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<パウエル前国務長官の述懐>イラク「戦争」とは何だったのか〜内田雅敏弁護士の訴え(情報流通促進計画byヤメ記者弁護士)
http://www.asyura2.com/07/war91/msg/673.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 4 月 28 日 15:58:40: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/26df0d8262e57cdb68719881bbc15d04 から転載。

イラク「戦争」とは何だったのか〜内田雅敏弁護士の訴え
有事法制関連 / 2007-04-28 06:53:09


■■転載歓迎■■
イラク「戦争」とは何だったのか
――イラク攻撃を人生の汚点と述懐したコリン・パウエル前米国務長官――
                         2007.4.20
                          内田雅敏

1.注意していないと気付かないような小さな記事だが、2007年4月7日東京新聞朝刊、外報面の片隅に以下のような記事が載った。
 
 アルカイダとフセイン政権 「協力関係なし」
 国防総省報告で確認 米紙報道 【ワシントン=AFP・時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は6日、イラクのフセイン元大統領に対する聴取と、2003年の米軍による対イラク開戦後に押収された資料により、フセイン政権が国際テロ組織アルカイダとは協力関係にはなかったことが確認されたと報じた。
 両者の協力関係はブッシュ政権が開戦の理由付けとして強く主張していた。
 しかし、機密解除された米国防総省の報告によれば、両者の間には実質的な接触はなかったとするイラク戦争前の中央情報局(CIA)や国防情報機関の主張が裏付けられた。
 開戦前、ブッシュ政権の対イラク強硬派はこうしたCIAの見解を無視していた。CIAなどの見方は、フセイン元大統領ら政権幹部に対する取り調べでも補強されたという。

  2001年9月11日、米国を襲った同時多発テロは、ブッシュ大統領をして「これは戦争だ!」と叫ばしめたほど米国に大きな衝撃を与えた。ブッシュ大統領は、テロ実行犯組織アルカイダをアフガニスタン政権が保護しているとして、米軍による攻撃を命じた。
この攻撃は、国際「世論」の支持を受け、国連安保理の承認を経て、米英仏独軍などを中心としてなされ、長期化するのではないかという当初の懸念に反し、短期間に「決着」が付き、アルカイダを保護していたタリバン政権は崩壊し、カルザイ親米英政権が誕生した(但し、その後の経緯を見るとき、アフガニスタンの状況もなおタリバン政権の残党による抵抗が続いており、真の安定状況とはほど遠いものがある)。

2.前記9.11同時多発テロで頭に血が昇ってしまったブッシュ政権は、ラムズフェルド国防長官(当時)、「ネオコン」と叫ばれるウォルフォウィッツ国防副長官(同)などの側近の意見を入れ、アフガニスタン制圧だけでは満足せず、2003年3月20日イラク攻撃に踏み切った。
 理由はイラクのフセイン政権が、
@ 生物、化学兵器を含む大量破壊兵器を所持し、
A アルカイダを保護している
という点にあった。そしてイラク攻撃は、自衛権の行使としてなされる先制予防攻撃だと主張した。
  ブッシュ大統領のこの説明には無理があった。自衛権の行使といっても、現実にイラクが米国を攻撃したわけでなく、また前記@大量破壊兵器の存在、Aアルカイダとの関係についても疑問視する声が強かったからである。このようなあいまいな理由で先制予防攻撃が許されるならば、これまで積み重ねて来た国連憲章、国際法の秩序は崩壊してしまう。 
  安保理での米国連大使やストロー英外相(当時)らとドビルパン仏外相(同)とのやり取りを世界が注視していた。「古い欧州」というラムズフェルド米国防長官の批判に対しても「二度にわたる大戦を経験した古い欧州の教訓」と切り返したドビルパン仏外相に世界が共感の拍手を送った。 
米国はコリン・パウエル国務長官(当時)に国連安保理事会で、イラク上空から撮った航空写真などにより、これが大量破壊兵器だと説明させ、イラク攻撃を支持するよう演説させた。しかし、安保理はこの説明では納得しなかった。
  1962年10月、米ソ一触即発核戦争の恐れのあったいわゆるキューバ危機――ソ連がキューバにミサイルを提供し基地を作ろうとしたことが発覚し、米国が海上封鎖をし、ソ連船の通行を阻止した――に際して、ケネディ米大統領は、ミサイル機材をキューバに搬んでいるソ連船を撮影した航空写真を携えた国務長官(次官だったかもしれない)をフランスのドゴール大統領の下に派遣し支持を得ようとしたところ、独立、自尊心が強く、事ある毎に米国にたて突いて来た同大統領が、「いや写真は要りません。アメリカ合衆国大統領がそう仰っしゃるなら私はそれを信じます」と述べたという。
  それが40年を経て、同じ米国が国連安保理で写真を示しても多数の支持は得られなかった。「写真を見なくても信じます」と言われた米国と、写真らしきものを見せても信じてもらえない米国、これが唯一超大国となった米国の40余年の変化である(樋口陽一「『共和国』フランスと私」つげ書房新社)。

