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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 9 月 30 日 16:56:08: mY9T/8MdR98ug
 

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col10062.html

◆青山貞一:日本のメディアの本質を現場から考える

N祖返りは自民だけでない、大マスコミも同罪
M省庁によるWikipedia改竄
L行政と近すぎる報道の危うさ
K欽ちゃん70kmマラソンの非常識
J巨大公共事業推進の先兵
I政権政党ともちつもたれつ
H政治番組による世論誘導
G民主主義を壊す大メディア
F意見の部分選択
E原発事故と報道自粛
D戦争報道と独立系メディア
C環境庁記者クラブ事件
B記者クラブと世論誘導
A地方紙と世論誘導
@発行部数と世論誘導


インターネット全盛の現在、新聞離れが急速に進んでいる。

 現在発売されている週刊文春(2007年10月4日号)は、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞の発行部数で日本を代表する3大新聞が、販売店の統合化へ向けて動いていると報じてている。



 3大新聞による販売店統合化の理由だが、インターネット全盛のなかで発行部数が減少していることもあるが、販売経費が売り上げの40%〜50%に達すると推測されていることにある。発行部数の低下は同時に広告収入減にも通ずる。



 世界的に見て異常な発行部数となっている日本の新聞が、販売経費をいかに削減するかは業界の生き残りを賭けた問題である。


 日常的な感覚として分かることは、新聞業界の異常なまでの拡張競争である。販売店は、販売拡大とともに集金を新聞社からまかされている。この場合、「まかされている」ことがキーポイントとなる。



 全国的規模で販売店の「発言力」が強大となり、新聞社本体の経営の根幹をゆすぶるところにまできている、というのが実態のようである。



 冒頭に示した週刊文春の記事は、「発行部数減、広告収入減など新聞業界を取り巻く状況は深刻で、これまでは『聖域』といわれた販売店にまでメスを入れざるを得なくなった」としている。


 新聞社は記事の速報版としてインターネット版を競って拡充してきた。しかし、各社が競ってWeb版を拡充すればするほど、若者を中心に国民は紙媒体の新聞離れが進むという二律背反に陥っているのである。



 インターネット版を見ればすぐに分かることだが、新聞社のWeb版は広告の割合が異常に大きい。しかも、記事の中にも大きくけばけばしい広告が入っていることもある。



 一体、どれが記事でどれが広告かが峻別できなくなるほどだ。しかも、大手新聞社の情報メディア担当者に寄れば、企業などからのWeb広告は単価が安くなっているという。



 新聞社は、Web版新聞記事を拡充すればするほど、紙媒体の新聞を読むひとが減り、広告収入も減るいたちごっことなっているのである。



 このように大手新聞3社が深刻な事態に陥っているわけだが、もともと発行部数が少なく、経営基盤が脆弱な毎日新聞、産経新聞にとっても上記の問題はまさに死活な問題となっているという。



 大手3社は現在、くだんのインターネットニュースに関し共同でポータルサイトを設置する計画を進めているようだが、毎日、産経はここでも参加呼びかけを受けていないという。



...........


 以上、大手3社の販売店統合について述べてきた。



 本特集の趣旨からすれば、週刊文春がスクープした内容は、いわば「発行部数拡大に走った大手3社の自業自得」であるといえる。



 発行部数の拡大だけをひたすら競争してきた日本の新聞が販売店への支払いなど、日本の新聞宅配の基幹をなす「販売店の反乱」で経営の足下がゆらいでいることを意味する。



 ところで、私たち読者、国民にとって大手新聞社の経営の自業自得以上に重要なことがある。それは、もともと発行部数が異常に大きくなることで、読者よりも広告主に顔を向けがちだった新聞社が、さらに広告主の意向に気を遣うことになる、ということだ。



 さらに、私たちにとってもっと大きな問題がある。それは何か?

 

 元毎日新聞社常務取締役の河内孝氏は、ビデオニュース社のインタビューのなかで
「新聞ビジネスはすでに破綻している」と話している。



 詳しくはマル激トーク・オン・ディマンド 第321回(2007年05月25日)「新聞ビジネスはすでに破綻している」ゲスト:河内孝氏(元毎日新聞社常務取締役)をお読みいただきたい。



 河内孝氏はビデオニュース社のインタビューのなかでいくつか重要なことを述べている。



 以下、それについて言及してみたい。まずは新聞を核とした大手マスコミが拡大し現在の地位を獲得した経路を振り返る。



 
「免許事業のテレビ局のような監督官庁の干渉を受けることもない新聞は、まさに独立した言論の府として確たる地位を築いているかに見える。しかも、この5大紙は全国ネットの放送局を始め、日本中のテレビ局やラジオ局に資本参加し、その多くを実質的な支配下に置いている。今日若者の活字離れやインターネットの急進に牙城を脅かされているとはいえ、日本の新聞ほど強力な言論機関は世界でも他に類を見ない



