★阿修羅♪ > 戦争87 > 346.html
 ★阿修羅♪
「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣 [中央公論]
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/346.html
投稿者 white 日時 2006 年 12 月 28 日 16:43:27: QYBiAyr6jr5Ac
 

□「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣 [中央公論]

▽「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061227-02-0501.html

2006年12月27日
「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣
ネオコン思想をもとに展開されたブッシュ外交は転換期を迎えた。
穏健派や「リアリスト」の台頭による、対イラク・北朝鮮政策の影響とは
 去る十一月七日の米中間選挙で、ジョージ・W・ブッシュ大統領の与党・共和党は大敗を喫した。野党・民主党は下院を大差で制し、上院でも僅差で多数を得た。
 もとより、政権二期目の中間選挙で与党が敗北するのは、ある種の歴史の倣いである。また、ブッシュ政権の支持率低迷やイラク戦争への批判の高まりを考えれば、共和党の敗北は「想定の範囲」ではあった。だが、二〇近くの議席差で下院の多数を奪われ、上院でまで一敗地にまみれるとは、政権与党には、やや「想定外」であったろう。なにしろ、バージニアのような保守的な州でも、次期大統領の有力候補の一人と目される現職の共和党上院議員が議席を失ったのである。こうして、一九九四年にニュート・ギングリッチ率いる共和党が「アメリカとの契約」を掲げて上下両院を制して以来の、共和党優位の議会の時代は終焉し、民主党のビル・クリントン政権時代と同様に、大統領と議会多数派が政党を異にする「分割政府」(ディヴァイディド・ガバメント)に戻ったわけである。
 この新事態がアメリカの政治と外交にどのような影響をもたらすのか、そして、日米関係にとってどのような意味を帯びるのかを、以下考察するとしよう。

赤と青が融合して「緑」へ?
 まず、アメリカの政局である。
 アメリカ合衆国大統領の権限は強い。とりわけ、外交・安全保障問題での大統領の権限は絶大である。中間選挙での民主党の勝利が、直ちにブッシュ外交の大幅修正を導くとは思えない。だが同時に、連邦議会の権限も強い。下院は予算の先議権を握っているし、上院は閣僚を含む高級官僚の人事承認権と条約の承認権を有している。アメリカの行政府と立法府の関係は、強い政府と強い議会という関係である。テキサス州知事時代には民主党との協調に努めたというブッシュ大統領だが、「分割政府」の下での最悪の事態は、両すくみの膠着状態である。すでに、われわれはそれをクリントン時代に経験している。
 とりわけ、イラク問題は外交問題であると同時に内政問題である。民主党優位の議会は大統領のイラク政策を急速かつ大幅に変更させることはできないにしても、政権への批判を強め、この問題をめぐって大統領を一層強く拘束するであろう。当然、ブッシュ政権はより内向きにならざるをえない。
 だが、攻勢の民主党にも深刻な問題がある。野党であり議会でも少数派の間は、「批判のための批判」を繰り返していればよかった。クリントン前政権の路線を強く否定したために、ブッシュ政権の姿勢はしばしば、「クリントン以外なら何でも」(All but Clinton: ABC)と呼ばれた。これに倣えば、根強い反ブッシュ感情に頼って、これまでの民主党は「ブッシュ以外なら何でも」(All but Bush: ABB)であったことになる。しかし、議会で多数を制し、二年後の大統領選挙が視野に入ってきた今、民主党には積極的・現実的・建設的な代案が求められる。ところが、ブッシュ大統領という「共通の敵」が弱体化すると、民主党には「共通の利益」が見出しにくくなっている。「反ブッシュ」以外に、今の民主党を束ねる強力な要因や組織力が欠けるのである。これは冷戦終焉後の西側同盟にも似ている。その勝利の故に、民主党は試練の時を迎えている。
 そうした中で、共和党と民主党との厳しい反目を超える動きも、出てきている。両党の中で、穏健派の勢力が増大しつつあることである。民主党多数の議会で、下院議長にはナンシー・ペロシ院内総務が就任することになっている。史上初の女性下院議長の誕生である。これに際して、ペロシは下院で党を代表する党院内総務の後任に、党内リベラル派のジョン・マーサ議員を応援した。マーサ議員はイラクからの米軍即時撤退を提唱している。だが、民主党の下院議員団は、ペロシの推すマーサではなく、ステニー・ホイヤー院内幹事(院内総務に次ぐ地位)を次期院内総務に選んだ。穏健派の巻き返しであった。
 ペロシは下院議長に就任してから最初の一〇〇時間で、最低賃金の引き上げなど様々な立法を行うと、すこぶる野心的に約束したが、お膝元の党内人事でまず躓いたことになる。多数派の民主党が混乱すれば、諸政策がうまくいかなかったのは民主党の反対や混乱のせいだと、向こう二年間の政治責任を民主党に押し付けて、共和党は二〇〇八年の大統領選挙を戦おうとするであろう。
 他方、共和党でも、これまでブッシュ政権を支えてきた保守派が退潮しつつある。すでに、イラク政策での強硬派たるドナルド・ラムズフェルド国防長官も、事実上更迭された。ラムズフェルドはディック・チェイニー副大統領と並んで、イラク問題で民主党はもとより共和党穏健派の批判の的であった。次期大統領選挙にも、ジョン・マケイン上院議員やルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長のような穏健派が、名乗りを上げつつある。「分裂するアメリカ」や「二つのアメリカ」が語られて久しいが、ここに来て、共和党の「赤」と民主党の「青」が融合して、「緑」が拡大しつつある、と論じる向きもある。

