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裁判を起こした西山さんの思いを想像し、万感胸に迫るものがありました「西山太吉国賠訴訟」判決 (JANJAN)
http://www.asyura2.com/07/senkyo32/msg/968.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 4 月 04 日 19:47:54: 2nLReFHhGZ7P6
 

http://www.janjan.jp/government/0703/0703282519/1.php

 35年前、沖縄返還の「密約」をめぐる報道で国家公務員法違反に問われた元毎日新聞記者の西山太吉さんが、米国の公文書によって密約の存在が裏付けられたとして、国に対し謝罪と慰謝料等を求めている裁判の判決が、3月27日午後1時半から東京地裁でありました。

 この裁判はテレビや新聞などでも取り上げられており、世間の関心も高いことから27日の傍聴は抽選となりました。整理券配布締め切り時間の30分前に東京地裁に着くと、傍聴を希望する人たちが並んでいました。時間が経つにつれて列が長くなり、傍聴席45に対し、傍聴希望者100名となりました。残念ながら抽選に漏れたのですが、同じように傍聴に来ていた杉並教科書裁判の原告の方たちのご好意で傍聴券を譲って頂き、裁判を傍聴することができました。

 法廷に入ると、テレビカメラが入っていました。原告席には西山さんと藤森克美弁護士が座っています。少ししてから、被告(国)側指定代理人の検事が3名入廷しました。裁判が始まる前、裁判所の人から2分間の撮影があるとの説明がありました。次いで書記の人から裁判官の入廷の知らせがあり、ドアが開いて加藤謙一裁判長と裁判官2名が入廷しました。

 加藤裁判長はひどく落ち着かない様子で、撮影中もしきりに瞬きをしていました。以前、カメラが入った時はほとんど身動きをしなかったのですが、なぜか今日は撮影中、眼鏡に手をあてる仕草をしたり、体を動かしたりと、以前と様子が違っているような印象を受けました。ほかの裁判官に比べると、瞬きの回数も多く、いつもと様子が違うことが手にとるようにわかります。後ろからテレビ局の人の「残り30秒」という声が聞こえてきました。

 撮影が終わり、テレビカメラが法廷を出て行くと、すぐに裁判が始まりました。加藤裁判長が「主文のみ朗読します」と言い、判決を読み上げました。

主文 原告の請求をいずれも棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。

 それだけ言うと、加藤裁判長は席を立ち、ほかの2名の裁判官とともに退廷しました。判決についての説明が一切ないので、なぜそのような判決を下すに至ったのか、傍聴人はまったく理解できませんでした。呆気にとられているうちに裁判は終わり、傍聴席には一瞬、重い沈黙が流れました。

 判決を聞いて、最初に頭に浮かんだのは、「こんな裁判があるのだろうか」ということでした。いくらなんでも、9回も口頭弁論を行い、約2年間に渡って裁判をやってきたのに、裁判長が主文だけ読み上げて退廷する。その間、わずか5秒にも満たない。このような裁判が果たしてあるのだろうか。

 なんとも名状しがたい思いで傍聴席に座っていると、法廷を立ち去る裁判官に対し、傍聴席から「なんなんだ!? これは!!」と抗議の声が上がりました。慌てて原告席を見ると、西山さんも藤森さんもすでにそこにいませんでした。法廷を出て行く西山さんの後ろ姿が目に入りました。表情は見えませんが、憮然としている様子が背中から伝わってくるような気がしました。傍聴人の人たちも互いに顔を見合わせながら、あまりに理不尽ともいえるような判決に、なんと表現していいのかわからないような表情に見えました。

 裁判の後、午後2時から司法記者クラブで記者会見が行われました。

 テレビカメラが8台入り、報道関係者や裁判の傍聴人などですし詰め状態の中、西山さんと藤森弁護士の記者会見が行われました。さすがに会場に入ってきた時の西山さんの足取りは重く、目には涙が浮かんでいるように見えました。

