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JMM [Japan Mail Media]  「ジェネレーションYの影響力」  冷泉彰彦  
http://www.asyura2.com/08/bd52/msg/114.html
投稿者 愚民党 日時 2008 年 2 月 09 日 22:33:03: ogcGl0q1DMbpk
 

                              2008年2月8日発行
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JMM [Japan Mail Media]                No.465 Saturday Edition
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                       http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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  ■ 『from 911/USAレポート』第342回
    「ジェネレーションYの影響力」

 ■ 冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

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 ■ 『from 911/USAレポート』第342回
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「ジェネレーションYの影響力」

 2月5日のスーパーチューズデーの結果は互角でしたが、とにかくオバマ陣営の選
挙戦術は非常に効果的で、今回の投票締め切り後の一日の間に7.5ミリオン強(約
8億円)を集めたのだそうです。これに対して、一時的な資金ショートに陥ったヒラ
リー陣営では、クリントン夫妻が私財を5ミリオン投入したことを認めており、今後
の戦いへの影響が懸念されています。オバマもそうですが、ヒラリーは選挙資金規制
を逃れるために公的助成を返上しており、資金集めに難航するということは「死」を
意味するからです。

 さて、この集金力の差というのは何よりもインターネットを絡めた組織戦略による
もののようです。例えば、両者ともにウェブサイトで支持者登録を受け付けています。
そこにEメールアドレスを登録すると、色々なメッセージが届く仕掛けになっていま
す。そうしたメールの中で、あるいはウェブサイトのあちこちに「寄付」のバナーが
張ってあり、そこから政治献金のサイトに飛ぶというわけです。その集金サイトのデ
ザインを見るだけで、両者の選対のセンスの違いが感じられるのです。

 ヒラリーの方は、非常に事務的です。ウェブページのデザインとしては保守的なス
タイルで、素っ気ない感じすら与えます。ワンクリックでの献金額も10ドルからと
「つつましい」一方で、同じようにワンクリックで法定上限額の2300ドル(約2
5万円)とか、予備選の上限に本選の上限を加えた4600ドル(仮に候補にならな
かった場合はどうなるのでしょうか?)も払えるようになっていて、とにかく「カネ
を出せ」というムードが濃厚です。

 オバマの方も「カネを」という気迫は十分に伝わるのですが、献金のページにJA
VAをつかった動画が埋め込まれており、そこで「これまでの選挙運動の道のり」が
上映されているのです。つまり「あなたの浄財が、このような運動に約立つのですよ」
というメッセージが伝わる仕掛けです。また献金に当たっては、法的な「コンプライ
アンスチェック」という欄があって違法な献金を防止すると共に、法的にクリーンな
活動であることを強調しています。そしてワンクリックの献金額は、上限が法定の2
300になっており、今から4600を集めようという姿勢は見せていない代わり、
ワンクリックの下限は25ドルと非常に強気なのです。

 献金要請はメールでもどんどん来るのですが、オバマの場合は自分の名前で来るこ
ともあれば、今や全米で知名度が一気に高まっているミシェル夫人のこともあります。
そのミシェル夫人から「ミシェル・オバマ」という個人名を発信元にして「あなたの
献金が私たちの夢を実現させてくれるんです」などとパーソナルタッチなメッセージ
が届くと、それは選対が出した大量発信メールだと分かっていても、一種の説得力を
持ってしまうというわけです。

 スーパーチューズデーの直後に、そのミシェルの名前で大量に流されたメールでは
オバマの演説にR&B調の歌をオーバーラップさせた「イエス・ウィ・キャン」とい
うビデオクリップが埋め込まれているのですが、これがなかなかの出来なのです。ビ
デオは、支持者が作ったというふれ込みですが、完全にプロの仕事(監督はボブ・
ディランの息子のジェシー)で、リード・ボーカルは「ブラック・アイド・ピーズ」
のウィル・アイ・アム、そしてハービーハンコックなど大勢のスターが競演している
のです。その中で興味深いのは今やアメリカのトップ女優と言うべき、スカーレット
・ヨハンソンが姿を見せているという事実です。

 ヨハンソンは、ウディ・アレンの最近の「ミューズ」であることで分かるように、
ユダヤ系の血をひいています。そのヨハンソンがオバマ支持に回っているということ
は、とりもなおさずオバマが、ヒラリーの生命線である「穏健ユダヤ系」の票と資金
に触手を伸ばしてきていることを示しています。それ以上に重要なのは、このヨハン
ソンが1984年生まれ、つまり80年以降に生まれた「ジェネレーションY」を代
表する存在だということです。

 今回の予備選では、正にこの「ジェネレーションY」の存在が大きくクローズアッ
プされています。例えば、1月の初旬、開幕戦とも言うべきアイオワでオバマを勝た
せたのは、この世代であり、ニューハンプシャーでの善戦も、そして今回2月5日の
スーパーチューズデーで、ヒラリーの牙城と思われていたコネチカットを落としたの
も、この世代の力が大きいと言われています。このように、R&B調のミュージック
クリップを使用したり、ミシェル夫人をスターに押し上げて、若者を引きつけたりと
いう作戦のことごとくが成功しているようなのです。

