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政府・財界の「税制改革」がもたらすもの 大企業には減税 庶民には増税 = 週刊かけはし
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 12 月 22 日 21:38:49: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/frame071217a.html

貧困をなくし生きるための保障を


すべては総選挙対策のため

 十一月二十六日、政府税調の会長である香西泰は、福田首相に〇八年税制改正のための答申を提出した。これを受けて自民党の税制調査会も〇八年度税制大綱作成に向け最後のつめに入った。毎年末恒例になっている自民党税調の総会は、ある意味で与党議員にとって一大イベントである。それは翌年度の予算編成と密接不可分であり、与党議員としての存在意義を最も発揮できる「華やかな舞台」に他ならないからである。税調総会は企業、業界、地方自治体、その上、族議員が持ち込む要求を「整理」し、優先順位をつけ予算編成・税制改正という形で、「国民経済」の利害調整を行う。つまり利害調整という「サジ加減」で企業、業界、各地方自治体の今後の「運命」を決めるのである。その意味でここが「カネと政治」問題の出発点であり、「利権」の入り口であることが一大イベントたる由縁である。
 だが小泉と安倍は「改革」の名のもとに党税調の地位を低下させ、官邸主導を貫徹させるために経済財政諮問会議を中心にすえ政府を運営した。だが福田政権となり、再び官邸に代わり税調が予算編成にむけた税制改正の主人公に戻った。しかし、ともすると独立行政法人の整理合理化にむけて派手なパフォーマンスをする渡辺行革相や恥もなく「消えた年金」で流行語大賞の表彰式に出席する舛添厚労大臣に年末の「主人公」の地位を奪われているような感さえある。
 これは七月の参議院選で自民・公明の与党が敗れ、民主党を中心とする野党が参議院の過半数を握ったことに起因している。いくら政府と与党が税率や増税、あるいは減税を決めても簡単には予算案として国会は通らない。まして旧来のような「サジ加減」は通用しにくいばかりか税制大綱さえ「絵に描いた餅」に終わりかねない。さらに福田政権となって〇八年税制改正の「目玉」となるはずであった消費税率アップの論議は、突然降って湧いた「大連立」構想の破産とともに再び封印された。
 福田は小泉・安倍と違い、消費税増税が必要という立場を明確にしていた。自民党の総裁選時には、「うそを言っても仕方ない。どこかで国民に(増税)をお願いしないと」と語り、総裁就任後も「歳出改革を進めた上でも対応しきれない時、社会保障を削ればいいという話にはならない」と繰り返し主張している。首相就任直後の十一月十日の経財諮問会議では、「現在の医療・介護給付の水準を維持するためには消費税率を一一%〜一七%まで引き上げる必要がある」とぶち上げ、財政改革研究会が公然と増税論議に踏み切ることを解禁している。
 この一連の流れをみると福田は頭の中で、ドイツと日本を重ね合わせていたのかも知れない。ドイツでは今年「大連立」を契機として消費税増税問題が大きく進展した。だが民主党との「大連立」構想が破産すると「今、消費税をすぐに上げるという話にはならない。階段を追っていくことが大事だ」と再び論議を封印した。ブュシュとの首脳会談のために渡米する直前である。福田にとって「大連立」は第一に給油新法、第二に消費税率のアップ、第三に憲法改悪の順で組み立てられていたのかも知れない。しかし「大連立」の破産は、国会解散―総選挙を再び日程にのぼらせることとなった。福田は第一の獲得目標である給油新法に的をしぼり、予算を「人質」にして総選挙の機をねらう以外に道はなくなってしまった。そのためには労働者人民の攻撃の的となる消費税率のアップは棚上げするしかなかったのである。

