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米国の迎撃ミサイル体制の仮想と現実 ロシア・ノーボスチ通信社
http://www.asyura2.com/07/war91/msg/898.html
投稿者 Kotetu 日時 2007 年 5 月 06 日 08:02:44: yWKbgBUfNLcrc
 

米国の迎撃ミサイル体制の仮想と現実
09:31
今日の話題


政治軍事分析センター分析課長アレクサンドル・フラムチヒン、ロシア・ノーボスチ通信社への寄稿。

ポーランドとチェコにアメリカのミサイル迎撃体制の部隊が設置される可能性についての論議が益々先鋭化しており、論議への参加者が益々増えている。しかも、この論議の参加者の多くは驚かずにはいられないとのことだ。
一方、モスクワはこの反応とは完全には合致していない。近い将来にアメリカの迎撃ミサイルがロシアの戦略核兵器にとって何らの脅威にならないことは極めてはっきりしている。
大陸弾道ミサイルの軌跡は、直接の地図の上でなく、地球儀上を描くことは知られていることだ。ミサイルは、大きな円弧を描きながら飛行する。この円弧は、発射点、到着点、そして地球の中心を経由する。特に、ニューヨークあるいはアメリカ経由でイラン北西から発射される大陸間弾道ミサイルは、アゼルバイジャンとグルジア、カフカスの黒海沿岸、アゾフ海、ウクライナの北部と中心部、ポーランド北東部、バルト南部、南スエーデン、デンマーク、北海、オークニー諸島の上空を飛び、大西洋を渡海し、ニューファンドランドとカナダ大陸部の間を飛ぶ。

