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なんとも不思議なパーティー【天木直人ブログ】2/13
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投稿者 天木ファン 日時 2007 年 2 月 13 日 08:20:33: 2nLReFHhGZ7P6
 

2007年02月13日

閑話休題   なんとも不思議なパーティー

   なんとも不思議なパーティーだった・・・こんな言葉から始まる2月10日付の毎日新聞「近耳遠見」で、政治記者OBの岩見隆夫は辻トシ子という人物の米寿を祝うパーティーの風景を書いていた。与野党を超えた大物政治家や官界、財界、学界さらには芸能界まで、集まった500百人ほどの著名人が一人一人辻トシ子のところに集まって祝辞を述べる。病身をおして車椅子で駆けつけた宮沢喜一元首相をして「自分たちの女王のお祝いの日です・・・」と言わしめた辻トシ子という人物は何者なのか。寡聞にして私は知らなかった。この人の名前を最近の新聞などで見かけた読者がいたら教えて欲しい。
 ウキペディアなどで調べてみた。吉田内閣や岸内閣の副総理や自民党幹事長、さらには衆議院議長などの要職を歴任した益谷秀次という政治家の秘書を長年つとめた女性であるという。その才覚、美貌、政治性などから日本の戦後政治史のゴッドマザー的存在だという。秘書を辞めた後も赤坂・虎ノ門の米国大使館の前のビルに個人事務所を開いて活動をしてきたという。米国大使館前というのも興味深い。政治家や官僚は様々な便宜をはかってもらい、政治記者にとっては貴重な情報入手源であったのだろう。政治に群がる人たちにとってありがたい人であったからこそこれだけの客が集まったのだ。
   調べていくうちに辻トシ子が辻嘉六の娘であること、そして益谷秀次が辻嘉六の書生であった事を知った。辻トシ子が益谷の秘書になれたのは父親のお陰だ。以来辻トシ子は終生政治の世界に携わる事になる。ところで辻嘉六はどういう人物なのか。調べてみると保守政界の黒幕として君臨したとある。戦前は日本に亡命してきた孫文を支援し、戦後は日本自由党の創設、保守合同の立役者として鳩山一郎、河野一郎などに財政支援したとある。
   しかし辻嘉六といえばなんといっても児玉誉士夫、小佐野賢治とならぶフクサーとして有名であるらしい。そして辻嘉六事件すなわち隠退物資事件である。この隠退物資事件こそ、戦後の権力犯罪の嚆矢である。私が本日のコラムで書きたいことである。昭和22年3月29日の衆議院決算委員会で日本自由党の世耕弘一が「日銀の地下倉庫に隠退蔵物資のダイヤモンドがあり、密かに密売されている・・・」と発言、これをきっかけに国会で特別調査委員会が設けられ調査されたが不明のままとなった事件だ。隠退物資とは旧日本軍が米国との本土決戦に備えて在庫した燃料、金属、貴金属、食料などの物資で、約2400億円(現在の貨幣換算で約数十兆円)もの物資が国内各所に分散貯蔵されていたが、終戦直前の昭和20年8月14日、当時の鈴木貫太郎内閣は、米軍に接収される前に安く民間に払い下げる法案を閣議決定した。しかしその決定は正当に実施されないまま、軍人、政治家、官僚などが不正に処分し、この膨大な物資が忽然と消滅した事件である。
  昭和22年とは私が産まれた年である。勿論私には記憶がない。その私ももうすぐ60歳だ。この事件は日本国民の記憶のかなたにやがて忘れ去られていくことだろう。しかし決してそうさせてはならない事件なのである。当時の世相を調べてみると1000万人が餓死するといわれた食糧難の時代であった。配給制度で配られる食糧では十分ではなく闇市が横行していた時代である。そんな時代に、権力者たちが戦時に国民から徴用した財産をドサクサにまみれてネコババしていたのだ。権力犯罪のはじまりであると私が述べたゆえんである。
  これと対照的な事件に山口良忠判事の餓死事件がある。山口良忠(当時34歳)は東京地裁の経済統制担当の判事であった。違法である闇米を食べなければ生きていけない時代に、それを取り締まる自分がどうして闇米を食べられようか。配給米を二人の子供に与え自分と妻は粥をすすって生活した山口判事は栄養失調になって衰弱していく。そしてとうとう山積する未決の案件をかかえたまま、地裁の階段で倒れる。これも昭和22年の出来事だ。
  一般市民が経済統制法の下でもがいている時に、権力者は法を犯して隠退物資の処分で莫大な財を横領する。それで政治を動かす。あれから60年ほどたって今の日本の政治状況はどうか。なにも変わっていない事に驚かされる。このコラムの結論を書く時が来た。権力者が法を恣意的に解釈、運用し、あるいは法を犯して逃げ切ってしまう。その一方で一般庶民は数々の法の規制に苦しめられる。正直者が馬鹿を見て泣き寝入りさせられる。大方の国民はそんな不条理に目をつむり、権力者に逆らわずに自分たちの保身を第一にする。こんな今の状況は60年前と何も変わっていない事に我々は気づかされる。今の政治家たちは鳩山といい河野といい世耕といい与野党を問わず皆当時の政治家の世襲だ。辻トシ子もそうだ。そういう連中がこの国をいまだ牛耳っている。何も知らない庶民を苦しめている。この国は市民革命が起きないまま今日に至っているのだ。「この国に民主主義国家はいまだ実現せず」。それを教えてくれた不思議な、いや不愉快で異様なパーティーであるのだ。

http://www.amakiblog.com/archives/2007/02/13/#000258

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