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食料品値上げ、狂乱物価より心配なこと = 森永卓郎
http://www.asyura2.com/07/senkyo44/msg/162.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 11 月 12 日 23:46:39: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/107/index.html

 食料品の値上げ発表が相次いでいる。小麦を原材料とするパンやめん類などは、国際相場の高騰によって政府売り渡し価格が10%引き上げられたことから、次々に値上げが発表された。

 原材料の値上げは小麦だけではない。油脂の価格上昇で、食用油、マヨネーズ、カレーのルーが値上げ。糖類の値上がりで菓子類の内容量が減らされている。さらに、乳製品、包装材料の値上がりによって、ありとあらゆる食料品が値上げされたか、近いうちの値上げが予定されている。

 食料品以外にも、原油価格の上昇の影響で、ガソリンやプラスチックの価格が軒並み上昇。生活必需品の値上がりもじわじわと進んでいる。さらには、とうもろこしを原料とするバイオ燃料の需要拡大を受けて、家畜飼料の値上げが進み、海外で作付面積の減った大豆価格も上がっている。

 こうした事態を、1970年代に起きた石油ショックに例える人がいる。しかし、ある意味では石油ショックのときよりもひどいかもしれない。なぜなら、当時の原油価格上昇は10〜20%台だったのにくらべて、今回は30ドルだった原油価格が90ドル台まで3倍も上昇しているからだ。現代生活の根幹をなしている原油がこれだけ上昇すれば、とんでもない事態になると考えるのも不思議ではない。

 石油ショックのときは狂乱物価が起きたが、今回もその再来を心配する声が出始めている。では、本当に狂乱物価は起きるのだろうか。

値上げが続いても物価が下がる理由/h3> これだけ食料品の値上げが相次いでいるならば、物価は上がっていると誰でも考えるだろう。だが驚くことに、統計で見ると消費者物価はマイナスになっているのだ。

 全国消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品を除く)を見ると、8月は前年同期比で0.2%の下落、9月も0.1%下落した。これで、下落は8カ月連続となっている。生鮮食品を含む総合指数もやはり、9月の前年同月比で0.2%下落している。

 なぜこんな現象が起きているのだろうか。理由は二つ考えられる。

 一つは、薄型テレビをはじめとするデジタル製品や携帯電話料金などが低下していることだ。液晶テレビは32型で10万円を切る製品が登場し、パソコンの価格もかなり安くなってきた。携帯電話の料金体系を見ると、ソフトバンクのホワイトプランを皮切りに、端末価格を高くする代わりに基本料金を安くするサービスが出てきた。

 もっとも、こちらは消費者物価指数を押し下げる原因としては、「従」のものといったほうがいいだろう。

 では、「主」の原因はなにか。それは、メーカーが出荷価格を値上げしているにもかかわらず、小売店が店頭価格を引き上げていないことにある。現に、食品の出荷価格が上がっても、コンビニやスーパーでは値上げしない品目を決めているところもある。

 なぜ、小売業界がそうした行動に出ているのか。それは、そうしなければ客が来ないからである。サラリーマンの年収が低下している上に、増税や社会保険料の負担増が家計を圧迫している現在、ここで値上げなどしたら客離れが起きることは自明だ。それは、現場で実際に客と対している小売店にはよく分かっている。だから、値上げをしたくてもできないのである。

 イオンやセブンイレブンのような大手でさえ、品目数限定ながら価格凍結宣言をしているほどだ。ましてや、中小の販売店で値上げが困難なのは想像に難くない。街の商店会の惣菜屋、豆腐屋が値上げをしたら、「こんなに家計が苦しいのに、なんで値上げをするんだ。お前のところではもう買わない」と総スカンを食ってしまうだろう。

心配は狂乱物価よりリストラや賃下げ

 つまり、食料品メーカーの出荷価格値上げにもかかわらず物価が上がらないのは、小売店がその上昇分を小売価格に転嫁できないことにあったのだ。それに加えて、デジタル関連の物価はどんどん下がっていくために、全体の物価が下がっているというからくりである。

 では、仕入価格が上がっているのに小売価格が据え置かれると、どういうことになるのか。それは、小売店における付加価値の縮小である。売り上げが増えずにコストが上がるのだから、それは当然のことだろう。

 付加価値が減ればもうけがなくなる。もうけがなくなれば、企業も無い袖は振れなくなる。ボーナスをカットしたり、正社員をリストラしたりして、給料の安い非正社員に置き換えざるを得なくなるだろう。

 つまり、今後心配されるのは物価上昇ではなくて、さらなるリストラや賃下げなのだ。小売価格が据え置かれれば、消費者の立場としては喜ばしいかもしれないが、長い目で見るとあまり好ましくない影響が生じてくることがお分かりだろう。

 冒頭で紹介したように、メディアの一部では、食料品の値上げが狂乱物価の引き金になると心配している。だが、狂乱物価のほうが、まだましなのだ。値上げをすれば売り上げが増えていくからである。それができずに、リストラや賃下げが起きれば、もっと悪い事態に陥る恐れがある。それはデフレ脱却どころか、本格的なデフレ経済への逆戻りなのである。

職場でも消費でも二極化が進む

 このように、原材料価格や仕入れ価格が上昇しても、中小企業は値上げが難しいのが現状である。しかし、市場で強い力を持つ大企業ならば、製品価格をある程度上げていくことは可能だろう。

 となると、何が起きるか。大企業のもうけは減らないが、中小企業のもうけは減っていく。そして、大企業社員の給料はそれほど下がらないが、もともと低い中小企業の社員の給料はさらに低下していくわけだ。給料の格差は、ますます拡大していくのである。

 そして、消費の面では何が起きるのか。デジタル製品や通信費が下がっているのは前述のとおりである。一方、食料品の小売価格は、すべては上げられないとはいえ、じわじわと上昇してメーカーの出荷価格の半分くらいは上がるだろう。

 そうなると、誰が喜び、誰が苦しむことになるのか。金持ちにとっては、薄型大画面テレビやDVDレコーダーなどのデジタル製品に消費する割合が大きいから、値上げの影響はそれほど受けない。むしろ、値下げの恩恵を受ける立場だ。それに対して一般庶民は食費に費やす比率が大きいので、食料品の値上げのあおりをまともに受けてしまう。

 つまり、今回の「デフレ下の食料品値上げ」は、職場でも二極化を生み、消費の場面でも二極化を生むという深刻な問題をはらんでいるのである。経済格差はますます拡大させ、日本経済に悪影響を与える恐れが大きいのである。
 

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