新自由主義と法人税引き下げ

 〇三年に政府税調は「増大する社会保障費に対応するために近々に消費税率を二桁に上げるべきである」という「中期答申」を発表した。これが今日につながる消費税増税論議の出発点である。この「答申」を受け政府は年金制度改革として「現役収入の五割給付」を打ち上げ、「〇九年度までは基礎年金の国家負担割合を三分の一から二分の一に引き上げる」ことを約束した。財源の二兆五千億円は消費税率を二桁に上げることが前提とされた。それは小泉―安倍政権のもとで「骨太〇六」という形で、自公政権の中期的政策として明文化されたが、小泉は安倍に押しつけ逃亡し、長期政権を夢見た安倍は参議院選後の〇七年秋以降に引き延ばし、ついに手をつける前に崩壊した。そして今、自公政権は「基礎年金の国家負担割合を三分の一から二分の一に引き上げる」という約束の実行がせまられているが、「消えた年金」で追い込まれている自公政権は施行時期を絶対に引き延ばすことができない絶体絶命のピンチに立たされている。
 「〇三中期答申」の実施を四年間も待たされた財界は、福田政権が誕生すると、前述した経財諮問会議にむけて会議の民間議員でもある日本経団連の御手洗が「税体系の抜本的改革について」とする提言を発表し、「景気変動に相対に左右されにくい消費税で社会保障の安定財源を確保する」ことをせまった。財界は経団連を通して一九八九年の消費税の導入以来一貫して消費税率のアップを要求し続けてきた。時にその要求は時の自民党政権を崩壊にまで追い込んだ。
 その口実として利用されるのが、「増大する社会保障費を賄う財源」説である。資本は自らの利益追求のために非正規を増やし、格差を広げ、フリーター、ワーキングプアなどと呼ばれる新たな貧困層をつくり出したのであり、その資本が「庶民」のために社会保障費を負担する消費税率のアップを政府に要求するはずなど決してない。資本のねらいは一貫して法人税を引き下げるための財源確保である。この法人税率の引き下げ要求は、時には「研究開発費減税」であったり、「証券優遇税、創業支援」という形をとってなされてきた。資本にとって「法人税の引き下げ」と「社会保障費の財源」はメタルの裏表であり、「庶民」が受け入れ安い後者が利用しただけである。
 政府税調の「〇三年中長期答申」はシンガポールをモデルにしたと言われている。九〇年代を通じて日本を目標として経済建設を推し進めたシンガポールは、二〇〇〇年代に入って安価な労働力で製造業の誘致を進める中国など近隣諸国に対抗するために法人税率の引き下げ策(日本40%、シンガポール26%、香港17・5%)を取り、とくに優良金融企業には法人税率を一〇%まで下げ、アジアにおけるファンドなど金融部門の一大拠点になるのに成功した(摘発直前の村上ファンドも本拠地をシンガポールに移そうとしていた)。アジアは世界の中でも法人税率が比較的低い地域であり、それを武器に海外企業を引き込み経済を活性化させるという典型的な新自由主義的経済政策を軸とする最もシビアな「競争」が展開されている。WTO・ETAなどの新自由主義の貿易協定は、自国の農業や漁業などを資本の利益追求に従属させ犠牲にする政策であるが、九〇年代の南米諸国に続き、アジアは今や世界的攻防の中心環に押し出されている。
 有力な国内産業を持たない多くのASEAN諸国は、「経済成長のため」の政策として外国企業を誘致する手段として法人税を最初から低く設定し、矛盾を労働者人民に押しつけている。シンガポールに対抗するために中国、マレーシア、フィリピンも次々と「法人税率の引き下げ競争」に突入し、今日アジア規模で貧富の差が拡大し続けている。「勝ち組」のはずのシンガポールでも、税収の落ち込みを補うために、消費税率を五%に、そして今年七月には七%に引き上げている。逆進性が強い消費税は低所得者層を直撃し、肉・魚が買えず、家を失い、学校に行けない「新たな貧困層」を増大させている。アジア諸都市では巨大ビル群の裏側で再びスラムが拡大し、香港も含めて年金制度や医療保険、さらには最低賃金制度がないため、住居を持てない「新しい時代」の貧困層がものすごいスピードで増加している。法人実効税率の引き下げと消費税率のアップは日本に限らず新自由主義的経済政策がもたらしている必然的帰結に他ならない。同時に、新自由主義経済政策がつくり出す「新しい貧困」はASEAN諸国を始めとしてアジア全体に今や政治的不安要素として拡大している。新自由主義グローバリゼーションとの対決はますますアジア規模の問題となっている。

