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バグダード、アダミヤ地区に「壁」建設中。(tnfuk [today's news from uk+])
http://www.asyura2.com/07/war91/msg/506.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 4 月 22 日 16:49:40: KbIx4LOvH6Ccw
 

(回答先: 米軍/イラクに分離壁/首都住民の生活困難に(しんぶん赤旗) 投稿者 gataro 日時 2007 年 4 月 22 日 11:21:40)

http://nofrills.seesaa.net/article/39645303.html から転載。

2007年04月22日
バグダード、アダミヤ地区に「壁」建設中。

金曜日に知ったのだが、バグダードで「壁」が建設されている。建設にあたっているのは米軍だそうだ。

ガーディアンが「スンニ派とシーア派の間を隔てる壁を米軍が建設」という見出しで報じている。私はそれを見たときに、ガーディアンお得意の「あえて暗いトーン」なのではないかと疑ったのだが、Google Newsで他のメディアの記事を見ると、ガーディアンだけが特別に暗いというわけではない。下記はテレグラフ。

Baghdad wall to divide Sunnis and Shias
By Paul Willis
Last Updated: 2:12am BST 21/04/2007
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/04/21/wirq21.xml

記事がとても短いので、とりあえず読んで概要を把握するには適していると思う。この記事によると、米軍によって「壁」が建設されているのはスンニ派が多い地域であるアダミヤ地区(実はテレグラフにはAsmiyahとあるのだが単純なタイポだろう)で、スンニ派とシーア派を分けるものである(separating Sunni and Shia Muslims)。「壁」の長さは3マイル(約4.8キロメートル)、高さは12フィート(約3.7メートル)で、今月中に完成の予定。「壁」のあちらとこちらとでは、イラク軍が常駐する門(検問所)からしか往来ができない。(検問を行なうのは誰かという点だが、BBCには「米軍とイラク軍」とある。いずれにせよ両者は一体だ。)

バグダードの地図は、グロ・セキュさんにある下記のが見やすいだろう。
http://www.globalsecurity.org/military/world/iraq/images/baghdad-map-areas2.jpg
※地図中、Thawraとあるのは「サドル・シティ」のこと。サダム・フセイン政権下では「サドル」の名は禁句で、サダム・フセインはこのシーア派のスラムに「革命」という意味のThawraという名前を与えた。ものすごい嫌味であるが、Thawraにする前は「サダム・シティ」と呼ばせていたというのだから残忍な嫌味だ。

上の地図を見たあとで、Healing Iraq blogにアップされている下記の地図を見ればもっとよくわかる。(緑がシーア派、黄色がスンニ派、オレンジが混住エリア。)
http://healingiraq.blogspot.com/uploaded_images/baghdad-violence-august-20-796007.JPG
※何かこの地図見てると、毎年夏にオレンジオーダー系のマーチがカトリックのエリアを通るの通らないのでもめる北アイルランドのあれが思い出される。

それぞれの地域についての短い解説はvice magの地図にある。(これもHealing IraqのZeyadの制作。)
http://www.viceland.com/int/v14n3/htdocs/b_map/map_large.gif

さらに2006年4月の「アダミヤ地区での襲撃」の地図。
http://healingiraq.blogspot.com/uploaded_images/Adhamiya-Monday-Tuesday-2-747393.JPG

つまりこの「壁」は、シーア派で武装主義の人たちが多いサドル・シティと、スンニ派で武装主義の人たちが多いアダミヤとの間を、高さ4メートル近い「壁」でぐるっと囲んでしまおうというものだ。

誰もが即座に連想するのはパレスチナの「壁」だろう。神出鬼没のBanksyが突撃して「芸術テロ」を決行したあの「壁」だ。実際、あの「壁」とバグダードの新たな「壁」の理屈は同じか、または非常に似ているのかもしれない。

