http://ameblo.jp/warm-heart/entry-10063806414.html から転載。2008-01-04 11:00:10
gataro-cloneの投稿
映画「勇者たちの戦場」 イラク戦争渦中にある「今日的アメリカの叫び」【石子 順】
テーマ:戦争と平和、靖国問題
映画「勇者たちの戦場」が明日(1月5日)から全国で順次ロードショー公開されていく。紹介文を読むだけで観てみようという気にさせる映画である。
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http://cinematoday.jp/movie/T0005731
勇者たちの戦場(シネマトゥデイ)

公式サイト: http://www.nikkatsu.com/yusha/
チェック:『五線譜のラブレター DE-LOVELY』のアーウィン・ウィンクラー監督によるイラク戦争を見据えた骨太な人間ドラマ。戦地で心身ともに大きな傷を負い、帰国後もなかなか元の生活になじめない兵士たちの葛藤(かっとう)を描く。『スネーク・フライト』のサミュエル・L・ジャクソンを始め、『ステルス』のジェシカ・ビールや新星ブライアン・プレスリーなど、多彩なキャスト陣が見どころだ。綿密なリサーチにより作られた、登場人物たちのリアルな苦悩が身にしみる。
ストーリー:イラクに駐留中の軍医ウィル(サミュエル・L・ジャクソン)は、帰国の日が近いことを知らされる。彼は若い兵士トミー(ブライアン・プレスリー)やその親友ジョーダン(チャド・マイケル・マーレイ)らとともに最後の人道支援として物資を運ぶ任務に就く。彼らの車が市街地に到着するといきなり攻撃が始まり、激しい戦闘に発展する。
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「しんぶん赤旗」(1月4日付・9面)で映画評論家・石子 順氏は「勇者たちの戦場」を次のように評している。
今日的アメリカの叫び(石子 順)
イラク戦争の悲惨と帰還兵たちの心身状態に焦点をあてた意欲作。監督はハリウッドの赤狩りを「真実の瞬間」で描いたアーウイン・ウィンクラーだ。
ワシントン州の州兵、軍医ウィル(サミュエル・L・ジャクソン)、女兵士ヴァネッサ(ジェシカ・ビール)、トミー(ブライアン・プレスリー)たちは帰還直前の人道的援助活動中に武装集団に襲われトミーの親友が殺され―。
戦場と故郷との落差感覚が立ちはだかる。平和な町に帰還したものたちの喪失感。片手を失ったヴァネッサはわが子が抱けない、バスケットボールもつかめない。病院にもどったウィルは手がふるえ妻と対話できず反戦を主張する息子を殴り酒におぼれる。トミーは友の死から立ちあがれない、父の愛にもこたえられない。
戦場はイラクだけでなく故郷もまた戦場という実態がここにある。勇者という名と引きかえに加えられた精神的苦痛、強迫観念を直視しつづけ、かれらがもどるべき平穏な場所をともに探し求めていく。
これはアメリカが続けているイラク戦争の重圧感をまともに観客に投げかけてくる映画だ。
それぞれの変質した人間性、平常心、勤労意欲を追いかける。戦争で失ったものはもどらない以上どうしていくか。迷い、ためらい、努力してとりもどした愛情もあるがふたたび戦場にもどっていくものもいる。この違いの意味の重さをどのように受け止めるかと問いかけ、イラク戦争そのものへの疑問をつきつけて今日的なアメリカの叫びになっている。
(石子 順・映画評論家)
東京・銀座シネバトスで五日から公開。順次各地で。