★阿修羅♪ > 国家破産55 > 148.html
 ★阿修羅♪
「なぜ量的緩和は景気回復につながらなかったか」(リチャードクーのKoo理Koo論)
http://www.asyura2.com/08/hasan55/msg/148.html
投稿者 そのまんま西 日時 2008 年 2 月 11 日 09:59:25: sypgvaaYz82Hc
 

第6回「なぜ量的緩和は景気回復につながらなかったか」
(リチャードクーのKoo理Koo論)(2008/02/08)

 では、経済学という観点から、この15年は何だったのかを考えてみたい。この15年間にクルーグマンやM・フリードマンをはじめ「日本はもっと金融緩和をやれ」「インフレターゲットだ」「量的緩和だ」と言っていた国内外の経済学者は掃いて捨てるほどいる。しかし日銀が量的緩和をやっていたにもかかわらず景気は回復しなかった。これは一体どういうことなのか。

<「流動性を示す指標」が教えてくれるもの>

 これまで説明してきたように、今回の日本の不況はどの経済学書にもない世界だったのだが、日本は結果的に、非常にうまく経済を運営してきたと言える。下記のグラフは、マネーサプライ、民間向け信用、現金プラス日銀当座預金(日銀がどのくらい流動性を供給したかを示す)というマネーに関する3つの指標をまとめたものだ。

<拡大図はこちら>
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/html/koo06_2.html

 経済学ではどの教科書でも「この3つの指標は同じように動くはずだ」と教えている。つまり、中央銀行が流動性を1割増やせば、最終的に銀行の貸し出しもマネーサプライも1割増えるはずで、実際、1970年代から90年までは、この3本の線が同じように動いていた。これはこの当時の日本経済が教科書の世界にいたことを物語っている。

 ところが、90年にバランスシート不況に突入してからは、この3つの指標が無関係に動くようになってしまった。当時、日銀は国内外の政治家・学者からとにかく「流動性の供給を増やして景気を良くしろ」という圧力を受けて、どんどん流動性を増やしていった。90年1-3月期の流動性を100とすると、2005年ごろは300、ほぼ3倍にまで増やしているのだ。ところが、真ん中の線で示したマネーサプライは100から150までしか増えなかった。それでもマネーサプライが1.5倍になったのは、これまで指摘したように政府が借りてくれていたからだ。

 一方、民間向け信用は金融機関が民間に貸したお金の残高を示しているが、もしも民間資金需要だけでマネーサプライが決まっていたら、マネーサプライと民間信用の動きは一致するはずである。というのは銀行の貸し出しが増えなければ、預金も増えないからだ。ところが、実際の民間向け信用の動き見ると、2005年12月には90年の水準を下回る96まで落ちている。今のマネーサプライの水準より3割は少ない水準だ。
ということは、過去15年間の日本経済は、マネーサプライが33%消えた70年前の大恐慌時の米国とまったく同じ危険性に直面していたのである。


<「財政政策が金融政策の効力を決定」していたこの15年間>

 それでも、今回日本が70年前の米国と同じ状況にならなかったのは、当初から政府が一貫してお金を借り続けてくれたからだ。つまり民間向け信用は落ちたが、代わりに政府向け信用(銀行による国債購入)が増えたことで、資金が銀行に滞留せずに済み、その結果マネーサプライも増加した。その意味では「財政政策が金融政策の効力を決める」という従来の経済学の教科書に載っていない世界が日本で出現したのである。

 ここで、マネーサプライがどのように増えるかを確認しておこう。まず、中央銀行が流動性の供給も増やすと、民間銀行はその流動性を元手に貸し出しを増やす。そして、貸し出されたお金が経済の中で使われると、そのお金は別の人の収入になり、どこかの銀行に預金される。すると今度は、その預金を受けた銀行が「預金が増えたなら、貸し出そうか」ということで、このサイクルがさらに回って預金が増えていく。マネーサプライはこのようにして増えていくのである。