というよりむしろストレートにファルージャか。(2004年11月のファルージャ総攻撃の前、米軍はファルージャの周りをぐるりと取り囲んで検問所を設け、人の出入りを厳しく制限していた。総攻撃開始前には「住民が退去するための期間」が設けられていたとはいうが、実際にはその期間においても総攻撃の規模にはならない攻撃=準備的なものと位置づけられる攻撃が毎日のように行なわれていたし、検問所は、男性の場合はよほどの子供かよほどの老人でなければ通過できず、夫が町から出られないのなら残るしかないといった事情で残った人たちも多い。)

私としてはベルファストやデリーなどの "peace line" という名称の壁(カトリックとプロテスタントを分断する壁)を連想するのだが(米軍のthe 407th Brigade Support BattalionのCaptain Scott McLearnが「シーア派がやってきてはスンニ派を襲撃し、スンニ派が報復を行なっている」と述べているのは、資料として読む「1969年の西ベルファストなど」によく似ている)、何が連想されるにしても、ひとつの連続性のある地域が、「壁」というものによって分断されることに変わりはない。

「壁」によってアダミヤという地区は壁とチグリス川で囲まれてしまうことになる。2006年9月末の状況を示したこの地図@Healing Iraq blogで一目瞭然だが、川の対岸はカディミヤ(カジミヤ)というシーア派地域と米軍基地がある。

ってなことを把握しながら、Google News経由でNYTのブログの記事を見たら、風邪による頭痛とは別の種類の頭痛がしてきた。なんというか、脳髄の真ん中から泡が立つような感覚。
http://thelede.blogs.nytimes.com/2007/04/20/baghdads-great-wall-of-adhamiya/

American forces, struggling to improve security in Baghdad, are turning to an approach with a 4,500-year history in the region: They are building a three-mile wall around the heavily Sunni neighborhood of Adhamiya.

米軍がやってることについて述べるのに「この地域で4500年の歴史のある方法」? しかもその、"4,500-year history" という文字列にリンクされているのがen.wikipediaのUruk? 

いくら「現在のようなアメリカ」にごくごく短い歴史しかないとはいえ、なんじゃこの言い草は。なめとんのか。しかもその後は:

A news release said the project, which soldiers jokingly called "the Great Wall of Adhamiya," was "one of the centerpieces of a new strategy by coalition and Iraqi forces to break the cycle of sectarian violence."

・・・いくら「軽く読める」ように書かれたブログであろうと、これ以上NYTなんか見ていたら発狂しそうだ。何がjokinglyだ。せめてnicknamedとか書けよ。

「宗派間の暴力の連鎖を止めるために」必要とされるというその「壁」。では、いつ、どのようにして、なぜ、バグダードで「スンニ派」と「シーア派」が殺しあうようになったのか(この図式では「クルド人」は存在していないことになっているが、クルド人は宗派でいえばスンニ派である)。

複数のイラク人ブロガーやジャーナリスト、メディアの取材に応じた人の発言などを信用すれば(信用するしかないが)、少なくともイラク戦争前はそうではなかった。夫はスンニ派、妻はシーア派、というような家庭も普通にあった。(北アイルランドでもそうだ。「分断」が始まる前は夫がプロテスタント、妻がカトリックで、結婚で改宗したといった話が多くある。)今年の3月にはオブザーヴァーの記事で、スンニ派が大多数の地域でシーア派のイマームとして地域で信頼を得ていた人が、自分の家とモスクから逃れて2年になる、という内容のものがある。つまり2年前まではシーア派のイマームが、スンニ派のエリアで地域の名士として生活していたのだ。

いわゆる「宗派対立」、事実上の「内戦」、もしくは「内戦よりもさらにひどい状態」――アメリカが、2003年3月の開戦前にそうなる可能性をまるで知らなかったとは言わせない。1991年のシーア派蜂起を途中まで支援していたのはアメリカ、ブッシュ政権(お父ちゃんのほう)だ。その可能性を知っていて、それでも「短期間で終わる」とか「人的被害は最小限におさえるようにする」とか言いながらやったのが2003年からのイラク戦争だ。開戦時にムクタダ・サドルのような「急進派」や、バドル旅団のようなパラミリタリーの存在を知らなかったとしたら、ただのバカ。呆れるしかないバカ。しかし実際には、サダム・フセインのような強力な独裁政権でどのような「地下活動」が存在しているか、などということは、旧東欧圏での工作活動もしてきた米国が考えなかったはずはないし、知らないはずはないのだ。ただ、開戦時にはそれを無視していただけだ。無視したって存在そのものがなくなるわけではないのに。(語らないことで存在は隠蔽はされるが。)

