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時評2007 核兵器は世界大戦の“亡霊”=中西 寛 [中央公論]
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投稿者 white 日時 2006 年 12 月 28 日 13:21:25: QYBiAyr6jr5Ac
 

□時評2007 核兵器は世界大戦の“亡霊”=中西 寛 [中央公論]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061227-04-0501.html

2006年12月28日
時評2007 核兵器は世界大戦の“亡霊”=中西 寛
北朝鮮の核実験は世界に衝撃を与えたし、日本がそれをとりわけ脅威に感じることに無理はない。中川昭一自民党政調会長や麻生太郎外務大臣が、「日本の核保有に関する議論」を提起した気持ちは分からないでもない。ライス米国務長官が訪日してアメリカの「核のカサ」の有効性を確認したり、ブッシュ大統領が演説の中で日本の核保有に警戒を示したりしたのも、北朝鮮の核実験をきっかけに日本が核保有の方向に向かうかもしれないという懸念が国際社会にあったからである。言い換えれば、日本が核保有を志向するという「核カード」には一定の価値がある。ただ、不用意に振り回して北朝鮮と同程度の国と見なされれば損になるだけである。日本人が言わなくても周りが疑ってくれるなら、それだけで十分とも言える。
 改めて考えると、現に核兵器を持たないが、それを開発する潜在能力は持っている今の日本のような国が使いうる「核カード」は、核の軍事的用途の中で最も有効なものかもしれない。少なくとも今日、実際に兵器として整備された核兵器がもたらす軍事的効用は、冷戦時代のように重要なものではない。
 確かに核兵器は恐るべき破壊力を持つ。一発で都市を破壊し、広島と長崎では、合わせて二〇万人以上の人びとを死に追いやった。しかし、こうした兵器が開発され、使用されたのは二十世紀前半の特殊な条件によるところが大きいだろう。二度の大戦は数百万から数千万という大量の死者を出した戦争だった。特に第二次世界大戦では都市住民への無差別攻撃が一般化していたのであり、当時の核兵器はそれを効率的に行うだけであったとも言える。
 しかし今日、核によって都市を攻撃し、大量殺戮を行う決断を下すことは、どの国の指導者にとってもまず不可能だろう。たとえ勝利しても、国際メディアが防護服に身を固めて被災直後の悲惨な状況を世界に発信すれば、その国家は国際社会で孤立し、核攻撃の被害者に対して多額の補償を行うよう、国際的圧力を受けるだろう。環境問題に神経を使うようになった今日、核爆発に伴う放射性物質の大気中の拡散だけでも国際的な非難を浴びるのは間違いないし、自国民からすら被害の訴えを受けるかもしれない。
 それでも核兵器しか手段がないという状況なら「やむを得なかった」という言い方もできるかもしれない。しかし、アメリカやその他のまともな核保有国は、通常兵器でより正確に目標を攻撃し、被害も少ない形で軍事力を行使できる。イラク戦争の開戦当初にアメリカが巡航ミサイルでフセインの居所を狙って攻撃した。結果的には失敗に終わったが、この攻撃は、指導者は攻撃しても市民を巻き込んではならないという今日の軍事思想を如実に示していた。市民の被災を避けることが実際に可能かどうかは別として、政治的実用性を考えれば核兵器による無差別破壊など論外である。また、軍事目標を攻撃する場合でも、ハイテク通常兵器とすぐれた情報活動によって大抵の目的は達せられる。
この点、北朝鮮や恐らく核保有を狙っているイランの場合は違うだろう。これら諸国が核を持ちたがるのは、第一には政治的威信のためであり、第二にはアメリカなどの圧倒的なハイテク兵力に同じレベルでは対抗できないためである。こうした国が核兵器を持つことは確かに危険であり、その放棄を促すべきである。しかしそれは、核兵器を保有しても自らが抱える問題の解決にはならないことを、それらの国が悟って自発的に放棄するか、完全な核保有国になる前に通常兵力の行使によって放棄を強制するかであり、核の威嚇によって核を放棄させることは一貫性を欠いている。
 確かに核保有はその国家の軍事的生存に対するお守り札程度にはなるかもしれない。しかし、それは今日の核保有国が行っている核への投資に引き合うかどうか疑わしい程度の効用である。アメリカの膨大な核兵器も九・一一事件を抑止できなかったし、今後も核によるテロの抑止に役立つとは思えない。
 日本は二十世紀の遺物たる核について、アメリカの「カサ」に頼っていることに引け目を感じる必要はない。むしろ自らの防衛に必要な通常兵力の整備と外交による緊張緩和を進めつつ、平和のための原子力利用が可能なことを世界に堂々と示せばよい。
 
(なかにし ひろし 京都大学教授)

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