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安倍政権・自民党の歴史的敗北と川田隆平さん当選が意味するもの = 週刊かけはし
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 03 日 20:35:24: mY9T/8MdR98ug
 

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参院選で与野党逆転が実現

 七月二十九日に行われた参院選は、事前のメディアの予想をも上回る形で、安倍政権と自民・公明の与党にとって大敗北となった。夏期休暇の最初の休日にあたっていたせいもあり投票率は思いのほか伸びなかったが、それでも五八・六%と前回(二〇〇四年)を二ポイント以上上回った。
 自民党は二十九の一人区で六議席しか獲得できなかったのをはじめ、比例区でも過去最低の十四議席にとどまり、改選議席の六十四を大きく下回る三十七議席にまで減少した。この数字は一九八九年の宇野内閣の時の三十六議席とほぼ同じである。自民党につき従ってきた公明党は、創価学会の確実な集票マシーンも十分に作動せず、選挙区で擁立した五人のうち三人(埼玉、神奈川、愛知)が落選するなど、前回当選の十三議席から九議席へと落ち込んだ。公明党が選挙区で議席を落としたのは一九八九年以来、十八年ぶりである。
 「一人勝ち」したのは民主党である。民主党は自民党の牙城だった地方の一人区で、単独あるいは社民、国民新党との選挙協力によって圧勝した。大都市部の埼玉、千葉、神奈川、愛知の三人区ではいずれも二人を当選させ、今回定数が一増えた東京でも前回に続いて二議席を確保した。比例区でも三九・四%の得票率で二十議席を獲得し、二八・〇%の自民党を大きく上回った。
 こうして民主党は改選百二十一の約半数に上る六十議席を占めるという圧勝で、非改選を合わせて参院二百四十二議席のうち百九議席の第一党となった(自民は非改選をふくめて83議席)。民主党の圧勝により、参議院で野党は過半数を大きく超え、今回当選した野党系無所属の(秋田、東京、富山、愛媛、宮崎、沖縄)の六議席を加えて参議院二百四十二議席中、百三十二議席という絶対多数を獲得した。
 共産、社民の両党は比例区で前回の二〇〇四年を下回り(共産党は7・80%から7・48%、社民党は5・35%から4・48%)、獲得議席はいずれも改選議席を下回った。前回のの〇四年には比例区の全国得票率で計一三%を超えた共産、社民の両党は、自民党への批判の「受け皿」となった民主党の大勝の中で、今回は一二%を割り込んだ。

川田龍平さんの感動的勝利

 全体としては「民主党の圧勝」として表現された今回の参院選の中で特筆すべきは、東京選挙区でわれわれも支持を呼びかけ、当選のために活動した川田龍平さんが、既成政党の支持・推薦もない中で、多様な社会運動、市民運動の担い手に支えられて激戦を勝ち抜き、六十八万票以上の得票で当選したことである。
 川田さんの勝利の根拠は、HIV訴訟原告として国家と企業の不正に対して闘い抜き、差別・排除された「弱者」の視点に立ちきって、「人権・環境・公正・平和」を訴え、憲法改悪や「戦争をする国」づくりと貧困に抗する「いのちの政治」を鮮明に主張したことにある。川田さんの訴えは、「格差社会」の現実がシステムそのものの問題であり、「ワーキング・プアー」に代表される、あらゆる権利を剥奪され、絶対的貧困のスパイラルに落ち込んでいる若者、女性、そして高齢者の心に響くものであった。
 彼は薬害被害をもたらした国家と企業のあり方と今日の新自由主義的グローバル化による「底辺への競争」とを結びつけ、グローバルな変革の方向性を提起していった。それは今年一月にナイロビの世界社会フォーラムに積極的に参加した彼の問題意識に示されている。川田選挙を支えたボランティアたちの中心には、二〇〇三年のイラク反戦運動の高揚を担ったWORLD PEACE NOWの若者たちがいた。
 われわれは、川田龍平さんの勝利の中にいまだ端著かつ未分化であるとはいえ、「オルタナティブな政治潮流」への可能性をしっかりと見て取ることができる。その意味で川田さんの勝利は、「民主党の大勝」をも超えた、改憲と戦争に向かう国家と社会の流れ、そしてグローバルな新自由主義的価値観そのものに根本的に立ち向かう新しい政治的スペースを切り開く画期的意義を有しているのである。
 さらに沖縄では、共産党から国民新党にいたる全野党共闘で立候補した糸数慶子さんが、米軍基地の強化に反対する沖縄県民の意思を体現して現職の自民党・西銘順志郎候補に十二万票以上の大差で圧勝した。また社民党から比例区で立候補した「基地の県内移設に反対する県民会議」共同代表で元読谷村長の山内徳信さんも当選した。沖縄では社民党の比例区得票率は二一・二四%に達し、自民党の二一・九三%、民主党の二一・八八%に匹敵する、全国では突出した支持を得ている(共産党の沖縄における比例区得票率は6・65%)。
 ここでも「米軍再編」と憲法改悪に立ち向かう地域からの反撃・抵抗の意思が、最も具体的に提起されていると言わなければならない。

