昨年四月の第一回「よのなか科」のテーマは「ハンバーガー店の店長になってみよう!」だった。実際にマクドナルドの店長を授業に招き、生徒はどんな店にしたら売り上げが伸びるのか考え、議論した。テーマは「模擬区議会」「市長を疑似体験」「少年法模擬法廷」と続いていく。

 生徒が比較的取り組みやすい、実際の経済や社会問題を最初に取り上げ、「自分で考える」ことに慣れさせる。その後、秋からは「結婚と離婚」「戦争と人間」など、倫理や価値観と切り離せない高度なテーマに歩を進めていく。

 藤原は「よのなか科」導入の狙いをこう説明する。

 「学校で教えている知識は、世の中でそのまま使えるわけではない。知識を組み合わせ、状況に応じて使い分けていかなければならない。昔は地域社会が、知識を知恵と技術に変換してくれる装置だった。一つの正解だけでは通用しない例外事項が、そこでたくさん出題されていた。今は地域社会がごっそり抜け落ち、学校である程度、教えざるを得なくなった」

 よのなか科は毎年秋、自殺問題をテーマにする。昨年十一月の授業では、飛び降り自殺しようとする生徒を、同級生がどう止めるのか、双方の役に分かれ議論した。ちょうど、いじめを苦にした小中学生の自殺が相次いだ時期だ。どうすれば、いじめは防げるのか。藤原の答えは明快だ。

 「できません。人間が集団を形成すれば、絶対にいじめはある。和田中にも普通は一クラスに一件くらいある。必ずあるという前提で、どう発見し、対処するかが重要なんです」

 そして、いじめを三つに分類する。

 「レベル1は、どんな社会にもある人間関係をめぐる摩擦や誤解。これは受容しないといけない。暴力やおカネをたかることが度重なれば、レベル3。傷害、恐喝だから、教師が指導できると思う方が間違い。即警察です。問題は、その間のレベル2なんです」

 和田中では、いじめが発覚した場合、教師が関係する生徒全員から個別に事情を聴き、全職員に事実関係を周知徹底することにしている。藤原は「教師の基本行動ができていれば、レベル2の半分以上は対処できる」と話す。ただ、携帯電話メールを使った言葉のいじめなど、学校が把握できないこともあると明かす。

 昨年、教育改革を最重要課題に掲げる安倍政権が誕生し、改正教育基本法が成立した。「ダメ教師」を辞めさせる教員免許の更新制度や教育バウチャー制度など、国が主導する教育改革が進もうとしている。藤原には、どう映るのか。

 「どんなに法律をよく改正しても現在の運用レベルでは何も変化は起きない。今の教育現場の問題は、法律と制度ではなく、運用が悪いんです」。そして「この辺にいる人たちは…」と手を頭の上に挙げ、続ける。「運用のことが分からないから、法律と制度をまた変えるでしょ。すると、また現場は混乱する」

 指導力が低い教員がいることは藤原も認める。同時に教師の能力を引き出すこともできると力説する。

 「ある学校で出たよい知恵が、ほかの学校に瞬く間に波及することが起きなくなっている。教育現場の機能低下だ。原因の一つは、学校が地域社会と家庭の役割まで期待され、事務量が膨大に増え、教師が忙殺されていることだ。教師の仕事をシンプルにして、授業と部活を中心とした生活指導に九割の力を注ぐことができれば、七割くらいの教員はよみがえると思う」

 和田中には、ボランティアの大学生が生徒の勉強をみる「土曜寺子屋」、住民・保護者が図書館運営などを分担する「地域本部」がある。教師を授業と生活指導に専念させ、生徒に社会とのかかわりを実感させる狙いがある。こうした学校運営は校長が担う。だからこそ、藤原は「校長の質」の改善を訴える。

 「全国の公立中約一万校のうち、三千校くらい校長を代えないといけない。校長は、教頭という非常にハードな仕事に耐えた人の『上がりポスト』で、そこにあぐらをかいている人が大半だ。これを許していては、日本はダメです」

■文科省官僚も校長の経験を

 リクルート勤務を経て、都内の公立小中学校で初の民間人校長になった。では、どんな人材が校長になれば、改革できるのか。

 「必ずしもビジネスマンが適しているとは思わない。文部科学省からは三、四十代の官僚が市区町村の教育長や都道府県の教育次長に出向しているが、そこに止まっていないで、三百人くらい校長に出たらどうか。文科省も現場感覚が分かるようになる」

 杉並区は、新一年生と保護者が近隣地域の小中学校を選択できる学校希望制度を二〇〇二年度に導入した。和田中の入学者は、藤原が校長に就任した〇三年度は四十九人。その後年々増え、〇七年度には百四十人前後が入学する予定だ。 (敬称略、竹内洋一)

 ふじわら・かずひろ 1955年11月東京生まれ。東京大学経済学部経営学科卒。リクルート社で東京営業統括部長などを歴任し、インターネットを中心にマルチメディア関連ビジネスを展開。2002年3月に退社し、杉並区教育委員会参与に。03年4月から現職。同区在住。高2長男は区立小中卒。中1二男、小5長女も区立校に通う。

 <デスクメモ> 小学校の英語問題で教諭をしているいとこに電話した。夜、十一時すぎだったが「カリキュラム作成で今も学校。明け方まで帰れないし、そんなこと答える余裕はないよ」と苦しげな言葉が返ってきた。サッカー少年で、子どもに教えるのが夢で教師になったのだが。いつからこんなに余裕がなくなったのか。 (蒲)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070103/mng_____tokuho__000.shtml

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