ベーカーらリアリストの復権
残り二年となったブッシュ政権にとって、イラク問題の閉塞を打開することが、死活的な課題である。
 イラク問題解決の処方箋は様々である。
 例えば、民主党の有力者ジョー・バイデン上院議員は、イラクをシーア派とスンニ派、クルド人の間で三分割する案を提唱している。また、民主党系の安全保障専門家ローレンス・コーブは、米軍をイラク周辺諸国に移動させ、イラク国内の治安維持はイラク当局に委ねて、米軍はイラクでの大規模テロ活動にだけ即時に対応できる態勢をとるべきだ、と論じている。その間、米政府は、イランやシリアとの対話を含めて、国際的な外交を展開することになる。いわば「再配置と封じ込め」政策である。さらに、ブルッキングス研究所の中東専門家ケネス・ポラックは、米軍をバグダッド周辺に集中して首都の治安を回復し、イラクの他の地域のモデルにすべきだと唱えている。
 いずれも、現在の政策からの大きな軌道修正を意味する。
 こうした中で、ブッシュ政権が期待を託し、民主党も注目しているのが、超党派の大物外交専門家による「イラク研究グループ」である。ジョージ・H・ブッシュ政権で国務長官を務めた共和党のジェームズ・ベーカーと民主党の元下院議員リー・ハミルトンが、共同議長を務めている。先にラムズフェルド国防長官の後任に指名されたロバート・ゲイツも、メンバーの一人であった。とはいえ、事実上の中心人物はベーカーである。
 齢七十六歳のこの「トラブル・シューター」が、再び歴史の帳から登場してきた。父ブッシュの一九八八年大統領選挙の選挙対策本部長、財務長官、国務長官、大統領首席補佐官、そして子息ブッシュの二〇〇〇年大統領選挙でのフロリダの集票の混乱をめぐる共和党の法律顧問として、この老人がいくたびブッシュ一家を支えてきたことか。ベーカーはきわめつけの「リアリスト」である。それは彼の最初の回顧録『シャトル外交 激動の四年』(新潮文庫)を一読すれば、明らかである。
 今やブッシュ政権にとって、外交問題とはイラク問題に尽きる。そのイラク問題の打開を託されたベーカーを、「影の国務長官」と呼ぶ者もある。ベーカーはヘンリー・キッシンジャーに匹敵するような真のシニア・ステイツマンとして自らの経歴を全うすべく、シリア、イラク、ヨルダン、トルコ、サウジアラビアと関係諸国を飛び回ってきた。往年のシャトル外交さながらである(ベーカーの活躍については、『ニュー・リパブリック』誌十一月十三日号のライアン・リッザの論考を参照)。
「ベーカー委員会」とも呼ばれる「イラク研究グループ」の答申内容は、まだ明らかではない。だが、「リアリスト」ベーカーの策は、アメリカの力の限界と内政上の拘束を強く意識しながら、イランやシリアなど関係諸国との外交上の対話を進めて、イラク問題を漸進的に解決しようとするものであろう。いわゆる「ネオコン」とは異なり、ベーカーにとって、イラクの民主化は最優先課題ではない。中間選挙での民主党の勝利により、イラク政策をめぐって大統領へのベーカーの影響力は拡大している、とリッザは言う。
(その2へ続く)


