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「植草事件」の東京地裁・判決要旨を読んで(JANJAN)
http://www.asyura2.com/07/senkyo43/msg/829.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 11 月 01 日 19:05:11: 2nLReFHhGZ7P6
 

http://www.news.janjan.jp/living/0710/0710304795/1.php

2007/10/31

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 10月16日、電車内で痴漢行為をしたとして東京都迷惑防止条例違反で逮捕され、裁判が行われていた経済学者の植草一秀さんに対する東京地裁の判決があった。逮捕されたときから一貫して無実を訴え続けている植草さんに対して東京地裁が下した判決は、懲役4月の実刑判決だった(検察の求刑は懲役6ヶ月)。

 判決の出た日、MSN産経に判決要旨が載っていたので読んでみた。判決要旨を一読してわかるのは、植草さんの主張や、植草さんの無実を証言した弁護側目撃証人の証言が、「信用性を欠く」「「措信し得ない」などとして訴えが斥けられているのに対し、痴漢にあったとされる被害者の供述、犯行を目撃したとされる検察側証人の証言、植草さんを取り調べた蒲田署の警官などの証言が、証拠として全面的に採用されていることである。

 筆者はこの裁判を傍聴したことは一度もない。ただ、「直言」というWebサイトの愛読者であったことから、「直言」の執筆者の1人であった植草さんの記事を読んでいたので、この事件についても関心を持って推移を見守ってきた。裁判を傍聴した人たちの書いた傍聴記や速記録を読むと、マスメディアが必ずしも裁判で審理された内容を正確に伝えていないことがわかる。一部のメディアは、故意に植草さんを貶めるような見出しをつけ、明らかに事実に反すると思われるような報道をしているものもあり、重大な人権侵害が行われているとの感想を持っていた。

 たとえば、植草さんの指から採取された付着物が、被害者が着用していたスカートの構成繊維である4種類のうちの1つに「類似」していると法廷で証言した科学捜査研究所の研究員の発言に対し、あたかもそれが決定的な証拠であるかのような報道をする一方で、その付着物は駅員ともみ合った際についた可能性が高い(弁護側が駅員の制服を入手して鑑定したところ、駅員の制服に極めて酷似している鑑定結果が出た)ことから、裁判所に鑑定を求めたが却下されたことや、被害者が着用していたセーターの繊維が植草さんのスーツに付着しているかどうか鑑定を求めたが、これも裁判所によって却下されたことを伝えていないのは、著しく公正さに欠ける報道であるといわざるをえない。

 刑事裁判の目的が真実の追究であることを考えたとき、果たしてこの裁判で公正な審理が行われたのかどうか疑問を感じないではいられないが、今回、判決要旨を読んで感じたのも同様の疑問だった。筆者がとくに首を傾げたのは、関係者の立ち位置に対する裁判所の見解である。被害者は犯人が真後ろに立っていたと供述している。それに対し、植草さんは、被害者の後ろではなく、右後ろに立っていたと主張している。

 立ち位置について裁判所は、植草さんの立ち位置が(犯行を目撃したとされる)目撃者と、(植草さんを逮捕した)逮捕者が言っていることが異なることについて、「正確に記憶した上、さらに的確に表現することには限界があると言わざるを得ず、曖昧な点があったり、些細なずれが生じるのは止むを得ない面がある」としているが、このような事件の場合、立ち位置がもっとも重要なことはだれにでも容易に理解できる。

 この点がとくに引っかかるのは、立ち位置について関係者の供述に齟齬が生じても止むを得ない面がある、としながら、植草さんが無実であることを証言(犯行があったとされる時間帯、植草さんはだれとも密着していなかったと法廷で証言した)した弁護側目撃証人の証言については、「子どもがいるのに」という被害者の声が聞こえなかったことなどを理由に、「この証人が車輌に乗っていたこと、及び目撃したことについて相当の疑問を差し挟まざるを得ず、供述は措信し得ない」と断じていることは、きわめて公正さを欠いた判断であるとの感想を持たざるを得ないからである。

 事件があったとき植草さんが眼鏡をかけていたかどうか、被害者がはっきり覚えていないと供述していることについても疑問を感じた。当時、植草さんはセルロイド製の青と紫色のフレームの眼鏡をかけていた。被害者は犯人がどのような痴漢行為を行ったか、きわめて詳細に語っており、そのときの自らの心情についても克明に語っている。判決要旨にも「正確に状況を観察し認識し、その際の記憶をよく保ち、ありのまま誠実に供述」している被害者が、犯人だと思った相手が眼鏡をかけていたかどうかはっきり覚えていないというのは、かなり切迫した状況にあったとしても、不思議なことのように思われる。

 穿った見方をすれば、犯行を目撃したとされる検察側証人が、犯人の目を注視していたと言いながら、犯人が眼鏡をかけていたかどうか覚えていないと証言しているので、この目撃者の証言と整合性をとるために警察が誘導する形で辻褄袷をしているのではないか、との疑念がわいてくる。

 被害者は犯人の顔を見ておらず、犯人の手をつかんでもいない。供述によれば、犯人は真後ろから体を密着させ、約2分間お尻を触るなどの痴漢行為を行ったそうだ。被害者は痴漢行為をやめさせるために、ヘッドホンを外し、右回りに振り返り、犯人に、「恥かしくないんですか、子供たちの前で」などと言ったとされている。その犯人が植草さんだと被害者は主張しているが、植草さんは、自分は痴漢行為は絶対にしていないと否定している。

 事件があったとされる時間帯、植草さんはだれとも密着しておらず、半分居眠り状態で立っていた、と述べている。そのとき植草さんは、右肩に鞄を提げ、右手で吊り革につかまっていた。また、左手には傘を持ち、傘の柄に手をおいてつえ代わりにしていたとも供述している。

