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イラクとベトナムの違い
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投稿者 これは大変だ 日時 2007 年 4 月 13 日 21:55:55: Kq60bFHMy4Bd.
 

http://www.yorozubp.com/0704/070412.htm

イラクとベトナムの違い
2007年04月12日(木)
ドイツ在住ジャーナリスト 美濃口坦


 もうかなり前から世界中で、イラクというとベトナム戦争を連想する人が多く「第二のベトナム」というコトバをよく見かける。特に日本ではこの傾向が強いようで、面白いことに「泥沼化」という比喩とむすびつく。また演説しているブッシュ大統領を見ていてベトナム戦争当時のニクソン大統領の「苦しい表情」を思い出す人までいるそうだ。でもこうしてイラクにベトナムのイメージを重ね合わせることで、いろいろなことが見えなくなる危険があるのではないのか。

 ■分割支配の進行

 ベトナムを連想して「泥沼化」という以上、米国が悪い状況に落ちこみ抜け出ることができなくなって困っていることになる。確かに私たちにそのようにみえる。というのは、毎週多数の米軍兵士が死傷し、それより遥かに多数のイラク人も同じ運命に遭遇しているからである。それだけでない。国連難民高等弁務官事務所によると、イラクの難民数が340万に及ぶ。

 米国の政治指導者は本当にこのような現状に困っているのだろうか。私たちがそう考えるとしたら、彼らを勝手に誤解して自分たちと同一視しているだけかもしれない。これは人間を等身大に見たいという私たちの「人類皆兄弟」的願望の表現ではないだろうか。今こそ私たちは、米国のイラク侵攻前に世界中で取り沙汰された戦争目的を思い出すべきで、そうすると戦争の「泥沼化」などといってられない気がする。

 例えば、米国に楯突く独裁者フセイン打倒はきわめて重要な戦争目的であった。というのは、自国に敵対する独裁者の存在を認めることはエネルギー資源に重要なこの地域で長期的にみて米国が影響力をうしなう端緒になるからだ。ということは、今後この地域で影響力を強めるためには、以前のような強力な中央集権的支配体制が生まれないで、北部クルド人、中部のスンニ派、南部のシーア派といった具合に三つの国に分かれてくれるほうが都合がよい。  

 例えばバグダッドから290キロ北に位置するキルクークには重要な油田がある。ここはもともとクルド人居住地域であったが、フセイン時代には彼らが追い出されて、イラク南部からアラブ人を移住させる「アラブ化」がすすめられた。今年この町がクルド人居住区に帰属するかどうかの住民投票がある。ニュースによると、3月27日にイラク政府は元の居住地域に帰るアラブ人に1万5千米ドルの補償を支払うことを決め、これに不満な法務大臣(スンニ派)が辞職したという。重要な油田が一番親米的なクルド人といっしょにくっついているほうが米国にとって好ましいことはいうまでもない。

 混住地域がなるべく少なくなることこそ、「スリムで安定した三つの国家」が出現する前提条件である。現在の内乱状態も難民の大量発生も、この条件が整っていく過程である。こうして統一国家が名前だけになることは、米国がこの地域で影響力を強化するという目標へ進んでいることを意味する。「ベトナム化」とよんだり、米政治家の顔に「苦しそうな表情」を見たりするのは、このような側面から眼をそむけることにならないか。

 ■「米、戦争目標ほぼ達成」

 戦争をはじめる米国の指導者にイラクの原油に対する特別な関心があることが噂されていたが、その話はどうなったのか。

 今年に入ってからイラクで石油法を作成しているというニュースが何度か流れる。最新のニュースは4月4日で、欧米の幾つかの新聞が閣議で承認されたイラクの新石油法について報道している。例えばスイスの町ザンクト・ガレンの新聞・「ザンクト・ガラー・タークブラット」に「米、戦争目標ほぼ達成」という題名の興味深い記事がでている。この記事を中心にまた他の報道を参考にしながらイラクの石油の運命をしるす。

 この石油法はイラク油田の民営化のための法案で、採掘権取得者は今後30年に渡って投資の採算がとれるまで生産量の70%を無税で自分のもにすることができるという。産油国政府と石油会社との契約では後者の取り分は20パーセントが普通とされるので投資家に対して桁違いに気前がよい。その結果投資利益率も業界平均の12%でなく、42%から162%に達するといわれる。ここでいう採掘権取得者とか投資家とかよばれているのはメジャー・国際石油資本である。

 この民営化法案は現在稼動中油田には適用されない。ところが、イラクにある80油田のうち17しか採掘されていないので、法案によって外国資本に渡るシェアは64%になり、今後探鉱される埋蔵量分まで考慮するとイラクの原油の80%が外国資本の手に移るといわれる。また採掘権取得者は油田操業や開発のために直ちに投資しなくてもいい条項があるので、契約だけ済まして現在の混乱状態がおさまるまで待っていることができる。