輸出戻し税額のカラクリ

 だが資本や財界が消費税率のアップを要求するのは、法人税引き下げのための財源確保だけが目的ではない。法人税引き下げと同様の、ある意味ではそれ以上の「うま味」が消費税率アップに隠されている。先日それを垣間見せる「事件」がマスコミで取り上げられた。
 「調べでは、原告らはダイヤモンドルース(裸石)を仕入れたように偽装し、香港に輸出したとする架空の国外売り上げを計上。いずれも都内の『渋谷ハート』などの名義で偽りの還付申請書を税務署に繰り返し提出し、〇二〜〇六年に消費税計一億円の還付を不正に受けた疑い」。
 消費税は「(企業の年間総売上―仕入れ額)×五%」として算出される納税額である。消費税率が五%から一七%になると一見企業の負担分も三倍強となり、企業自身の負担も一番に増大するように思える。「消費税」が持っている仕組みの一つを経済ジャーナリストの荻原博子は次のように指摘している。
 「一九八九年に消費税が導入された時、いっしょに『輸出免税』の消費税法七条が規定され、外国のお客様に国内の税金である消費税を負担させるわけにはいかないとして輸出売上高に対する消費税は免除された」。つまり輸出分の売上高にかかる消費税は〇%なのである。その結果、消費税の持っている仕組みを利用した前期のような不正還付事件が多発するのである。
 大企業の「総売上げ、輸出売上げ、輸出戻し税額。納入すべき消費税」の相関関係を関東学院大学の湖東京至が分析しているので、それを見てみよう。トヨタの二〇〇五年の総売上高は約十兆円強で、輸出売上げ高は半分を超える六兆二千億円。トヨタの場合、仕入額が売上高の約八割として見積もると消費税総額は約三千億円。国内売上高に対して納入すべき消費税は三百七十億円、輸出は〇%であるから輸出戻し税額二千六百六十億円、差し引き還付税額は二千三百億円となる。十兆円の売上額にもかかわらず、最終的には三百七十億円しか消費税を納めず、二千三百億円も還付金を手にしている。「もしも消費税の税率が一七%になれば、還付金も三倍以上増える計算になります。財界トップが消費税アップに積極的になるのは、還付金が増えることも一因ではないかと思います」と湖東教授は発言している。
 国内売上高の多い企業は一〜二兆円で消費税を二百億円前後を納入しているから、トヨタの納入消費税がいかに少ないかが分かる。そしてさらに海外の輸出先企業も別名を使用する関係企業が多く存在しているとも言われている。売上高の第二位は日産で総売上高は三兆三千億円。うち輸出売上高二兆九千億円、輸出戻し税額は千二百七十億円、国内売上げに対し納税すべき額は六十八億円、差し引き還付税額千二百億円。納入する消費税の約二十倍近くの額が還付されている。第三位本田技研、ソニー、松下、キャノン、東芝、マツダ、日立、三菱重工と上位十位だけで輸出戻し税額は約一兆円なのに対して、十社が国内売上げとして納付する消費税は千三億円に過ぎない。
 日本経団連の御手洗提案は「国際競争力を失っては困る。産業空洞化だけではなく再び失業者が増える」として現行四〇%の法人税をシンガポールと同じように一〇%台に減らすように主張している。それは額にすると年四兆円から四・五兆円にもなる。その財源に消費税率のアップを見込んでいる。さらに消費税率が一七%となれば全輸出企業の還付税の総額は九兆円を超し、トヨタをはじめとする上位十社だけでも三兆円にも達する」。
 荻原の言によると「……平均給与が九年連続で下がっている状況で、今度、消費税率が上がれば、家計を直撃します。一方で企業の優遇税制は続いています。庶民は増税、企業は減税ではたまりません。……」。トヨタ、日産、本田、ソニー、キャノンなどの大企業は海外向けの輸出売上げがいかに伸びようと消費税は一円も増えないのである。日銀は輸出企業に有利に働くように、バブル崩壊以後二十年近くも「円安」政策を取り、他方ではこの消費税の仕組みで資本が利益を上げることを下から支えてきたのである。消費税の増税に反対するだけではなく、「企業優遇」の本丸にメスを入れることなしには問題は一歩も進まないのである。

