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国民投票法案は改憲賛成派にも反対派にも納得できる内容でなければならない(伊藤真)
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投稿者 heart 日時 2007 年 3 月 04 日 17:16:05: QS3iy8SiOaheU
 

http://www.magazine9.jp/juku/033/index.html" target="_blank">http://www.magazine9.jp/juku/033/index.htmlより転載。

憲法改正手続法 その1

憲法96条が定める改憲手続きについて

これから数回に分けて、憲法改正手続法について考えてみましょう。国民投票制度のあり方については、第14回〜第16回で触れているので、今回は、もう少し具体的な問題点を見ていくことにします。
 最初に96条の改憲手続をおさらいしておきます。憲法改正は、まず、国会の各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議して国民に提案します。このあたりの手続は国会法の改正によって行われることになります。

次に特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を得ることによって国民に承認され改正が成立します。この手続を規定するものが国民投票法です。国会法の改正とあわせて、憲法改正手続法ということにします。

最後に天皇が、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布します。現在の憲法と一体をなすことが前提ですから、新たに新憲法を制定することはここでは想定されていません

さて、こうした改憲手続は、法律改正よりも厳格になっています。こうした憲法を硬性憲法といいます。法律改正と同じ手続で改正できる憲法を軟性憲法といいますが、これでは、憲法に反する法律を簡単に作れてしまい(憲法の方を改正すればいいからです)、すべての法規範の中で最高の効力を持つという憲法の最高法規性が失われてしまいます。

 つまり、軟性憲法では、国会も含めてすべての国家権力に対する歯止めとしての憲法の存在意義を失わせてしまうことになるのです。日本国憲法は硬性憲法を採用して、よほど積極的かつ説得的な根拠がないと改正してはいけないことにしました。これは憲法制定当時の主権者の意思です。

求められる改憲手続きの正当性

 そもそも、民主主義の国であれば、そのときどきの政治的意思決定は国民の多数意思によって行われます。しかし、それはときに暴走し、多数の横暴を招き、権力者を勢いづける危険性を持っています。そこで、国民の多数派を背景にもつ政治権力であっても、つねにその権力の行使をチェックし、行き過ぎを修正するための道具が必要となります。それが憲法です。このように憲法は、その時代の国民の多数派でもやってはいけないことを予め規定しておくものです。

そのときどきの国民が法律改正と同じように単純な多数決で憲法改正ができてしまったのでは、憲法によって多数派に歯止めをかけた意味がなくなります。そこで憲法改正手続を厳格にして多数派を背景にした政治権力であっても、安易に自分たちだけに都合のいい改憲ができないようにしたのです。

まず、改憲の発議自体に2/3の賛成を必要としました。これにより、ときの政権に都合のいいような安易な憲法改正発議を避けることができます。通常の議会制民主主義が成り立つ国であれば、与党だけで2/3を越えることはないと考えて、野党も合意した内容でないと発議自体ができないとしたのです。自民党の新憲法草案ではこれを総議員の過半数として改憲発議をしやすくしていますが、この点から問題です。

 さて、こうして与野党の国会議員の圧倒的多数が、改憲が必要だと考えて国民に提案したとしても、国民はそれを否決することができます。この賛否の意思が国民投票で示されます。権力側にいる国会議員が自分たちに都合のいい改憲発議をしてくる危険性があるので、国民は本当にそれが国民のためのものかどうかをしっかりと見極めて、その提案を否決することができるのです。
 2006年6月にイタリアでは、憲法改正国民投票が行われました。その結果は、有権者の53%が投票し、反対62%、賛成38%の大差で否決されました。改憲反対派は、首相の権限強化は戦前への逆戻りだ、国民サービスの切り捨ては許さないという運動を展開し、多くの国民がそれを支持して否決したのです。ある大臣は、「イタリア国民は現行憲法こそ基本原則だと承認した」と述べたそうです。

 たとえ権力者にとって都合のいい改憲であっても、国民が自分たちにとって、この改憲は不都合だと考えた場合には、こうして自らの意思を国民投票という形で示して否決することができるのです。憲法はあくまでも国民が国家権力に歯止めをかけるものですから、最終的には国民の意思で決定されるのは当然ともいえます。

 こうした改憲手続は公正でなければなりません国民が自分たちに有利か不利か、立憲主義の観点からみて本当のこの改憲を許してよいのかどうかを正しく判断できるような手続でなければなりません。後に改憲手続の正当性が疑われたりすることがないように、公正な改憲手続が保障されなければなりません。つまり、改憲内容についての賛成派、反対派の双方が納得できる手続法でなければならないのです。それでは、そのような内容になっているか、次回から見ていくことにしましょう。

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*現在の憲法と一体をなすことが前提ですから、新たに新憲法を制定することはここでは想定されていません→
http://www.magazine9.jp/juku/001/index.html" target="_blank">http://www.magazine9.jp/juku/001/index.html【伊藤真】より一部抜粋:
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(2005年)10月28日に自民党の新憲法草案が発表されました。予想されたものよりも復古的色彩が後退していましたが、その内容はいろいろと問題が多いように思います。多くの識者は、これを改正案として読んでいるようですが、自民党自身が言っているようにこれは新憲法の草案です。内容的にも現在の憲法の根本価値を否定しているので、これは明らかに新憲法の制定です。ですが、そもそも私たち主権者は国会議員に新憲法制定の権限など与えていません。改正のための発議権を国会に与えているだけです。

確かに国会議員が憲法改正の議論をすることは、憲法96条がある以上認められています。しかし、新憲法の制定となると話は別です。改正は現行憲法と連続性を保ちつつ、内容のマイナーチェンジをすることですが、新憲法の制定は既存の憲法の価値を否定して、新たな憲法秩序を構築することを意味します。つまり、現行憲法秩序を否定するのですから、これは明確に憲法99条違反となります。これは一種の政治的クーデターともいうべき行為です。名古屋大学の浦部法穂教授が指摘されるように、そもそも平時に新憲法の制定を行う国などありません。戦争や革命、大きな政治体制の変化があったときに初めて新憲法の制定が行われます。百歩譲ったとしても、国民が憲法制定会議の代表を選出して初めて新憲法制定の議論が可能となるはずです。現憲法下の国会議員に新憲法制定の発議などできません。
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