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広瀬隆紹介(1) 市民運動家広瀬隆
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投稿者 JPLAW 日時 2008 年 8 月 27 日 01:21:37: 8Qw.LQgdpBEaI
 

広瀬隆紹介(1) 市民運動家広瀬隆

「腐食の連鎖(リング)」P16〜17(1996年集英社刊)
 世間を何も知らなかった私は、三十代から職業として技術書と医学書の翻訳にたずさわったため、手にするアメリカ・ヨーロッパの文献に、原発の危険性と、医療界での放射能についての警告をしばしば目にした。その一九七〇年代は、水俣病・スモン病・イタイイタイ病・四日市公害・川崎公害など、薬害と大公害が日本列島を襲った時代にあった。私も、無数の事実を知りはじめた。やがて、無責任な人間が起こしたこれらの問題に対して、「公害」という言葉が軽々しく使われることに抵抗を覚えた。妊婦に対して、安易に投薬やX線照射を認める無責任な医療者があったからだ。その人たちが権威として書いたレポートを目にしたため、書き手の過ちを指摘し、翻訳依頼主に「注意書き」を添えるようにしたのも、その時代であった。
 医療を学び、特にすぐれた医字書に教えられるうち、アメリカなど外国の医学界では、絶えず放射能の危険性について、くわしい科学的報告が書かれていることを知るようになった。OECD(経済協力開発機構)などのレポートには、次のような分析がなされていた。
 「原子力発電所から熱水が放出され、コンブなどの海草が全滅し、わずかに海水の温度が上昇することによって、大陸棚を生活圏とする稚魚や魚介類が死に絶えることがある。やがてこの生物サイクルから、発電所の周囲では、海そのものが真っ白に死んでゆく」
 のち、これが事実であることを、北海道の泊原発など日本全国の原子力発電所の真っ白な浜で、私は思い知らされた。このように、原子力発電の本質的な欠陥が、海外で無数に書かれていることに驚いたが、実はそれ以上に愕然としたのは、その翻訳依頼主が、日本の電力会社だったことである。

 当然、日本の電力会社はこうした膨大な資料を読みながら、一方では、国民に対して事実を隠し、安全論を語っていることが、一介の翻訳者の立場から偶然にも分ったのである。その電力会社の体質は、私に重要なことを教えた。チバ・ガイギー社がスモン病の因果関係を社内で知りながら、キノホルム製剤を販売し続けたのと同じことが、原子力の世界で進行していた。私は畑仕事にうちこむかたわら、静かな山にこもって自給自足する夢を持っていた。しかしその夢がかなっても、放射能の大災害が起こればすべて無に帰することを知り、自分の身を守るために、二十年ほど前から資料を集めはじめた。やがて日本が危ないと気づいて、内心で不安を覚え、原発反対の一文をまとめていた。その矢先に、七九年のスリーマイル島原発のメルトダウン(炉心溶融)事故が起こった。

 やもたてもたまらず町に飛び出した私は、身近な人と共に市民運動をはじめ、『原子力発電とはなにか……』という入門書をつくったあと、自分たち東京に住む都会入が問題の張本人であるという意識から、『東京に原発を!』という本をみなで編集した。おそらく、かつての自分のように、原子力について何も知らずに生きている人がほとんどだろうと思ったからである。これらの本は、社会で受け入れられ、嬉しかったが、八ー年には、福井県・敦賀で放射能漏れの重大事故が発生した。

 その当時、漁民のひとりがこう言い放った言葉が、まざまざと脳裡によみがえってくる。


知の宝庫,広瀬隆さんも30才台までは「世間を何も知らなかった」。
広瀬さんは,「アームチェア・デテクティブ」などと揶揄されるが,それはまったく間違いである。反原発の市民運動家としての原点が,後の膨大な研究成果としての「赤い楯」「持丸長者」に続いている。

 

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