 では、どうしてこの「ジェネレーションY」はそれだけの力を持っているのでしょ
う。ちなみに、アメリカで言う定義では、1980年から1999年生まれまで、つ
まり現在9歳から27歳までというのが「Y」で、このYと団塊の間のことは「X」
と呼ばれ、逆に現在8歳以下の2000年以降生まれは「Z」なのだそうです。さて、
その「Y」ですが、何と言っても団塊二世とその下ということで人口の塊として大き
いのですが、良く言われる特徴としては次のようなことが言われています。

(1)親が非常に教育熱心で、その結果として大学進学率が高い、(2)インター
ネットを当たり前に使いこなしており情報収集能力が高い、(3)自尊感情が高い一
方で群れを作りたがりネットを通じた人脈作りなどに熱心、(4)現実への柔軟性を
備える反面で理想主義的な理念にも敏感、(5)善悪二分法の一神教的カルチャーに
は反発、(6)従来のアメリカ人の常識を覆すほど国際化している、とまあこんな具
合です。

 正にオバマの登場はこうした「Y」のために出てきたというほど「はまる」という
わけです。非常に理念的でありながら善悪の二分法には反対、高学歴に訴える一方で
細かなグループ作りにも熱心、イスラム教徒のケニア人の父と白人の母の間で生まれ
て少年期をインドネシアで過ごした、そんなキャラクターがインターネットを駆使し
て全国で旋風を起こしているのですが、これこそ「ジェネレーションY」のための
キャンペーンといって良いでしょう。

 さて、この「Y」の天敵は何かというとそれは「親」なのです。彼等の隠語では
「ヘリコプター・ペアレント」というのだそうですが、とにかく子供が何かトラブル
に巻き込まれそうになると所構わずヘリコプターでやってくるように現れて「ちょっ
かい」を出す、子供の人生の岐路においてもとにかく「口うるさく介入してくる」と
いうのです。例えばスカーレット・ヨハンソンがこれまでに演じてきた役を見ると、
そのあたりがハッキリ浮かび上がってくるのです。

 ヨハンソンが注目されたのは『ホース・ウィスパラー(邦題は「モンタナの風に吹
かれて」)』で、心に屈折を抱えたティーンの少女を見事に演じています。映画の中
では、その少女の心を救うには同じように傷ついた愛馬を救わなくてはならないと気
づいた母親(クリスティン・スコット・トーマス)がヨハンソン演ずる娘と馬をトレ
ーラーに乗せて、NYからモンタナまで大陸横断をやってのけるのですが、この恐ろ
しい行動力こそ「ヘリコプター・ペアレント」そのものだというわけです。映画の中
では、その車中ずっとヘッドフォンをかけて親との会話を拒否するヨハンソンの演技
が光っていましたが、こうした光景こそ「ジェネレーションY」の原体験とでも言え
るでしょう。

 ちなみに、ヨハンソンはその後の作品では、NYU(ニューヨーク大学)に編入が
決まって親に大金を出してもらう役(『イン・グッド・カンパニー』)やら、センタ
ー試験のアメリカ版(いやそれ以上の権威のある)とも言えるSATというテストの
問題を盗み出す「トンデモ映画」(『パーフェクト・スコア(邦題は「スカーレット
・ヨハンソンの百点満点大作戦」)』)に出演して「受験戦争の中のYジェネレー
ション」を代表していますし、『ロスト・イン・トランスレーション』では日本、
『マッチ・ポイント』ではイングランドと「ジェネレーションYの好きな外国」を舞
台にした作品にも出ており、正にこの世代を代表していると言えます。

 そして、彼等がどうしてヒラリーが嫌いなのかというと、彼女がこの「ヘリコプタ
ー・ペアレント」のイメージにピッタリ重なってくるからなのです。従来の親とは
違って、手取り足取り子供の人生に介入してくる、そして自分の人生の岐路には必ず
ヘリコプターのように空から現れる存在は、彼等の憎悪の対象であり、同時に世代間
闘争の好敵手としてどうしても対決しなくてはならない相手だというわけです。

 ヒラリー陣営も、そのあたりに気づいたようで、このスーパーチューズデーへ向け
ての選挙運動では娘のチェルシー・クリントンを最前線に投入しています。選対内部
では「ステルス作戦」とか「ミニバン・キャラバン」と呼ばれているらしいのですが、
とにかく事前の予告なしで、大学内やコミュニティの若者によるヒラリー支持者集会
にチェルシーが現れて対話をするという作戦です。私の住むニュージャージーでは、
投票前日にチェルシーは州の北部をそれこそ「ステルス作戦」というよりも「ドブ板
選挙」という言い方が似つかわしいようなイメージで精力的に回って母親の勝利に貢
献しているのです。

