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すでに米イラン戦争が始まっている? [田中宇の国際ニュース解説]
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/968.html
投稿者 white 日時 2007 年 1 月 16 日 11:43:01: QYBiAyr6jr5Ac
 

□すでに米イラン戦争が始まっている? [田中宇の国際ニュース解説]


田中宇の国際ニュース解説 2007年1月16日 http://tanakanews.com/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★すでに米イラン戦争が始まっている?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 アメリカのブッシュ大統領は1月10日、イラク占領を立て直すための新戦
略について、演説を行った。演説では、イラクに派兵している米軍の兵力を、
約2万人増やす戦略が明らかにされた。この2万人増派の戦略は、すでに1カ
月ほど前からマスコミに流れており、人々を驚かせるものではなかった。
Details of Bush's New Iraq Strategy
http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2007/01/10/national/w093134S97.DTL

 人々を驚かせたのは、演説の最後の方で述べられた別の戦略だった。ブッシ
ュは「イラクの近隣国であるイランとシリアは、イラクの反米ゲリラに資金や
武器を供給したり、ゲリラを軍事訓練したりして、アメリカのイラク再建を邪
魔している。イランとシリアの妨害工作を潰すため、戦線を拡大する」という
戦略を明らかにした。アメリカでは多くの分析者が「この戦略は、米軍がイラ
ンやシリアに侵攻することを意味している」と考え、英語のマスコミやネット
上には「イランとの戦争が近い」という分析がいくつも現れた。
Military analyst believes recent US actions could signal Iran conflict soon
http://www.rawstory.com/news/2007/Video_Recent_US_actions_could_signal_0112.html
The 'Surge' Is A Red Herring
http://www.antiwar.com/roberts/?articleid=10311

 アメリカの憲法では、戦争の遂行は大統領の仕事だが、戦争の開始は連邦議
会が決めることになっている。米議会は、イラクやアフガニスタンでの戦争開
始は以前に決議したが、イランとの戦争については何も決めていない。そのた
め米議会では、共和党、民主党の両方の一部の議員たちが「ブッシュがイラン
と戦争するつもりなら、まず議会にそれを提案せねばならない。議会を通さな
い戦争は違法である」と騒ぎ出した。
Senators Fear Iraq War May Spill to Iran, Syria
http://news.yahoo.com/s/nm/20070111/ts_nm/iran_usa_dc

 騒ぎをしずめるため、米政府(ホワイトハウス)は「戦線を拡大する範囲は
イラク国内のみであり、国境を越えてイランやシリアを攻撃する計画ではない」
「米軍はイランを攻撃するに違いないという見方は、無根拠なうわさ話にすぎ
ない」と釈明した。
Administration: No plan to strike Iran
http://www.onelocalnews.com/whiterockreviewer/ViewArticle.aspx?id=42135&source=2
U.S. denies to have plan to attack Iran, Syria
http://english.people.com.cn/200701/13/eng20070113_340843.html

 しかし、ブッシュが1月10日の演説で表明した新戦略の中には、ほかにも、
どう考えてもイランとの戦争の準備としか思えない計画が、いくつか盛り込ま
れていた。

▼イランとの戦争準備としか思えない作戦ばかり

 その一つは、ペルシャ湾に2隻の空母を配備する計画である。これは、以前
の記事( http://tanakanews.com/g1228mideast.htm )で紹介した話だ。空母
アイゼンハワーは、すでにペルシャ湾の内外で活動しているし、2隻目の空母
ステニスは、すでに米西海岸の母港を発ち、1月末にはペルシャ湾周辺に着く。

 ブッシュが発表した新戦略は、イラクのゲリラを掃討することが目的である
が、ゲリラの掃討には、ほとんど空母を必要としない。これまで米軍が展開し
てきた作戦のうち、スンニ派ゲリラの拠点を爆撃機で空爆することが、空母を
使うほとんど唯一の作戦であるが、これとて、爆撃機の発進地は空母でなく、
クウェートやカタールの空軍基地で十分である。

 空母が最も活躍するのは、イラクで展開されているような市街地でのゲリラ
戦ではない。敵国の正面の海上に空母を配備し、そこから水陸両用艇で海兵隊
を敵国の海岸に上陸させ、空母から戦闘機やヘリを出撃させて上陸作戦を援護
しつつ敵陣を空爆するという本格的な戦争である。米軍がペルシャ湾に空母を
入れ、どこかに上陸作戦をやるとすれば、敵はイランしかない。