 まず、藤森弁護士が判決文を手にしながら、今日の裁判について報告をしました。

 藤森さんは、判決で原告の訴えが棄却されたことを報告しました。裁判の争点について、裁判所の判断が原告の主張をまったく無視したものとなっていることに対し、判断の誤りを1つひとつ丁寧に指摘しました。また、除斥期間の20年が過ぎたことを理由に、訴えをすべて棄却したことに対し「ただ結論だけを押し付けている内容」と厳しく批判しました。

 判決文については「先に結論ありき」と断じた上で、都合のいいところをつまみ食いして結論を導き出したものである、との認識を示しました。米国の公文書や吉野発言(2006年2月、元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が密約を認める発言をした)についてまったく言及していないことについても厳しく批判し、密約から入ると違法性を問われるため、除斥期間できたのではないか、との見方を示しました。その上で、控訴したいとの考えを明らかにしました。裁判官によって温度差があるので、まともな裁判官に出会うまで闘っていきたい、との考えを述べました。

 次に西山さんが発言しましました。

 西山さんは「(自分は)法律の専門家ではないので、除斥期間については分からない」としながら、次のように語りました。

 「裁判の焦点は、一連の秘密が違法の秘密であることが、2000年と2002年の米国の公文書、および吉野発言で立証されたことだ。刑事裁判では、検察は秘密書簡はなかったと嘘をついた。それが前提になっている。その秘密が続々と出てきた。違法秘密であり、(それを報道したことは)国家公務員法違反にならない。そういう問題につながる。

 判決については予想していた。実質論に入ると、向こうは抗弁の余地がない。だから、入口ですべて除斥にして退ける。中身に入らない。そういう印象が強い。一連の政府高官の密約否定発言は、真実義務違反にあたる。ここにメスを入れなければならない。司法は行政の手先であり、行政のメンツを守るための存在であることを露呈した。

 裁判を通じて違法秘密と民衆の問題、権力とメディアの関係など、問い質していきたい。引き続きやらなければならない。違法秘密の実態とそれがもたらす結果について、裁判を通じて明らかにしなければならない。今日の判決は、想定したイメージの中で一番イージーなものだが、なんとも思っていない。司法の権威失墜。司法は日本にはないことを証明する判決だった。非民主主義な司法。非民主主義の行政。これを徹底的に糾弾しなければならない」

 西山さんは、裁判の焦点である密約についてまったく言及せず、検察の主張に沿って除斥期間を理由に訴えをすべて棄却した裁判所の判断を厳しく批判した上で、裁判の結果に関係なく、引き続き闘っていくとの決意を表明しました。

 次に、記者との質疑応答が行われました。

 質問「今日の裁判についての感想を聞かせてください」

 西山「一番グレードの低い裁判だった」

 質問「裁判の目的は政府に密約を認めさせることか」

 西山「もちろんそうだ。君らは密約と簡単に言うけどね、これは大変なことをやったんですよ。政治犯罪。それを許容している社会。先進国のジャンルに入らない。国のためでなく、一政権のための返還。南の楽園が戻ってくるんじゃないんです。アメリカ屈指の軍隊が沖縄にできる。どこにでも行ける基地を沖縄に作った。政権益のための返還であったことを、ようく考えてもらいたい。国会の承認案件である条約を偽造するという、グレードの高い犯罪。裁判官の手に負えない。私が発信し続けていかなければならない。今から始まる。5月に沖縄密約の本を出すので、裁判官はそれを読んで沖縄返還の実態を勉強しろ、と言いたい」

 質問「吉野文六と佐藤栄作。いま西山さんが会いたいと思う人はだれか」

 西山「それよりもあなたたちが会いたい人がいるでしょ。吉野文六という人ですよ。こんなひどい国はない。メディアが問われている」

 司法記者クラブでの記者会見の後、弁護士会館で、司法記者クラブに所属していない人たちを対象とした会見と、今後の方針について西山さんと藤森さんからそれぞれ発言がありました。藤森さんが裁判について報告した後、西山さんが次のように述べました。