 では、そのチェルシーがどうして「ジェネレーションY」に対して説得力を持った
のかというと、その演説の素人丸出しの「ヘタウマ」スタイルが良かったのと、支持
者からの質問に対しては誠実に「私のママの同性愛婚に関するスタンスは、本当のと
ころはね……」という感じでじっくり丁寧に答える姿勢が好感を持たれたということ
があるようです。それ以上に、天敵と言うべき「ヘリコプター・ペアレント」と徹底
的に戦い(例のモニカ疑惑の際には、親子断絶が噂されたりしています)その結果と
して自立(オクスフォード留学の後、有力なヘッジファンドに就職)して、今ではそ
の母親から「頼りにされている」という「反抗、成熟、和解」のドラマを経てきてい
るからだと思います。そのあたりが「Y」の琴線に触れたのだと思います。

 私は今回の選挙を通じて「ジェネレーションY」が政治に目覚めたというのは非常
に意味のあることだと思っています。では、またあの「口うるさく理念を振りかざす」
アメリカ人が戻って来るのでしょうか? その点では良い意味で「イエス」だと思い
ます。では、そうした「うるさいY」の登場は日本にはマイナスかというと、そうで
はないのです。「Y」というのは、そのままアメリカのカルチャーの中では「アニメ
世代」であり「サンリオ世代」なのです。彼等は幼いときからディズニーの単純な勧
善懲悪をバカにして、日本アニメに走り、その一方で「ピュアなものを感じるから」
と「ハロー・キティ」などのキャラクターを大人になっても偏愛する、正に「クール
・ジャパン」の良き理解者なのです。彼等が政治の表舞台に立つとき、日米関係もま
たこれまでとは大きく変化してゆくことでしょう。

 さて、ここでCNNからニュース速報のメールが入り、チャンネルを合わせました
ら丁度共和党ではロムニーが選挙運動の「停止」を表明していました。数日前に臨時
号をお送りした際には、当面は降りそうもないという観測をお伝えしたばかりですが、
やはりこれ以上の私財投入は不可能になったのでしょう。今から思えば、スーパー
チューズデーの直後に支持者の前で「まだまだこのキャンペーンは続きますよ」と気
勢を上げていた際に、後ろにいたアン夫人だけは表情がこわばっていましたから、家
族内では撤退の話が進んでいたのでしょう。

 このロムニーの「撤退声明」では、非常に注目すべき発言を行っています。それは
保守系の政治団体の会合の席上だったのですが、ある種マケイン擁護とも取れる発言
でした。「このままヒラリーやオバマが当選してイラクから即時撤退ということにな
れば、テロリストのやりたい放題ということになる。その意味では、(イラク駐留を
必要なら100年続けるという)マケイン議員の主張は、真正な保守主義だと言って
良いのではないか」というのです。場内は拍手に包まれていましたが、そもそもマケ
イン議員は中絶問題などで中道に過ぎて「真正な保守ではない」という激しい攻撃を
受けているのです。そのマケインに対して「真正な保守である」というのは、かなり
露骨にエールを送ったということに他なりません。

 さて、今回のロムニー撤退を受けて、このまま早期に「マケイン+ハッカビー」で
正副候補ということになる可能性が出てきたと思います。降りたロムニーがハッカビ
ーと組んで「マケインは真正保守にあらず」というキャンペーンを張るという手もあ
りますが、そもそもマケインを逆転するのは至難の業ですし、福音派のハッカビーが
モルモン教徒のロムニーを副大統領候補に推すはずはなく、こちらの可能性はゼロで
しょう。そんなわけで、「副大統領候補にはなれないかもしれないが、マケインが候
補になった場合の影響力を残すため」あるいは「マケインが負けた場合の2012年
に備えるため」に今回は実質的に「マケイン支持」とも言えるコメントと共に「撤退」
ということになったのだと思います。

 それにしても、彼の口からは最後まで実務的な中道政治家としての肉声を聞くこと
はできなかったのが残念です。「ジェネレーションY」との関連で言えば、彼等には
「モルモン教は異端」などという偏見はないので、もう少し国際派といいますか、中
道のスマートな常識人というイメージを打ち出せば、もっと都市部でも勝てたのでは
ないかと思います。ですが、最後の撤退演説は実に堂々としたスケールの大きなもの
で、今後へ向けて政治家としての可能性を感じさせるものでした。

 というわけで「マケイン+ハッカビー」という組み合わせが濃厚になりつつありま
すが、この二人ともお嬢さんを選対陣営に加えているのです。メーガン・マケインは
23歳、セラ・ハッカビーは25歳、正に二人とも「Y」であり、選挙運動のブログ
を通じて「Y」の有権者に対するメッセージ発信を続けているのです。そんなわけで、
今回選挙では「ジェネレーションY」が大きなカギを握りそうです。ということは、
まだまだアメリカ社会は「若さ」の再生産をしようという構えだとも言えるでしょう。
世界の警察官というようなポジションからは降りていくかもしれませんが、その文明
としての潜在的な力はまだまだ軽視できないと思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『メジャーリーグの愛され方』。訳書に『チャター』がある。
最新刊『「関係の空気」「場の空気」』(講談社現代新書)
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498444/jmm05-22>
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【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
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