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「法の支配」が揺らいでいる 武井俊樹氏1300億円追徴課税とコムスン事件の共通点 = NBonline
http://www.asyura2.com/07/senkyo36/msg/474.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 6 月 12 日 22:16:10: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070611/126982/

 5月23日、東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)は、消費者金融大手「武富士」の故武井保雄元会長の長男である武井俊樹氏に対する約1300億円の追徴課税処分を取り消す判決を下した。租税法律主義の原点に立ち返った意義深い判決である。


実質的な“事後立法”による追徴課税

 簡単に経緯を説明しておく。

 武井俊樹氏は1999年12月に元会長夫妻から海外法人株の生前贈与を受けた。課税時期の評価額は約1653億円である。俊樹氏は97年6月に日本を出国し、武富士の香港法人代表などを務めており、贈与を受けた時、俊樹氏の生活拠点は香港にあった。当時の相続税法では、海外に生活拠点を置く日本人が贈与によって取得した海外財産には納税の義務を定めていなかったため、俊樹氏は贈与税を納付しなかった。

 これに対して東京国税局は、俊樹氏の実質的な生活拠点は日本にあり、香港居住は課税逃れが目的であるとして、2005年に約1600億円の申告漏れを指摘、約1300億円の追徴課税処分を決定した。

 これに対して俊樹氏は処分の取り消しを求めて国を相手取って提訴したものである。

 私はこの裁判に、俊樹氏を弁護する代理人の1人として関わった。唯一の争点は、贈与の時点で俊樹氏が日本国内に住所を有していたか否かであった。この点について東京地裁は、次のように断じた。

 「原告(俊樹氏)は3年半ほどの本件滞在期間中、香港に住居を設け、同期間中の約65パーセントに相当する日数、香港に滞在し、上記住居にて起臥寝食する一方、国内には約26パーセントに相当する日数しか滞在していなかったのであって、原告と亡保雄ないし武富士との関係、贈与税回避の目的その他被告(国)の指摘する諸事情を考慮してもなお、本件贈与日において、原告が日本国内に住所すなわち生活の本拠を有していたと認定することは困難である。被告の主張は、原告の租税回避意思を過度に強調したものであって、客観的な事実に合致するものであるとはいい難い」(判決文のまま、かっこ内は編集部注)

 納税者と税務当局が“解釈の違い”を巡って争うのは珍しいことではない。しかし、本件は様相が異なり、税務当局は既に法令、通達、判例によって固まっていた「住所」の解釈を突如変更し、2000年4月1日に施行された新しい「住所」の解釈を法改正以前の過去に遡って適用しようとした。実質的な“事後立法”のケースだと言わざるを得ない。


“モグラ叩き”が現実でも法の支配を逸脱してはならない

 近代国家において、事後立法は罪刑法定主義に反するものであり、それ自体が違法行為であることは自明である。

 下記のような立場がある。

 税法の解釈が不明な時、または税法が未整備の時に、課税しないでおくと、法の抜け穴を探し出す納税者が出てくることになる。実際、事業活動が国際化した現在、納税者は次から次へと租税法の「Loophole(抜け穴)」を見つけ出して課税を免れようとしている。それに対抗するために立法によってLoopholeを塞ぐことになる。しかしこれによると、課税はどうしても後追いの“モグラ叩き”になる。悪質な納税者が得をし、善良な納税者が損をするという不公平が生じる。

 こうした事態を避けるため、法の解釈が明確でない時、または法が未整備である時は、国税当局としてはまず課税する。納税者が更正処分をあえて争った場合に、裁判所が課税処分の合法・違法を判断し、課税当局はその司法判断に従えばよい──。

 しかしながら、一見もっともらしいように見えるこの立場は「法の支配」に明らかに反する。このような徴税権の行使は、徴税権の行使もまた「法の支配」に服するという「法の支配」の理念に反するものと言わざるを得ない。

 納税者は、法律により納税義務が定められている時のみ納税義務を負い、法律により納税義務が定められていない時には納税者は納税義務を負わないという、「租税法律主義」とはほど遠いものである。

 「法の支配」とは、司法が司法権を行使する場合のみならず、行政もまた行政権の行使に当たって「法の支配」に服することを意味する。すなわち、「法の支配」の法理念によって、課税当局は、徴税権の行使に当たって、その徴税権の行使が合法であることを厳密に手堅く確認したうえで徴税権を行使することが求められる。それを事後的な司法判断に委ねることは行政の怠慢である。


コムスンの罪は法によって正面から断ずべきだ

 法治国家においては、法の支配は国民の権利と自由を保障する絶対条件である。たとえ相手が「社会的な悪」だからといって法を捻じ曲げたり、法を逸脱して懲罰を加えるようなことがあってはならないのである。

 訪問介護最大手のコムスンが介護報酬を不正請求していた問題で、厚生労働省は同社の介護事業所の新規指定と更新を打ち切った。グッドウィル・グループはコムスンの全事業をグループ企業である日本シルバーサービスに譲渡すると発表した。それに対して厚労省は譲渡計画を凍結するように行政指導を発した。その根拠は、「サービス利用者と国民の納得を得ることはできない」という判断なのだという。

 世論は厚労省の決定を支持するだろう。「悪」に対して厳しい姿勢で臨む行政の姿勢は“受け”が良いだろう。しかし、私は違和感をぬぐえない。厚労省のコメントが如実に示しているように、事業譲渡そのものには法的な問題はないからだ。問題は「国民が納得しない」ことであり、すなわちコムスン社員の行った「不正請求」の問題である。もし仮に、コムスンの某社員が故意に「不正請求」したとすると、詐欺罪に該当する可能性がある。刑法246条(詐欺罪)は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処す」と定めている。もし仮に故意の「不正請求」が会社ぐるみで行われていたということになると、それに関わった社員は、共犯として刑事責任の有無を問われよう。

 「法の支配」は、コムスン社員であれ、誰であれ、「故意の不正請求」を詐欺罪として禁じている。コムスンの事件のポイントは、警察、検察が、「不正請求」が故意に行われたかどうか、それが詐欺事件に該当するか否かを真正面から捉えて検討し、マスコミがコムスンの行った「不正請求」の問題を真剣に報道することであろう。

 「国民が納得しない」という理由だけで法の支配の領域を逸脱するような行政指導が乱発されたら、法治国家であるはずの日本はいったいどうなってしまうのか。そのような恣意的で根拠の曖昧な行政指導に依拠する古い国家観から脱することが、今進められている構造改革が目指すところではなかったのか──。

 法の不備を言い訳にして、時計の針が逆戻りしているような危機感を覚える。刑法の詐欺罪が存在するのであるから、法の不備を言う前に、まずこの法令にコムスン社員の行為が該当しないか否かを検討すべきであろう。


升永 英俊(ますなが・ひでとし)
弁護士・弁理士
1942年7月12日生。61年都立戸山高校卒、65年東京大学法学部卒、住友銀行に入行。67年に退行。東大工学部に入学し、73年に卒業。同年第一東京弁護士会に弁護士登録、79年米コロンビア大学ロー・スクール修了、80年米ワシントン弁護士登録、84年米ニューヨーク州弁護士登録。91年東京永和法律事務所を設立。青色発光ダイオードの職務発明報酬を巡る裁判で元日亜化学工業の中村修二氏の弁護人を務めたのをはじめとして、同様の訴訟を多数手がける。

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