 スイスの新聞に「ほぼ達成」とあるのは、多数の議員が外国に住んでいるために議会が定数に達しないからである。このスイスの新聞の記述によると、法案は米コンサルティング企業ベリング・ポイント社が作成し、英語からアラビア語に訳されたという。またサウジなど産油国の油田は国有であるのに、この法案でイラクは先頭に立って民営化の道を進むことになる。

 この油田民営化法案で埋蔵量世界第三位のイラクの油田にストローを突っ込んで今後30年間空っぽになるまでをチューチュー吸うことができる。このような事情を考えると、イラクの「泥沼化」というのは不適切である。

 ■米国の「イスラエル化」

 開戦前にうわさされた戦争目標を脳裏に浮かべて米戦死者数や膨大な戦費を考慮すると、イラク侵攻が米国の国益に合致する合理的な決断だったとは考えにくいのではないのか。米国はこりないらしくイラン攻撃のうわさが跡を絶たない。このような事情から米国の政権担当者がわざと自国を弱くしようとしていると思う人もいる。私たちはどのように考えたらいいのか。

 去年の3月、シカゴ大学とハーバード大学の政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトが書いた「イスラエル・ロビーと米外交政策」という論文が欧米諸国のメディアで注目されたのは、このような疑問にこたえていると思われたからである。この論文の著者によると米国社会ではいつの間にか自国の利益とイスラエルの国益とが区別されなくなってしまったという。

 これは、米政治家がイスラエルの政治家と似たような意識をもつことである。ヨルダン川西岸地区ユダヤ人入植は1970年代のカーター米大統領にとって「不法行為」であったのが、80年代レーガン時代には平和実現のための「障害」に後退し、その後はせいぜい「事態を複雑にする要因」と表現されるだけである。これも米国がイスラエルの見方を受け入れる過程をしめす。

 そうなったのは、論文の著者の見解では、イスラエルのロビー活動の結果で、なかでも米・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)は影響力の強いロビー団体で、その人脈はキリスト教原理主義者やネオコンなどの保守主義者だけでなく、リベラルな民主党にもまたがり、議会でも息のかかった議員が過半数をはるかに超えるとされる。イスラエルにもいろいろな考え方の持ち主がいるのに、このロビー団体は、大イスラエル主義を奉じて「オスロ合意」に反対し、そのためにアラブ諸国の脅威を強調する右派のリクードと同じ立場をとる。

 米国は、イラク侵攻前に、もしイラクが核兵器をもっていたとしても、核保有国のソ連や中国と共存している以上、あれほど脅威に感じる必要などなかった。でもフセインを危険視したのは、米国がリクードと同じ「メガネ」で中東の現実を見るようになっていたからである。だからこそ、著者は「イスラエルのロビー団体の努力がなかったら、米国が2003年3月に戦争をする可能性は遥かに低かった」(35頁)としるす。

 リクード的思考に従うと、中東諸国は改造されて民主化されなければいけない。そう思うのは、民主化するとイスラエルに友好的になり、テロリストもいなくなるからと考えるからである。中東改造推進者にとってイラク戦争は第一ラウンドに過ぎず、第二ラウンドはイランが相手である。

 米・イ公共問題委員会(AIPAC)の今年度総会のあった3月12日にチェイニー米副大統領が演説し、イラク駐留米軍の撤退を求める自国政治家を非難し、撤退が大量破壊兵器をつかいたくてしかたがないイランやテロリストたちを勇気づけるだけだと警告して、六千人の出席者から拍手喝采された。またオルメルト・イスラエル首相はイラクで米国が軍事的に成功することの必要性を強調するだけでなく「米がイランの脅威に対して効果的に対処することができないという印象をアラブ諸国にあたえてはならない」と訴える。

 米議会で多数を占める野党の民主党は、国防省予算案に議会の同意なしに大統領にイラン攻撃を禁じる追加条項を盛り込もうとしていた。ところが、米・イ公共問題委員会総会でこれをあっさり断念して、あらためてイスラエル・ロビーはその力を全世界に見せつける。当時これがイラン攻撃に対する民主党の同意と見なされ、ペルシア湾に3隻めの航空母艦がはせ参じるだけでなく、イラクで米軍がイラン国境に配備されたことも手伝って、モスクワから「第二ラウンド近し」という予想が流れた。でも、けっきょくは原油価格が上昇しただけであった。民主党は本来共和党よりイスラエルに近いので、イラン攻撃がはじまったら賛成する。この事情こそ、国際社会で第二ラウンドを不可避と思う人が多い理由である。

 論文の著者・ミアシャイマーとウォルトによると「イスラエル・ロビー」はタブーテーマで、問題にした人は暗黙のうちに「反ユダヤ主義者」として扱われるという。この「反ユダヤ主義者」非難は欧米で極右扱いをされることで、効果的な口封じになる。こうして米国人がリクードと同じ「メガネ」で中東の現実を見るようになることは、米国の「イスラエル化」というべき現象で、これも「ベトナム化」ばかり考えていると見えなくなる。

 美濃口さんにメールは Tan.Minoguchi@munich.netsurf.de



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