▽「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣(その2)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061227-03-0501.html

2006年12月27日
「内向き」ブッシュ外交は世界に何をもたらすか =村田晃嗣(その2)
ネオコンを断罪すればよいか
 ここ数年のアメリカの内政と外交の混乱を考えると、国内での「緑」の拡大やイラク問題でのベーカーの活躍は、瑞兆といえよう。
 しかし、イラク問題、さらにはブッシュ外交の根本的な解決には、程遠い。
「リアリスト」の復権に、例えば、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのマイケル・ルービンは、懐疑的な眼差しを向けている(『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙十一月十三日の記事「ラムズフェルドとリアリスト」を参照)。
 国防長官を今般解任されたラムズフェルドは、一九八三年十二月にロナルド・レーガン政権の中東特使としてバグダッドを訪れ、独裁者サダム・フセイン大統領とにこやかに握手を交わした。この様子はビデオ録画されており、マイケル・ムーア監督の映画『華氏911』でも、アメリカ外交の偽善として取り上げられている。一九八三年当時、ベーカーは大統領首席補佐官であり、次期国防長官に指名されたゲイツは中央情報局(CIA)の副長官であった。
 今またシリアやイランと対話を進めようとするベーカーら「リアリスト」は「正しい」道を歩んでおり、ラムズフェルドの強硬路線は「誤り」であったのか。イランはかつてのイラン・イラク戦争で化学兵器を使用したし、今では核開発に余念がない。シリアの独裁体制は目を覆うばかりの状況である。そのイランやシリアとの外交的対話を進めるというのは、ラムズフェルドがかつてサダムと握手したように、もう一度アメリカ外交に「偽善」を求めるものではないか。「リアリスト」は短期的な利益をもたらしても、長期的な展望を提供できない、かつてのラムズフェルドとサダムの握手を批判しながら、ベーカーの外交努力に期待する進歩派には一貫性がない、とルービンの批判はまことに手厳しい。
 これでは、まるで「ネオコン」の主張だと、眉を顰められる向きもあろう。
 確かに、一期目のブッシュ政権は「ネオコン」の論調と共鳴し、それを利用しながら、軍事力を過信して単独主義的言動に走る傾向があった(とりわけ、その言説が与えた負のイメージは大きい)。そして、目下のところ、「ネオコン」の影響力は退けられ、ブッシュ外交は深刻な反省を迫られている。当然、「ネオコン」やブッシュ外交に批判的、さらには断罪的な言説が勢いを得ている。手段やニュアンスの点で、「ネオコン」やこれまでのブッシュ外交が、多くの過ちを犯したことは事実であろう。筆者自身、外交にとって、目的と同様に手段やニュアンスが重要であると主張してきた。
 けれども、「逆は真ならず」である。その手法やニュアンスに重大な瑕疵があったからとて、「ネオコン」やこれまでのブッシュ外交が提起してきた目的まで誤りであったと断定できようか。テロリストのような非国家主体が大量破壊兵器を獲得し使用する可能性が高まった今日、既存の国際法や国際機関では、安全保障を十全に担保できないのではないか。たとえ一時的に大量破壊兵器を保持しておらずとも、閉鎖的で強権的な国家がその開発に着手する危険性や、その危険性を外交の武器に用いる可能性に、国際社会はどのように効果的に対応できるのか。さらには、民主主義の拡大はそれぞれの社会の開放性とチェック機能を高め、前記のような危険性の低減に貢献するのではないか。こうした問いは、一笑に付され閑却されてよいものであろうか。
 繰り返すが、筆者は「ネオコン」やこれまでのブッシュ外交の手段選択、そして表現方法には、粗暴な点が多々あったと思う。しかし、それに対する非難の渦の中に、彼らの問題提起までが巻き込まれて水没するのでは、われわれは同じ過ちを将来繰り返すのではないかと危惧する。
 ブッシュ外交を批判する論者たちは、しばしば自省的で思索的な装いをこらしているが、実は真に困難な問いかけへの自省や思索を回避しているのではないか。「中東に民主化など非現実的だ」という「リアリスト」の姿勢も、実は一時的な問題回避にすぎないのではないか。それではサウジアラビアはどうなるのか、二重基準(ダブル・スタンダード)ではないか、との批判はもっともである。だが、国際政治では国連や国際協調でアメリカの単独主義を牽制しようとしながら、国内政治で独裁を座視する「リアリズム」や国際協調主義も、二重基準に陥っている。
 イラク情勢の混迷の中で、残念ながら、ブッシュ政権自体が自らの提起した問題に答えることなく幕を閉じそうである。