 「壁が厚い。この裁判は前例のない裁判。政府高官の犯罪集団が現存している。目の前にいる。除斥期間と真実義務を最大限使ってきた。行政、国家権力が司法の分野まで入ってきているということだ。政治部記者だったので、権力中枢を知っているが、司法の世界はすさまじい。それを目の前にぶつけられた感じ。司法、立法、行政は独立しており、公平中立な裁判が行われるという概念があるが、実際は違う。

 沖縄返還は南方の楽園が日本に戻るのではない。米国にとっての海外における重要な基地ができることを意味する。基地が主権下に入ってくることで、日米同盟が変わる。すさまじい代償がある。一過性のものでなく、返還された後も続く。グアム移転費を日本が負担する問題も、沖縄返還から始まった。一過性の問題だと思ったらとんでもない。30年間続いている。だから(裁判を)やった。

 権力の操作を見せつけられた。1人2人が立ち向かっても通る相手じゃない。鉄壁。本当はやめたい。勝てる見込みがない。(権力は)追い詰められるとすさまじい。ストレートでくる。やらざるを得ない。密約を認めたら、内閣がへんになってしまう。その意味で、政治権力の真っ只中に位置している裁判。権力が目の前で動いている。

 司法の独立なんてきれいごとだ、ということを改めて認識した。こんな裁判ない。想定された中の最低の判決。負けてもともと。裁判を通して発表していかなければ発信するところがない。やらざるを得ない。ガード固めと情報操作がものすごい。権力とメディアとの一体化。メディアがつぶれたら全部つぶれる。最後の防波堤がメディア。民衆は安全保障になんの関心もない。

 日米軍事再編のロードマップを読むと、カネを何兆円も日本が出すことになっている。中近東相手に日米同盟の強化が進む。それが日米軍事再編の一番の眼目。そういう中での訴訟。相手のすごさ知っている。氷山の一角が今日の司法に出てきただけ。怖くなる心理状態になることもある。今のいろんな動きを見ていると。控訴審でも最高裁でも負ける。除斥期間をもってこられたら、何でも抹殺できる。反論できない。

 グアム移転問題は沖縄返還の再現。米国の都合なのに、日本の負担軽減ということで、移転費を日本が負担する。一過性ではない。日米同盟が変質ししている。思いやり予算は沖縄返還交渉に入っていた。国民のためでなく、一政権のため。これ以上の犯罪はない。この認識でみなければならない。期待はできないが、やることに意義がある」

筆者の感想
 この裁判を第3回口頭弁論から傍聴してきて、今日の判決を迎えました。最後まで見届けたいとの思いがあり、傍聴の抽選に外れた時はガッカリしましたが、杉並教科書裁判の原告の方々のご好意で傍聴することができました。この場を借りてお礼申し上げます。

 しかし、あまりにひどいというしかない判決に茫然自失といった感じで、いったいこの2年間はなんだったのか、との疑念を拭い去ることができませんでした。一緒に裁判を傍聴してきた人たちもその思いは同じであると思います。しかし、この判決に最も失望しているのは原告の西山さんであることは自明の理です。

 口頭弁論が開催されるたびに旅行かばんを持って九州から上京してくる西山さんは、2年間の裁判を終え、いま75歳になりました。なおも闘いを続けると明言する西山さんですが、記者会見の席に現れた西山さんの目に涙が浮かんでいるのを見て、改めて沖縄密約事件以後の30数年間の沈黙を経て、裁判を起こした西山さんの思いを想像し、万感胸に迫るものがありました。

 孤独な闘いを続けてきた西山さんに対し、1人でも多くの人がこの裁判に関心を持ち、沖縄密約事件が決して過去の出来事ではなく、今の私たちの問題であることを理解してくれることを願っています。

(ひらのゆきこ)

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