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なぜ現米大統領は中東戦争継続に固執するのか—キリスト教右派の終末思想との関連 落合栄一郎(ベリタ)
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投稿者 近藤勇 日時 2007 年 4 月 29 日 13:34:52: 4YWyPg6pohsqI
 

なぜ現米大統領は中東戦争継続に固執するのか—キリスト教右派の終末思想との関連 落合栄一郎
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200704291130140

2006年の中間選挙で、米国民はイラク戦争反対の意志を表明した。にも拘らず,大統領は頑に中東戦争継続に固執している。現在、民主党提出になるイラクからの兵力撤退の期限付き補正軍事予算案が、わずかな差(数人の共和党議員も同調した)ではあるが上下両院を通過したが、大統領は期限付きの法案は頑として受け付けず、拒否権を発動するようである。そうなると、その大統領拒否を覆すだけの得票は、上下院とも、よほど共和党議員が動かないかぎり得られそうもない。アメリカ国会がこの先どうするか注目の的である。 
 
 さて、国会においてのみならず、国防省の武官達の多くが大統領の戦略の不毛を表明し、兵士達は疲弊し、兵士リクルートもままならなくなってきており、戦争遂行による国家財政の圧迫も重大になっている。このように八方塞がりであるにも拘らず、大統領はなぜ中東戦争に固執するのか。アメリカ国民や国家予算などといったことには無関心であり、なにかに憑かれたかのように、異常に常規を逸しているように見える。なぜなのか? 
 
 副大統領は石油企業/軍需産業の代弁者でイランも含めて石油資源を獲得したいし、そのためには何でもするつもりのようである。それは、大統領が戦争に固執することをいいことに、便乗しているばかりでなく、大統領を焚き付けている。この点では大統領は副大統領に操られているといっても過言ではない。大統領が正常ならばこういうことは起きえない。これほどの企業利益のなりふり構わずの拡張も常規を逸してはいるが、人間の欲望の異常なケースといってよい。大統領の場合は、これだけでは説明できないし、色々の言動から判断すると、偏執的宗教観がその基にあるように思われる。 
 
 先に「アメリカの戦争意識と平和運動と平和憲法」(2007/2/16)なるコラムにおいてアメリカの現在の政権が遂行している戦争—特にアフガニスタンとイラク─についての彼らの意識と動機をかいつまんで議論した。要点は、(1)石油企業/軍需産業などの利益獲得意識,(2)イスラエルのザイオニストによるアメリカ政治上層部操作、(3)キリスト教右派の終末意識の三つである。アメリカ開国以来の領土拡張主義の延長が、現在の覇権主義に繋がっているという面もあるがここではこれ以上追求しない。また、これらの動機を覆い隠すための理由として、民主主義に脅威を与えるテロ撲滅が掲げられている。 
 このコラムでは再び(3)を取り上げてもう少し掘り下げてみたい。日本の皆さんに、アメリカのやることに唯々諾々と追従することの間違いに気がつき、そして、憲法を改定してまでそのようなアメリカと行動を共にすることが、日本を不本意な戦争に巻き込む危険性を理解して欲しいと念願するからである。 
 
 その前に、上の(1)と(2)について先に述べなかったことを少し付け加えておく。 
 (1)9/11事件が起る前にすでにアフガニスタン侵攻が計画されていたことはかなり確からしい。それは、中央アジアの石油をインド洋側に運ぶための輸送路を確保するためのようである。最近報道されているように、現在のイラクでは石油利権の獲得競争が熾烈を極めている。これらの事実は、石油資源獲得がこれらの戦争の動機の一部には違いなかったことを証明しているであろう。アメリカ企業に邪魔になる国家や政治家を戦争という手段に訴えないまでも、秘密裏に倒すというやり方は、アメリカの伝統と言ってよい。9/11事件そのものも「仕組まれた」ものである可能性は非常に高い。 
 
 (2)ネオコンなる(イスラエルよりの)イデオローグが国防省などの中枢を牛耳っており、またイスラエルザイオニストの政治圧力団体はアメリカ政治/立法部に深く浸透している。民主党のヒラリー・クリントンもこの団体ではイスラエル拡張主義の推進者の役目を勤めている感がある。もちろんザイオニストにとっての敵は、イラクのサダムであり、シリヤ、イランなどであり、イランへの戦争拡大はまだ断念されてはいない。 
 
▽アメリカのキリスト教右派(原理主義) 
 
 アメリカ国民の多く、そして共和党の主流がキリスト原理主義に甚大な影響を受けていることは周知のことのようだが、それが政治にどのような影響を及ぼしているかは、日本ではあまり知られていないのではないかと思われる。そこで、最近のアメリカでの出版物(注)を参考にその現状を簡単に紹介しておきたい。 
 