米政権の対北朝鮮政策、三つのP
さて、日本にとってより切実な北朝鮮問題である。
中間選挙でのブッシュ共和党の敗北を予測するかのように、そして、安倍晋三首相の訪中・訪韓に狙いを合わせたかのように、北朝鮮は核実験という暴挙を断行した。この真意についての分析は別稿に譲るが、平壌はブッシュ政権との話し合いに見切りをつけた感が強い。二〇〇八年に発足するアメリカの新政権の、大幅な政策変更に期待するところであろう。
 他方のブッシュ政権も、北朝鮮を核保有国として承認することもできなければ、いわゆる金融制裁を全面的に解除することもできない。日本のメディアは(そして欧米のメディアも)「金融制裁」(ファイナンシャル・サンクションズ)という表現を用いているが、正確を欠く。アメリカ政府はこれを「法の執行」(ロー・エンフォースメント)と呼んでいる。偽造紙幣や偽造タバコ、麻薬密売への対抗手段なのだから、「制裁」ではないというわけである。
 筆者は去る十一月中旬に、久しぶりにワシントンを訪れる機会があった。
 そこで出会った旧知の朝鮮専門家ゴードン・フレイク(マンスフィールド財団事務局長)によると、ブッシュ政権の対北朝鮮政策は「三つのP」に特徴づけられる。「優先順位」(プライオリティー)と「悲観論」(ペシミズム)、そして「政治」(ポリティックス)である。まず、イラク問題、次いでイラン問題に悩むブッシュ政権にとって、北朝鮮問題の優先順位は低い。次に、六者協議を通じて北朝鮮が究極的な核放棄に至ると、ワシントンは考えていない。つまり、悲観的なのである。そして、ワシントンにとって、北朝鮮問題では、核やミサイルの開発と並んで(時にはそれ以上に)、北朝鮮の脱法行為や人権侵害が政治的な争点になる。
 とすれば、ブッシュ政権は、表面上は六者協議の枠組みを維持して、中国の影響力を借りながら北のさらなる核実験を阻止し、核関連物資の輸出入を規制することで、精一杯ということになる。(ブッシュ政権にそのつもりはあるまいが)北と妥協しようにも、北の脱法行為や人権侵害が共和党保守派のみならず民主党の人権派までを刺激して、「金融制裁」の大幅解除などできる状況にはない。先のAPEC首脳会議での日米首脳会談で、ブッシュ大統領が安倍首相に対して、横田めぐみさんに言及し「心が痛む」と述べたことは、日本への配慮であると同時に、議会多数派となった民主党内の人権派への秋波でもある。ペロシ次期下院議長も人権派として鳴らしている。
 拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害への関心の高まりといった、「政治」のPは好ましいが、それ以外では、ブッシュ政権の対北朝鮮政策は、日本に深刻な問題をつきつけている。しかも、この関心は政治論によるのであって戦略論ではないから、少なからず流動的である。
 まず「優先順位」のPである。議会はブッシュ政権に北朝鮮政策調整官を設置するよう求めており、ブッシュ政権もこれに応じる姿勢である。これはクリントン政権末期にウィリアム・ペリー元国防長官が担当したポストである。イラク問題でベーカー元国務長官に注目が集まっているように、コリン・パウエル前国務長官のような大物がこのポストに起用されれば、吉兆である。だが、目下北朝鮮問題の実務責任者であるクリストファー・ヒル国務次官補(東アジア太平洋問題担当)のような官僚がこの任に就くとすれば、やはり、ブッシュ政権にとって北朝鮮問題の優先順位が低いことの、明瞭な証しになろう。
 次に、「悲観論」のPである。残り二年となったブッシュ政権を悲観論が覆っているとすれば、制裁と六者協議の併用で時間稼ぎしながら、北による第二の核実験と大量破壊兵器の拡大を阻止するという「封じ込め」が、精一杯であろう。北のミサイルは、まだアメリカ本土には届かない。アメリカにとって大量破壊兵器の拡散こそ、悪夢である。しかし、北朝鮮はすでに日本を射程に収めるミサイルを多数開発・配備している。「封じ込め」下でも、北が着々と核関連物資の増産に当たれば、日本にとっては深刻な脅威である。北朝鮮問題をめぐって、日米の目標が乖離し、パーセプション・ギャップが広がる可能性がある。これは同盟の危機である。
 この同盟の危機を回避するためには、アメリカによる拡大抑止(核の傘)の信憑性を高める努力をしなければならない。この期に及んで核武装論を弄ぶのは、賢明ではない。日本側から拡大抑止への不信を表明し、北はもとより中国の核軍拡に口実を与えることになる。もとより、言論の自由が保証された日本のことである。評論家や学者の議論は自由だが、責任ある政治家がこれをまじめに論じるのは、外交的・政治的センスに欠けはすまいか。なにしろ、安倍内閣は「価値外交」を提唱している。さして現実性も効用もありそうにない核武装論で、非核の選択を保持してきた日本外交の価値を損ねるようでは、没歴史的な核の唯物論である。しかも、政府が公に核武装の可能性を検討して、その結果「やはりもてませんでした」では、それこそ抑止力を傷つけよう。
 アメリカが北朝鮮問題に関心と努力を傾注できるように、日本はイラク問題でより能動的な協力をする必要がある。中東問題に精通した小池百合子議員を国家安全保障問題担当の首相補佐官に起用したことは、安倍首相のそうした意図の現れであろう。