3.結局米国は安保理決議を断念し、2003年3月20日、米英軍を中心とする多国籍軍によってイラク攻撃を強行した。
米軍によるイラク攻撃は、短期間にフセイン政権を崩壊させた。それは戦闘というよりは、圧倒的な装備を誇る米軍による一方的な殺戮であった。「開戦」後わずか43日の2003年の5月1日、ブッシュ大統領は米空母エイブラハム・リンカーン上で「イラクにおける主要な戦闘は終了した。我々は勝利した」と宣言した。
だがしかし、2004年9月13日、パウエル米国務長官(当時)は上院で「(大量破壊兵器)についてはいかなる備蓄も見つかっておらず、将来も見つかりそうにはない」と述べたように、大量破壊兵器も見つからず、フセイン政権とアルカイダの関係を示す証拠も見つからなかった。同年10月6日発表された米政府イラク調査団の報告書も大量破壊兵器は存在しなかったとしている。
米軍こそイラクでクライスター爆弾、劣化ウラン弾など大量破壊兵器を使用したのではなかったか。キューバのグァンタナモ米軍基地内に拘束されているテロ容疑者に対する虐待や、イラク、アブグレイブ刑務所でのイラク人に対する虐待など、国際法に反する米軍の行動には目に余るものがある。

4.2000年10月、米アーミテージリポートによって、「東洋の英国となれ」といわれた日本の小泉首相は、ブッシュ大統領の説明を丸のみし、2004年2月9日、国内における反対を押し切って日本国憲法下で初めて、イラク復興支援の名の下に戦地イラクへ陸上自衛隊を送るとともに、海・空自衛隊をして米軍の後方(兵站)支援に当らせた。
  曰く、“自衛隊を戦闘地域に派遣するわけではないので、集団的自衛権の行使には当らない”と。
  イラク南サマワに駐留した陸上自衛隊は、オランダ軍などに守られ――軍隊が自力でなく、他国の軍隊によって守られるという奇妙奇天烈さ――、浄水、道路、補修、学校修繕などの仕事をしたというが、その効率の悪いこと甚だしかった。浄水した水などその半分は、自分達で費消していた時期もあった。大体自衛隊は軍隊であって、復興支援などその任としていない。イラクに日本の自衛隊が居ることが米国への忠誠の証しとして必要であったのだ。
  これが米国が要求したという「ブーツオンザグランド」の実体だ。このために約750億円の税金が費やされた。但し、これは陸上自衛隊の分としてであり、この他、海の「ガソリンスタンド」としての海上自衛隊による米英多国籍軍艦船に対する給油、航空自衛隊による空輸がある。
  真に復興支援が目的なら、その経験とノウハウとを有するNGO団体などを送ったほうが余程効率的である。

5.2003年3月20日のイラク攻撃からすでに4年余が経過した。イラクの現状はどうか。フセイン政権こそ崩壊したが、イラク全土が内戦状態にあり、このことはブッシュ政権も認めざるを得なくなっている。2007年4月18日、バグダットで5件連続の爆弾テロが起こり、合計で157名の死者が出たという(2007年4月19日付「朝日新聞」)。
  既に米兵の死者だけでも3200名以上(2007年3月19日付「赤旗」)となっており、この数は、9.11同時多発テロの死者2973名を上回っている。イラク人の死者はその何十倍、何百倍であり、イラク全土が荒廃し、民衆は恐怖と欠乏の中で塗炭の苦しみにある。2006年12月4日、国連のアナン事務総長(当時)は、英BBC放送でイラクの現状について「残忍な独裁者がいても、今よりはましだと国民が考えるのは理解できる」と語った(2006年12月21日「朝日新聞」)。
石油のための戦争、潤ったのは米国の軍事産業だけだ。2006年米中間選挙でブッシュ大統領の共和党は敗北した。2007年1月10日、ブッシュ大統領は全米向けにテレビ演説をし、内戦状態のイラクの現状は「許容できない」、「過ちがあった点については私に責任がある。戦略を変えなければならないのは明らかだ」と述べ、米軍2万1000人増派遣する新戦略を発表した(2007年1月「朝日新聞」夕刊)。民主党が多数派となっている米議会はこの決定を批判した。