アメリカのミサイル迎撃部隊GBI(ground-based-interceptor、ミサイル迎撃の地上部隊)は相手の額、つまり敵の大陸弾道ミサイルに向かい合う形で射撃するのが目的のため、まさにポーランドにGBIを配置するのは目的に適っている。GBIは、敵の大陸弾道ミサイルに向かい合って射撃する必要があるのは、この場合は標的のぶれの変位(揺れ角度)が殆ど微々たるものかあるいは角度変位が起きないため命中し易くなるからであり、迎撃ミサイルの速度と距離の要求が少なくなる。(目標自身が迎撃ミサイルに近づいて来る)。
同時に、ロシアからアメリカに(あるいは逆)飛ぶミサイル軌跡は北極経由になる。もし、ロシアからアメリカに向けてのミサイル攻撃(これは起こる可能性は殆どないがゼロではない)を想像した場合、ロシアの大陸間弾道ミサイルは、疑いもなく、ロシアのミサイルを打ち落とすための迎撃ミサイルより早く発射する。そして、北部に逃飛する。ポーランドに配置される迎撃ミサイルには、大陸間弾道ミサイルを発見し、軌跡を計算し、それに向けて追いかけて北東に発射する必要がある。大陸間弾道ミサイルに追いつくためには、迎撃ミサイルは速度も飛行距離も足りない。しかも、ロシアの大陸間弾道ミサイル基地が東になればなるほど、距離を迅速に増大するためにポーランドの基地からの打ち落としの課題は解決が難しくなる。GBIは、迎撃するミサイルと全く同じ大陸間弾道ミサイルを基地に設置する計画をもっている。同様に速度も全く同様にする。向かい射撃の場合はミサイルの速度差は意味を持たない。しかし追いかけ射撃が必要ならば迎撃するほうのミサイルは、攻撃される大陸間弾道ミサイルの速度よりも、数倍速い速度を備えていなければならない。従い、最新型のGBIは同一速度のミサイルを計画しているのだからウラルやシベリアのミサイルはおろか、ヨーロッパ部に配置されるロシアの大陸間弾道ミサイルにとってすら脅威にはならない。さらに、東ヨーロッパの迎撃ミサイルの存在はミサイル潜水艦にとっては基本的に意味がない。最後に、ポーランドには全部で10機の迎撃ミサイルがあり、これはロシアの戦略核兵器庫に比べたら無視できるほどの少ない数だ。この状況にさらに、おびただしい数のGBIの演習は失敗に終わっていることを考えると現時点ではアメリカの戦略迎撃ミサイルはそもそも実際に存在しているのかと見なすこと自体が難しいことを付け加えておく必要がある。さらに、かさ張るレーダーと迎撃ミサイルの発射装置は、戦術的、機動戦術的、翼付きミサイル、前線航空の攻撃用など、非核攻撃装置も含めて通常兵器に対して非常に脆い。
複数の専門家の意見によれば、アメリカがチェコに配置する予定のレーダーは、ポーランドに配置される迎撃ミサイルより危険である。レーダーは、ウラルまでびっしりミサイル発射の情報が残され、ロシアの非常に奥地まで監視できるからだ。しかし、この情報は、もしこのレーダーにより情報を十分に提供される必要のある撃破装置が存在しなければそれ自体あまり意味がない。そしてそのような装置は、すでに述べたように、基本的に、ない。
このようにして、東ヨーロッパに配置の迎撃ミサイル防衛部隊配置問題はまったくの仮想(ヴァーチャル)なものだ。ロシアにとって、唯一当惑している要素は、アメリカにとってのイランの大陸間弾道ミサイル側からの脅威はさらにもっと仮想的であることだ。今まで、アメリカとソ連、ロシアそして中国だけが、自己の大陸間弾道ミサイルを作る能力があることだ。イランは、現在、中距離ミサイルですら作ることが出来ない。イランの技術レヴェルは、核弾道を搬送する能力のある大陸間弾道ミサイルをイランが製造できるかどうかの能力を真剣に検討することは、遠い将来に適用の話を考えても不可能が現れるだろうということを仮に想定しても、何のためにイランがアメリカを攻撃するのかは全く理解できない。イランのあらゆる状況を考えても、イランは非合理的な狂信主義の自殺者の人だかりの場所だとする根拠は何もない。アメリカに一発でも攻撃すればアメリカ側からイランそのものを完全に抹消する大量の仕返し(それも完全に法律にもとづいた)が待ち受けていることは全く明らかなことだ。イラン指導部がこのような対価を払ってまで達成しようとする理由など何もない。そして、アメリカがすべてこれらを理解していないと考えることも無理がある。そして、これに関連して、すでにアメリカ人の動機は驚きを呼ばずにいられない。
なぜアメリカが東ヨーロッパに迎撃ミサイル体制を設置することが必要なのか5つのケースが想定できる。しかも、すべてそれらは、お互いに相互に排除できない要素だ。
1. アメリカの指導部、そして、アメリカの社会では2001年9月11日後、アメリカ国内に、伝説的に恐怖という恐怖なら何でも恐れる環境、ある種の恐怖パラノイヤ(偏執病)が発生していること。
2. ペンタゴンの予算は、現在、アメリカ国防省自身もアメリカの軍産施設も削減を許す希望がない程度に達していること。そして、今後も増やすことすら希望していること。全体的に、アメリカは、ヴャーチャル脅威を現実のレベルのように膨らませ、その脅威について煽り、その安全のために迎撃ミサイル体制が必要であるとして自国納税者に間接的に示していること。
3. アメリカの軍事政治指導者は、将来的に、それが例えはるか彼方であろうと、迎撃ミサイル体制がロシアの戦略核兵器の現実的脅威になり得るほどの技術レヴェルを達成したと判断し、現在、病的GBI設置用の場所を見つけ柱を打ち込んでいるところであること。
4. アメリカは、軍事費だけに資金を使って貧困国のままだった1980年代のロシアの成功経験を繰り返し、再びロシアが経済的に困窮する希望を持っていること。アメリカが「スター・ウォー」(星の戦争、アメリカが宇宙に兵器を持っていく構想の映画)」についてアメリカが宣言した時点から一四半期(25年)が経過した。しかし、現在までアメリカはありとあらゆる巨大な経済、技術、科学の力を借りても当時予告したものから何も作ることができていない。これは理解するのは簡単だが、当時のソ連のエリートの知的レヴェルは、適切な状況評価について語ることができないほど低下していた。アメリカでは誰も「戦闘レーダー」やその他のつまらないものを作るつもりなない。そしてモスクワは、恐怖を払いのけるのに病的になった。しかしロシアはロシアには経済的にも技術的にもその力がないことをすぐに理解した。ゴルバチョフ時代に、最初「ペレストロイカとウスカリェニエ(改革と加速)」があった。その後、何も進まないことを見た時、良く知られたファイナルの「新思想」が発生した。アメリカは、現在、最低でもロシアを以前の軍拡で経済困窮させ、一番の理想はソ連に引き続きロシアも崩壊させることを望んでいる。アメリカは、それと並行して発生している新しい「東からの脅威」という顔を利用し、戦闘ポテンシャルが急進的に退廃し弱体化していくNATOを結束させるという課題を抱えている。
5. 概して、ロシアやイランはアメリカをそれほど心配させていない。アメリカは、NATOはすでに将来性を持っておらず、規模は小さいが結束力の強い新しい安全保障体制を創設する必要があることを理解している。その体制の中には、言葉ではなく実際にアメリカに忠実を示す国を入れる必要がある。迎撃ミサイル体制部隊の設置はその構想の一つであった。


上述のように、5つのケースのうちどの1つもその他の4ケースと合い反しているものはない。全ケースが当て嵌まらないとしてもいくつかを合わせたケースは想定できる。従い、ロシアはアメリカのこの行動にどいのように対応するか決定するは易しいことではない。3番目のケースを心配して軍事強化に集中するか、第4の軍拡に引き込まれるケースにならないようになにも起こらない姿をするか。
しかし、この互換性のないことはそのように思うだけだ。ロシアは軍事を強くするだけでなく、強化するためには著しい程度に努力が必要である。もし、国内に、ロシアにとっての現実的脅威と挑戦に反撃し、脅威・挑戦に反応する能力が出てきたら、実際そのようになったにしても第3のケースを払いのけることが可能になるだろう。

http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=490&more=1

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