安倍首相が直面する困難
日米関係には、もう一つの棘がある。在日米軍の再編問題である。
 沖縄に駐留する海兵隊の海外移転をはじめとする、米軍再編に最も熱心だったのは、ラムズフェルド国防長官である。そのラムズフェルドがペンタゴンを去る。実は、彼の強力かつ強引な手法に、軍部には怨嗟の声が渦巻いていた。ラムズフェルド解任には、イラク問題の仕切りなおしと並んで、軍部との関係改善という意図も込められている。後任のゲイツは軍部との関係再建に努めようし、在日米軍問題にはさして関心もあるまい。
 ラムズフェルドが去ったのち、海兵隊をはじめとする軍部が、在日米軍再編で批判攻勢に転じる可能性もあった。その意味で、先日の沖縄県知事選挙で、保守系の仲井真弘多候補が当選したことは、日本にとって幸運であった。革新系の糸数慶子候補は、在日米軍再編はもとより、日米安保体制や自衛隊の正当性にも否定的な立場だったからである。もちろん、そうした立場もあってよいが、日米安保や自衛隊を認める民主党が、地方選挙とはいえ、こうした候補者を推薦したことの無定見には、驚くほかない。この上は、沖縄をはじめとする在日米軍の再編を遅滞なく実施することが重要である。
 小泉純一郎前首相の下で、日米関係は黄金時代を迎えた、としばしば称せられた。確かに、小泉氏は9・11同時多発テロに際して迅速にテロ対策特別措置法を成立させ、イラク戦争ではブッシュ政権を毅然として支持した上、イラク復興支援特別措置法に基づいて自衛隊をサマワに派遣した。小泉前首相は有事の政治家であり、迅速かつ毅然たる決断を得意とした。だが、牛脳海綿状症(BSE)問題や在日米軍再編問題など、日米関係でも政権後半の政策では、十分な説明責任と緻密な調整をほとんど放棄してきた。
 安倍首相には、前任者同様の迅速かつ毅然たる決断と同時に、十分な説明責任と緻密な調整の労を果たしてもらわねばならない。なにしろ、中間選挙後、盟友ブッシュ大統領はますます内向きにならざるをえない。しかも、テロやイラク問題のように、日本の安全保障にとって重要だが間接的な問題で、小泉前首相が対米協力姿勢をワシントンに「高く売る」ことに成功したのに比して、北朝鮮の核実験を受けて、日本は今や、より直接的な脅威に向き合っており、安倍首相はその前任者ほど対米協力をワシントンに「高く売る」ことができないからである。アジア外交を再活性化して日本の対米付加価値を高める−−それが「アジアの中の日米同盟」の道であろう。
(むらたこうじ/同志社大学法学部教授)

 次へ  前へ


  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ      HOME > 戦争87掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。