大企業優遇税制をなくせ

 「大連立」構想が破綻し、すべてが「国会解散―総選挙」に向かって動き始めた。今や「テロ特措法」に変わる「給油新法」を除いてすべてが棚上げされ、後景に退けられたように見える。つい一カ月前には「〇九年度までに基礎年金の国家負担を三分の一から二分の一に上げるために消費税率のアップを述べていた政府税調の報告も自民党財革研のそれも実施時期やアップ率も明確にされてはいない。「社会保障費は消費税率引き上げでまかなう姿勢を明らかにする『社会保障財源化』を選択肢の一つとして幅広く検討すべきだ」といかにもあいまいに、抽象的に表現しているだけである。
 これに対して朝日新聞は十一月末の「消費税増税」と題した社説で「首相も小沢代表も『選挙まではあいまいにしておけばよい』という考えなら、あまり国民をなめてはいないか」と叫んで、十二月九日の社説で再び「将来を見通せば、増税による負担増は避けられそうにもない……それはやはり消費税を中心にせざるを得ない、と私たちは考える」と書いている。小泉の「郵政民営化と自民党の圧倒的勝利」に加担したことなど全く「反省」せず、政府と与党にかわって消費税率アップを展開する次第である。
 消費税問題はマスメディアにまかせたかのように自民税調の論議は、「選挙」の際に与野党対立になりそうな「地方税収格差の是正の中心となる法人二法案」「道路特定財源の見直し」「証券優遇税の存廃」だけが新聞紙上をにぎわせている。そして他方では総選挙用の「バラまき」予算論議が全面化し、新幹線の全国的な新規着工計画とか地方交付税の増加とか「耳障り」のいい言葉が並んだ予算案がぶち上げられている。まるで自民税調論議は選挙一色に染まったかのような観を呈している。
 だが冷静に政府税調の答申をみると「国民の安心を支える税制」「社会の活力を高める税制」という「やさしい言葉」の裏で、例えば消費税率のアップ時期が多少遅れたり、税率を最初の段階ではアップ幅を縮小しても、社会保障費の財源を違う形でまかなえるように広範囲にわたって増税案が出されている。「所得税率の見直し」「配偶者控除・給与所得控除の見直し」。資産格差が次世代に引き継がれるのをなくすためという口実で「相続税の基礎控除の引き下げ」がそれである。そして一方で企業に対しては法人実効税率引き下げを多方面から検討すべきとなっており、〇八年で期限切れとなる研究開発税制、証券優遇税制などはできるだけ延期するように明記されている。消費税増税は一時棚上げされたが、その裏側では「庶民に増税、企業に減税」はすっかり貫徹されている。
 参院における民主党を軸として野党が多数派になったことによって、自公政権による「サジ加減」は大幅に後退している。だが中長期的に見ると民主党も消費税増税に反対ではなく、税率のアップ幅を「小さく」というレベルでしかない。すでに述べたように「消費税率のアップと法人実効税の引き下げ」は一体であり、新自由主義的経済政策の要である限り、これと対決する闘いなしに、増税をはね返し、社会保障の要求を広範囲にわたって実現することはできない。新給油法案、消費税増税、改憲阻止、新自由主義反対をひとつのスローガン、ひとつの闘いとして展開していこう。さらに福田自公政権を追い込む闘いを。

(松原雄二)
 

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