(米軍は1月9日、アフリカ北東部のソマリアに侵攻したエチオピア軍を支援
するため、空母アイゼンハワーを、ペルシャ湾からソマリア沖に移動させ、米
軍特殊部隊の上陸作戦と、エチオピア軍に攻撃されたイスラム主義派の軍勢が
海路で逃げるのを阻止する作戦を展開した。これは、空母を使った作戦の典型
の一つである。空母がペルシャ湾からソマリア沖に転戦した際、空母に随行し
ていた潜水艦ニューポート・ニューズ号もペルシャ湾からソマリア沖に移動し
ようとして、1月9日にホルムズ海峡を通行中に、日本の川崎汽船のタンカー
「最上川」に衝突する事故を起こした)
US Sends Aircraft Carrier to Somali Coast
http://www.theaustralian.news.com.au/printpage/0,5942,21036399,00.html

 ブッシュが、イラクのゲリラ掃討の戦線を拡大すると言いつつ、実はイラン
を攻撃しようとしているのではないかと思えるもう一つの件は、ブッシュが演
説で述べた「サウジアラビアやイスラエルなどの中東の親米諸国に、アメリカ
製のパトリオット型の地対空迎撃ミサイルを配備する」という計画である。
The US-Iran-Iraq-Israeli-Syrian War
http://www.rense.com/general75/UNIRA.HTM

 パトリオットは、敵国が飛ばしてきた中距離のミサイルに対し、こちらから
もミサイルを飛ばして空中で当てて破壊する迎撃ミサイルであり、日本もこの
型のミサイルを、北朝鮮のミサイルを迎撃するためにアメリカから買っている。

 イラクのゲリラは、ミサイルを持っていない。地雷型の爆弾を使ったり、屋
上から米軍などを小銃で狙撃したりといった、典型的な都市型ゲリラ戦を展開
している。イラクのゲリラ戦には、パトリオットミサイルは不必要である。
More Evidence U.S. Is Preparing for Iran Strike
http://www.huffingtonpost.com/jon-soltz/more-evidence-us-is-pre_b_38509.html

 だが空母の話と同様、もしアメリカがイランを攻撃するつもりなら、イラン
は中距離ミサイルを持っているので、アメリカにやられた報復としてイランが、
中東各地の米軍施設や、サウジやイスラエルなど親米諸国にある軍事施設にミ
サイルを撃ってくる可能性がある。その場合には、サウジやイスラエルにパト
リオットが配備されることに意味が出てくる。

 以前の記事( http://tanakanews.com/g1219mideast.htm )に書いたように、
ブッシュ政権(チェイニー副大統領)は、すでにサウジアラビアにイランとの
戦争について説明していると思われる。チェイニーはサウジ王室に「イランと
戦争になるが、貴国にはパトリオットを配備してあげるので安全は守られる」
と説明したのかもしれない。

▼奇妙な司令官人事

 ブッシュの演説の数日前には、イラク駐留米軍(中央軍)の司令官の交代が
報道されたが、これも、空母派遣やパトリオットの配備と同様の「ブッシュの
イラク新戦略は、実はイラン攻撃の準備なのではないか」という疑いを分析者
たちに抱かせている。
Distracting Congress from the Real War Plan: Iran
http://www.antiwar.com/roberts/?articleid=10298

 表向き報じられているところでは、これまで中央軍の司令官だったアビザイ
ド陸軍大将(John Abizaid)が、ブッシュの2万人増派計画に反対したので
「文句があるなら辞めろ」ということで解任され、代わりに、増派計画に賛成
を表明した太平洋軍の司令官だったファロン海軍大将(William Fallon)が、
これまでの勇敢な戦績も評価され、中央軍司令官に横滑りしたのだとされている。
An Admiral to Command a Land War?
http://wpherald.com/articles/2999/1/Eye-on-Iraq-An-admiral-to-command-a-land-war/Fallon-appointment-puzzles.html

 中央軍が管轄するイラクは、ゲリラとの地上戦が中心であるのに対し、太平
洋軍の管轄は、空母を使った戦争を想定している海洋の地域である。ファロン
は、空母を使った戦争の専門家であり、空母をほとんど必要としないイラクの
ゲリラ戦では、ファロンの技能は生かせない。
Bush shuffles top Iraq aides ahead of overhaul
http://sg.news.yahoo.com/070105/1/45sb4.html