新自由主義「改革」への抵抗

 今回の参院選における自民党の大敗は、「消えた年金」、自殺した松岡前農水相や赤城現農水相に代表される「政治とカネ」、そして柳沢厚労相の「女は産む機械」や久間前防衛相の「原爆投下はしょうがない」、麻生外相の「アルツハイマー」発言などに代表される相次ぐ暴言に示される「逆風三点セット」によるものだと言われている。
 しかしわれわれは、今回の自民党・公明党の大敗が、まさに安倍政権に対する労働者・農民・市民の明確な拒否の意思表示だったことを明確にしなければならない。それは小泉・安倍政権の下で推進されてきた米ブッシュ政権の「対テロ」グローバル戦争戦略に追随する改憲・戦争国家化の路線と、新自由主義「構造改革」路線に対する、不信と批判が着実に社会の深部で根を張っていることの表現である。
 一つ目として、新自由主義路線の矛盾と亀裂の拡大を取り上げよう。
 小泉前政権の新自由主義的な「痛みに耐える構造改革」路線は、「古い自民党をぶっこわす」というアジテーションともあいまって、一九九〇年代の「バブル崩壊」不況の下で閉塞感をつのらせていた労働者・市民の「現状打破」意識と結びついた。二〇〇五年の「郵政民営化」解散・総選挙は、その頂点であった。
 しかし、小泉政権の下で進行した「規制緩和・民営化」戦略による雇用破壊の現実は、トヨタに代表される大資本が空前の利益を蓄積する一方で、多数の労働者たちが超長時間労働を強制され、無権利の非正規・派遣・パートの若者や女性たちが「生きる」ことが出来ないないまでに絶対的貧困に陥り、さらに「自助努力」の名の下に最低限の福祉まで切り捨てられるという、二極分化的「格差社会」を絶望的なまでに深めることになった。
 大企業と中小下請け・孫請け企業、都市と農村の格差も急速に広がった。堀江・村上などの金融犯罪、コムスンの介護報酬不正請求、「偽装派遣」の相次ぐ暴露などは、新自由主義が資本の過酷きわまる超搾取を正当化する以外のなにものでもないことをあからさまに示すものであった。
 安倍の「再チャレンジ」政策は、新自由主義路線による「底辺への競争」の「敗者」を再びいっそう過酷な競争に動員するためのものであることが、多くの人びとに実感されていった。もはや「経済成長の加速による下層の底上げと格差の解消」というスローガンは欺瞞そのものであることが、多くの人びとにつかみとられるようになっている。郵政民営化強行にあたって小泉が絶叫した「官から民へ」「公務員天国をぶっこわす」という宣伝にならい、年金問題で安部が採用した「公務員労組が悪の元凶」というキャンペーンは、少なくとも今回においては功を奏しなかった。「改革」がもたらした大資本の階級支配の強化と絶対的貧困の拡大という事実の重みが上回ったのである。