 だが、
「ところが、その新聞王国が、外からの脅威によってではなく、自らの足下から崩れ始めている。(中略) すでに「新聞ビジネスは破綻している」と言い切って憚らない」と述べている。その自壊に至理由はいくつかある。そのひとつは、筆者が本論の冒頭で述べた販売代理店問題である。



 「部数至上主義に走った結果、販売経費が売り上げの4割を超える超高コスト構造に陥っている」
にもかかわらず



 
「販売経費を節約しようにも、戸別配達制度を支える専売店を切り捨てることは簡単ではない。その異常な収益体質を支えるのは広告費だが、バブル期以降、広告効果によりシビアになった広告主は、新聞の選別を進めている」と、

まさに筆者が指摘した点を明言している。



 
さらに氏は続ける。「広告費は減少し、若者の活字離れで1日の新聞の閲覧時間も既にラジオを下回り、インターネットの半分にも満たないところまで落ち込んでいる」と。



 
その結果、「朝日、読売、日経の3強以外の新聞社は、ビジネスとしてすでに破綻しており、このままでは近い将来、市場から退場せざるをえなくなるだろう」と言い切っている。



 ここで氏の分析は終わらない。「
新聞社はもう一つ深刻な問題を抱えている。それは、現在の新聞ビジネスが数々の法的な特権の上の成り立っており、その特権を失えば新聞社の大半は経営が成り立たなくなるという問題だ」。



 
これは言うまでもなくこれは、いわゆる再販制度である。独立系メディアでも公正取引委員会と新聞協会との間での新聞の再販制度廃止論議について触れてきた。たとえば以下を参照。



◆青山貞一:公取委への意見〜新聞特殊指定見直し断念に関連し



 「新聞社の特権の多くは、自分たちがその実態を報じないために一般社会に知られていないが、一度それが市民の知るところとなれば、とてもではないが社会的正当性を持たないものばかりなのだ」。
その通りである。再販制度がそのさえたるものであることはいうまでもない。



 
河内氏はインタビューの中で「そもそも、再販制度自体が、戦前の統制経済の残滓であり、それに依存した経営体質自体が、現在の自由化の波の中ではもはや通用しないビジネスモデルであることの証左となっている」と厳しく指摘している。



 では、今後新聞業界はどうなるのだろうか?ここからが核心である。



 
「新聞社は東京のキー局から地方局にいたるまでのテレビに、BS、CS、ラジオ、地方紙らを、資本関係と人的交流で強固な支配構造を作り上げた。このマスコミ同士のズブズブな関係が、メディア間の相互批判を妨げ、結果的に新聞の自浄能力を失わせている」 



 そして新聞にとってはメディアのにとって力の源泉となっているかに見える地上派、BSなどテレビ局との系列化も、
「新聞が牙を抜かれる原因となったと指摘する。(中略)本来政府から何の干渉も受けない立場にあったはずの新聞が、免許事業のテレビを抱えたことで、政府に対する批判能力はいやがおうにも低下した」



 最後に
「新聞が再販制度や幾多もの法律上の恩恵を受けるのであれば、自ら情報開示を行い、合理化努力をすべきだ」とし、「新聞社内部の危機意識は、恐ろしいほど低い」と結論づけている。



 つい最近まで大新聞社の常務取締役に在籍した氏のいわば「告発」には真に迫るものがあり、指摘の多くは筆者の日常的な日本の大メディアに感じているところと一致する。



 総じて、日本の大手新聞社は、自らの巨大化系列化の故に、マンモス同様、自壊に道をたどっていると言える。



 それにつけても、日本において圧倒的な発行部数をもつがゆえに、日本の世論形成に大きな影響力を行使してきた新聞社が、今後、テレビ、ラジオなどを含めたマルチメディア戦略を強化することにより、さらに広告主に気を遣うことになるのは、問題である。


 同時に、テレビ、ラジオなど放送局の許認可、免許主体である総務省など国に、一層、気を遣うことになれば、なにおかいわんやである。



 そして、戦前の統制経済下で行われたに類する「再販制度」の恩恵を得ている新聞業界が、制度撤廃を主張する公正取引委員会との関連で、国などに借りを作ることにより、今まで以上に政府・与党を気遣う紙面構成、記事となる可能性も強い。



 大手マスコミが、自壊に道をたどるのはまだしも、政府、与党、大手事業者の意向で国民の知る権利が危機に瀕し、情報操作による世論誘導に一層拍車がかかることがないよう、私たちはしっかりと大メディアの行く末を監視しなければならい。

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