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http://www.asahi.com/politics/update/0530/TKY200705290477.html から転載。
年金救済対象は不明 調査どこまで 与党・特例法案提出
2007年05月30日00時50分
宙に浮いた年金記録が５０００万件もある問題に急きょ対応するため、与党は２９日、「年金時効特例法案」を提出した。支給漏れがある人の年金額を元に戻すことに道を開くものだ。だが、法案の対象になる人がそもそも何人いるのか分からない。政府・与党は対応策を最大限にアピールしようとしているが、野党は「全く不十分だ」と反発を強めている。
「５０００万件を２０１０年までの社会保険庁の残務整理としてゼロにする。国の責任として行うことを原則としたい」
自民党の中川秀直幹事長は２９日、５０００万件の宙に浮いた年金記録の持ち主の確定作業を積極的に進める姿勢を強調した。
記録の持ち主が判明すれば、その人の本来もらえる年金額が分かる。しかし、現行法では記録が訂正されて年金額が増えても、一時金として受け取れるのは訂正を申請した時点からさかのぼって５年分だけだ。これを満額受けられるようにするため、与党は「年金時効特例法案」を提出した。
ただ、こうした機会に恵まれる人の数については、社保庁は「分からない」と言う。
５０００万件の記録のうち、６０歳以上の年金受給者のものである可能性があるのは約２８８０万件。社保庁は「年金を受け始める前に死亡した人の記録が大半だ」とみている。これだと、法案の対象者は極めて少ないことになる。
一方、政府は「宙に浮いた記録」を減らすため、年金受給者や保険料を払っている人たちに注意を呼びかける。これに必要な費用は約１０億円と見込んでいる。
しかし、中川幹事長が言うようにゼロにするには、注意の呼びかけだけでは不十分だ。社保庁職員が死亡や転職の事実を確かめて歩かなければならず、費用がもっと膨らむことも予想される。
与党の「公務員削減」要請を受け、社保庁はすでに２万９０００人の職員を１２年度までに３分の２まで減らす人員削減計画を実行中だ。だが、国民年金保険料の徴収率アップという最重要課題に加え、「宙に浮いた記録」の調査が新たに加われば、人員態勢にも無理が出てくる可能性がある。
新たな対策を打ち出したものの、政府・与党が積極的なのか消極的なのか、いまひとつ軸が定まらない。
２９日の自民党厚生労働部会では「受給者と同じように、若い人にも年金記録の確認を求めるべきだ」との意見が出たが、厚労省は「やります」とは言わなかった。「若い世代の記録は年金を受給し始める時に一本化される」とこれまで通り「待ち」の姿勢だ。
さらに、社保庁にも本人にも証拠がない「消えた年金記録」の問題もある。
「社保庁が 振り込め詐欺とは 気が付かず」。２５日の衆院厚生労働委員会で、民主党の山井和則氏は相談者から寄せられた川柳を披露した。「振り込んだのに『証拠がない』と言って払わないのは詐欺じゃないか」
首相は「申し立てがあった人すべてにお支払いをしろということなんですか」と語気を強めた。領収書しか認めないようなしゃくし定規の対応を改め、相談者の立場に立った柔軟な対応を約束した首相だが、年金給付は「多くの方の（保険料）負担によって成り立っている」として「何かしらの証拠」の必要性は譲らなかった。
一方で「証拠」の認定については、自民党の中川昭一政調会長は２７日の報道番組で「推定とか状況証拠とか、善意という観点でやるしかない」と述べ、緩やかにすべきだとの見方を示した。だが、政府・与党内には「『払った』と言うだけでもらえるなら、うそをつく人も出てくる。まじめに払ってきた人たちが反発し、制度が成り立たなくなる」（与党幹部）との考えも根強い。
安倍首相は２８日、双方に証拠がない場合に、記録を訂正するかどうか判断する第三者機関を政府内に設置する考えを明らかにした。しかし、そこがどのような基準で判断するかまだ見えない。
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