 痴漢は許しがたい行為である。しかし、弁護側が主張しているように、もし被害者が間違えて植草さんを犯人だと思ったとしたら、新たなえん罪の被害者を生み出し、その人だけでなく家族にも甚大な苦しみを与える加害者にもなりえる危険性があることを、周防正行監督の「それでも僕はやっていない」という映画は伝えている。

 弁護側は、犯行を目撃したとされる目撃証人の証言についても、その信憑性に疑問を呈している。眼鏡の問題だけでなく、犯人の右肩が下がっていた(植草さんは右肩に重い鞄をかけており、もし右肩が下がっていたら鞄がずり落ちる)とか、犯人の手や指や袖口まで見たと言っているのに、左手に傘を持っていたかどうか覚えていない(植草さんは左手に傘を持っていた)とか、事件当時と比べ、8、9kg体重が減り、相当やつれた様子であった植草さんを見て、「変わっていない」と答えていることなど、この目撃者が見た犯人は、むしろ犯人が植草さんではない可能性が高いことを示しているからである。

 若い女性が痴漢に遭っている現場を目撃しながら、なにもせず、ただ犯人の目や手の動きを見ていたというのも、大変引っかかるものを感じるが、犯行を目撃したとき、それが植草さんであることをこの目撃者は認識しておらず、ヤフーのニュースや友人からのメールで植草さんが犯人であると報道されていることを知り、犯人が植草さんであると確信するに至ったとされている。弁護側はこの目撃者は犯人の顔を正確に観察し、記憶していなかったのではないか、と指摘している。

 裁判所は、この目撃者の証言は被害者の供述と一致していることを理由に証拠として採用している。その一方で、犯行があったとされる時間帯に植草さんは吊り革につかまってグッタリしていて、だれとも密着をしておらず、なにもしていなかったと証言した弁護側の目撃証人に対しては、植草さんの主張と一致するにもかかわらず、こじつけとしか思われないような様々な理由をつけ、信頼できないとして一蹴している。

 だが、2人の目撃証人の証言を見比べた場合、犯行現場を見たと言っている検察側の目撃証人の供述が、犯人が植草さんであるとするにはきわめて曖昧で説得力に欠ける内容であるのに対し、植草さんの無実を証言した弁護側目撃証人の供述は主張が一貫していて、整合性が取れていることは、裁判の傍聴記や速記録などを読めば明らかである。

 たとえば、弁護側目撃証人は、電車に乗っていたときから植草さんであることを認識していたと語っている。植草さんが2人の男にからまれているように見えたことや、隣に座っていた婦人から「酔っ払いにからまれたんでしょうか」と声をかけられたことや、テレビで植草さんが痴漢の犯人だと報道されているのを見て「えっ? 嘘だろう」と驚いたことなど、裁判所が言うように、その供述内容が「措信し得ない」とはとても思えないのである。

 また、すぐ名乗り出なかったのは、植草さんに対する異常とも言えるようなバッシングの中、関わり合いになるのをためらう気持ちがあったのと、自分が名乗りでなくても誰かが名乗り出てくれるだろうと思い、通りすがりの通行人を演じてしまったと、その間の心情について語っていることや、植草さんが保釈されたときの映像をテレビで見て、まだ拘留されていたのかと驚き、自分もなにかしなければとの思いから名乗り出たといったことなど、その供述はきわめて自然で、行動や心情がよく理解できる。

 裁判所はまた、調書もとらず、署名、押印した文書もないのに、取調べの警察官が言っていることについて、「信用性は高い」として証拠として採用しているが、この点についても疑問を感じる。蒲田警察署の警察官の聴取に対し、植草さんは「電車の中で、女性に不快感を与えるようなことをしました」と答えたとされるが、植草さんは当初から一貫してそのようなことは言っていないと否定している。警察の言うことは信用できるが、植草さんの言うことは信用できないとする判決要旨を読みながら思い出したのは、志布志事件や富山事件などの冤罪事件である。

 いずれも警察のでっち上げによってなんの罪もない無辜の市民が犯罪者に仕立て上げられ、重大な人権侵害が行われた事件である。志布志事件はアリバイを立証することができたため裁判で無罪を勝ち得たが、富山事件は服役した後に真犯人が出てきて無罪が確定した。これらの事件は、事件をでっち上げた警察だけでなく、警察の主張を鵜呑みにして起訴した検察や裁判官に対しても厳しい批判の声が上がっている。関係者に対し、もっと厳しい処罰を与えるべきだとする意見も多い。今回の判決要旨を読む限り、志布志事件や富山事件の反省がまったく生かされていないことは、きわめて残念であるといわざるを得ない。

 不思議なのは、これまで裁判の審理を正しく報道してきたとはとても言い難い産経新聞のWebサイトが、判決の出たその日に判決要旨の全文を掲載したことである。今回の事件については、当初から植草さんを犯罪者と決め付け、異常ともいえるようなマスメディアによる情報操作があったとの印象があった。

 事件が起こる直前まで、植草さんが小泉政権の経済政策の失敗や、政権中枢が関与していた疑いのある急激な株価暴落と国有化された銀行の処理をめぐるインサイダー疑惑などを告発していたことから、この事件が単なる痴漢えん罪事件ではなく、国家権力による国策捜査ではないかと指摘する人たちもいる。このような恣意的ともいえるような報道を見ていると、そのような疑念が深まってくるのも事実である。

 植草さんは判決を不当であるとして即刻控訴した。社会的関心の高い事件なので控訴審でも大勢の傍聴人が詰め掛けると思うが、多くの人がこの裁判を注視していることをよく理解し、控訴審では公正な審理が行われることを期待している。

(ひらのゆきこ)

     ◇

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