 まず,Phillips氏の著書より、アメリカ人の聖書に基づく世界観についての世論調査の結果を。 
 
 (@)聖書は文字通りに正確であるか(ハイの回答):全国民55%、福音派信者83%,非福音派信者47%、カトリック45% 
 (A)キリスト教の何を信じるか(2004年ギャラップ調査):神80%、天国81%,天使78%,サタン70% 
 (B)聖書の以下の事項は文字通り真実か(ハイ):ノアの箱船60%,神が天地を6日間で創造した61%,神がモーゼの頼みで紅海を分けてイスラエル人を通らせた64%。 
 (C)ヨハネ黙示録にある事件は将来起ると思うか(ハイ):全てのキリスト者59%,原理主義/福音主義者77%。 
 (D)黙示録にあるキリストとアンチキリストのアーマゲドンの闘いで世界は終わるか(ハイ):キリスト者全体43%、福音派系プロテスタント71%, その他のプロテスタント28%,カトリック28 % 
 
 福音派とか精霊派(ペンテコスタ)などなどのいわゆる原理主義的ものの考え方は、上の統計値からもわかるように聖書そのものを字句通りに信じ、それを日常生活の規範とするばかりでなく、現在は政治の規範にもするべく努力し、着々と現政権に食い込んで成果をあげている。それにしても、聖書を文字通りと解釈する人が、全国民の55%もいることは驚きである。 
 
 現政権になってから特に顕著になってきた宗教右派の影響の問題点は(a)日常生活/社会生活の場面、特に、誕生(受精からの成長過程でどこからを人間生命と見なすか)、妊娠中絶、性行動、健康、結婚、医療、家族等といった問題で、すべて聖書に書かれていると彼らが信じている規範に従わせる─自分達のみならず他人にも強制する。特に、妊娠中絶と同性結婚問題は政治家のリトマス試験として用いられる。 
 (b)これから派生するのは、こうした個人への介入の妨げになる司法を宗教本位にしようとする動きである。これはアメリカ憲法の根本思想の一つである、宗教と国家(政治)の独立相互不干渉に反するが、種々な手段で着々と実現しつつある。なにしろ大統領自身がこうしたことを信じているのだから。最近司法長官が、共和党に不利な裁判官をかってにやめさせた事件は、その一例にすぎない。 
 
 (c)多くの政府の社会サービスを、宗教に基づく組織に肩代わりさせる。これは一応あらゆる宗教に適用される建前になっているが、現状は、99%がキリスト教関係しかも原理主義的傾向の強い組織が受注し、仏教、ユダヤ教、イスラムは数件で名のみである。 
 (d)宗教的ものの見方に反するもの─科学、その延長である環境問題その他—を否定する行動。もっとも良く知られている事象は、聖書の創造神話を「進化」論の代わりに事実として学校で教えるような工作を多くの州や県の教育委員会レベルで行なっている。 
 
 原理主義者達の恐ろしい所は、この傾向が今顕著になったとはいえ、歴史上常に多かれ少なかれあった(中世はそのものであった)ことで、息の長い運動が続けられていることである。それは、子供達に聖書の不謬性を植え付けることから始める。そのために、多くの原理主義信者の家庭は、子供を通常の学校にやらずに自宅で教育する(Home Schooling)とか、キャンプ生活でそうした概念を徹底的に植え付け,経験させる(この1例は、最近「Jesus Camp」という映画になった)などで、次代の原理主義者を養成している。先のコラムでも議論したように、理性的判断力が身につく以前に植え付けられた(洗脳された)考え/信念は、後になって覆すのは殆ど不可能である。 
 
 さて、現大統領は若い時分に、アルコールに溺れていたのだが、原理主義的牧師に救われた─こうした人を「生まれ変わった」(born—again)キリスト者と称する。こういう人達は、比較的単純で、宗教のように「善悪」をはっきり提示してくれるものに寄りかかりたがる。したがって自身も原理主義者になる傾向が強い。この大統領の場合は、その傾向が特に強く、自身を「神に選ばれた者、神によって大統領に選ばれた者」と信じているようだし、そのように何度も発言している─その事実はかなり記録に残っているが正式の文書ではもみ消されている。 
 例えば、2003年イラク侵攻でフセイン政権を倒して勝利宣言を出した直後のアカバ(ヨルダン)での会議で次のような発言をした。「私は神のお告げに従っている。『ジョージ、行ってアフガニスタンのテロリストと戦え』との仰せに従って、その通りにした。次には『ジョージ、イラクの暴君を倒せ』だ。その通りにした…」(BBC、2005/10/5)。公にはそんな発言したことは否定されている。 
 
▽ヨハネ黙示録より 
 
 さて中東戦争との関連で最も問題なのは、上に述べた(iv)と(v)の新約聖書の最後にくるヨハネ黙示録である。これは、キリスト者の間で、いわゆる終末思想の基礎になってきた書である。それから2、3カ所引用してみよう。 
 