 しかしここでも、空母の場合と同様、もしこれから中央軍がイランと戦争す
るのなら、ファロンはうってつけの司令官になる。ファロンの専門は正確に言
うと「空母を使い、戦闘機の空爆と、水陸両用艇で海兵隊を敵国の海岸に上陸
させる作戦で行われる戦争」であり、海軍の上層部でただ一人、空母の戦争と、
水陸両用艇による上陸作戦の両方に通じている人である。
War with Iran is imminent
http://www.worldnetdaily.com/news/article.asp?ARTICLE_ID=53669

 しかも彼には、ペルシャ湾での実験経験がある。1991年の湾岸戦争の際、
彼は空母ルーズベルトの司令官として、イラク軍が占領するクウェートをペル
シャ湾から攻撃し、米軍の勝利に貢献した。ブッシュ政権が、中央軍司令官を
アビザイドからファロンに変えたのは、戦争の主力を、イラクのゲリラを相手
にする戦いから、イランとの戦いへと変えようとしていることの証拠だと、多
くの分析者が思うのは当然である。

 このほか、米空軍は最近、イランの西にあるトルコの空軍基地に、3年ぶり
にF16戦闘機を配備したが、これもイランとの戦争の準備ではないかと疑われる。
US Sends Warplanes to Turkey's Incirlik Military Base
http://www.kuna.net.kw/home/Story.aspx?Language=en&DSNO=941583

▼ウソの開戦事由に騙され続ける人々

 これらのいろいろな新しい動きの背後には、一つの統合された戦争計画があ
るのではないかと疑われる。ブッシュは、すでに側近にイランとの戦争計画を
立てさせ、秘密裏に国防総省、CIAなどに対して計画実行の命令を下したの
ではないか、と考えることもできる。
Did the President Declare "Secret War" Against Syria and Iran?
http://www.thewashingtonnote.com/archives/001869.php

 ブッシュ政権中枢の人々にとっては、すでに戦争は始まっているのかもしれ
ない。準備が整いしだい、イランの側から米軍を攻撃させるような誘発の仕掛
けを発動し、アメリカと議会とマスコミが「イランとの戦争はやむを得ない」
という論調を出せるようにして、イランとの戦争を正式に開始できるようにし
た上で、全面戦争に突入するというシナリオがあり得る。

 アメリカは、どこかの国と戦争したいと思ったら、直接アメリカの方からは
攻撃せず、相手が攻撃してくるように仕向ける扇動作戦を行うことが得意であ
る。60年前に扇動されて「真珠湾攻撃」をやってしまった日本は、見事に引
っかかった例である。敵国が扇動に乗ってこない場合は、でっち上げの開戦事
由を作る。アメリカは、スペインからキューバ植民地を奪ったときには「メー
ン号事件」(1898年)をでっち上げ、ベトナムを侵攻したときには「トン
キン湾事件」(1964年)をでっち上げ、2003年にイラクを侵攻したと
きには「大量破壊兵器」の話をでっち上げている。

 つまり、アメリカがどこかの国と戦争したい場合、アメリカ側の戦争計画は、
開戦が宣言されるかなり前から扇動作戦として始まり、敵国を引っ掛けて悪者
に仕立てることに成功した時点で扇動作戦が終わり、敵に勝つための戦闘の作
戦に移行する。昨年末以来のいろいろな動きから考えて、近いうちに正式な開
始が宣言されると予測されるイランとの戦争は、すでに秘密裏に扇動作戦が始
まっている可能性が大きい。
Marching to Persia: First Blows Struck in Bush's War on Iran
http://www.chris-floyd.com/index.php?option=com_content&task=view&id=995&Itemid=135

 アメリカが、本当は自国の側が戦争を始めたいのに、敵国の側から戦争を始
めたように見せる画策をするのは、アメリカに「法治国家」「民主国家」の建
前があるからだ。「悪いのは敵国で、アメリカは正しい」という善悪観を、議
会と国民に抱かせ、議会に戦争の開始を決議させ、国民に戦争を支持させる必
要がある。

 開戦に持ち込むには、人々の善悪観の形成に多大な影響を与えるマスコミの
報道姿勢を制御することが重要になるので、巧みなリーク(情報漏洩)が行わ
れる。イラク侵攻前、ニューヨークタイムスなどが、米高官からのリークを受
け、イラクが大量破壊兵器を開発しているという誇張されたウソ情報を大々的
に報じた結果、世界中が「フセインは大量破壊兵器を開発してアメリカを攻撃
しそうだ。だから米軍のイラク侵攻が必要だ」と思ってしまったことは記憶に
新しい。