(まあ、ブッシュ政権ではイラク担当の人たちは知識や経験、力量ではなく「忠誠心」で選ばれていて、アラビア語ができる人がほんの数名とかいう状況だったそうだから、政権の最上層部があまりにバカすぎるのだが。日本を敵として戦い、その後占領してたときのアメリカは真面目にやってたんだなと思うよ。チェイニーなんか「日本の民主化成功の事例」をイラクでも、みたいに顔てらてらさせてたじゃんね、2003年ごろは。で、「成功した」という結果は知っててもどのようにして「成功」したのかは知らなかったわけだ。)

しかし彼らは言い続けるのだ。「覆水盆に還らず」と。「われわれは現実問題としてここにいるのだから」と。

ガーディアンCiFのMike Davis記事に投稿されているコメント(by hypocrites, April 21, 2007 4:31 AM):

「しかし、われわれは現実問題としてここにいるのだから」というセオリー

真夜中、あなたの家に泥棒の一団が押し入った。窓ガラスや扉を破り、食器を壊し、家の中をめちゃくちゃにした。そしてあなたの妻を強姦し、子供たちもあなたも拷問した。あなたは連中に有り金すべてを与えた。それでも連中は出て行かない。それどころか、出て行く前にきちんとしていかねばならないと言い張る。あなたは「それは大丈夫ですから、とにかく出て行ってくれ」と何度も懇願する。それでも連中は「いや、現実問題としてわれわれがここにいる以上、このままにしておくわけにも」という。あなたは交渉などできる立場にないのだが、なんという優しさだろうか。

英国人は、タスマニアに上陸したとき、元々そこに住んでいた人たちを皆殺しにして回った。全員を殺すと、英国人は少し反省した。そこに来ていた聖職者が「まあ、現実問題としてわれわれはここにいるわけですから」と述べた。殺してしまった人たちを生き返らせることはできません。だからこれだけは心に刻みましょう――このようなことは二度としない、と。

(ここにドイツのポーランド侵攻についての記述、セルビアのコソヴォでの行為についての記述がここにある。「現実問題としてわれわれはここにいるのだから、損害はわれわれが何とかする」というセオリーの例として。)

あなたの冒険が大惨事に終わったときにどうするか。「現実問題としてわれわれはここにいるのだから、損害はわれわれが何とかする」と言えばよい。それが今の世の中の思考法だ。

(以下略)

そもそも彼らが「戦争」と呼んでいるもの、あのinvasion(侵略、侵攻)は国際法的に違法だった。それでも大丈夫と彼らは親指を立て、投下する爆弾に、イラクとは関係のないアルカイダのテロ攻撃で殺された人たちの名前を刻んで、正義のヒーロー気取りで勇ましく殴りかかった。そして最大の問題は、そのときにほとんど何も考えていなかったということだ――国内で人々をどう説得するか、ということを除いては。

挙句、5年が経過し、開戦当時の「サダム・フセインをこのままにしておいたら犠牲者数はとんでもないことになる。だから今サダムを止めなければならない」(当時の英国外相ジャック・ストローはこう言っていた)という理屈は、今となっては誰の目にも(当時それをサポートしていた人たちの目にも)、こんなものがなぜ少しでも説得力を持っていたのかさっぱりわからない、というしろものになっているだろう。


It's time to taste what you most fear
...
It's tough kid, but it's life

-- Dead Kennedys, Holiday in Cambodia (1980)

http://youtube.com/watch?v=ievFUnIEh5E

あまりに頭にきているのでとりあえずここまで。あとでBBCやガーディアンでの報道について触れたエントリをアップします。

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