改憲・戦争国家づくりの矛盾

 二つ目は、改憲・戦争国家体制づくりへの強行突破が作りだした労働者・市民の危機意識の広がりについてである。
 「美しい国へ」をキャッチフレーズに登場した安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を呼号して、自らの政権で「憲法改正」を実現することを最大の目標としていた。「大東亜戦争」を「自存自衛」のための戦争であったとして正当化し、天皇制を「歴史の縦糸」とした日本国家のアイデンティティーの確立をもくろむ極右国家主義者としての安倍は、昨年の臨時国会で教育基本法の改悪を強行したのに引き続き、今年の通常国会ではついに「改憲手続き法」を成立させた。今年の参院選にあたって「改憲」を焦点とすることを明言した安倍内閣の下で「五年以内の改憲」に向けたプロセスが始動することになった。自民党は参院選のマニフェストで二〇一〇年の改憲発議を打ち出した。
 安倍にとって憲法改悪は、他の何にも増して優先されるべき政策課題であり、それはアメリカのグローバルな戦争戦略に自衛隊を実戦的に参加させるための「米軍再編」の要請に沿ったものだった。改憲手続きの加速化と平行して、安倍首相は「集団的自衛権の行使は違憲」とする政府統一見解を見直し、明文改憲以前にも米軍と一体化した海外での軍事作戦において自衛隊の武力行使を可能とするためにお手盛りの「有識者懇談会」の論議を開始した。
 しかしこの改憲プログラムは内外の情勢によって、デッドロックに突き当たろうとしている。第一は、ブッシュ政権が行っているイラク侵略戦争と占領支配の完全な破綻である。ブッシュが開戦の理由とした「大量破壊兵器の脅威」や「アルカイダなど国際テロ組織との関連」は、まったくの虚偽であった。そしてイラクの占領支配そのものがイラクと中東全域にわたる戦乱を拡大し、イラクそれ自身において十万人以上、米兵も三千六百人をはるかに突破する死者を生み出した。今年一月末から始まった三万人の米兵の「武装勢力掃討」と銘打った急派作戦も完全に失敗し、ブッシュ政権の権威は地に落ちてしまった。
 「ブッシュの戦争」の敗北は、アフガニスタンにおいても同様である。それはブッシュにひたすらつき従い、アフガニスタンでの戦争を支援するために海上自衛隊をインド洋に派遣し、イラクに対しても航空自衛隊を派兵し続けている小泉―安倍政権を窮地に追い詰める要因になっている。自衛隊を米軍の指揮下で海外の戦場に参加させるための憲法9条改悪は、このイラク―アフガン戦争の現実を突きつけられる中で、大きな打撃を強制されている。
 第二は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日独裁政権による日本人拉致犯罪、そして弾道ミサイル発射実験や核実験を背景に、安倍政権が煽ってきた「北の脅威」を理由とした「九条改憲」のキャンペーンが、ブッシュ政権と金正日政権との「対話」の流れによって、重大な疑問を呈されるにいたっていることである。とりわけ拉致問題への強硬姿勢によって人気を博してきた安倍の対「北」制裁一辺倒の姿勢は、国際的にも孤立感を深めている。
 第三は、安倍の極右国家主義路線が、同盟国アメリカの主流政治家やメディアからも反発を買っていることである。すでに小泉前首相の靖国参拝の強行による対中韓関係の危機は、東アジアにおける日本の国際的イニシアティブの低下を恐れる米国の支配層にとって是正すべき問題となっていた。安倍は首相就任直後、米国や日本の財界からの圧力もあって、中国と韓国を最初の訪問国とし、小泉時代に最悪の段階にまで至っていた中国・韓国との外交関係の一定の改善に踏み出したが、日本軍「軍隊慰安婦」の強制連行を否定する安倍の発言は、アメリカ下院において日本政府の公式の謝罪を要求する決議が可決される事態を作りだしてしまった(七月三十日に下院本会議で「慰安婦」問題について日本政府の公式謝罪を求める決議が可決された)。
 こうして、新自由主義と表裏一体化したグローバルな日米軍事同盟のための改憲戦略は、それを振りかざす安倍内閣の極右国家主義イデオロギーゆえに、重大な矛盾を抱え込むことになった。安倍の描く「美しい国」に貫かれている極右国家主義の「歴史認識」そのものが、強行突破的「九条改憲」への危機感を労働者・市民の間に拡大してきた。それが今回の参院選での安倍政権への不信任をもたらした重大な要因なのである。