 イランに関しても「核兵器を開発している」というウソ情報が、何年も前か
ら流され、多くの人々がそれを信じてしまっている。CIAは昨年11月、改
めて「イランが核兵器を開発していると考えられる証拠は何もない」と表明す
る報告書を発表した。それでも、世界のマスコミはいまだに「イランが悪い」
と報道し続け、アメリカや日本では多くの人々が簡単に騙され、「悪いのはア
メリカの方だ」と指摘する分析者を「左翼の陰謀論者」などと非難する。
Reports shed new light on irrational Iran debate
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=FRO20070115&articleId=4458

▼外交官を拉致してイランを挑発

 ブッシュ政権は、イランとの戦争を、非公式の準備段階から、正式な戦争へ
と転換させる「真珠湾攻撃」を起こす戦略を、すでに行っている。ブッシュの
演説が行われた同日、イラク駐留米軍は、イラク北部のクルド人の町アルビル
のイラン領事館を襲撃し、領事館の外交官らイラン人職員6人を拘束、拉致した。
Bush's tough tactics are a 'declaration of war' on Iran
http://news.independent.co.uk/world/politics/article2145136.ece

 領事館があるアルビルは、1991年の湾岸戦争の後、アメリカがフセイン
の人権侵害からクルド人を守るためにイラク軍の立ち入りを禁じた「飛行禁止
区域」にあり、クルド人が自治を行っていた。アルビルなど3つの町を中心と
するクルド人自治地域には、フセイン政権を敵視するアメリカ、イスラエル、
イランの公式・非公式の代表部が置かれ、諜報部員を送り込んでいた。イラン
の代表部が、今回襲撃された領事館である。
US Raid on Iranian Consulate Angers Kurds
http://www.cnn.com/2007/WORLD/meast/01/11/iraq.main/index.html

 米軍は、重装備した歩兵とヘリコプターで、突然に領事館を襲い、抵抗する
と殺すと言いながら、外交官を拉致した。米政府は「イラン人外交官は、ゲリ
ラを支援していた疑いがあるので拘束した」と発表したが、証拠を示していな
い。外交官を明確な理由なく拘束するのは、外交官の地位を国際的に定めたウ
ィーン条約に違反していると、ロシアなどがアメリカを非難している。米軍が
やったことは、イランに対する戦争行為であると見られてもしかたがない。
Iran diplomats' arrest against Vienna Convention: Russia
http://www.indianmuslims.info/news/2007/january/12/international/iran_diplomats_arrest_against_vienna_convention_russia.html

(1979年、イランでイスラム革命が起きた後、イランのイスラム主義者た
ちがテヘランのアメリカ大使館を襲撃し、外交官らを1年以上も人質として拘
束した事件があったが、アメリカはこのときイランが戦争行為をやったと非難
し、これ以来30年近く、アメリカはイランを敵視し続けている)

 イラク駐留米軍は、昨年12月下旬にも、バグダッドにいたイランの外交官
4人を拉致している。前回も今回も、イラク政府の高官たちは「米軍が拘束し
た外交官たちは、イラク政府に招待されて来てもらっている人々であり、ゲリ
ラ支援などやっていない」とアメリカに抗議したが、無視されている。
Talabani: Iranians Arrested by US Were Invited
http://www.cnn.com/2006/WORLD/meast/12/25/iraq.main/index.html

 事件の後、米政府は拉致事件について、ブッシュ大統領が数カ月前に命じた、
イラク国内で活動しているイラン人工作員に対する広範囲な軍事作戦の一環と
して、怪しいイラン人外交官を逮捕したのだと述べた。しかし米政府は、拉致
した外交官への具体的容疑を示していない。拉致事件は、アメリカがイランを
わざと怒らせて「真珠湾攻撃」を誘発するために実施された疑いが濃い。
Tensions Rise as Washington Accuses Iran Over Militias
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article2152461.ece

▼イスラエルにやらせるか、カンボジア型か

 イランの側は、アメリカから挑発されていると分かっているだろうから、挑
発に乗らず「真珠湾攻撃」は起きないかもしれない。その場合でもブッシュ政
権は、他の方法で何とかイランとの戦争を始めようとするだろう。その方法の
一つは、以前から何度か書いている「イランの核施設を、イスラエルに攻撃さ
せる」という開戦方法である。
http://tanakanews.com/070109israel.htm