 ところが民間が一斉に借金返済に走った途端、このサイクルが逆に回るようになる。借金返済は銀行預金を取り崩してやるわけだから、借金返済が進むほど銀行預金がどんどん減っていってしまうからだ。実際、大恐慌のときにはこれがそっくりそのまま表面化したので、米国のマネーサプライは3割消滅した。

 ところが、下記のグラフで見るように、日本の場合は、マネーサプライの前年比を示す折れ線グラフが一貫してプラスになっている。民間が借金の返済をやっているのに、なぜマネーサプライが増えつづけたのかと言うと、民間向け以外の信用が増えていたから、いいかえれば政府がお金を借りていたからだ。

これは民間の資金需要がない→政府は財政赤字で資金需要がある→銀行は政府にお金を貸す(国債を買う)→政府は公共事業をする→ゼネコンにお金が入る→銀行の預金になる→また、銀行が政府にお金を貸す・・・・・というサイクルが回って、マネーサプライがキープされてきたことを示している。

<拡大図はこちら>
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/html/koo06_1.html


<「経済学を根底から否定」のマネーサプライ動向>


 つまり、「財政政策が金融政策の効果を決める」というこれまでの経済学の教科書に載っていない世界が日本に出現したのである。もっと言えば、今の日本には「独立した金融政策」は存在しないとさえ言える。これは、今の経済学を根底から否定する話だ。


 なぜなら、クルーグマンもM・フリードマンも「金融政策でなんとかしなさい」のオンパレードだったにもかかわらず、現実の日本経済では借り手は政府だけだったからだ。このような状況では、政府がお金を借りればマネーサプライは増える。逆に、政府が借りなければ、日銀が逆立ちしても何をやってもマネーサプライが増える理由はどこにもない。これは、別の言い方をすれば「政府が金融政策を握っている」ということになるのである。そのことを示す下記のグラフは、先日亡くなってしまったが、フリードマンが見たら卒倒するようなグラフだろう。それほど、過去15年に日本で起きたことは、これまでの経済学の考え方を打ち破るようなショッキングな現象だったのだ。

<拡大図はこちら>
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/html/koo06_1.html


<大恐慌の「歴史の書き換え」とは>

 実は同じことが、70年前の米国大恐慌の時にも起きていた。その当時も金融政策が効かなくなり、この教訓を学生時代から叩き込まれた終戦直後の経済学者たちは「財政政策をやれ」の大合唱だった。私が大学生のころでも、彼らは「大恐慌のときは金融政策がきかなくなった。だからルーズベルトはフーバーダムを作るなど公共投資をしたから景気が良くなった」と教えていた。

 ところがこの20年間に経済学界で「歴史の書き換え」が行われていて、その先頭にたっているのが、学者出身で現FRB議長のバーナンキらである。
「大恐慌の時、金融政策がきかなかったというのはおかしいじゃないか。それでその検証をしてみよう」というのがそのきっかけだった。

 その結果、現在大学で教えている経済学では「大恐慌が起きたのは、当時のニューヨーク連銀がちゃんと資金供給しなかったのが原因」ということになっている。当時、取り付け騒ぎがおきて1万行(当時全米で約3万行の銀行があった)がつぶれてしまった結果、預金が消滅し、それによるマネーサプライの減少がさらに景気悪化させた。
だから、もしニューヨーク連銀が資金供給をして、この1万行の銀行をつぶれないようにしておけば、不況にはなったかもしれないが、大恐慌にはならなかったはずだという説だ。

 これを最初に言い出したのはフリードマンだ。しかも、彼の90歳の誕生日のパーティーでバーナンキが「あなたは正しかった。当時のFRBの政策の失敗が大恐慌を引き起こした」と話しており、この説が最近の経済学では定説となってしまっている。


http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20080206d8000d8&p=1
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20080206d8000d8&p=2
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20080206d8000d8&p=3

  拍手はせず、拍手一覧を見る

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      HOME > 国家破産55掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。