「続投」安倍体制のジレンマ

 参院選での自民党の「歴史的惨敗」は、安倍政治への不信そのものであった。安倍は、投票日翌日、七月三十日の記者会見で、「国民の厳しい審判を厳格に、真摯に受け止め、反省すべきは反省しながら、そして謙虚に改革、国づくりに向かって責任を果たしていく」との「続投宣言」を行ったが、安倍政権の支持率はすでに三〇%を切っている。安倍はいったい何を「反省」しようというのか。この記者会見から見えるものは、とりあえず「謙虚」を装って首をすくめながら、憲法改悪と新自由主義路線を継続していくという居直りでしかない。
 この安倍の居直りとごまかしに対して、自民党内からも批判が渦巻いている。しかし自民党内からは、安倍に替わろうとするイニシアティブは生まれていない。自民党の危機の深さはここに最も端的に表わされている。
 民主党を中心に参院で圧倒的な過半数を占めた野党は、安倍政権の退陣、そして「解散・総選挙」による政権交代の圧力を強めるだろう。いずれにせよ衆院で三分の二を要する与党勢力と参院過半数の野党勢力との間で、安倍政権の政策展開が重大なジレンマに陥ることは確実である。
 「消えた年金」問題を契機に、安倍首相は参院選での政策争点から「改憲」問題を後景に退けてしまった。民主党は、当面小沢執行部の下で、自民党との対決姿勢を堅持していくだろう。そのことは二〇一〇年〜一一年の改憲発議という安倍内閣と自民党のプログラムのスムーズな進行に決定的な困難を課すことになるに違いない。その意味で、改憲手続き法に基づく衆参両院での「憲法審査会」の設置、そこでの議論の動向を監視し、改憲合意の動きにストップをかけることは、労働者・市民にとっていっそう重要な課題となる。
 その試金石は今秋にも予定されているテロ特措法延長に反対する闘い、ならびに「集団的自衛権行使」に関する「有識者懇談会」の報告と、それにもとづいて海外における米日両軍による「集団的自衛権」行使を容認する「安全保障基本法案」(仮称)の上程・成立を阻止する闘いである。われわれが注意しなければならないのは、民主党の多数は改憲と新自由主義推進の立場であるということであり、前代表の前原のように「集団的自衛権」行使についても日米同盟の強化にとってそれが不可欠であるという勢力が強固に存在するということである。そして民主党が「政権」が目の前にぶらさがっていることを自覚したとき、彼らの中では改憲においても、「集団的自衛権」の行使においても急速に自民党との「合意」に走ろうとする力学が働くだろう。
 それは必然的に、新たな「与党連合」という政界再編を手繰り寄せることになっていく。

新しい政治潮流への挑戦を

 参院選における民主党の圧勝は、安倍政権の「改憲強行単独突破」路線に当面歯止めをかけることになる。それは改憲に反対する労働者・市民の運動にとって、有利な時間となるだろう。しかし同時に、安倍政権と自民党の危機は、支配階級が望む「政権交代可能な二大政党システム」の現実性に民主党が直面することを意味する。そしてその「政権交代」に必要な共通の枠組みは、グローバルな日米同盟が強制する「九条改憲」であり、新自由主義的「改革」路線の一貫した追求以外ではありえない。
 九条改憲と規制なき新自由主義路線の遂行に反対している政党は、共産党と社民党である。安倍政権の改憲・新自由主義構造改革路線に対する批判と抵抗は、今回の参院選においては、この批判の対象となったテーマにおいて自民党との違いはテンポとニュアンスの差(もちろんその「差」を無視するのは間違いだが)であるにすぎない民主党を押し上げた。そして共産党と社民党は合わせて約一二%を得票しているとはいえ、ともに後退し、いっそう極小勢力に追い込まれた。
 われわれは、この中で、改憲阻止の共同の戦線を着実に拡大するとともに、国会の動向に周到に注意をはらいつつ、米軍再編・反戦・平和の運動、新自由主義がもたらす貧困・無権利への抵抗の運動の発展と結合に全力を傾注しなければならない。
 そして川田龍平さんの国会内外における活動をともに支え、闘っていくこと、川田龍平さんの勝利に続く国政選挙への挑戦を共同で目指そうとすることが重要である。オルタナティブな政治潮流の必要性と可能性は、川田さんの選挙で具体的に提起された。新しい左翼政治勢力の創出に向けた闘いは、そのためにも急務なのである。
(7月31日 平井純一)

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