 イランとアメリカの戦争が始まりそうだという危機の経緯を見ると、
(1)昨年4月ごろには「アメリカがイランを核攻撃するのではないか」とい
う報道がアメリカでなされて騒ぎになり、(2)昨年7月にはイスラエルがレ
バノンに侵攻し、その戦争がイランとの戦争に拡大しそうな危機が発生し、
(3)昨年10月には米軍がペルシャ湾のイラン正面で軍事演習を行い、イラ
ン側も対抗的な軍事演習を行って一触即発になり、(4)昨年12月には、イ
スラエルがイランを核攻撃する計画を進めているという報道が出て騒ぎになり、
(5)今回のブッシュ演説による非公式戦争の開始、という具合に「イスラエ
ルによるイラン攻撃」と「米軍によるイラン攻撃」の話が順番に出てくる展開
になっている。

 また、これとは別に、米議会のチャック・ヘーゲル上院議員(共和党)は
「ベトナム戦争末期に、ニクソン政権は、議会にも秘密にしたまま、ベトナム
からカンボジアへと侵攻し、戦線を秘密裏にカンボジア(とラオス)に拡大し
た。それと同様に、ブッシュ政権は、イラクの戦争を秘密裏にイランに拡大す
るのではないか」と懸念している。宣戦布告をしないまま、イランとイラクの
国境地帯で、イランとアメリカの戦争が激化するというシナリオである。
Did We Just Declare War on Iran?
http://www.slate.com/id/2157489/

 今後、どのような展開になるかは不透明だが、ペルシャ湾への空母2隻の派
遣、ブッシュ演説の曖昧な言い回し、司令官の人事など、今回指摘した話の全
体から考えて、ブッシュ政権がイランとの戦争を準備している、もしくはすで
に非公式な戦争を始めていることは、ほぼ間違いない。

 この戦争がいつ公然化するかについては、今の事態の展開の早さから考えて、
来月2月に開戦の可能性が高くなりそうだという指摘がある。
Military analyst believes recent US actions could signal Iran conflict soon
http://www.rawstory.com/news/2007/Video_Recent_US_actions_could_signal_0112.html

 もう一つ「期限」として存在しているのは、12月24日に国連安保理がイ
ランに核開発の中止を求める決議をした際、イランに対して2カ月(60日)
の回答猶予期間を設けたことである。イランが核開発をやめる気なら、2月下
旬までに安保理に報告せねばならない。イラン政府は、すでに「核開発はやめ
ない」と公言しているが、安保理としては2月下旬までは一応、待ちの姿勢で
ある。この期間が終わった後、ブッシュ政権は「イランが拒否したので国連に
よる外交的な解決は失敗した」と宣言し、「軍事的解決」つまりイラン攻撃を
実施できるようになる。
Who Is Planning Our Next War?
http://www.antiwar.com/pat/?articleid=10290

 イランは、人口がイラクの3倍ある大きな国なので、いったんイランとの戦
争が始まると、簡単には終わらない。アメリカはすでにイラク、アフガニスタ
ン、ソマリアで戦争に入っており、今後はイランのほか、レバノンにも介入す
る構想が出ている。中東におけるアメリカの戦争はどんどん拡大し、今後何年
間も続く可能性が高くなっている。ブッシュ政権が始めた中東大戦争は、
2009年にアメリカの大統領が交代した後も、次政権に引き継がれて延々と
続くことになりそうだ。
Intel Chief: Hezbollah May Be Next US Threat
http://www.msnbc.msn.com/id/16582063/

▼おまけの話:日本船と米原潜の衝突事件

 この記事を書く前、ペルシャ湾の入り口での、日本のタンカーと米軍の潜水
艦との衝突事故について調べて書き始めたのだが、その直後にブッシュ演説で
イランとの非公式戦争がすでに始まっているのではないかという話が持ち上が
り、その前に書き出していた衝突事故についてはボツにした。しかし、日本の
船が関係している話なので、ボツにした記事の一部をここに載せておく。

 1月9日未明、ペルシャ湾からアラビア海へと抜ける狭い航路である、イラ
ンとオマーンにはさまれたホルムズ海峡で、アメリカ海軍の原子力潜水艦「ニ
ューポート・ニューズ」(SSN 750)が、川崎汽船が所有する日本のスーパー
タンカー「最上川」に衝突する事件が起きた。私が見るところ、この事件は
「狭い海峡を航行する危険さ」「原油が流出しなくてよかった」といった、
日本で報じられている意味づけを超える含蓄を持っている。
・「相手からぶつかった」…タンカーの川崎汽船が会見
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070109ic21.htm