6.2006年9月7日、パウエル前米国務長官は、ABCテレビのインタビューに対して、2003年2月の国連安保理での前記演説――イラクの大量破壊兵器の開発・保有を「写真」を示して「告発」して、フセイン政権打倒の軍事攻撃を正当化しようとした――について、人生の「汚点」だと述懐した。
かつてベトナム戦争時、トンキン湾事件――1964年8月4日、北べトナム(当時)トンキン湾沖で、米軍駆逐艦に北ベトナム軍が攻撃したと宣伝されたが、後になって米軍の謀略であったことが判明――を契機として、米軍が北ベトナムへの攻撃を開始し、ベトナム戦争がベトナム全土に拡大した事実を思い起すべきである。
1990年、イラクがクウェートに侵攻したことを契機として米英など多国籍軍の攻撃がなされた第1次湾岸戦争でも、「油まみれの水鳥」という捏造写真による情報操作がなされた。1931 年9月18日、柳条湖鉄道爆破の謀略によって「満州事変」が引き起こされたことを挙げるまでもなく、軍事行動と謀略は常にセットであった。
1975年ベトナム戦争終結後、既に引退していた当時のマクナマラ国防長官がこのことを反省したことがある。パウエルと同じである。
“退職反省症候群”とも呼ぶことができよう。

7.退職後の反省でも反省しないよりはいい。ブッシュ大統領の言いなりに、自衛隊をイラクに派遣し、“非戦闘地域”への派遣だから憲法上問題はない、“どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、そんなことは私に聞かれたって分からない”、“大量破壊兵器が見つからないからといって、大量破壊兵器がなかったということにはならない、それはフセイン元大統領が見つからない(イラク軍崩壊後、一時姿を隠していた)からといって彼がいなかったということにはならないのと同じだ”等々、奇弁、珍弁、居直り弁をして憚らなかった前首相、小泉純一郎は反省したのか。
イラクに大量破壊兵器が存在しなかったこと、フセイン政権とアルカイダとは、関係がなかったことが明らかになり、米国政府もこれを認めている今、小泉純一郎にとって、前記答弁は人生の「汚点」ではなかったのか。それは「日米同盟」、「日米基軸」、「対北朝鮮では米軍の支援が不可欠、イラクか北朝鮮かと言われれば、北朝鮮だ」等々を理由として小泉首相に追随した日本の政治家、学者、言論人達にとっても人生の「汚点」ではなかったのか。
「大量破壊兵器はなかったかもしれないが、しかし、フセイン独裁政権を倒したのだから」とその主張を横滑りさせる者も現れた。だが「戦争の理由」を後日になって変えるようなことは許されないし、いかに独裁とはいえ他国の政権を外から「軍事力を使って崩壊させるようなことは、国際法は容認していない。
いみじくもマーティンカナダ首相(当時)が述べたように、《がまんのできない独裁者は一人フセイン大統領だけではない》。「残忍な独裁者がいても、今よりはましだったと国民が考えるのは理解できる」と国連のアナン事務総長がイラクの現状について語ったことはすでに述べたところである。
日本の隣にも「将軍様」の支配する国がある。この国に対しても武力攻撃が容認されるというのか。

8.2007年3月27日自民・公明両党は、自衛隊のイラク派遣の根拠法であるイラク復興支援特別法を2年間延長する改正案を了承した。さすがに自民党総務会でも「ブッシュ大統領は大変な判断をした(イラク戦争を主導した)、ボルトン国連人権大使も(再任されず)辞めさせられた。(日本)では責任を取った人はいない。」(加藤紘一元幹事長)。
「ブッシュ米大統領もブレア英首相も間違ったと言っているのに、日本だけが間違っていないのは違和感がある。」(野田毅元自治相)など異論が出たという(2007年3月28日東京新聞)。
国連憲章、国際法に違反してなされたブッシュ大統領によるイラク攻撃によって、命を失い、負傷をし、家や財産を失わされたイラクの民衆、そして遠くイラクまで送り込まれて命を落とした米兵達。この不条理を正すために私達は何をすべきか。

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