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時評2007 揺れる北東アジア、主導権の行方=中西 寛 [中央公論]
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投稿者 white 日時 2007 年 4 月 05 日 16:18:44: QYBiAyr6jr5Ac
 

□時評2007 揺れる北東アジア、主導権の行方=中西 寛 [中央公論]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070404-01-0501.html

2007年4月5日
時評2007 揺れる北東アジア、主導権の行方=中西 寛
 二月十三日、六者協議は「共同声明実施のための初期段階措置」について合意した。この合意の解釈をめぐって様々な論議がなされているし、それは然るべきであろう。合意内容は複雑で、単純に解釈できないところがある。
この合意について第一に留意すべきは、二〇〇五年九月十九日の共同声明の有効性を確認し、その実施措置として位置づけられている点である。共同声明は朝鮮半島の非核化を六者の共通目標としている。今回の合意は、昨年の核実験にもかかわらず、北朝鮮が依然として最終的な非核化にコミットしていることを確認するものであり、その点では他の五者にとって意義があった。
 
しかし第二に、今回の合意は具体的内容に乏しいことも事実である。合意では、第一段階の措置として、六〇日以内に北朝鮮が寧辺の核施設の「活動停止」を行い、同じ期間に重油五万トン相当のエネルギー支援が開始されることになっている。しかし寧辺の核施設は老朽化していると見られるし、エネルギー支援の規模も小さいから、これはさして実質的な意味を持たない。むしろ北朝鮮とアメリカの両者がさらなる取引を行う誠実さを計る、いわば「手付け」のようなものだろう。
 
 第一段階が実行されれば、次の段階はある程度、実質的である。北朝鮮はすべての核計画の一覧表を示し、既存の全核施設の「無能力化」を実行し、同時に先の五万トン分を含む重油一〇〇万トン相当分以内の経済、エネルギー、人道支援が行われることになっている。ただし、「活動停止」や「無能力化」は恐らく意図的に曖昧な表現がとられており、問題を紛糾させるか合意を進めやすくするかは解釈次第である。さらに、北朝鮮が既に保有する核兵器(一〇発前後という見方が有力である)の放棄や、北朝鮮が求めていた軽水炉の建設について今回の合意では触れられていない。
 
要するに今回の合意が示唆するのは、朝鮮半島の非核化の平和的実現という最終目標は放棄されないものの、そこに至るまでには長期の段階的なプロセスを経る必要があるとの見解を六者が共有したということだろう。既存の核兵器を不問に付したという点では一九九四年の米朝枠組み合意と同じであって、枠組み合意を批判してきたブッシュ政権からすれば譲歩し、妥協したと言わざるをえない。しかし金正日体制が続く限り核放棄は望み薄であり、中東で手一杯のアメリカにとって軍事オプションはありえず、かつ中国、韓国が北朝鮮の体制崩壊を望まない以上、他に手はないという「不都合な」現実を受け入れたということである。
 
ただし枠組み合意と違うのは今回の合意が多国間合意であり、とりわけ中国がその実現に威信をかけている点である。それは六者協議の下に新たに五つの作業部会を設け、そのうちの朝鮮半島の非核化に関する作業部会の議長を中国が引き受けたことに示される。つまり、今後もし北朝鮮が合意内容に違反した場合には、中国が北朝鮮を説得するよう求められることになるだろう。
 
 これは中国がかなりやっかいな責任を引き受けたことになる。しかしその代わりに中国は長期的な外交上の地歩を得たとみなしうる。つまり、冷戦構造が徐々に解体しつつある北東アジアにおいて、その国際秩序形成の主導権を握る礎を築いたということである。事実、他の四作業部会(米朝、日朝、経済・エネルギー協力、北東アジアの平和と安全)の進捗状況を見ながら中国が六者協議を運営するという図式は、中国が中心となった冊封体制の構図を想起させないこともない。
 
 時あたかも、アメリカでは第二次アーミテージ報告が公表された。その趣きは二〇〇〇年に出された前回の報告とはかなり異なっている。前回のものは、日米二国間の安保関係に関する記述が大半だったが、今回は地域外交が主要テーマであり、「二〇二〇年までの望ましいアジアのために」という副題もその内容を示唆している。北朝鮮の核問題は意外なほど軽く扱われており、むしろ韓国が変化しつつあることと相まって、朝鮮半島統一(報告書は二〇二〇年までに実現している可能性が高いとする)を見通す中での核問題の解決を期待しているようである。
 
 要するに中国もアメリカも、当面の困難な問題は先送りにしながら、自らに有利な長期ビジョンの実現への取り組みを始めている。日本も米中に互して、将来の北東アジアの中で自らがどのような位置を占めるべきかについて構想を練るべきであろう。
 
(なかにし ひろし 京都大学教授)

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