 この事件では、潜水艦とタンカーは両者とも、ペルシャ湾の内側から外側へ
と同じ方向に航行していた。タンカーは、スクリューとその周辺の船体を傷つ
けられており、潜水艦は後ろの方からタンカーにぶつかったことがうかがえる。
タンカーの側は、すぐ後ろの海中に潜水艦がいることを知らなかっただろうが、
潜水艦は、自分のすぐ前方にタンカーがいるのを十分承知していたはずだ。
Japan's tanker sustains hull breach, propeller damage
http://www.itar-tass.com/eng/level2.html?NewsID=11146345&PageNum=0

「最上川」は川崎汽船が誇る最新鋭のスーパータンカーで、巨大なのに高速で
航行できる。巨大なタンカーが高速で航行した場合、船の後方の海中にできる
渦も大きなものになる。しかも事故現場は海峡であり、海そのものの潮の流れ
も速く、複雑になる。タンカーは16万トン、潜水艦は7千トンである。タン
カーのすぐ後ろを潜航した場合、海水の渦に巻き込まれて衝突事故を起こす危
険が大きいことは、潜水艦の乗組員は十分に知っていたはずである。
Navy: Speed of tanker sucked sub up to surface
http://content.hamptonroads.com/story.cfm?story=117352&ran=77484&tref=po

 潜水艦は、危険を知りながら、タンカーのすぐ後ろを潜行していた。私の推
測では、それには明確な理由があった。昨年暮れから、ペルシャ湾の内外には、
湾の北側の国イランを威嚇するため、米軍の空母などの軍艦が結集している。
ペルシャ湾に入るには、必ずホルムズ海峡を航行せねばならない。米軍の動き
を知りたいイランは、海峡を航行する船の動きを注意深く監視しているはずだ。
当然、海中の探知機を使った、潜水艦に対する監視も行われているだろう。

 潜水艦が海中を潜航するのは、敵に動きを知られないようにするためである。
狭い海峡を通り抜ける際には、敵に探知されやすい。だが、巨大なタンカーの
すぐ後ろを潜航すれば、敵の探知機のモニターには、潜水艦の影は、巨大なタ
ンカーの影と一体化してしまい、気づかれずにすむ。そこで、潜水艦は海中の
渦に巻き込まれる危険をおかしつつ、できる限りタンカーに接近して潜航して
いたのではないか、というのが私の推察である。(私のオリジナルではなく、
アメリカのネット掲示板の書き込みで示唆されていた)

 衝突した潜水艦は、昨年末にイランを威嚇するためにペルシャ湾に入った空
母アイゼンハワーを中心とする部隊(空母打撃群)に属している。12月末に
始まったソマリアへのエチオピア軍の侵攻を支援するため、1月に入って空母
アイゼンハワーはペルシャ湾からソマリア沖に移動したが、その際に潜水艦も
ソマリア沖に移動しようとホルムズ海峡を通行中に、日本のタンカーに追突し
た。
USS Newport News (SSN-750) Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/USS_Newport_News_%28SSN-750%29

 今回の事故について、日本政府は米政府に、事故の真相を調査して明らかに
してほしいと要請した。しかし、真相がイランを欺くための軍事技能であると
したら、米側は真相を明らかにしないだろうし、日本側も、深く追及すること
はないはずだ。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/070116iran.htm


★関連記事

半年以内に米イラン戦争が始まる?
http://tanakanews.com/g1228mideast.htm

イスラエルがイランを核攻撃する?
http://tanakanews.com/070109israel.htm

大戦争になる中東(3)
http://tanakanews.com/g1219mideast.htm


Bush's Iraq Plan - Goading Iran Into War
http://www.antiwar.com/ips/parsi.php?articleid=10324

Surge towards debacle in Iraq and MidEast
http://news.ft.com/cms/s/ef4edfbe-a19f-11db-8bc1-0000779e2340.html

Did We Just Declare War on Iran?
http://www.slate.com/id/2157489/

Did the U.S. just provoke Iran?, By Juan Cole
http://www.salon.com/opinion/feature/2007/01/12/iran/index_np.html

Israeli Military Predicts War With Lebanon, Syria During 2007
http://www.haaretz.com/hasen/spages/811968.html

Saddam's Execution Brings Iran and Iraq Closer
http://www.irna.ir/en/news/view/menu-236/0701035709153834.htm

Madrid Peace Conference Upstaged by Bush's Call for More War
http://joshualandis.com/blog/?p=146

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