 「汚れた霊(サタン)どもは、「ハアルマゲドン」と呼ばれる所に、王達を集めた。第7の天使が、その鉢の中身を空中に注ぐと、神殿の玉座から大声が聞こえ、「事は成就した」と言った。そして、稲妻、様々な音、雷が起こり、また大きな地震が起きた。それは、人間が地上に現れて以来、いまだかってなかったほどの大地震であった。あの大きな都が3つに引き裂かれ、諸国の民の方々の町が倒れた…」 
 「天使は力強い声で叫んだ。倒れた。大バビロンが倒れた。そして、そこは悪霊どもの住処、あらゆる汚れた霊の巣窟、あらゆる汚れた鳥の巣窟、あらゆる汚れた忌まわしい獣の巣窟となった…」 
 「その後、私は大群衆の大声のようなものが、天でこう言うのを聞いた。ハレルヤ。救いと栄光と力とは、私達の神のもの。その裁きは真実で正しいからである…」 
 「そして、天使は私にこう言った。これらの言葉は、信頼でき、また真実である。予言者たちの霊感の神、主が、その天使を送って、すぐにも起るはずのことを、ご自分の僕達に示されたのです。イエスはこうおっしゃった:見よ、私はすぐに来る。この書物の予言の言葉を守るものは、幸いである」 
 
▽中東戦争との関連 
 
 すなわち、ハルマゲドン(またはアーマゲドン)の闘いで天使の軍がそこに集う悪霊(サタン=アンチキリスト)を滅ぼし、バビロンを滅ぼす。その後で、イエスが再来するという。この過程を小説化した「Left Behind」なる読み物が、数百万部も売れ、大統領も読んだようである(確証はないようであるが)。映画化もされた。聖書の神聖性とイエスを信じるものは、アーマゲドンの闘いによる破壊の後、イエスとともに天に上げられ永遠の命をうると彼らは考えている。多くの狂信者が、バグダッドをこのバビロンになぞらえ、イスラム信者をサタンになぞらえて、その破壊を望んでいるようだ。 
 
 上に挙げた統計値(ivとv)を見ると、かなりの数の人々がこうしたことを信じているようで、彼らには、現在の中東戦争がこの最終戦争—アーマゲドンの闘い─と映っているらしい。そうならば、大いに破壊し、自国民が疲弊しようと何しようとも、その後には自分達は天国へと引き上げられるのだから、なにをくよくよと思いわずらうことがあろうかーとなる。 
 
▽ファシズム化か 
 
ここまで書いて来て、気がついたのは、第2次世界大戦でのファシズム国家の指導者達の精神構造とその政策との類似であり、Naomi Wolfという人の「ファシスト・アメリカ」という本とその要約(http://www.alternet.org/waroniraq/51150/)が目についた。この人によれば、ファシズムの10の条件は、現在のアメリカにすでに顕著に現れている。日本も現状が延長されるとすると、遠からずそれに近い状態になるかも知れないと懸念されるので、この著者の言うファシズムの10条件を挙げておこう。 
 
1.国の内外に敵がいるとあおって、恐怖を植え付ける。 
2.通常の法規外の拘置所を設ける 
3.パラミリタリー軍団をつくり、国民を恐れさせる 
4.国民の監視機構(特高)をつくる 
5.少しでも意に沿わない国民や団体などを困惑させる 
6.かなり任意に投獄/釈放 
7.著名な反対者にターゲットをしぼる 
8.報道機関をコントロールする 
9.意見の不一致を「反逆」とみなす 
10.通常の法律適用を停止する 
 
 
注:Kevin Phillips, “American Theocracy – The peril and politics of radical religion, oil and borrowed money in the 21st century” (Penguin Books, 2006); Michelle Goldberg, “Kingdom Coming, The rise of Christian nationalism” (W. W. Norton and Co., 2006/2007) 
 
*落合栄一郎(カナダ・ヴァンクーヴァー在住) 
 東京生まれ、工学博士。カナダ・ブリテイッシュコロンビア大、トロント大、スウェーデンウメオ大などで、化学の研究と教授に従事し、米国メリーランド大、ペンシルバニア州のジュニアータ大で研究/教授歴25年。ジュニアータ大では、化学を教えるかたわら、「日本と西欧の文化の比較」という科目も担当していた。 
 2005年退職後は、カナダのヴァンクーヴァーで、「憲法9条を守る会・VSA9」など平和運動、持続可能性に関する運動に関与。主な著書に、「Bioinorganic Chemistry-An Introduction」(Allyn and Bacon,Boston, 1977), 
「General Principles of Biochemistry of the Elements」(Plenum Press, New 

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